第6章 公安の維持 

(3)大量破壊兵器関連物資等の不正輸出

1)大量破壊兵器拡散の懸念
 2002年(平成14年)12月,イエメン沖において,米軍等の臨検により,北朝鮮から出航した船舶がスカッドミサイルを積載しているのが発見され,北朝鮮が依然として他国と大量破壊兵器関連物資等の取引を行っていることが明らかとなった。
 2003年(15年)1月,ブッシュ大統領は,一般教書演説で「テロとの戦いにおける最も深刻な危険は,核兵器,化学兵器,生物兵器を追い求め,保有する無法国家である」と述べ,イラン,イラク及び北朝鮮の大量破壊兵器等の使用,テロリストへの譲渡の可能性を指摘した。

2)不正輸出防止対策
 大量破壊兵器に転用され得る貨物等の輸出及び輸入の管理の徹底を図ることは,我が国のみならず,各国の安全保障上も極めて重要である。
 14年4月1日,輸出貿易管理令等の改正により,原則として,すべての貨物が規制の対象となる日本版「キャッチオール規制」が導入され,不正輸出対策が強化された。
 同年6月,カナナスキス・サミットにおけるG8外相会合で,大量破壊兵器等の拡散等の問題については,多国間の枠組みや輸出管理の強化等を行う必要があることが指摘された。

 警察は今後も関係各機関と緊密に連携を図り,大量破壊兵器関連物資等の不正輸出の取締りを一層強化することとしている。

事例1
 15年5月,核兵器等の開発に用いられるおそれがあるものとして,輸出許可の申請をすべき直流安定化電源を経済産業大臣の許可なく輸出したとして,東京都内の商社を摘発した(警視庁)。

事例2
 15年6月,ミサイル関連機材として輸出規制されたジェットミル(超微粉砕機)をイランへ向け不正輸出したとして,東京都の粉粒機器メーカーの社長らを逮捕した(警視庁)。
コラム1 情報収集活動の多様化
 各国の情報機関は,冷戦時は,敵対国に対して政治的,軍事的な情報の収集を行うのが一般的であったが,冷戦の終結により政治的に大きな対立軸がなくなり,近年は経済情報の収集にも一層力を入れている。こうした動きに対応するため,米国は1996年(8年),経済スパイ取締法を制定し,企業等に対する情報収集活動の取締りを強化している。
 また,情報収集の手段についても,現代の情報化社会においては,ヒューミット(Humint;Human Source Intelligence)と呼ばれる伝統的な「人」から入手する情報だけでなく,電波情報(Sigint;Signals Intelligence),画像情報(Imint;Imagery Intelligence)等も重要となってきている。

 

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