第1節 公安委員会制度

公安委員会制度
(1)公安委員会の役割
 警察は、強い執行力を有しており、独善的な運営がなされたり、政治的に利用されることがあってはならない。
 公安委員会制度は、国民の良識を代表する者によって構成される合議制の機関が警察の管理を行うことで、警察の民主的運営と政治的中立性を確保することを目的として設けられている。
○ 国……内閣総理大臣の所轄の下に国家公安委員会が置かれ、国家公安委員会は警察庁を管理している。
○ 都道府県……都道府県知事の所轄の下に都道府県公安委員会が置かれ、都道府県公安委員会は都道府県警察を管理している。
 なお、国家公安委員会委員長に、国務大臣が充てられているのは、国家公安委員会による警察の政治的中立性の確保と、治安に対する内閣の行政責任の明確化という二つの要請の調和を図るためである(図10-1)。
(2)公安委員会の所掌事務
 国家公安委員会は、国の警察機関として、国の公安に係る警察運営をつかさどり、警察教養、警察装備等に関する事項を統轄し、警察職員の活動の基準の策定等警察行政に関する調整を行うことによって個人の権利と自由を保障し、公共の安全と秩序を維持することをその任務としている。
 このほか、国家公安委員会は、法令の規定に基づきその権限に属せられた事務をつかさどるものとされており、例えば、次のような事務を処理している。
・ 警察庁長官及び都道府県警察の幹部職員(警視総監、道府県警察本部長、方面本部長及びその他の警視正以上の階級にある警察官。以下「地方警務官」という。)の任免
・ 犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律に基づき、犯罪被害者等給付金を支給し、又は支給しない裁定についての審査請求に対する裁決等
・ 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(以下「暴力団対策法」という。)に基づき、暴力団が指定の要件に該当することの確認等
 都道府県公安委員会は、都道府県の警察機関として、都道府県の区域における警察事務のすべてについて、都道府県警察を管理する責任を負っている。また、国家公安委員会と同様に法令の規定に基づきその権限に属せられた事務をつかさどるものとされており、例えば、次のような事務を処理している。
・ 地方警務官の任免については、国家公安委員会に同意を与え、また、地方警務官以外の都道府県警察職員の任免については、意見を述べること
・ 犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律に基づき、犯罪被害者等給付金を支給し、又は支給しない旨の裁定等
・ 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に基づく風俗営業の許可等
・ 暴力団対策法に基づく暴力団の指定等
・ 道路交通法に基づく道路における交通規制等

公安委員会の活動状況
(1)国家公安委員会
 国家公安委員会は、国務大臣たる委員長及び5人の委員によって組織されており、委員は内閣総理大臣が両議院の同意を得て任命することとされている。
 国家公安委員会は、毎週木曜日に定例の会議を開催するほか、必要に応じて臨時会議を開催しており、平成13年中には、米国における同時多発テロ事件発生の際等に臨時会議を行った。会議においては、所掌事務に属する事項について、審議、決裁を行うほか、警察庁から重要な事件、事故及び災害の発生状況とこれらに対する警察の取組みや、治安情勢の中長期的傾向とそれを踏まえた警察の施策等様々な警察の業務について所要の報告を徴し、指示等を行っている。
 また、会議開催日以外にも、委員相互の意見交換会の実施、警察運営上の課題に関する検討等の業務に当たるとともに、警察活動の視察等を通じて、警察運営の把握に努めている。
 13年中には、苦情の申出の手続に関する規則、警察官けん銃警棒等使用および取扱い規範の一部を改正する規則など16件の国家公安委員会規則を制定したほか、暴力団対策法に基づく暴力団の指定に係る要件の該当性の確認など各種法令に基づく権限を行使した。
 また、警察行政に関する国民の声を今後の国家公安委員会運営に的確に反映させていくため、インターネット上のホームページ(http://www.npsc.go.jp)で活動状況等を紹介するとともに、電子メール等により国民の要望、意見を受け付けている。
 なお、警察改革においては、「公安委員会の管理機能の充実と活性化」が主な柱の一つであることを踏まえ、13年4月に強化された国家公安委員会補佐体制を活用し、警察庁からきめ細かな報告を受けるなどして、審議の充実に努めている。
 国家公安委員会の構成員は次のとおりである(14年7月末現在)。
 国家公安委員会委員長 村井 仁(国務大臣)
 委員 磯邊 和男(弁護士)
 委員 渡邊 幸治(日本経済団体連合会特別顧問)
 委員 荻野 直紀(読売新聞社調査研究本部客員研究員)
 委員 安崎 暁(株式会社小松製作所取締役会長)
 委員 川口 和子(上智大学外国語学部教授)
(2)都道府県公安委員会
 都道府県公安委員会は、都道府及び指定県(政令指定市を包括する県)については5人、それ以外の県及び北海道の各方面については3人の非常勤の委員によって組織されており、委員は都道府県知事が都道府県議会の同意等を得て任命することとされている。
 都道府県公安委員会は、月3~4回程度の定例会議を開催し、所掌事務に属する事項について、審議、決裁を行うほか、重要な事件、事故及び災害の発生状況とこれらに対する警察の取組みや、治安情勢の中長期的傾向とそれを踏まえた警察の施策等様々な警察の業務について所要の報告を徴し、指示等を行っている。
 また、定例の会議以外にも、必要に応じて臨時に委員会を開催したほか、公安委員会補佐室等を活用し、警察活動の視察や国民の要望を聴く活動を通じて、警察に対する管理機能の充実と活性化に努めているところである。
[事例1]平成13年中、長野県公安委員会は、3警察署において、第一線警察職員と警察活動に関する意見交換を行った。
[事例2]埼玉県公安委員会は、14年に開催されるワールドカップサッカー大会に向けて、会場や警備訓練の視察を行った。
[事例3]13年6月、香川県公安委員会は、警察署協議会委員を委嘱し、また、各警察署協議会の運営に資することを目的として開催された警察署協議会代表者会議に参加した。
[事例4]青森県公安委員会は、消費者金融における強盗殺人・放火事件捜査本部の激励、視察を行った。
[事例5]神奈川県公安委員会及び奈良県公安委員会は、それぞれ、県警察に対して、監察の指示を行った。
(3)公安委員会相互間の連絡
 国家公安委員会及び各都道府県公安委員会は、相互に常に緊密な連絡を保たなければならないこととされており、これを踏まえ、各種の連絡協議会等が開催されている。
①国家公安委員会と都道府県公安委員会相互間の連絡
 平成13年中、国家公安委員会と全国の都道府県公安委員会との連絡協議会が2回開催され、全国の治安情勢等についての報告や意見交換が詳細にわたり行われた。
②都道府県公安委員会相互間の連絡
 13年中、全国の8つのブロック(各管区及び北海道)において、国家公安委員会委員の出席を得て、各ブロック内の道府県公安委員会及び方面公安委員会相互の連絡協議会が計16回開催されるとともに、都道府及び指定県に置かれる11の公安委員会相互の連絡会議が1回開催され、各都道府県の治安情勢やそれに対するそれぞれの取組みについての報告や意見交換が詳細にわたり行われた。


目次