第4章 暴力団総合対策の推進 

(4)資金獲得犯罪の検挙状況

1)伝統的資金獲得犯罪
 古くからある暴力団の資金獲得犯罪として,覚せい剤取締法違反,恐喝,賭博及び公営競技関係4法違反(ノミ行為等)が挙げられる(表4-3)。平成14年中における暴力団構成員及び準構成員の全検挙人員のうち,これらの罪種に係る検挙人員が37.0%を占めている。

 
表4-3 伝統的資金獲得犯罪に係る暴力団構成員及び準構成員の検挙人員の推移(平成10~14年)

表4-3 伝統的資金獲得犯罪に係る暴力団構成員及び準構成員の検挙人員の推移(平成10~14年)
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事例
 山口組傘下組織組員(22)らは,13年11月,香川県内の会社事務所において,賭客を集め,俗に「サイ本引」と称される賭博を行い,勝者から寺銭名下に金銭を徴収して利益を図った。14年4月,賭博開張図利等で21人を検挙した(香川)。

2)金融・不良債権関連事犯
 暴力団等に係る金融・不良債権関連事犯の検挙状況をみると,競売入札妨害事件,強制執行妨害事件等の債権回収過程におけるものが,63件(84.0%)を占めている(表4-4)。

 
表4-4 暴力団等に係る金融・不良債権関連事犯検挙件数の推移(平成10~14年)

表4-4 暴力団等に係る金融・不良債権関連事犯検挙件数の推移(平成10~14年)
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事例
 山口組傘下組織に関係する不動産業者(42)らは,奈良県内の建設会社に対する債権の担保として同社の土地に所有権移転請求権を仮登記していたが,これに優先する根抵当権を設定していた者が競売を申し立てることが予想されたため,12年9月から13年5月までの間,この土地に建築廃材等約670トンを投棄し,容易に原状回復できないようにして,現況調査を担当した執行官に現況調査報告書へその旨を記載させるなど,威力を用いて公の入札の公正を害した。14年2月,競売入札妨害で2人を検挙した(奈良)。

3)企業活動を利用した資金獲得犯罪
 暴力団は,自らが経営に関与する企業等を通じ,又は企業と結託して,いわゆる表の経済社会へ進出し,一般の経済取引を装うなどして様々な犯罪を引き起こし,資金を獲得している。
 14年中にも,公共工事に絡む入札妨害事件,建設業法違反事件等の検挙がみられた。

事例
 浅野組傘下組織関係企業役員(60)らは,広島県福山市発注の公募型指名競争入札において,自分たちの関係する業者に落札させようとして,14年5月,他の業者を呼び出し,「この度の入札は降りてくれ。下請は確約する。賛同できん者は協会を降りてもらう」などと申し向け,偽計及び威力を用いて公の入札の公正を害した。10月,同役員ら3人を恐喝未遂で検挙した(広島)。

4)企業対象暴力事犯
 暴力団,総会屋等及び社会運動等標ぼうゴロが,企業に対して,違法な行為を行うことにより,不正な利益を得ている状況がうかがわれる(表4-5)。また,総会屋の検挙件数,検挙人員は10件,15人と13年に比べ増加しており,依然として一部企業と総会屋との関係が続いている状況がうかがわれる。
 警察では,企業からの暴力団,総会屋等に係る各種相談に対応するとともに,企業対象暴力を常習とする総会屋等及び社会運動等標ぼうゴロ等の取締りを推進している。

 
表4-5 暴力団,総会屋及び社会運動標ぼうゴロ等に係る企業対象暴力の検挙件数(平成12~14年)

表4-5 暴力団,総会屋及び社会運動標ぼうゴロ等に係る企業対象暴力の検挙件数(平成12~14年)
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事例
 総会屋(60)は,大手信販会社の株主総会において,円滑な議事の進行に協力する謝礼として,同社役員らから,11年11月ころから14年9月ころまでの間,前後数十回にわたり,現金2,800万円の利益の供与を受けた。11月,商法違反(利益受供与)で検挙した(警視庁)。

5)国際的な活動に係る犯罪
 暴力団は,資金獲得を図るため,国際犯罪組織等と連携して,高級自動車を対象とした窃盗・密輸出事件や外国人女性の不法入国又は長期滞在を目的とした偽装結婚事件等の様々な犯罪を敢行している(第1章第1節5参照)。

事例
 合田一家傘下組織幹部(36),山口組傘下組織幹部(40)らは,中国人に本邦の長期在留資格を得させるため,日本人と偽装結婚させることを企て,市役所等において,虚偽の婚姻届を提出するなどして,戸籍簿にその旨不実の記載をさせるとともに,これを同所に備え付けさせて行使した。12月末までに,公正証書原本不実記載,同行使等で50人を検挙した(山口,愛媛)。

 

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