(2)街頭犯罪等の手段となり得る行為等の取締りの推進
犯罪の発生を抑止するためには,街頭犯罪や侵入犯罪そのものの検挙のみならず,それ以前の段階で,街頭犯罪等の手段となり得る行為や街頭犯罪等に発展するおそれのある行為を検挙するとともに,街頭において公然と行われている違法行為について,適切な指導取締りを行うことが重要である。警察は,このような違法行為を放置することが,ひいては犯罪の増加にもつながるとの観点から,小さな違法行為であっても看過することなく,事案の内容に応じ,適切な指導取締りを推進している。
1)街頭犯罪等の手段となり得る行為の取締り
警察では,軽犯罪法の凶器携帯や侵入具携帯,銃砲刀剣類所持等取締法(以下「銃刀法」という。)の刃物携帯,いわゆる迷惑防止条例違反のような,街頭犯罪等の手段等となり得る行為の検挙活動を強化している(表2-1)。
表2-1 軽犯罪法違反(6罪種)の送致件数,送致人員の推移(平成10~14年)
2)街頭において公然と行われている違法行為の指導取締り
違法営業の看板掲出やいわゆるピンクビラの貼付・配布のように,街頭において公然と行われている違法行為に対しては,犯罪を犯しにくい環境づくりの観点からも,事案の内容に応じた適切な指導取締りが求められている。警察は,関係機関・団体やボランティアが行ういわゆるピンクビラや放置自転車の撤去,落書きの消去等の活動と連携して,これらの違法行為に係る指導取締りの効果的な推進を図っている。
事例
北海道札幌方面中央警察署では,道下最大の歓楽街である薄野地区を中心として,平成13年4月から,駐車違反の取締りやピンクビラの撤去等の環境浄化活動を強化し,犯罪発生の抑止を図っている。この対策は,軽微な違法行為についても積極的な指導取締りを行うことにより治安の維持を図るべきであるとする「破れ窓理論」(注)に基づくものであり,札幌市のほか,商工会,飲食店関係者や民間のボランティアと連携して,この理論の実践に取り組んでいる。
この結果,違法駐車が対策の開始前から3分の1以下に減少したほか,同署管内の窃盗犯の認知件数が12年からの2年間で約15%減少し,また,薄野交番におけるぼったくりの被害相談受理件数が242件(12年)から31件(14年)に激減するなどの成果を収めている。
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(注)「破れ窓理論(Broken Windows Theory)」は,地域住民の安心感と警察への親近感を醸成することを目的として警察官の徒歩によるパトロールを実施した米国ニュージャージー州の取組みをきっかけとして,1982(昭和57)年に米国で提唱された理論である。この理論は,従来では軽微な犯罪とされていた行為(公共空間での落書き,酔っ払い,物乞い等)であっても,それがコミュニティの利益を大きく侵害するものであるならば,警察や地域共同体は真剣に考え,対策を講じなければならないとするものである。例えば,窓ガラスの損壊は,軽微な事犯であり,初犯であることも多いため,厳しい処罰がなされることはあまりないが,壊れた窓が放置されていれば,そのビルには管理が行き届いていないことが明らかになる。他人の管理下にない財産はいたずらや犯罪の格好のえじきになり,瞬く間にビル全体,さらに地域全体が崩壊していく。「破れ窓」とは崩壊するコミュニティの比喩であり,破れ窓理論は,こうした悪循環に陥る前に警察と共同体が適切な対策を講じるべきだと主張するものである。