第2章 日本警察50年の軌跡と新たなる展開 

(2) 広域化する犯罪に対処するための制度改正

 自動車交通の発展は、犯罪の広域化ももたらした。警察は、広域捜査を強化するため、従来の犯罪手口制度(犯罪手口に関する資料を組織的に収集・管理・運用する制度)を抜本的に見直して犯罪手口資料取扱規則を制定するとともに(31年)、都道府県警察相互の協力関係の基本を定めた犯罪捜査共助規則を新たに制定した(32年)。その後、広域にわたる連続強盗殺人事件(西口事件、38、39年)の発生を契機に広域重要事件特別捜査要綱を制定し、警察庁が指定した広域重要事件は、国の調整の下に関係都道府県警察が捜査を行うという制度を導入した。
 また、38年の東京都入谷の幼児誘拐殺人事件(吉展ちゃん事件)や埼玉県狭山市の身の代金目的女子高校生誘拐殺人事件(狭山事件)では、犯人と接触し逮捕する機会がありながらこれを取り逃がし、被害者も殺害されたことから、警察に対して厳しい批判がなされた。このため、警察は、同年に刑事警察強化対策要綱を策定し、捜査員の教育の強化、捜査体制の整備等により刑事警察の充実強化を図ることとした。

 
吉展ちゃん事件の捜査班

吉展ちゃん事件の捜査班

 第2節 日本警察50年史

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