第6章 安全かつ快適な交通の確保

平成13年の交通情勢
(1)道路交通の現況
①車両保有台数の増加
 我が国の車両保有台数は年々増加傾向にあり、平成13年末には約8,972万台となっている(図6-1)。
②運転免許保有者数の増加
 運転免許保有者数は、年々増加し続けている。また、高齢化社会の進展に伴い、運転免許保有者数に占める高齢者(65歳以上の者をいう。)の割合は年々高くなっており、この傾向は今後更に継続するものと考えられる(図6-2)。
・ 運転免許保有者数(平成13年末)・・・7,555万711人
・ 運転免許取得可能人口に占める運転免許保有者数(平成13年末)・・・男性は1.18人に1人、女性は1.77人に1人、全体は1.42人に1人
・ 運転免許保有者に占める高齢者の割合(平成13年末)・・・10.1%(約765万人)
③交通量の増加
 交通量は年々増加しており、平成13年末の自動車走行キロ(自動車が走行した距離を表したもの)は7,757億キロに達している(図6-3)。
(2)交通事故の発生状況
①概況
 平成13年に発生した交通事故は、発生件数及び負傷者数が増加し過去最悪を更新したが、死者数は減少し、昭和56年以来20年ぶりに9,000人を下回った(図6-4)。
・ 発生件数・・・94万7,169件(前年比1万5,235件(1.6%)増)
・ 負傷者数・・・118万955人(前年比2万5,258人(2.2%)増)
・ 死者数・・・8,747人(前年比319人(3.5%)減)
・ 平成13年中の交通事故発生から30日以内の死者数・・・1万60人(前年比343人(3.3%)減)
コラム
エアバッグ装備車に乗るときにも必ずシートベルトを着用しましょう
 平成13年に発生した交通事故のうち、エアバッグが作動したものについて、シートベルト着用有無別の致死率をみると、シートベルト非着用者の致死率は着用者の致死率の9.4倍であった。エアバッグはシートベルトの補助装置であり、シートベルトと併用することで大きな効果を発揮するものなのである。
②近年死者が減少している理由
 ここ数年、交通事故発生件数及び交通事故負傷者数が増加しているにもかかわらず、交通事故死者数が減少傾向にある要因としては、高速で走行する車両の事故が減少していること、シートベルトの着用率が向上し事故の被害が軽減されていることなどが考えられる。
○ 車両の事故直前の速度の低下
 80キロメートル毎時を超える高速の事故での致死率は、80キロメートル毎時以下の場合の約26.9倍であるが、この高速の事故件数が大きく減少していることが、自動車乗車中の死者数が減少している一因と考えられる(図6-5)。
○ シートベルト着用率の向上
 シートベルト着用者の致死率は、非着用者の約11分の1であり、シートベルトが事故の被害軽減に果たす役割は大きいと認められる。シートベルト着用率が5年以降向上していることが、自動車乗車中の死者数が減少していることの一因であると考えられる(図6-6)。
③交通死亡事故の発生状況
○ 状態別にみた交通事故死者数(図6-7)
・ 自動車乗車中の死者数が3,711人で最も多く、全死者数の42.4%となっている。
・ 自動車乗車中の死者数の減少(前年比242人(6.1%)減)、歩行中の死者数の減少(前年比84人(3.3%)減)が顕著である。
○ 年齢層別にみた交通事故死者数の構成率と人口構成率の比較(図6-8)
・ 後期高齢者(75歳以上の者をいう。)、前期高齢者(65歳以上74歳以下の者をいう。)、若年者 (16歳以上24歳以下の者をいう。)の順に死者数の構成率が人口構成率より高くなっており、それぞれ2.7倍、1.6倍、1.4倍となっている。
・ 若年者の死者数は11年連続して減少し1,402人(構成率は16.0%)、前期・後期を合わせた高齢者の死者数は3,216人(36.8%)となっている。
○ 13年中の状態別、年齢層別死者数の特徴(図6-9)
・ 自動車乗車中の死者数については若年者が最も多い(20.5%)。
