第6章 公安の維持と災害対策 

5 不法入国・不法滞在者対策

(1) 不法残留者、不法入国者、不法上陸者等の状況
 厳しい雇用情勢にもかかわらず、就労を目的として来日する外国人は多く、不法に就労する者も少なくない。その大半は不法滞在者であるとみられるが、不法就労よりも効率的に金銭を得る手段として犯罪に手を染める者も多く、大量の不法滞在者の存在は来日外国人犯罪の温床となっていることが指摘されている。我が国は、平成16年からの5年間で不法滞在者を半減させることを政府目標としており、これを達成するため、警察では、入国管理局との合同摘発等により、悪質事案の取締りを強化している。
 法務省の推計による17年1月1日現在の不法残留者数は20万7,299人(前年比1万2,119人減)で、5年の調査時をピークに毎年減少している。16年中に警察が検挙した不法入国者及び不法上陸者の数は3,801人(前年比1,133人増)であった。これを、国籍・地域別にみると、多いのは中国(2,141人)、フィリピン(348人)、ミャンマー(220人)の順となっている。また、正規に入国し、在留期間が経過した後も引き続き我が国に残留する行為を処罰する不法残留罪の適用により、6,454人を検挙した。

 
(2) 不法滞在を助長する文書偽造事犯
 平成16年中に入国管理局が不法入国により退去強制手続をとった不法入国者数は1万1,217人(前年比1,966人増)であった。中でも、偽造旅券等を行使した事犯の増加が顕著で、10年中の警察による検挙者数は265人であったが、16年中は1,720人(前年比591人増)にまで増加した。このうち、中国人が767人と44.6%を占めている。また、日本人の配偶者であるとして在留資格を不正に取得する偽装結婚事案や、我が国の事業者と雇用契約を結んだと偽装して在留資格の更新許可申請等に必要な書類を偽造する事案が多発している。
 警察では、今後とも、入国管理局等の関係機関と連携して、大量に滞留する不法滞在者を大幅に減少させるため、このような事犯の取締りを強力に推進することとしている。

事例
 16年5月、岐阜県岐阜市所在の外国人登録証明書等の偽造工場を摘発し、パソコン等の機材を押収するとともに、証拠資料を分析して、同年7月29日、東京都内の別の偽造アジト及び偽造工場を摘発し、中国人24人を検挙した(愛知)。

 
偽造工場からの押収品
偽造工場からの押収品

 
(3) 集団密航事件
 近年、集団密航事件は大きく減少しており、警察及び海上保安庁の検挙件数、検挙人員は、ピークであった平成9年には73件、1,360人であったものが、16年には16件、44人となった。
 船舶による事案では、主流であった仕立て船により多人数を運搬する手法が影を潜め、ここ数年は、より発見されにくい少人数での船倉への潜伏やコンテナ密航によるものが多い。一方、航空機による事案は依然活発で、旅券の偽変造技術の発達に伴い、密航の形態が、不衛生で日数のかかる船舶によるものから、安全で快適な航空機によるものに移行しつつある。
 警察では、こうした事案を根絶するために、関係省庁と連携して、外国捜査機関との情報交換を積極的に行い、共同摘発や捜査協力を更に推進することとしている。また、中国当局に対して、対策を強化するよう申し入れている。

 
(4) 雇用関係事犯
 不法就労目的の不法入国・不法残留事犯の多くには、雇用主や就労あっせんブローカーがかかわっており、暴力団が関与するものも多くみられる。警察では、悪質な雇用主を取り締まるとともに、ブローカーに対する捜査や国際協力を強化することなどにより、不法就労外国人の供給の遮断を図っている。
 平成16年中に検挙したブローカーは31人であった。また、外国人労働者に係る雇用関係事犯の検挙件数のうち、飲食店等で外国人女性をホステスや売春婦等として従事させていた事犯の割合は51.2%であった。検挙された事務所等で雇用されていた外国人は1,608人で、女性が56.5%を占め、国籍・地域別では中国人が553人と最も多かった。

 
表6-6 国籍・地域別の不法残留者数の推移(平成13~17年、各1月1日現在)

表6-6 国籍・地域別の不法残留者数の推移(平成13~17年、各1月1日現在)
Excel形式のファイルはこちら


 
図6-5 集団密航事件検挙状況の推移(平成12~16年)

図6-5 集団密航事件検挙状況の推移(平成12~16年)
Excel形式のファイルはこちら


 5 不法入国・不法滞在者対策

テキスト形式のファイルはこちら

前の項目に戻る     次の項目に進む