第7章 公安の維持

対日有害活動の現状
(1)北朝鮮による対日諸工作
①諸外国との関係改善を図る一方で、対日非難を継続
○ 北朝鮮は、2001年(平成13年)中、13か国及び欧州連合(EU)と外交関係を樹立したほか、金正日総書記が中国、ロシアを訪問して首脳会談を行うなど、諸外国との関係改善を図った。
○ 一方、我が国に対しては、歴史教科書問題、首相の靖国神社参拝、米国における同時多発テロ事件に伴うテロ対策等の諸問題をとらえ、「海外侵略を実現しようとしている」などと非難した。
②日朝国交正常化交渉
○ 日朝国交正常化交渉は、「拉致問題の解決なくして国交正常化はあり得ない」とする我が国の主張と、拉致問題の存在を否定し、あくまで我が国の過去の清算を最優先させようとする北朝鮮の主張が平行線をたどり、2000年(12年)10月の第11回本会議を最後に中断していた。
○ しかしながら、北朝鮮は、2002年(14年)に入って、日本との対話に積極的な姿勢を示し、4月の第5回日朝赤十字会談以降、日朝外相会談、第6回日朝赤十字会談、日朝外務省局長級会談等が行われ、9月17日には、小泉首相と金正日総書記による初めての日朝首脳会談が平壌で開催された。この中で、両首脳は、日朝国交正常化交渉再開で合意した。
③朝鮮総聯を通じた対日諸工作
○ 朝鮮総聯は、慶祝行事等の際に政界や報道機関関係者等を招待したほか、幹部が地方自治体の首長を訪問して、早期の国交正常化への協力要請や朝鮮総聯の活動への理解を求めるなどの諸工作を行った。
④北朝鮮による工作活動の疑いのある事案
○ 2001年(13年)3月、富山県黒部川河口付近で、1990年(2年)に福井県の海岸で発見された北朝鮮工作員が使用したとみられる水中スクーター様の物と極めて類似した物が発見されており、北朝鮮工作員がこれを使用して我が国に潜入した可能性が高いとみられる。
○ 12月、九州南西海域において北朝鮮の工作船ともみられる不審船が逃走の末、沈没した。
⑤北朝鮮による対日諸工作の今後の見通しと警察の対応
○ 北朝鮮は、今後とも、時宜を捉えた対日非難を継続するとともに、我が国各界各層に対して、過去の清算を最優先させた早期の国交正常化への協力要請や朝鮮総聯の活動に対する理解を求めて、直接又は朝鮮総聯を介した諸工作を活発に展開するものとみられる。
○ 警察は、引き続き、北朝鮮をめぐる情勢に重大な関心を持ちながら、違法事案に対しては厳正な取締りを行うこととしている。
コラム
九州南西海域不審船事案(平成13年12月発生)
・ 平成13年12月、九州南西海域において不審船が発見された。海上保安庁の巡視船等が、追跡、停船命令及び威嚇射撃を行ったが、当該不審船は逃走を続けた上、自動小銃及びロケットランチャー様のもので巡視船に攻撃を加えてきた。これに対し、巡視船が正当防衛のための射撃を実施し、その後、当該不審船は沈没した。
・ 当該不審船の国籍等は不明であるものの、船体特徴等が過去の北朝鮮工作船と酷似していることから、警察庁では、北朝鮮の工作船である可能性も考慮し、全国の都道府県警察に対し、関連情報の収集と警戒強化を指示し、鹿児島県警察では、捜査本部を設置して第十管区海上保安本部と合同で捜査を進めている。
(2)ロシアによる対日諸工作
○ ロシアでは、情報機関出身のプーチン大統領が政権に就いて以来、政権中枢に旧ソ連国家保安委員会(KGB)出身者を登用するなど、情報機関を重視する傾向が続いている。
○ 対外情報庁(SVR)と軍参謀本部情報総局(GRU)は、その権限と組織的基盤を背景に、多様な情報収集活動を海外において展開している。
・ 2001年(平成13年)2月、米国連邦捜査局(FBI)の幹部捜査官が米国の機密情報をSVRに提供していた容疑でFBIに逮捕された。
・ 2001年(13年)中、スウェーデン、ブルガリア、フィンランド等において、ロシア外交官による諜報活動が摘発された。
○ 我が国においても、ロシア情報機関員とみられる者による諜報活動を摘発した。
[事例] 2002年(14年)3月、元航空自衛官の防衛関連会社社長に、我が国の「防衛秘密」である中距離空対空レーダー誘導ミサイル(通称「スパロー」)等のマニュアルを要求したGRUの機関員とみられる元在日ロシア連邦通商代表部の職員(44)を、日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法違反(防衛秘密の探知収集の教唆)で摘発した(警視庁)。
(3)中国による対日諸工作
○ 中国では、2001年(13年)3月に採択された「国民経済と社会発展に関する第10次5カ年計画」において、
・ 国防科学研究の強化・国防科学技術工業改革を推進し、新型武器装備を発展させる。
