第1章 組織犯罪との闘い 

ウ 証人保護

 ドイツ刑事訴訟法第68条第2項は,刑事裁判における証人尋問の際,証人が住居地の陳述をすることによって,証人又はその他の者が危険にさらされるという懸念について理由があるときは,証人に,住居地に代えて,証人の勤務先又は召喚が可能な住所を陳述することを許すことができることとしている。また,同条第1項は,職務上の地位に基づいて事実を知った証人は,住居地を述べさせないことを許すことができるとしている。
 これにより,組織犯罪の捜査に従事する潜入捜査員の保護が一定程度可能となっている。
 さらに,同条第3項は,証人の人定事項又は住居地若しくは居所を明らかにすることによって,証人又はその他の者の生命,身体又は自由が危険にさらされるという懸念について理由があるときは,人定事項を陳述しないか,又は以前の人定事項についてのみ陳述することが許されることとしている。ただし,この場合でも証人は,質問されれば,証言する事実をどのような資格において知ることとなったかについて,述べなければならないこととされている。
 これにより,警察に対して情報を提供する証人に対する保護が一定程度可能となっている。
 他方,我が国では,公判で証人が住居地,人定事項を述べないことは全く許容されない。

 

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