・ 自動二輪乗車中の死者数については若年者が最も多い(41.1%)。
・ 自転車乗用中の死者数については後期高齢者が最も多い(36.0%)。
・ 歩行中の死者数については後期高齢者が最も多い(39.2%)。
○ 昼夜別にみた死亡事故の発生状況(図6-10)
・ 13年中の死亡事故件数は、昼間(日の出から日没まで)が3,892件(全体の46.3%)、夜間(日没から日の出まで)が4,522件(53.7%)となっている。
・ 夜間の死亡事故件数は昼間の約1.2倍である。
・ 12年と比較して、昼間は3件(0.1%)増加し、夜間は296件(6.1%)減少した。

平成13年の改正道路交通法及び自動車運転代行業法
(1)道路交通法の改正
 我が国の交通情勢は依然として厳しい状況にあり、一方で、規制改革の推進、高齢者・身体障害者の社会参加の進展に応じたバリアフリー化社会への対応、高度情報通信ネットワーク社会の形成に対する社会的要請は高まりを見せている。
 このような状況を受けて、道路交通法の一部を改正する法律が成立し、平成13年6月20日に公布され、14年6月1日より施行された。その主な内容は、次のとおりである。
①運転免許証の更新を受ける者の負担の軽減
・ 優良運転者の運転免許証の有効期間は5年とされているが、それ以外の運転者の運転免許証の有効期間についても、従来の3年から、一定の者(注)を除き、5年とした。
・ 更新期間を従来の1か月から2か月に延長した。
・ 優良運転者(眼鏡等又は補聴器の使用以外の、身体の状態に応じた条件が運転免許に付されている者等を除く。)は、住所地以外の都道府県公安委員会を経由して、更新の申請ができるようにした。
(注) 運転免許取得後5年未満の者、更新日等において70歳以上の高齢者、軽微な違反を繰り返したり、重大な違反を行った運転者
②運転者対策の推進
・ 第二種免許を受けようとする者に、路上試験と応急救護処置等の講習の受講を義務付けた。
・ 自動車運転代行業を営む者による代行運転役務の対象となっている自動車(普通自動車に限る。)を運転しようとする者も、第二種免許を受けなければならないこととした(公布日(平成13年6月20日)から3年以内に施行予定)。
・ 一定の障害がある者等を一律に運転免許を受けることができないとしてきた欠格事由を廃止し、身体的能力及び知的能力については、個別に試験で判断することとした。
・ 更新時に高齢者講習の受講を要する者の範囲を、現在の75歳以上から、70歳以上に拡大した。
・ 運転免許証の記載事項の一部を電磁的記録でもよいこととした。
③悪質・危険運転者対策等の強化
 救護義務違反(ひき逃げ)、飲酒運転、無免許運転、共同危険行為等に対する罰則を引き上げた(表6-1)。
④身体に障害のある運転者の保護
 自動車の運転者は、肢体不自由である者が身体障害者標識(図6-12)を付けて普通自動車を運転しているときは、危険防止のためやむを得ない場合を除き、その自動車の側方に幅寄せ等をしてはならないこととされた。
⑤交通情報提供事業の健全な発展
 国家公安委員会は、交通情報の提供に関する指針を定めることとした。また、交通状況予測を行う交通情報提供事業者に届出制を導入することとした。
(2)自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律の成立
 自動車運転代行業は、飲酒した者等に代わって自動車を運転する役務を提供する営業として、飲酒運転の防止等に一定の役割を果たしているところであるが、これまで原則として自由に営業することができたため、交通事故の発生率が高い、代行運転自動車運転中の違反行為について使用者の責任が問えない、不適正業者による白タク行為や料金の不正収受が多発している等の問題が見受けられた。そのため、その業務の適正な運営を確保し、交通の安全及び利用者の保護を図るため、自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律が制定された。同法は平成13年6月20日に公布され、14年6月1日から施行された。
