第6章 公安の維持 

(2)オウム真理教対策の推進

1)教団信者に対する追跡捜査の推進
 警察は,地下鉄サリン事件以降,教団のテロ事件等に対する捜査を強力に推進し,これまでに,松本を始めとする教団幹部及び信者合わせて500人以上を検挙した。このうち,指名手配されていた者は106人に上っているが,警察庁指定特別手配被疑者である平田信,高橋克也及び菊地直子の3人については,依然として逃走中である。警察は,これら3人の発見検挙を最優先の課題とし,広く国民の協力を得ながら,全国警察を挙げた捜査を推進している。

2)組織的違法行為に対する取締りの推進
 警察は,警察庁指定特別手配被疑者の発見検挙とともに,教団信者による組織的違法行為に対する厳正な取締りを推進している。その結果,平成14年は,16件の事件で信者20人を検挙した。
 これらの捜査を通じて,次のような教団の実態が明らかになった。
○ 栃木県塩原町に借り上げた賃貸別荘を公安調査庁長官に未報告の「隠しアジト」として,松本の映像が投射される大型スクリーンを設置し,松本の写真や説法を収録した大量のビデオテープ等を保管するとともに,瞑想室を4室設置するなど,松本を崇拝するための修行場所としていた(4月,警視庁)。
○ 拠点7施設に,松本の映像が映し出されるモニター等があり,松本のビデオテープ,著書等を多数常備若しくは保管し,また,一部の施設では松本の脳波を電流に換えて信者の脳に流す装置とされる「PSI」(通称ヘッドギア)を活用した修行を行っていた(7月,警視庁)。
○ マイライン代理店業務を行う会社や浄水器等を販売する事業所を設立し,その過程で信者が失業保険金不正受給の詐欺行為や特定商取引に関する法律違反(誇大広告)を行っていた(10月,滋賀,京都,11月,警視庁)。

 
隠しアジト(栃木)

隠しアジト(栃木)

 
アジト内(松本の映像)

アジト内(松本の映像)

3)団体規制法に基づく的確な措置
 教団の実態を解明し,無差別大量殺人行為の再発を未然に防止することは,政府全体として取り組むべき重要な課題であり,団体規制法に基づく観察処分は,教団対策の柱となっている。観察処分の期間更新に際しては,警察庁長官が,各県警察の事件捜査を通じて得られた証拠資料に基づき意見を陳述し,これを踏まえ公安調査庁長官が提出した更新請求書や証拠書類等を公安審査委員会が審査の上,更新の決定を行ったところである。警察としては,引き続き団体規制法に基づく的確な措置を講じていく。

4)教団施設周辺地域での動向と警察の対応
 教団施設が所在する地域では,教団の活動に対する不安が強く,教団の進出に反対する地域住民等が対策組織を結成し,教団に対する立ち退き要求運動や国に対する陳情活動等を行っている。また,関係する自治体も,住民の要望を踏まえ,種々の対応を行っている。
 警察は,教団施設周辺の住民や関係自治体による要望等を踏まえ,住民の平穏な生活を守り,公共の安全を確保するため,施設周辺における警察官詰所の設置やパトロール,検問等の警戒警備活動,相談への対応等,必要に応じ,各種の警察活動を実施している。

事例
 警視庁では,教団南烏山施設(東京都世田谷区)周辺に警察官詰所を設置し,24時間体制で警戒活動を実施している。

 
警戒警備の実施状況(東京)

警戒警備の実施状況(東京)

 

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