第3章 組織犯罪対策 

2 暴力団犯罪の取締り

(1)検挙状況全般
 平成17年中の暴力団構成員及び準構成員の検挙人員は2万9,626人と、前年より301人増加した。罪種別にみると、覚せい剤取締法違反が最も多く、次いで、傷害、窃盗、恐喝の順となっており、過去10年間はほぼ同じ傾向にあるが、12年以降減少傾向にあった覚せい剤取締法違反の検挙人員が、17年において大幅に増加した。
 
 図3-2 暴力団構成員及び準構成員の主要罪種別検挙人員の推移(平成8~17年)
図3-2 暴力団構成員及び準構成員の主要罪種別検挙人員の推移(平成8~17年)
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(2)資金獲得犯罪の検挙状況
 暴力団の資金獲得犯罪の手口は多様化・不透明化している。近年は、暴力団構成員及び準構成員の総検挙人員のうち、恐喝、賭博等のいわゆる伝統的資金獲得犯罪による検挙人員の占める割合が低下する傾向にある一方で、企業活動を利用した犯罪、行政対象暴力事犯等のいわゆる伝統的資金獲得犯罪以外の犯罪による検挙人員の占める割合は増加傾向にある。
 警察では、多様化・不透明化する暴力団の資金獲得活動に関する情報を収集・分析し、違法行為の取締りや暴力団排除活動を推進することにより、暴力団の資金源の遮断に努めている。

〔1〕 伝統的資金獲得犯罪
 古くからある暴力団の資金獲得犯罪として、覚せい剤取締法違反、恐喝、賭博及び公営競技関係4法(注)違反(ノミ行為等)が挙げられる。近年暴力団構成員及び準構成員の全検挙人員のうち、これらの罪種の検挙人員が占める割合は、平成17年は覚せい剤取締法違反の検挙人員が前年より増加したことに伴い増加したが、全体としては低下傾向にあることがうかがえる。

注:競馬法、自転車競技法、小型自動車競走法及びモーターボート競走法を指す。


 
 カジノ賭博の摘発
写真 カジノ賭博の摘発

 
 表3-4 暴力団構成員及び準構成員に係る伝統的資金獲得犯罪の検挙人員の推移(平成13~17年)
表3-4 暴力団構成員及び準構成員に係る伝統的資金獲得犯罪の検挙人員の推移(平成13~17年)
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〔2〕 金融・不良債権関連事犯
 17年中の暴力団構成員及び準構成員に係る金融・不良債権関連事犯の検挙件数は51件と、前年より4件減少した。このうち、競売入札妨害事件、強制執行妨害事件等の債権回収過程におけるものが38件(74.5%)を占めており、これらの事犯が依然として暴力団の有力な資金源となっていることがうかがわれる。

〔3〕 企業活動を利用した資金獲得犯罪
 暴力団は、実質的にその経営に関与している暴力団関係企業を通じ、又は暴力団を利用する企業と結託するなどして、産業廃棄物処理業、金融業、建設業等の各種の事業活動に進出し、暴力団の威力を背景としつつも一般の経済取引を装い、様々な犯罪を引き起こしている。

事例1
 山口組傘下組織と関係を有する建設会社役員(67)ら2人は、自己の会社が実際より高い技術力を持つように偽ることで、より高い金額の公共工事を受注することができるようにするため、会社の経営実態を示す書類に実際には雇用していない技術者を雇用していたとの虚偽の内容を記載し、14年9月、静岡県に提出した。17年5月、建設業法違反(虚偽記載)で逮捕した(静岡)。

事例2
 山口組傘下組織組長(49)ら3人は、16年4月、家屋解体工事に伴う廃棄物を、解体業者から報酬を得て、他人が所有する土地に不法に投棄した。17年2月、廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反(不法投棄)で逮捕した(福岡)。

〔4〕 企業対象暴力事犯、行政対象暴力事犯
 17年中の暴力団構成員、準構成員、総会屋等及び社会運動等標ぼうゴロによる企業対象暴力及び行政対象暴力事犯の検挙件数は530件(前年比24件減)であった。
 警察では、企業や行政機関からの暴力団、総会屋等に関する相談に的確に対応するとともに、これらの事犯を常習的に行う組織や個人の取締りを推進している。

事例3
 山口組傘下組織幹部(55)ら3人は、15年11月から16年2月ころにかけて、地元対策費名目で金を脅し取ろうと、公共工事を受注した複数の建設会社に対し、「地元対策費はどうしてる。ほかの工事が止まっているのは知っているか。2,000万円支払わないなら、この先仕事はできないぞ」などと脅し、5,500万円を脅し取った。17年2月、恐喝罪で逮捕した(福岡)。