・ 現代技術、特にハイテク条件下での防衛戦闘能力を増強する。
との国防・軍建設強化方針が示された。
○ こうしたこと等を背景として、我が国にも多数の研究者、技術者、留学生等が派遣され、各種ハイテク技術の習得にあたっているほか、在日公館員、来日代表団員が先端技術企業関係者に対する幅広い働き掛けを行うなど、多様な手段によりハイテク関連技術情報の収集にあたっている。
(4)多様化する情報収集活動
○ 情報収集活動の多様化
・ 友好国に対しても諜報活動を実施。
・ 政治、軍事情報に加え、経済情報の収集活動も強化。
[事例]
・ 1998年(平成10年)9月、欧州議会の調査総局は、米国の情報機関である国家安全保障局(NSA)が、欧州において非軍事部門の情報を入手するため、民間企業の業務通信等に対して日常的に通信の傍受を行っているとの報告書を議会に提出。
・ 2001年(13年)9月、欧州議会は、「エシュロン」と呼ばれる世界的な通信傍受網の存在を指摘する最終報告書を採択。
○ 我が国においても、今後、経済情報、科学技術情報その他の重要な情報の漏えいや、情報収集活動に伴う違法事案等の発生が懸念され、その動向に注目していく必要がある。
(5)大量破壊兵器関連物資等の不正輸出
①大量破壊兵器拡散の懸念
○ 米国国防総省は、2001年(13年)1月、核、ミサイル等の大量破壊兵器の拡散状況などをまとめた特別報告書「拡散・その脅威と対応」を公表した。同報告書では、北朝鮮が依然としてミサイルの開発・輸出を継続しているとの懸念が表明された。
○ 米国国務省は、2月、北朝鮮貿易商社に対し、ミサイル技術をイランに不正に提供したとして、国内法に基づく経済制裁の発動を発表した。北朝鮮によるミサイル等大量破壊兵器関連物資等の拡散の現状がうかがわれる。
○ 9月、米国における同時多発テロ事件以降、米国で相次いで発生した炭疽菌による被害の発生に伴い、我が国を含む多数の国において、生物・化学兵器を使用したテロの発生が具体的な脅威として警戒されている。
○ 米国のブッシュ大統領は、2002年(14年)の一般教書演説で、テロとの戦いの決意を表明し、テロ支援国家であり、大量破壊兵器の開発等を目指している国として、イラン、イラク、北朝鮮を「悪の枢軸」として名指しで非難した。
②不正輸出対策
○ 2002年(14年)4月1日、輸出貿易管理令等の改正により、原則として、全ての貨物が規制の対象となる、日本版「キャッチオール規制」が導入された。米国等諸外国では既に導入されており、我が国においても早期導入が求められていた。
○ 核兵器、生物・化学兵器、ミサイル等の大量破壊兵器に転用され得る貨物等の輸出の管理の徹底を図るため、関係機関と連携の上、不正輸出の取締りを一層強化していく必要がある。

オウム真理教の動向と対策
(1)オウム真理教の現状
①教団運営の実態
 広島刑務所出所後、オウム真理教(以下「教団」という。)の実質的トップとなった上祐史浩は、平成14年1月正式に教団代表に就任したが、依然として厳しい国民の批判を踏まえ、教団の存続を基本に据えた教団運営を行っている。
 しかし、教団の危険な本質は変わっておらず、依然として地下鉄サリン事件等一連の凶悪事件の拠り所となった教義を堅持している。
②団体規制法による観察処分
 11年12月3日に無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律が成立し、同27日施行された。12年2月1日、同法に基づく3年間の観察処分が発効し、現在、教団は、3か月ごとに公安調査庁長官に教団の構成員、施設等の状況を報告することを義務付けられているほか、公安調査庁による随時の立入検査にも応ずることとされ、13年中、延べ21施設に対する立入検査が行われた。
 教団からの報告内容については、公安調査庁長官から警察庁長官に通報がなされており、また、警察は、立入検査実施時に教団施設周辺において警戒警備等を行うなど、相互に協力体制をとっている。
(2)諸対策の推進
①事件捜査
 警察は、平田信を始めとする逃走中の警察庁指定特別手配被疑者3人の発見検挙に全力を尽くしている。
 また、教団による組織的な違法行為の疑いのある事案に対する捜査を推進し、平成13年中、9件の事件を検挙し、信者8人を詐欺罪等で逮捕するとともに、6都府県延べ64か所の教団施設等の捜索を行い、パソコン、関係書類等約9,400点を押収した。
 これらの捜査により、
・ 「慈愛」と称するコンピュータソフト開発グループの存在が把握された。
・ 同グループは官公庁等のソフト開発を下請けや孫請けの形態で受注し、その収益が教団の資金源となっていることが明らかにされた。
②警戒警備
