第1章 組織犯罪との闘い 

エ 共犯事件の増加~組織化の進展

 14年中の共犯事件比率(注)は,前年に比べ,5.6ポイント上昇した。特に,8年以降その高まりが顕著であり,組織化の進展がうかがわれる(図1-8)。


(注)共犯事件比率とは,刑法犯検挙件数のうち,共犯事件(2人以上の共犯者による事件をいう。)の占める割合をいう。

 
図1-8 来日外国人の共犯事件比率の推移(平成5~14年)

図1-8 来日外国人の共犯事件比率の推移(平成5~14年)
Excel形式のファイルはこちら


 共犯事件比率を日本人と来日外国人で比較すると,日本人では18.6%であるのに対し,来日外国人では61.5%と,日本人の3.3倍となっており,来日外国人による犯罪は組織的に行われる傾向が非常に強いことがうかがわれる(図1-9)。

 
図1-9 日本人と来日外国人の共犯事件の比率の比較(平成14年)

図1-9 日本人と来日外国人の共犯事件の比率の比較(平成14年)
Excel形式のファイルはこちら


 14年中の共犯事件比率を包括罪種等別にみると,窃盗犯,知能犯及び凶悪犯において来日外国人によるものが日本人によるものと比べて高く,なかでも,窃盗犯に占める割合は約7割となっており,犯行の際には役割分担を徹底するなど組織的・計画的に敢行している。また,凶悪犯のなかでは特に強盗における共犯事件比率が高く,窃盗犯の組織性の高さと相まって,侵入盗の犯人による居直り強盗事件へ発展等,犯罪の凶悪性がエスカレートすることも懸念される(表1-1)。

 
表1-1 罪種別共犯事件比率(平成14年)

表1-1 罪種別共犯事件比率(平成14年)
Excel形式のファイルはこちら


 次に,14年中の共犯事件を共犯者数別にみると,日本人では2人組が63.7%を占め,比較的少人数で犯行を行っているのに対し,来日外国人では2人組は24.4%にすぎず,3人組が34.5%,4人組以上が41.1%と多人数で犯罪を敢行する傾向が強い(図1-10)。

 
図1-10 共犯者数別に見る刑法犯検挙件数の状況(平成14年)

図1-10 共犯者数別に見る刑法犯検挙件数の状況(平成14年)
Excel形式のファイルはこちら


 特に,来日外国人による組織窃盗事件や組織的な強盗事件が目立っており,その被害が深刻化している。このことは,来日外国人が,検挙を逃れつつ,より効率的な利益を獲得することを目的としてグループ化し,例えば窃盗事件の場合には,こうした多数の者が,首領の指揮の下,組織的に,防犯カメラの位置や逃走経路の確認等の入念な下見を行った上で,窃取の際の実行役,見張役,逃走の際の運転役,盗品の運搬・処分役等の役割を細かく分担して,より素早く犯罪を実行し,かつ,素早く逃走しようとしている状況を示しているとみられる。

事例
 強盗未遂で逮捕した被疑者の供述に基づき,ブラジル人窃盗グループ約20人を解明し,14年5月までに,うち8人を逮捕した。被疑者らは,いずれも20歳代の日系ブラジル人の男で,随時4~5人でグループを形成し,13年2月ころから,愛知県を中心に7府県において約600件(被害総額4,000万円余)に上る車上ねらいやひったくり等を繰り返していた(愛知)。

 

テキスト形式のファイルはこちら

前の項目に戻る     次の項目に進む