第2章 生活安全の確保と犯罪捜査活動 

6 カード犯罪

(1)カード犯罪の認知・検挙状況
 平成17年中のカード犯罪(注)の認知件数は7,333件(前年比407件(5.9%)増)、検挙件数は4,449件(前年比201件(4.7%)増)と、前年より増加したものの、検挙人員は1,046人(前年比48人(4.4%)減)と、前年より減少した。

注:クレジットカード、キャッシュカード、プリペイドカード及び消費者金融カードを悪用した犯罪


 
 図2-19 カード犯罪の認知・検挙状況の推移(平成8~17年)
図2-19 カード犯罪の認知・検挙状況の推移(平成8~17年)
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(2)カード犯罪の傾向
 カード犯罪の検挙状況をみると、窃取・拾得したキャッシュカードを用いてATM等から預貯金を不正に引き出す窃盗事件及び窃取・拾得又は偽造したクレジットカードを用いて商品を不正に購入する詐欺事件が多数を占めている。

〔1〕 キャッシュカードを利用した窃盗事案の特徴
 真正な又は偽造したキャッシュカードを用いて、ATM等から預貯金を不正に引き出す際には、暗証番号を入力する必要があるが、これを推知する手口としては、運転免許証に記載された生年月日等から推知するもの、金融機関の従業員や警察官を装って聞き出すもの、運動施設の貴重品ボックスに利用者が荷物を預けた際に使用した番号から推知するもの等がみられた。

〔2〕 クレジットカードを利用した詐欺事案の特徴
 詐欺に利用されたクレジットカードをみると、窃取・拾得したもののほか、偽造されたものも多く用いられている。
 クレジットカードを偽造するために必要な材料やデータの入手から、偽造したクレジットカードを用いて詐欺を行うまでの一連の犯行は、組織的に役割分担されて行われることが多い。また、中国人やマレーシア人により組織された国際犯罪組織が関与している例もあり、これらの組織では、店員に怪しまれないよう偽造クレジットカードを利用した商品の購入役に日本人を使う場合がある。
 偽造カード作成用のプラスチック板(いわゆる生カード)は、大半は外国で製造され、国際郵便等を利用して日本に持ち込まれる場合が多い。また、いわゆる生カードに記録するデータは、風俗店等で客の所有するカードをひそかにスキミング(注)して入手する方法がある。

注:真正なカードのデータをスキマー(磁気情報読取装置)を用いて読み取る行為


 
 犯行に使用された道具
写真 犯行に使用された道具

(3)カード犯罪対策
 窃取・拾得され又は偽造されたキャッシュカードを用いてATMから預貯金を引き出す窃盗事件が続発したことを踏まえ、警察庁を始めとする関係省庁と金融機関団体とが連携し、カード犯罪の未然防止等を図るため、平成17年12月、金融機関防犯連絡協議会を設置し、金融機関の防犯対策等に関する情報交換を行っている。
 また、ATMに取り付けた隠しカメラを利用して把握した暗証番号を入力して預貯金を不正に引き出す窃盗事件が発生したことなどを踏まえ、警察庁では、同月、カード犯罪に対する被害防止対策等を新たに金融機関の防犯基準に盛り込むとともに、関係省庁や金融機関団体に対し、その防犯基準に沿った防犯対策を推進するよう要請している。
 このほか、警察庁では、クレジットカード発行会社により構成される全国クレジットカード犯罪対策連絡協議会と、カード犯罪の発生状況や手口に関する情報を交換するとともに、クレジットカード加盟店等に捜査や不正使用対策への協力を呼び掛けている。

コラム1 偽造カード等及び盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等からの預貯金者の保護等に関する法律の制定

 近年の偽造カード等又は盗難カード等を用いて行われるATMからの不正な預貯金の払戻し等による被害の発生を受け、これらの不正な預貯金の払戻し等から預貯金者の保護を図り、預貯金に対する信頼を確保するため、平成17年8月、不正な機械式預貯金払戻し等の額に相当する金額の補てん、不正な払戻しの防止のための措置等について定めた偽造カード等及び盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等からの預貯金の保護等に関する法律が、平成17年8月、第162回国会において成立し、18年2月から施行された。

 第1節 最近の犯罪情勢とその対策

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