 教団施設が所在する地域においては、地元住民の対策組織(全国16都府県317自治体411組織)による立ち退き要求運動が継続しており、住民による監視活動のほか、抗議集会、デモ、関係省庁等に対する陳情等、活発な運動が展開されている地域もある。
 他方、各地の転入届不受理処分の取消等を求めた訴訟では、10月に大阪府吹田市、12月に愛知県名古屋市並びに東京都世田谷区及び足立区の処分について、いずれも教団側が勝訴した。
 警察は、施設周辺住民の平穏な生活を守り、公共の安全を確保するため、臨時交番や警戒ボックスを設置し、監視活動や検問、パトロール等を実施するなど、必要な警戒警備活動を行っている。

日本共産党等の動向
(1)党活動の動向
①都議選、参院選での議席の減少
○ 東京都議会議員選挙(平成13年6月)
 日本共産党は、都議選(6月)で15議席(前回比11議席減)と大幅に議席を減少させ、都議会第2党から第4党へと大きく後退した(表7-1)。
○ 参議院議員通常選挙(7月)
 小選挙区では埼玉、大阪で議席を失い、比例区でも改選前比1議席減の4議席となり、合計で5議席(改選前比3議席減)にとどまった(図7-3)。これにより、非改選の15議席と合わせて参議院での議席は20議席となり、前回の参院選で初めて獲得した予算を伴う法案の提出権(21議席以上)を失った。
 参院選の結果に対し、日本共産党は、「どんな突風がふいても党を支持してくれる堅い支持層をどう増やすかが最大の教訓」と総括し、「議員、候補者を先頭に、住民との日常的結びつきを抜本的に強化することの重要性」を強調した(第3回中央委員会総会(10月))。
②歯止めがかからない機関紙の減少傾向
 日本共産党は、党建設の立ち後れが党活動の最大の弱点であるとして、全党を挙げて党員と機関紙読者の拡大に努めてきた。
○ 党員拡大
 「大会後も前進は続いていますが、わずかな前進」にとどまっているほか、「党の年齢別構成の現状は、50代が最も多く、次いで60代、40代の順」であり、「「高齢化」、「後継者」の悩みとその打開への思いが全国から痛切に報告されている」(第3回中央委員会総会における志位委員長の幹部会報告)という現状にある。
○ 機関紙読者の拡大
 「前進の軌道にのせられておらず、後退傾向」を脱していないことを明らかにしている(図7-4)。  このため、14年4月末を期限とする「党員・読者拡大の大運動」を提起し、特に、若い世代の拡大に党の総力を挙げて取り組むとし、民主青年同盟の組織的前進を援助していくことを強調した。
③各界各層への接近
 志位委員長は共産党委員長として
13年4月~初めて鳩山民主党代表主催「桜を観る会」に出席
5月~初めて経済同友会代表幹事と懇談
5月~党の代表として18年振りに朝鮮総聯第19回大会に出席
8月~初めて連合主催サマートップセミナーで講演
するなど、他野党や財界等、各界各層への接近を図った。
 こうした背景には、「野党共闘は全体として現政権に反対するという共闘にとどまっており、政権課題を実現する共闘はごく部分的にしか行われていない」(第22回党大会決議)という野党共闘の伸び悩みの打開や、これまで接点のなかった財界や連合関係者に対して日本共産党の柔軟性を強調することで、いわゆる共産党アレルギーを和らげるなどの狙いがあるものと思われる。
 また、米国における同時多発テロ事件に関しては、米英軍による軍事行動を批判し、大衆団体との集会、デモ、国会請願等の活動を活発化させた。
(2)厳しい雇用情勢の中で勢力拡大を模索する全労連
 日本共産党の指導、援助により結成された全国労働組合総連合(全労連)は、第18回定期大会(平成11年7月)で決定した「組織拡大・強化第3次3カ年計画」に基づき、「200万全労連・600地方組織」を目指して、組織拡大に取り組んだ。
 しかし、企業の倒産や厳しいリストラ、合理化による失業、雇用不安の増大等を背景に拡大は思うように進まず、第29回評議員会(13年8月)で、「5月末、組織人員は139万人で、前年に比べて11万人の減となった。」と発表し、引き続き、パート・臨時・派遣労働者等の組織化を柱に、組織拡大に取り組むこととした。

大衆運動の動向
(1)「反原発」運動
 反原発団体等は、プルサーマル計画の導入や原子力発電所建設等をめぐって活発な抗議集会、反対署名活動、要請行動等に取り組んだ。
①MOX燃料輸送に対する妨害、抗議行動
 平成13年1月にフランスから日本に向けたプルサーマルに使用するMOX燃料の輸送をめぐり、国際的な反対動向がみられた。
○ グリーンピース・インターナショナル
 フランス領海内において、ゴムボートやカヌーを使って輸送船に近づくなどの妨害行為で十数人が逮捕された。
○ オーストラリア人やニュージーランド人を中心とした活動家グループ
