第4章 安全かつ快適な交通の確保

3 交通安全教育と交通安全活動

(1)交通安全教育
〔1〕 交通安全教育指針
 国家公安委員会は、地方公共団体、民間団体等が効果的かつ適切に交通安全教育を行うことができるようにするとともに、都道府県公安委員会が行う交通安全教育の基準とするため、交通安全教育指針を作成し、公表している。
 この指針には、交通安全教育を行う者の基本的な心構えのほか、教育を受ける者の年齢、心身の発達段階、通行の態様に応じた体系的な交通安全教育の内容及び方法が示されている。警察では、関係機関・団体と協力しつつ、この指針を基準として、幼児から高齢者に至るまでの各年齢層を対象に、交通社会の一員としての責任を自覚させるような交通安全教育を実施している。

〔2〕 年齢層に応じた交通安全教育
 小学生、中学生に対しては、歩行者や自転車の利用者として必要な技能及び知識を習得させるための教育を行っている。
 
 小学校での交通安全教室
写真 小学校での交通安全教室

 高校生に対しては、運転免許を取ることのできる原動機付自転車や自動二輪車の安全な運転に関するもののほか、自動車の特性、事故を起こした際の運転者の責任等について理解を深めさせるための教育を行っている。
 成人に対しては、主に免許の取得時と取得後に交通安全教育を行っているほか、免許を取得していない者に対し、歩行者・自転車利用者向けの交通安全教室を開催するなどしている。
 特に、高齢者に対しては、自らが体験し、考えることを重視する立場から、反射材の効果実験等を盛り込んだ参加・体験・実践型の交通安全教育を積極的に推進するよう努めている。また、交通安全教育を受ける機会のなかった高齢者を中心に、関係機関・団体と協力して、自宅を訪問して指導するなど、地域全体で高齢者の交通安全指導が行われるよう支援している。
 
 高齢者宅を訪問しての交通安全指導
写真 高齢者宅を訪問しての交通安全指導

〔3〕 事業所等における交通安全教育
 一定台数以上の自動車を使用する事業所等では、道路交通法の規定に基づき選任された安全運転管理者により、指針に従って適切に交通安全教育を実施することが義務付けられている。警察では、これが適切に実施されるよう、必要な指導を行っている。

コラム1 児童・生徒向け「自転車免許証」モデル事業

 警察庁では、17年度及び18年度の2箇年にわたり、児童・生徒を対象として自転車教室等を開催し、受講した児童・生徒に対して、自転車のルールと正しい乗り方を学習したことを証する「自転車免許証」を交付するモデル事業を実施している。
 このような「自転車免許証」の交付により、自転車教室等への児童・生徒の参加が促進されるとともに、「自転車免許証」を携帯させることによる継続的な教育効果も期待される。警察庁では、この事業の効果を分析し、「自転車免許証」の交付による交通安全教育の効果的な実施方法等について検討を進めることとしている。

(2)交通安全活動
〔1〕 全国交通安全運動
 毎年春と秋に実施している全国交通安全運動の目的は、広く国民に交通安全思想の普及と浸透を図るとともに、交通ルールの遵守と正しい交通マナーの実践を習慣付けることにより、交通事故防止の徹底を図ることである。期間中は、国、地方公共団体及び交通安全協会等の民間団体が協力して幅広い国民運動を展開しており、各地域の実態に即した住民参加型の諸活動を活発に行うことによって交通安全意識の高揚を図るよう努めている。
 
 交通安全パレード
写真 交通安全パレード

〔2〕 地方自治体、民間団体等と連携した交通安全活動の推進
 交通安全教育や交通安全に関する広報啓発活動は、警察と地方公共団体や民間団体が連携して行うことが重要である。警察では、交通安全キャンペーン等の各種広報啓発活動に協力するなど、地方自治体、民間団体等による交通安全活動が、より効果的なものとなるよう連携を図っている。
 
 反射材キャンペーン
写真 反射材キャンペーン

〔3〕 地域ボランティア等の自主的な交通安全活動の促進
 警察では、地域交通安全活動推進委員や交通指導員等の地域ボランティア等による交通安全教育、広報啓発活動、街頭における交通安全指導等の効果的な活動が行われるよう、このような指導者を対象とする研修会の開催、交通事故実態に関する情報の提供等の必要な支援を行っている。
 
 民間指導者研修会
写真 民間指導者研修会

(3)交通安全を目的とする諸団体の活動
〔1〕 都道府県交通安全協会(連合会)及び(財)全日本交通安全協会
 各都道府県の交通安全協会(連合会)は、道路交通法に基づき、都道府県交通安全活動推進センターとして指定されており、警察と協力し、交通安全に関する広報啓発活動や交通事故に関する相談業務を推進するなど、民間の交通安全活動の中心的な役割を担っている。
 (財)全日本交通安全協会は、道路交通法に基づき、全国交通安全活動推進センターとして指定されており、都道府県交通安全活動推進センターの業務に関する研修を行っているほか、交通安全に関する広報啓発活動等を推進している。毎年1月には、交通安全国民運動中央大会を開催し、交通安全のために顕著な功績のあった者等に対して、警察庁長官及び同協会会長の名で交通栄誉章を授与している。
 
 交通安全国民運動中央大会
写真 交通安全国民運動中央大会

〔2〕 自動車安全運転センター
 自動車安全運転センターは、道路の交通に起因する障害の防止及び運転免許を受けた者等の利便の増進に資するため、自動車安全運転センター法に基づき、安全運転研修業務(平成17年度の延べ受講人数は約6万4,000人)、累積点数通知業務(免許停止等の直前の点数に達した者にその旨書面で通知する業務。17年度は約138万件)、運転経歴証明業務(17年度は約459万件)、交通事故証明業務(17年度は約391万件)、調査研究業務等を行っている。
 
 自動車安全運転センター 安全運転中央研修所での研修
写真 自動車安全運転センター 安全運転中央研修所での研修

〔3〕 (財)交通事故総合分析センター
 (財)交通事故総合分析センターは、道路交通法に基づき、交通事故調査分析センターとして指定されており、警察や道路管理者から提供を受けた「人」、「車両」、「道路」に関する各種データを統合して多角的な分析を行うマクロ統計分析や、交通事故の現場に臨場して事故原因等について詳細な調査を行う事故例調査(ミクロ調査)を実施している。調査分析の結果は、広報誌や研究発表会等を通じて広く公開され、警察、道路管理者、自動車製造事業者等による交通安全対策に活用されている。

 3 交通安全教育と交通安全活動

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