(3)警察業務の情報化
警察では、全国の警察官が必要なときに必要な情報を入手し、活用できるよう警察情報管理システムを構築している。これは、警察庁のコンピュータに盗難車両、家出人等に関する情報をあらかじめ登録し、全国の警察官からの照会に対して即時に回答できるシステムである。これらの照会は、警察署等に設置されている端末のほか、警察官が使用する車載端末等からも行うことができる。
また、都道府県公安委員会が交付した運転免許証に関する情報を警察庁のコンピュータで管理することで、運転免許証の即日交付を可能にするなど、国民の利便性向上に努めている。
(4)情報管理の徹底
〔1〕 情報セキュリティ対策の推進
警察では、犯罪捜査、運転免許等に関する大量の個人情報のほか、多くの秘密情報を取り扱っていることから、警察庁は、警察情報セキュリティポリシーを定めるとともに、各都道府県警察に対する監査等を通じて、情報の流出や改ざん、情報システムの障害等の対策に努めている。
警察情報セキュリティポリシーとは、警察情報セキュリティに関する訓令及びこの訓令に基づいて定められた情報セキュリティに関する規範の体系をいい、警察における情報の取扱いの在り方について規定している。
平成17年には、行政機関個人情報保護法の施行を踏まえ、警察情報セキュリティポリシーを改正し、個人情報の適正な取扱いの徹底等を図った。
〔2〕 ファイル共有ソフトを介した情報流出事案の判明(
第1章第1節(3)(19頁)参照)
このような取組みにもかかわらず、16年3月以降、8道府県警察においてファイル共有ソフト「ウィニー(Winny)」を介した捜査資料の情報流出事案が判明している。これらの事案は、公務で使用したコンピュータを自宅においてインターネットに接続したことによるものや、捜査資料が記録されたデータを自宅に持ち帰り、自宅のコンピュータにおいて使用したことによるものであった。中でも18年3月には、岡山県警察において約1,500人分の個人情報が、その数日後には愛媛県警察において約6,200人分に及ぶ個人情報がインターネット上に流出するといった情報流出事案が相次いで判明した。
特に、愛媛県警察における事案では、流出したファイル数は約3,500に上った。主なものとしては、被疑者、被害者等の供述調書(約150ファイル)、捜査報告書(約400ファイル)、事件送致書類(約300ファイル)等が含まれていた。愛媛県警察では、部外者から捜査資料等がインターネット上に流出している旨の連絡を受け、所要の調査や当事者の方々等に対する謝罪、説明等を実施した。
これらの事案について、同年6月までに、情報を流出させた職員等合計21人に対して、3か月の停職を始めとする処分等が行われた。
〔3〕 情報流出事案の絶無に向けた取組み
情報流出事案は、警察に対する国民の信頼を著しく損ない、また業務遂行に大きな支障を来すことになることから、警察庁では、18年3月、職場に存在するすべてのコンピュータ及び外部記録媒体についての緊急点検を行うとともに、私有コンピュータからファイル共有ソフトや警察情報を削除するなどの緊急対策を実施した。
また、同年5月には、すべての都道府県警察を対象とした情報流出防止に関する特別監査及び業務指導を行い、情報流出の原因を徹底して排除するための取組みを実施した。
警察では、今後とも、情報流出事案の絶無を期するため、継続した監査、監察及び業務指導を行い、職員一人一人の意識改革の徹底を図り、また、警察情報を持ち出せないようにするための警察情報システム自体のセキュリティ強化等、総合的な対策を推進することとしている。
なお、多くの都道府県警察において私有コンピュータが公務に使用されているという実態があり、また、情報流出事案の多くにおいて私有コンピュータが使用されていたことからも、職場における私有コンピュータの使用を一掃するため、各都道府県警察において、19年度末までに公費によるコンピュータの計画的な整備を進めることとしている。