ウ 捜査手法の充実
組織的な犯罪に効果的に対処するためには,犯罪収益のはく奪による資金面からの対策を推進するとともに,新たな捜査手法を有効に活用することが必要である。
警察では,薬物犯罪組織に対して,薬物犯罪収益のはく奪による資金面からの打撃を与えるため,4年7月に施行された麻薬特例法による薬物犯罪収益等の隠匿,収受及び仮装(マネー・ローンダリング)の事件化,薬物犯罪収益等の没収,追徴及び保全の徹底等の薬物犯罪収益対策を強力に推進している(
表1-12,表1-15)。また,薬物犯罪組織の壊滅を図るため,コントロールド・デリバリー等の効果的な捜査手法を積極的に活用している(表1-16)。
表1-15 麻薬特例法の適用件数の推移(平成4年7月施行~14年)
表1-16 コントロールド・デリバリーの実施件数の推移(平成10~14年)
また,12年2月に施行された組織的犯罪処罰法により,14年中に加重規定(第3条第1項等)を13件適用するとともに,犯罪収益等隠匿(第10条第1項)を19件,犯罪収益等収受(第11条)を9件検挙している。また,警察の請求により起訴前における没収保全命令(第23条第1項)が5件発出されている(表1-17)。
表1-17 組織的犯罪処罰法の適用状況の推移(平成12~14年)
12年8月に施行された通信傍受法に基づき,14年中は,組織的な薬物密売事犯2事件に関して,合計4件の傍受を実施し,その結果,合計7人の密売人等を逮捕した。
一方,今後の銃器事犯捜査には,銃器そのものの押収という観点に加えて,銃器を不正流通させ,所持する犯罪組織そのものに打撃を与え,これを壊滅させていくという,組織犯罪対策的な観点が求められる。
そのために,警察としては,これまで実施してきたクリーン・コントロールド・デリバリー等の捜査手法に加え,高度な捜査技術の取得・実施,日常の訓練,関係機関との密接な連携,通信傍受法等の新たな法律に関する知識の習得,けん銃発見等のための装備資機材の開発整備等を一層行っていく必要がある。
事例1
暴力団幹部が,管理売春で得た現金を含む犯罪収益等であることを知りながら,売春クラブからいわゆる用心棒料として現金150万円を徴収したことに対し,組織的犯罪処罰法11条(犯罪収益等収受)を適用して検挙した(警視庁)。
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事例2
暴力団関係者が,犯罪目的であることを知らない知人に銀行口座を開設させ,野球賭博を開張して得た現金約5,700万円を前記知人名義の口座に振込入金させて,犯罪収益を取得した事実を仮装したことに対し,組織的犯罪処罰法第10条(犯罪収益等隠匿)を適用して検挙した(京都)。
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