事例4
 政治活動標ぼうゴロ幹部(46)ら2人は、15年7月、一般廃棄物処理施設を建設するために必要な土地開発許可を得ようと、富加町職員2人に対し、「開発許可が出んが、どういうことや。わしは暴力団に知り合いがいますわ。交通事故に気を付けてくださいよ。家族があるでしょう」などと告げて脅迫した。17年5月、脅迫罪で逮捕した(岐阜)。

事例5
 政治活動標ぼうゴロ代表(62)ら3人は、17年4月、町が発注した下水道工事により、知人が経営するホテルの営業が妨害されたと因縁をつけて金を脅し取ろうと、国分寺町職員に対し、「客が減って売上げが落ちとんや。この話がつくまで工事止めんかい」などと言い掛かりをつけ工事を中止させ、さらに、後日、「おまえなんかやるん簡単やぞ。目をつぶしても5年したらすぐに出られるんじゃけん。もっと誠意を見せろ。大変なことになるぞ」などと告げるとともに、暴行を加えて金を脅し取ろうとした。17年7月、恐喝未遂罪等で逮捕した(香川)。


〔5〕 その他の資金獲得犯罪
 以上のほか、暴力団は、各種公的給付制度の悪用、振り込め詐欺・恐喝、強盗、窃盗等、時代の変化に応じて様々な資金獲得犯罪を行っている。その中には、暴力団構成員を中核としつつ、特定の犯罪を行うため、素行不良者等の暴力団構成員又は準構成員以外の者をも組み入れた犯罪集団を構成することがある。こういった集団は、情報の収集や犯罪の実行行為までの一連の行為を、暴力団の威力による統制の下、徹底した役割分担により行っている。

事例6
 住吉会傘下組織組員(30)ら2人は、組織的に振り込め詐欺・恐喝を繰り返していた別の住吉会傘下組織組員らのグループに対し、預貯金口座を販売するため、16年3月、転売目的で預貯金口座を開設し、銀行から預貯金通帳をだまし取った。17年3月、詐欺罪で逮捕した(警視庁、大分、山口)。

事例7
 山口組傘下組織幹部(46)ら4人は、15年4月、路上生活者の住所や氏名、生年月日等の情報を不正に入手し、これを用いて同人の印鑑証明、納税証明書等を用意した上で、不動産を購入するためのローンを申し込み、銀行から合計約4,000万円をだまし取った。17年9月、詐欺罪等で逮捕した(警視庁)。

事例8
 極東会傘下組織組長(64)ら3人は、15年6月から16年12月にかけて、クレジットカード会社と契約を結んだ上、飲食店を装って売春のあっせんを行っていた者がクレジットカード会社と契約できないことにつけこんで、売春によって得られた不法な収益であることを知りながら、同人から売春に係る債権を額面より安く買い取り、クレジットカード会社から額面どおりの支払いを受けて、その差額分を収受した。17年7月、組織的犯罪処罰法違反(犯罪収益等収受)で逮捕した(警視庁)。

 
事例8


(3)対立抗争事件及び暴力団等によるとみられる銃器発砲事件
 平成17年中の対立抗争事件数は6事件(前年同数)、対立抗争に起因するとみられる不法行為の発生回数は18回(前年比13回減)であった。また、銃器使用率は61.1%と、70%を超えた従来に比べ、近年では比較的低い水準となっている。
 同年中に発生した対立抗争事件についてみると、そのほとんどが発生から24時間以内に終結している。このように対立抗争事件が短期間に終結する傾向は、次に挙げる取組みの効果とみられる。
・ 暴力団対策法の規定に基づく事務所使用制限命令の発出
・ 7年に発生した対立抗争に絡み警察官が誤って射殺された事件に関して、山口組組長の使用者責任を認め、遺族による損害賠償請求を認容した最高裁判所判決にみられるような、被害者等による民事的責任の追及
・ 指定暴力団の代表者等が対立抗争事件に伴う不法行為について無過失損害賠償責任を負うこととするための暴力団対策法の改正
 
 表3-5 対立抗争事件及び暴力団等によるとみられる銃器発砲事件の発生状況の推移(平成8~17年)
表3-5 対立抗争事件及び暴力団等によるとみられる銃器発砲事件の発生状況の推移(平成8~17年)
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(4)けん銃の押収
 平成17年中の暴力団構成員及び準構成員からのけん銃の押収丁数は243丁と、前年より66丁減少した。この10年間、押収丁数は減少傾向にある。
 
 表3-6 暴力団構成員及び準構成員からのけん銃押収丁数の推移(平成8~17年)
表3-6 暴力団構成員及び準構成員からのけん銃押収丁数の推移(平成8~17年)
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 第2節 暴力団対策

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