 オーストラリア近海の排他的経済水域において、グリーンピース・インターナショナルと連携し、「非核船団」を組織して海上デモンストレーションによる抗議行動に取り組んだ。
○ グリーンピース・ジャパン
 新潟県柏崎刈羽原発専用港に到着の際には、地元の反原発団体とともに東京電力への抗議文手交や抗議集会に参加した。
②プルサーマル計画導入をめぐる住民投票
 新潟県柏崎刈羽原子力発電所への導入が予定されていたプルサーマル計画をめぐっては、地元の反原発団体がその是非を問う住民投票条例の制定を求める運動を展開した。13年5月27日、住民投票が実施された結果、プルサーマル計画への反対票が投票総数の過半数を占めたことで、13年度は同計画の実施は見送られることとなった。
(2)幅広いテーマで取り組まれた環境保護運動
 環境保護団体等は、治水・干拓事業、地球温暖化や廃棄物処分場の建設等幅広いテーマで、環境をめぐる運動に活発に取り組んだ。
①京都議定書締結をめぐる抗議、要請行動
 地球温暖化問題では、気候変動枠組条約締約国の温室効果ガスの排出削減義務等を定めた京都議定書の締結をめぐり、グリーンピース・インターナショナル等の環境保護団体は、米国や我が国政府に対する声明の発表や要請文の交付等抗議、要請行動に活発に取り組んだほか、平成13年7月にドイツのボンで開催された気候変動枠組条約第6回締約国会議(COP6)再開会合において、現地のNGOと協力して集会、デモに参加した。
②長崎諫早湾干拓事業をめぐる抗議集会等
 長崎県諫早湾干拓事業をめぐっては、潮受け堤防閉め切り(9年)以後、地元環境保護団体等が干拓工事反対運動を展開する中、13年は、赤潮発生による漁業不振により、地元長崎を始め、福岡、佐賀、熊本の各県漁協が「干拓事業中止、排水門開放」を掲げ、大規模な海上デモや抗議集会、さらには、九州農政局への要請行動を活発に行い、大きな注目を浴びた。
③国際捕鯨委員会年次会合をめぐる動向
 国際捕鯨委員会第54回年次会合(14年4月~5月)をめぐっては、初めて捕鯨都市である山口県下関市で開催されたことから、調査捕鯨中止等を主張するグリーンピース・インターナショナルを中心とした捕鯨反対派及び商業捕鯨再開を主張する捕鯨推進派が、アピールの絶好の機会と捉えて活発な活動を展開した。
(3)平和運動
 米国における同時多発テロ事件をめぐっては、「米国に対するテロ糾弾」、「米国の軍事報復反対」及び「自衛隊海外派兵反対」を主張する諸団体が、集会、デモ及び国会、米国関連施設への要請行動等に取り組んだ。
 この間、各種団体や個人によって組織される実行委員会やNGO等が主催する取り組みも行われ、インターネットを活用して幅広く市民に参加を呼び掛けた結果、一部に主催者の目標を大きく上回る参加人員を得て行われた行動がみられた。

極左暴力集団の動向と対策
(1)極左暴力集団の動向
①JR総連問題に積極的に介入した革マル派
 革マル派は、JR総連傘下JR九州労組合員の大量脱退問題や元JR総連組合員の行方不明事案をめぐり、JR総連執行部を厳しく批判するなど、引き続き、JR総連問題に積極的に介入した。
○ 革マル派のJR総連批判
 革マル派は、機関紙(新年号)に掲載した植田議長名の年頭アピールで、同派を告訴、告発したJR総連の労組幹部を名指しで批判したほか、列車事故等をとらえて労組執行部の対応を厳しく批判する中で、組合員に対し「ダラ幹打倒」を呼び掛けるなど、JR総連執行部との対決姿勢を強めた。また、同派は、平成13年4月、「連合型労働運動に抗して」と題する本を出版し、その中で、JR総連内における党組織の存在及びJR総連幹部の革マル派としての党派性について言及した。
○ JR総連の応酬
 JR総連は、都内主要駅頭において、「革マル派は社会の敵」等と題するビラを配布したほか、6月と8月には、革マル派中央拠点である「解放社」に押し掛けて、元組合員の即時解放を強く申し入れた。また、JR東労組も「わが東労組内には革マル派党員は一人もいない」等とする見解を発出するとともに、機関誌で革マル派を「犯罪者集団」「オウム以下」等と評した。
○ 対立の沈静化
 革マル派は、8月6日付機関紙で、JR九州労幹部批判を行ったのを最後にJR総連執行部批判を中止した。これにより、革マル派とJR総連の対立は一気に沈静化し、8月9日、JR総連は、元組合員の行方不明事案に対する警察の対応を批判するとともに、12年11月に革マル派の処罰を求めて提出していた告発を取り消した。
②20年ぶりに全国大会を開催し党規約を改定した中核派
 中核派は、13年7月に開催した「革共同政治集会」において、
・ 20年ぶりに第6回全国大会を開催したこと
・ 36年ぶりに規約を改定し議長ポストの新設、政治局の権限強化等を盛り込んだこと
・ 元政治局員を除名したこと
等を明らかにした。
