第2節 国際化への対応

来日外国人との共生の推進
 来日外国人は、生活習慣の相違等から、地域住民とのコミュニケーションが希薄になりやすく、地域の安全に関する情報を入手し難い立場に置かれており、また、日本人住民との間では、日常生活上の種々のトラブルが発生しやすい。警察では、来日外国人向けの防犯教室の開催、外国語の防犯パンフレットの配布等により、生活の安全に関するアドバイスを実施しているほか、来日外国人のための相談窓口を設置し、日常生活における不安の解消に努めるとともに、地域住民との交流を深めるためのイベントの開催等により、相互理解と信頼関係の構築に努めている。このほか、来日外国人を雇用し、又は研修生として受け入れている企業等が各地で結成している連絡協議会と連携して、外国人従業員や研修生に対し、事件事故等の被害に遭わないためのアドバイスを行うなどの活動を展開している。

海外における邦人の安全対策
 近年、世界各地で宗教問題や民族問題を背景としたテロが多発しており、2001年(平成13年)9月の米国における同時多発テロ事件で邦人24人が犠牲になったことにみられるとおり、邦人が国際テロに巻き込まれる危険性が高まっている。また、我が国企業の海外展開の広がり及び海外旅行の増加に伴い、日本権益を標的としたテロ、誘拐、襲撃事件等も発生している。
 こうした情勢を踏まえ、我が国警察は、関係機関・団体等との連携を強化し、様々な安全対策を講じている。
(1)2001年(平成13年)中に邦人被害のあった事件
 米国における同時多発テロ事件では、邦人24人が犠牲となっているが、2001年(13年)中は、これ以外にも、
・ 1月27日、香港発バンコク経由アブダビ行きのガルフ航空機でハイジャック未遂が発生した(乗客には邦人6人が含まれていたが、邦人の死傷者はなかった。)。
・ 2月22日、コロンビア・ボゴタ市内において、現地邦人企業の副社長が警察官を装ったグループに誘拐された(未解決)。
・ 4月22日、トルコ・イスタンブール市内で「チェチェン共和国の支持者」と名乗る武装グループがホテルの宿泊客ら約100人を人質に立てこもった(宿泊客には邦人12人が含まれていたが、邦人の死傷者はなかった。)。
等の事件が発生している。
(2)警察の海外における邦人の安全対策
 警察では、平素から専門知識を持つ職員を海外に派遣し、各国治安機関との情報交換を行うなど積極的な情報収集活動を行い、国際テロ組織、国際テロリストの動向把握に努め、その分析結果を随時外務省に提供して邦人の海外における安全対策に貢献している。
 また、1996年(平成8年)に発生した在ペルー日本大使館公邸占拠事件の教訓から、警察庁警備局外事課に「国際テロ緊急展開チーム(TRT)」を設置し、国際テロ事件発生時に専門知識を持つ要員を現地に緊急派遣することとしている。
(3)海外安全対策会議
 (財)公共政策調査会は、1993年(平成5年)以降、関係機関の協力を得て、年1回、海外主要都市において「海外安全対策会議」を開催している。
 2001年(13年)9月に開催された第9回海外安全対策会議(フランクフルトセミナー)では、警察庁から派遣された講師が「米国における同時多発テロ事件と欧州のテロ情勢」をテーマに講演を行った。同会議には邦人企業関係者等100人以上が参加し、活発な質疑応答が行われ、在外邦人の安全対策への関心の高さがうかがわれた。


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