第1章 安全・安心なインターネット社会を目指して

(3)公共の安全を害するサイバーテロ等に対する取組みの強化

〔1〕 サイバーテロ対策の強化
 サイバーテロ対策を推進するためには、警察だけでなく、サイバーテロの対象となり得る重要インフラ事業者等においても、サイバーテロ対策を講ずることが重要である。

ア 対処態勢等の強化
 サイバーテロを未然に防止し、また、その被害を最小限に食い止めるためには、平素から、警察だけでなく官民が連携して事案対処の能力を向上させる必要があることから、今後は、重要インフラ事業者等に対して訓練への参加を促し、実際にサイバーテロが発生した際の対処態勢を更に強化するための取組みを進める必要がある。

コラム7 米国における業種横断的なサイバー攻撃対処訓練

 2006年(平成18年)2月、米国では、国土安全保障省(DHS)が主催し、連邦捜査局(FBI)等の法執行機関を含む公的機関や民間事業者等、115の組織が参加して、重要インフラに対してサイバー攻撃が行われたとの想定の下、官民の相互連携、情報共有の手法、システムの復旧手順等についての訓練を行った。

イ 官民連携体制の更なる強化
 サイバーテロが発生した場合、サイバーテロの対象となった基幹システムと同様の基幹システムを保有する他の重要インフラ事業者等においても同様の被害が発生する可能性があるため、警察と重要インフラ事業者等の連携のほか、重要インフラ事業者等相互の連携を更に深めることが重要である。そこで警察では、重要インフラ事業者等への個別訪問、サイバーテロ対策セミナー及びサイバーテロ対策協議会について、その内容を質量ともに充実させるよう努めることとしている。

〔2〕 サイバー攻撃等の予兆把握機能及び事案発生時の緊急対処能力の強化
 情報通信技術の発展は日進月歩であり、サイバー攻撃の手口等も高度化・複雑化してきている。特に、近年、ボットネットという新たな脅威も発生しており、これを利用したサイバー攻撃の発生も懸念されている。それらを的確に検知・分析することにより、サイバーテロの予兆を早期に把握するとともに、事案発生時には、被害拡大防止のため、迅速な緊急対処を行う必要がある。

ア 体制の充実強化
 警察では、サイバーテロの予兆把握のため、インターネット上で発生する事象の観測・分析を行っているところであるが、サイバーテロの手段となり得る新たなサイバー攻撃等を迅速に把握するため、それらに対応できるように継続的な観測機能の更なる高度化や分析体制の強化を進めていくこととしている。

イ サイバーフォースの技術力の向上
 新たなサイバー攻撃の手口が次々と登場している中、事案の未然防止のための技術的助言や事案発生時の緊急対処等を的確に実施するため、サイバーフォース要員に対して、今後も外国の法執行機関での実地訓練等を継続的に実施するほか、最先端の技術を持つ大学、民間企業等と連携した技術の研究開発等を推進することとしている。

〔3〕 国際テロ組織等のインターネット利用に対する今後の取組み
 国際テロ組織等によるインターネットの利用は、インターネットの普及や情報通信技術の進展に伴い、今後一層拡大するものと考えられることから、引き続き、国際テロ組織等のインターネット利用に関する情報収集を行っていくこととしている。また、2006年(18年)6月、G8司法内務閣僚会合において、国際テロ組織等によるインターネット利用の脅威が認識され、インターネットを通じたテロ活動への支援、新たなテロリスト等の勧誘等への対策について検討することが合意されたことから、我が国としても積極的に参画していくこととしている。

 第3節 今後の課題

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