 また、中核派は、労働者や市民の獲得を企図し、国労問題では、国労の定期全国大会等に延べ約380人を動員して、執行部批判や「闘う国労闘争団」の激励行動に取り組んだ。
 歴史教科書問題では、教育委員会等に押し掛け、「新しい歴史教科書をつくる会」作成の中学校用歴史・公民教科書の不採択を訴えた。
 13年6月の東京都議会議員選挙では、前杉並区議会議員の活動家を擁立したが、落選した。
③組織の防衛と立て直しを図った革労協
 革労協は、11年5月に主流派と反主流派に分裂して以降対立状態にあり、引き続き、内ゲバ路線を継続した。
・ 13年2月、警察は、主流派非公然活動家4人が、相模原市内において反主流派幹部活動家を殺害しようと包丁等を所持して待ち伏せていたところを凶器準備集合罪等の容疑で現行犯逮捕した。本件は、殺人予備罪等により、3月、全員が起訴された。
・ 5月、千葉県内において、主流派幹部活動家が反主流派非公然活動家とみられる数人の者に襲撃され死亡する事件が発生した。
 他方、分裂以降、内ゲバ事件に伴う傷害罪等で逮捕、勾留中であった双方の活動家延べ96人が12年末までに釈放され、徐々にではあるが両派の組織活動が回復する兆しをみせ、13年2月には主流派、反主流派とも主要メンバーを揃えて「政治集会」を開催するなどして、組織の建て直しを図った。
④暫定平行滑走路完成で新たな展開をみせる成田問題
 成田空港2本目の滑走路となる暫定平行滑走路(2,180m)が10月に完成し、14年4月、供用を開始した。
 他方、13年4月に就任した千葉県の堂本知事は、千葉県、新東京国際空港公団等との関係団体による「四者協議会」を設置し、成田問題解決に向け積極的な姿勢を示すなど、成田問題は新たな展開をみせた。
 これに対して三里塚芝山連合空港反対同盟北原グループや極左暴力集団は、「暫定平行滑走路完成阻止」を訴え、毎月、成田現地において集会、デモに取り組んだ。こうした中、中核派は、「1.23新東京国際空港公団幹部宅放火事件」等3件の「テロ、ゲリラ」事件を引き起こした。
⑤米国における同時多発テロ事件を反戦闘争として取り組んだ極左各派
 極左暴力集団は、米国における同時多発テロ事件を「被抑圧民族によるやむにやまれぬ決死の反米ゲリラ戦争」などととらえ、「テロの原因は米国側にある」として、米国等による軍事行動に反発し、13年中、全国で延べ約2万2,000人を動員して、米国関連施設、政府関係施設、自衛隊施設等への抗議や集会、デモ、ビラ配布活動に取り組んだ。
 警察は、10月、久留米市内において、革労協主流派活動家1人を銃砲刀剣類所持等取締法違反の容疑で現行犯逮捕し、同人の乗車していた車両から、ゲリラで使用する鉄パイプ等の部品のほか、偽造ナンバープレートを発見、押収した。同派が、米国施設に対するゲリラを計画し、準備していたものとみられる。
 同事件の共犯者として、14年1月、同派非公然活動家4人を凶器準備集合罪等で指名手配した。
(2)諸対策の推進
 警察は、事件捜査の徹底を図るとともに、アパート、マンション等に対するローラーに継続して取り組んだ。これらの結果、平成13年中、非公然アジト3か所(革マル派2か所、中核派1か所)を摘発するとともに、非公然活動家14人を含む68人の活動家を検挙した。
・ 5月、兵庫県内の中核派非公然アジト「伊丹アジト」を摘発し、非公然活動家2人を逮捕。うち1人は、「63.9.21千葉県収用委員会会長襲撃事件」で指名手配中の者で、6月、同事件の強盗致傷罪で再逮捕。
・ 5月、徳島大学構内において、革労協主流派活動家7人を建造物侵入罪で現行犯逮捕。
・ 6月、東京都内の革マル派非公然アジト「玉川アジト」を摘発し、非公然活動家2人を逮捕。さらに、同アジトの名義人の小学校教諭を、7月、犯人蔵匿罪で逮捕。
・ 10月、東京都内日比谷公園において、革労協反主流派活動家10人を凶器準備集合罪で現行犯逮捕。
・ 11月、愛知県内の革マル派非公然アジト「名古屋西アジト」を摘発。活動家1人を有印私文書偽造・同行使罪等で逮捕。

右翼の動向と対策
(1)右翼の動向
①時局問題や領土問題をめぐり活発な批判活動を展開
 右翼は、時局問題や領土問題をとらえ、政府等に対する批判活動に活発に取り組んだ。
○ 北朝鮮問題をとらえた批判活動
 平成13年中、全国各地で、約870団体約3,200人が、街頭宣伝車約980台を動員して、日本人拉致問題や北朝鮮への米支援をとらえて、北朝鮮、朝鮮総聯及び政府等を批判した。
○ 北方領土問題をとらえた批判活動
 「北方領土の日(2月7日)」に24都道府県で、約200団体約1,100人が、街頭宣伝車約320台を動員して、また「反ロデー(8月9日)」に20都道府県で、約280団体約2,000人が、街頭宣伝車約500台を動員して、ロシア及び政府等を批判した。
