第6章 公安の維持 

極左暴力集団の動向と対策

(1)極左暴力集団の動向

1)JR総連との対立の収束を図った革マル派
 革マル派は,平成11年末以降13年8月まで,JR九州労組合員の大量脱退問題や元JR総連組合員の行方不明事案をめぐりJR総連と対立したが,14年は,JR総連に対する批判等は行わず,対立はみられなかった。
 JR総連は,12年11月以降行方不明になっていた元JR総連組合員に関し,14年4月15日,同組合員が4月13日に自宅に戻ったことを明らかにする「見解」を報道機関に送付した。このなかで,JR総連は,元組合員の帰宅を「私たちの連続した闘いが革マル派を追いつめてきた結果」とする一方,革マル派に対して「彼らが労働運動に対して犯した過ちは,」同組合員「が戻ったと言えども許されるものではない」などと批判したが,これに対する革マル派の反応はなかった。また,JR総連は,本件事案に係る警察の捜査を「一方的な「捜査協力」の強要と組織介入」等と批判し,「今後とも労働組合主義に徹し,いかなる政党党派の支配・介入を許さずまい進する決意」等とJR総連の立場を強調した。
 警察は,11月1日,革マル派活動家らがJR東労組組合員に対し,組合を脱退し,退職することを強要した事件で,革マル派活動家を含むJR東労組組合員等7人を強要罪で通常逮捕した。これに対してJR連合は,「この事件は革マル派の浸透という組織の暗部をさらけ出した事件」等とJR東労組を批判した。

 
中核派のデモ行進(5月,東京)

中核派のデモ行進(5月,東京)

2)有事法制問題等に取り組んだ中核派
 中核派は,14年の闘争課題の最重点に有事法制問題を掲げ,同派が主導する「百万人署名運動」等の団体を前面に押し立てて,超党派主催の大規模集会への参加や労組,大衆団体と共闘した集会,デモに取り組んだ。
 労働運動では,国労問題に積極的に取り組み,「闘う国労闘争団」(注1)に対する激励行動を活発化させた。


(注1)正式名称は「解雇撤回・地元JR復帰を闘う国労闘争団」。平成2年に解雇された国労組合員の一部が,「解雇撤回,地元JR復帰」を要求して結成した組織で,中核派が積極的に支援している。

 中核派の組織内部では,長期投獄者や逃亡者に対する指導部の対応に不満を持つ元非公然活動家グループと指導部との対立が表面化した。こうしたなか,12月,埼玉県春日部市内において元政治局員が,また,東京都中野区内において元中核派活動家が,それぞれ中核派活動家とみられる数人の者により襲撃され重傷を負う事件が発生した。

3)組織の建て直しを図るなかで活動家の組織逃亡や除名問題が発生した革労協
 革労協は,11年5月に主流派,反主流派に分裂して以降,双方が内ゲバ事件を引き起こすなど対立状態にあったが,14年中,内ゲバを中断し,大衆運動に取り組み,組織の建て直しを図った。
 主流派は,最高幹部が病死(13年12月)して以降,集団指導体制を確立し,組織内の結束を図った。
 また,反主流派は,ブッシュ米国大統領の来日(14年2月17日)に合わせ,「2.11米海軍小柴貯油施設に向けた飛翔弾発射事件」(注2)等,注目度の高い「テロ,ゲリラ」事件を引き起こした。

 
米軍座間基地に向けた飛翔弾発射事件(11月,神奈川)

米軍座間基地に向けた飛翔弾発射事件(11月,神奈川)


(注2)14年2月11日(月)深夜,神奈川県で高校グラウンド内に仕掛けられた時限式の発射装置から,米海軍施設に向けて鉄球状の弾が発射された。

4)成田暫定平行滑走路供用開始で反発を強めた極左暴力集団等
 成田空港2本目の滑走路となる暫定平行滑走路は,14年4月,供用を開始した。
 7月に就任した新東京国際空港公団総裁は,就任時の記者会見で「(暫定平行滑走路の)北側延伸も選択肢」等と述べ,当初計画の平行滑走路の建設に積極的な姿勢をみせた。また,国土交通省は,15年度予算の概算要求に平行滑走路の整備費を盛り込んだ。
 これに対して,三里塚芝山連合空港反対同盟北原グループや極左暴力集団は,「暫定滑走路粉砕-延長阻止」を訴え,集会,デモに取り組んだ。こうしたなか14年中,中核派が「1.9千葉県総務部幹部宅放火事件」(注3)等4件,革労協反主流派が「4.12京成本線電車放火事件」(注4)1件の「テロ,ゲリラ」事件をそれぞれ引き起こした。

 
千葉県総務部幹部宅放火事件(1月,千葉)

千葉県総務部幹部宅放火事件(1月,千葉)

 
千葉県土木部職員宅放火事件(4月,千葉)

千葉県土木部職員宅放火事件(4月,千葉)


(注3)14年1月9日(水)未明,千葉県で千葉県幹部職員宅車庫内に時限式の発火装置が仕掛けられ,乗用車,車庫及び倉庫が全焼した。
(注4)14年4月12日(金)早朝,千葉県で京成電鉄の電車内に時限式の発火装置が仕掛けられ,連結部の蛇腹幌が焼け焦げた。

5)イラクに対する武力行使に対し,反戦闘争として取り組んだ極左暴力集団
 極左暴力集団は,米国等によるイラクに対する武力行使に関して「米英帝国主義のイラク人民皆殺し戦争を弾劾する」などと主張し,米国大使館,同領事館,米軍基地への抗議行動や,集会,デモ,ビラ配布に取り組む一方,市民団体主催の集会,デモ等にも積極的に参加した。その過程で,15年3月20日,米国大使館付近で極左活動家を含む4人を公務執行妨害罪で逮捕するなど,計7人を逮捕した。
 また,革労協反主流派は,「4.3米軍厚木基地に向けた飛翔弾発射事件」(注5)等,武力行使の前段を含めて5件の「テロ,ゲリラ」事件を引き起こした。


(注5)15年4月3日(木)夜間,神奈川県で雑木林に仕掛けられた時限式の発射装置から,米軍基地に向けて鉄球状の弾が発射された。

 

テキスト形式のファイルはこちら

前の項目に戻る     次の項目に進む