第4章 犯罪情勢と捜査活動 

(4) 組織窃盗事件

 近年、来日外国人犯罪グループが広い地域にまたがり侵入盗を行ったり、暴力団員が海外への不正輸出を目的として自動車盗を行ったりするなど、組織的に敢行される窃盗事件が多発している。

事例1
住吉会傘下の暴力団組長の元妻(47)らは、平成11年3月以降14年3月までの間、暴力団員や素行不良者を集めて窃盗グループを組織し、広域にわたり自動車盗を敢行していた上、窃取した自動車をパキスタン人等を介して、アラブ首長国連邦等へ不正に輸出したり、暴力団関係者に売却したりするなどしていた。15年2月までに16都道府県下にわたる自動車盗等603件(被疑者24人、被害総額約16億4,000万円相当)を解決した(警視庁)。

事例2
中国人の男(40)らは、11年6月以降14年6月までの間、上海市出身者を中心とした犯罪グループを組織し、窃盗を実行するグループが集合住宅を対象にピッキング用具を使用して空き巣ねらい等を敢行し、預貯金を引き下ろすグループが盗んだ預貯金通帳を使用して不正に現金を引き出す詐欺等を敢行していた。15年2月までに、11都道県下にわたる窃盗、詐欺等222件(被疑者38人、被害総額約2億9,000万円相当)を解決した(警視庁、福岡、大分、熊本)。

 9年10月、警察庁では、組織窃盗事件登録要領を制定し、都道府県警察が認定した組織窃盗事件のうち、特に重要な事件を警察庁登録組織窃盗事件として登録し、他の都道府県警察に情報提供を求めるなど、窃盗組織の壊滅を主眼とする捜査を強化している。制度発足以降15年末現在までの累計で、都道府県警察の認定事件数は377件、このうち警察庁登録事件数は64件である。これまでに被疑者1,981人を検挙し、2万9,623件(被害総額約520億5,000万円相当)を解決している。
 また、自動車盗対策として、関係省庁と民間団体から構成される「自動車盗難の防止に関する官民合同プロジェクトチーム」が作成した「自動車盗難等防止行動計画」(14年1月)に基づき、自動車ナンバー自動読取システムの整備等による自動車盗の取締りや、メーカーへの自動車盗の手口に関する情報の提供による防犯性能の高い自動車の普及、税関への盗難自動車等に関する情報の提供等による盗難自動車の不正輸出の防止等に努めている。

 1 厳しさを増す犯罪情勢

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