○ 教育問題をとらえた批判活動
 日教組や全教を批判したほか、特定の歴史教科書への訂正要求等に反発して韓国、中国を批判した。
②右翼関係事件の傾向
○ 「テロ、ゲリラ」事件の検挙
 13年中は、1月4日、けん銃使用による「オウム真理教使用マンションに対するけん銃発砲事件」など、東京都内において4件の「テロ、ゲリラ」事件が発生したが、いずれも被疑者を現行犯で逮捕している。
○ 違法行為の増加及び悪質化
 13年中における右翼による違法行為の検挙は、1,457件、1,982人で、年々増加する傾向にある中、過去最高を記録し、増加率でも過去5年間で最高となった。
 このうち、資金獲得を目的とした犯罪の検挙が422件、805人で、全検挙件数の約29%を占めた。
 暴力団による「しのぎ」(資金源活動)まがいの恐喝事件(170件、313人)は、道路交通法違反を除く全検挙罪種別の第1位となる一方、けん銃を始めとする武器の調達等による銃砲刀剣類所持等取締法違反事件の検挙は、57件、72人に上った。
 また、殺人、強盗等の凶悪犯や傷害等の粗暴犯の検挙は354件、564人であるほか、覚せい剤等の薬物犯罪の検挙も165件、167人にも上るなど、本来の右翼運動からかけ離れた事案も多くみられた。
③地域住民の生活の平穏を害する街頭宣伝活動
 右翼は、企業やその経営者等の糾弾活動と称して街頭宣伝車を利用して大音量かつ執拗な街頭宣伝活動を行い、騒音被害や交通渋滞を引き起こし、地域住民の生活の平穏を害している。
 その多くは、被害者の嫌悪感、恐怖心等につけ込んで金員を提供させることが目的とみられる。
(2)右翼対策の推進
①「テロ、ゲリラ」事件の未然防圧に向けた違法行為の徹底検挙
 警察は、右翼による「テロ、ゲリラ」事件の未然防圧を図るため、右翼の動向に注意を払うとともに、資金獲得を目的とした犯罪や銃器犯罪を中心に、各種法令を駆使して、違法行為の徹底検挙に努めている。
<銃器の押収>
 右翼及びその周辺者からの銃器押収は減少傾向にある中、昨年は62丁(前年比1丁減)で、前年と比べほぼ横ばいであった。
 平成13年中、暴力団組長が実質的指導者となっている右翼団体の関係先から、けん銃5丁及び実包1,444個を押収していることや、同年に押収した銃器のうち、暴力団と関係を有する右翼等からの押収が約6割を占めることなどから、銃器の多くは暴力団組織を通じて入手しているものとみられる。
②街頭宣伝車対策の推進
 警察では、平成13年中、右翼の街頭宣伝車による暴騒音をとらえ、45の都府県において制定された暴騒音規制条例に基づき、停止・中止命令(防止措置命令を含む。)173件、勧告219件、立入り74件を行ったほか、静穏保持法、暴騒音規制条例及び公害防止条例違反で5件、7人を検挙した。
 また、街頭宣伝車を利用した名誉毀損、恐喝事件等、街頭宣伝活動に伴う事件で、116件、187人を検挙するなど、法令を多角的に適用した事件検挙に努めた。
<主な検挙等>
・ 車両デモに際し右翼が無線局を不法に開設、運用していた電波法違反事件で、広範囲にわたる一斉捜索により街頭宣伝車21台を押収(3月、大阪)
・ 仮ナンバー街頭宣伝車での活動を道路運送車両法違反(自動車臨時運行許可番号標不正取得)で検挙(7月、千葉)

各種重要警備
(1)厳しい情勢の中での警衛・警護警備
①第19回参議院議員通常選挙に伴う警護警備
 第19回参議院議員通常選挙は、平成13年7月12日公示、同29日投票で施行され、多数の警護対象者が全国的に遊説活動を行った。特に、小泉首相は、選挙運動期間中、延べ27都道府県で応援演説を行い、国民からの高い支持率を反映して、会場には連日多数の聴衆が集まった。
 警察は、こうした情勢に加え、右翼のテロ等違法事案が懸念される厳しい情勢の下、雑踏警備対策にも配慮した警護警備諸対策を推進し、要人の身辺の安全を確保した。
②靖国神社参拝に伴う警護警備
 8月13日に実施された小泉首相の靖国神社参拝は、国内外が注目する中で、参拝に反対するグループ、賛成するグループ、見物人等が多数集まったほか、神社境内には多数の報道関係者が駆けつけるなど、厳しい警備環境の中、警視庁では、的確な警護警備措置を講じた。
③天皇皇后両陛下の、国賓ノルウェー王国国王夫妻御接遇に伴う警衛・警護警備
 天皇皇后両陛下は、3月28日、国賓として来日中のノルウェー王国国王夫妻を御案内され、神奈川県へ行幸啓になった。
 神奈川県警察、警視庁及び皇宮警察では、歓送迎者に対する雑踏事故防止対策、警衛警護船隊の編成等の諸対策を講じ、天皇皇后両陛下及びノルウェー王国国王夫妻の身辺の安全確保と雑踏事故防止を図り、所期の目的を達成した。
④情勢に応じた的確な警衛・警護の実施
〔警衛〕
○ 13年中、天皇皇后両陛下は、
・ 5月、第52回全国植樹祭(山梨県)
・ 10月、第56回国民体育大会秋季大会(宮城県)
・ 10月、第21回全国豊かな海づくり大会(静岡県)
への御臨席を始め、
・ 4月、阪神・淡路大震災復興状況(兵庫県)
・ 11月、地方事情(三重県)
の御視察等のため行幸啓になった。
○ 皇太子殿下は、全国「みどりの愛護」のつどい(4月、沖縄県)を始め、各種の行事・式典への御臨席のため各地に行啓になった。
 また、皇太子殿下が、英国内で日本文化を紹介する事業「JAPAN2001」関連行事御視察のため、英国を御訪問(5月)になったのを始め、各皇族方が計6回、外国を御訪問になった。
 これに対し、極左暴力集団等は、御臨席される行事をとらえて、来県に反対する集会、デモ等に取り組んだ。
 このような情勢の中で、警察は、皇室と国民との親和に配意した警衛警備を実施し、御身辺の安全確保と歓送迎者の雑踏事故防止を図った。
〔警護〕
 森首相(当時)は、現職首相として初めて、サハラ以南のアフリカ(南アフリカ等3か国)を訪問したほか、鈴木首相以来となる北方領土の視察を行った。
 小泉首相は、イタリアでの主要国首脳会議(サミット・7月)に出席したほか、米国における同時多発テロ事件や米国等によるアフガニスタンでの軍事行動に伴い情勢が悪化する中、米国(9月)、中国(10月)、韓国(10月)を相次いで訪問した。また、中国でのAPEC首脳会議(10月)、ブルネイでのASEAN+3首脳会合(11月)、ベルギーでの日・EU首脳協議(12月)等に出席した。
 さらに、年間を通じ、警護警備を要する外国要人が多数来日した。
 警察は、厳しい情勢の中、銃器、爆発物、生物・化学剤等を使用したテロへの対応を念頭に置いた警護警備諸対策を徹底し、国内外要人の身辺の安全を確保した。

機動隊の活動
(1)機動隊の種類と機能
 各都道府県警察には、集団警備力によって、有事即応体制を保持する常設部隊として機動隊が設置されているほか、管区機動隊及び第二機動隊が設置されている。
 機動隊の中には専門部隊として、爆発物処理班、機動救助部隊、水難救助部隊、銃器対策部隊等の機能別部隊が編成されており、一部都道府県にはハイジャックや人質たてこもり事件等に対処するための特殊部隊(SAT)が設置されている。さらに、大規模災害発生時の初動措置に当たる広域緊急援助隊や国際緊急援助隊が各都道府県警察の機動隊員、管区機動隊員等で編成されている。
(2)機動隊の任務と活動の概況
 機動隊は、危機管理のための集団警備力の中核として、集団不法事案に対する治安警備、主要な警衛・警護警備、台風・地震等の災害警備、祭礼・催し物の雑踏警備に当たるほか、繁華街・盛り場における集団警ら、暴力団対策、暴走族の一斉取締り等部門の枠を越えた多角的な活動を行っている。
 また、複雑・多様化する社会情勢や国民の要請に的確に対応するため、各種機能別部隊の専門能力を生かした捜査活動、人命救助活動等市民に密着した警察活動に従事しており、最近では、暴騒音取締りや生物化学テロ等の事象にも対応すべく、その機能強化を図っている。

2002年ワールドカップサッカー大会警備
(1)本大会警備の総括
 平成14年5月31日から6月30日までの間、2002年ワールドカップサッカー大会(以下「本大会」)が日韓両国で共同開催され、国内では10会場で計32試合が行われた。
 本大会警備に当たり、警察庁は、「2002年ワールドカップサッカー開催準備問題に関する関係省庁連絡会議」等を通じて関係省庁との連携強化に努めたほか、同連絡会議の下に設置された同準備問題に関する安全対策部会において中核的役割を担い、政府として取り組むべきテロ対策やフーリガン対策の推進項目をまとめるなど、諸対策の万全を期した。
 また、韓国との連携を重視し、警察庁長官が韓国の安全対策統制本部長と会談を2回行うとともに、警察庁警備課長を日本側座長として、日本側の「安全対策部会」と、韓国側の「安全対策統制本部」との定期協議を4回開催するなど、両国間の連携強化を図った。
 さらに、国民及び外国人サポーター等の理解と協力を得て、本大会期間中、テロ・フーリガン事案を完全に封圧するとともに、その他の大きな事件・事故が発生することもなく、本大会警備は無事に終了した。本大会関連事件の検挙件数は、81件93人で、うち日本人は55件60人であった。一部日本人サポーターが熱狂し、検挙者が出る事案も発生したが、いずれも散発的なものにとどまり、大きな混乱は生じなかった。
(2)本大会警備における主要諸対策の推進
①総合的なフーリガン対策・観客の安全対策等の推進
 各国治安機関との積極的な協力
 警察では、海外からの多数の観客、フーリガンの来日に備え、積極的に欧米等各国の治安機関と情報交換を行ったほか、欧州での国際会議に職員を派遣し、意見交換を行った。平成14年3月には、英国から内務大臣の代理として来日したデナム内務閣外大臣が村井国家公安委員会委員長と会談を行い、日英両国警察の協力について一致するなど、密接な連携が図られた。本大会の開催に際しては、各国に対し、フーリガンの出国規制措置の実施を要請したほか、フーリガンの識別等を専門的に行う「スポッター」等の外国人警察官を招へいし、警察の警備への助言等、各種の支援を受けた。また、警察庁に情報センターを設置し、各国治安機関から派遣されたリエゾンオフィサー等を通じてリアルタイムに得た情報等に基づき、法務省入国管理局等と連携し、フーリガンの入国阻止を図った。
 入管当局等との連携による水際対策の推進
 警察庁と法務省入国管理局等が連携し、フーリガンの入国阻止を図った結果、上陸を拒否された者は65人であったが、このうち出入国管理及び難民認定法第5条第1項第5号の2(いわゆるフーリガン条項)に基づいて上陸を拒否された者は19人であった。また、海外から多数の観客が来日することに伴い、文化や生活習慣の違い等に起因するトラブルの発生が懸念されたことから、警察庁では、各国の観客の動向等について各国治安機関や在京大使館、国内外のスポーツジャーナリスト等と積極的に意見交換を行うとともに、警察の警備方針や、我が国の法律により違法とされる行為等を海外に向け広報するなどにより、トラブルの未然防止を図った。
 全国警察が一体となったソフトかつ存在感のある警備の実施
 本大会警備は、長期間にわたる広域的な警備となったため、警察庁と各都道府県警察とが情報の共有化を図り、密接な連携を図るなど、全国警察を挙げた体制を確立して、警備対策、交通対策等を推進した。また、特に試合会場には多数の観客が来場するため、予期せぬ事件・事故の発生が懸念された。そこで、観客の動線分離対策、雑踏事故防止対策、観客の乗車する列車への警察官の警乗等を実施し、観客のアクセスの円滑化や、対戦国のサポーターの混在防止等を図るなどして、観客の安全を確保した。また、本大会のスポーツの祭典としての雰囲気に配意し、女性警察官やオレンジ色のジャンパーを着用した警察官を多く配置する等、ソフトな警備を実施するとともに、一般の観客に安心感を与える警察の存在感を示す警備を実施した。
②テロ対策の推進
 世界の注目を集める国際スポーツ大会は、国際テロリストが自らの主義主張を宣伝する絶好の機会であり、過去、いくつかの重大なテロ事件が発生している。また、米国における同時多発テロ事件の発生以降、世界を取り巻くテロ情勢は極めて厳しく、本大会に対するテロには十分な警戒を要した。警察では、関係省庁等と連携し、情報収集や水際対策を推進するとともに、生物化学テロ対策、上空から敢行される形態のテロへの対策(経空テロ対策)、ハイジャック防止のための民間航空機への警察官の警乗、原子力関連施設の警戒強化等の措置を講じた結果、本大会期間中、テロ事案の発生はなかった。
③総合的な交通対策の推進
 試合が行われる日には、試合会場周辺の道路等において、交通渋滞や交通事故が発生し、選手、観客等の会場到着が遅れることなどが懸念された。
 そこで、警察では、一般交通への影響が最小となるよう配意しつつ、本大会主催者、関係機関等との連携の下、試合会場ごとに綿密な交通規制計画を策定するなどの対策を講じた。
【対策の例】
・ 不要不急の自動車利用の抑制を求める広報活動
・ 会場周辺道路の通行制限と適切なう回路の設定
・ 観客輸送バスを優先通行させる専用車線の設定
・ 会場周辺道路への信号機、光ビーコン等の整備
(3)その他の各種対策の推進状況
①出場選手等の安全対策の推進
 出場チーム及び本大会関係者の安全確保を図るため、関係都道府県警察は、宿泊施設や練習場の警戒、チームが使用する車両の警察車両による先導等を実施した。さらに、チーム関係者との連絡を密にするため、警察官を同行させるなどの対策を講じた。
②警衛・警護の実施
 天皇皇后両陛下は、平成14年6月30日、横浜で行われた決勝戦を御観戦された。皇太子同妃両殿下は6月4日埼玉県で行われた日本対ベルギー戦、6月26日に行われた準決勝戦をそれぞれ御観戦された。日本サッカー協会名誉総裁である高円宮殿下を始め、その他の皇族の方々も、多くの試合を御観戦された。警察では、皇室と国民との親和に配意しつつ、御身辺の安全確保を図った。
 本大会の決勝戦は、小泉首相、金大中・大韓民国大統領、ラウ・ドイツ連邦共和国大統領等多数の国内外要人が観戦したほか、各地の試合についても多くの要人が観戦した。警察では、関係機関との連携の下、警護警備を実施した。


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