①自動車運転代行業の定義
 他人に代わって自動車で運転する役務を提供する営業であって、次のいずれにも該当するものをいう。
・ 主として、夜間において酔客に代わって自動車を運転する役務を提供するものであること。
・ 酔客等を乗車させるものであること。
・ 常態として、その自動車に営業用自動車が随伴するものであること。
②認定
 自動車運転代行業を営もうとする者は、一定の欠格事由(暴力団関係者、破産者など)に該当しないことについて都道府県公安委員会の認定を受けなければならないこととされた。
③自動車運転代行業の遵守事項
 自動車運転代行業者は、安全運転管理者の選任、業務中の事故により発生した損害の賠償のための保険契約等の締結等一定の事項を遵守しなければならないこととされた。
④代行運転自動車標識の表示
 自動車運転代行業者は、利用者に代行運転役務を提供するときは、利用者に代わって運転する自動車に代行運転自動車標識(図6-14)を表示しなければならないこととされた。
⑤監督
 自動車運転代行業者の業務の適正を確保するため、指示、営業の停止命令、廃止命令等が設けられた。

交通安全教育の推進
(1)警察の交通安全教育
 国家公安委員会は、地方公共団体、民間団体等が効果的かつ適切に交通安全教育を行うことができるようにするとともに、都道府県公安委員会が行う交通安全教育の基準とするため、交通安全教育指針(以下「指針」という。)を作成し、公表している。
 指針には、交通安全教育を行う者の基本的な心構えや年齢、通行の態様や心身の発達段階に応じた体系的な交通安全教育の内容及び方法が明示されており、警察では、関係機関・団体と協力しつつ、指針を基準として、幼児から高齢者に至るまでの各年齢層を対象に、交通社会の一員としての責任を自覚させるような交通安全教育を実施している。
(2)高齢者の交通安全教育
 警察では、高齢者の交通安全教育を実施するに当たっては、自らが体験し、考えることを重視する立場から、交通事故事例を活用することや、夜間反射材の効果実験を盛り込むことなどにより、参加・体験・実践型の交通安全教育を積極的に推進するように努めている。
(3)交通安全教育推進パイロット事業
 警察では、地域ぐるみの交通安全教育推進のモデル体制を構築し、指針の理念を実現することを目的として、平成12年度及び13年度の2か年にわたり全国100か所において、交通安全教育推進パイロット事業を実施した。
 同事業では、交通安全教育推進協議会を設置して、協議会構成員それぞれの役割分担に基づいて、地域の実態に応じた効果的な交通安全教育を推進するとともに、地域における交通安全教育指導者を育成するなど、推進重点に的を絞った取組みを行った。
(4)事業所等における交通安全教育活動
 一定台数以上の自動車を使用する事業所等においては、安全運転管理者及び副安全運転管理者を選任することとされている。
 警察では、これらの安全運転管理者等に対し安全運転管理に必要な知識等に関する講習を実施しており、平成13年度中の実施回数は2,425回、受講者数は延べ約39万人であった。
 また、安全運転管理者は、指針に従った交通安全教育の実施がその業務として義務付けられていることから、警察としてもこの交通安全教育が適切に実施されるよう、必要な指導を行っている。

交通安全活動の推進
(1)交通安全意識を高めるための交通安全活動
①全国交通安全運動
 交通安全に関する知識の普及と交通安全意識の高揚を図るとともに、交通ルールの遵守と交通マナーの実践が図られるようにすることを目的として、毎年春と秋に全国交通安全運動を実施している。期間中は、国、地方公共団体及び交通安全協会等の民間団体が一致協力して、幅広い国民運動を展開しており、各地域の実態に即して、地域住民が交差点で危険を感じた経験を基にした「ヒヤリ地図」の作成活動等を始めとした地域住民参加型の諸活動を活発に行うことによって交通安全意識の高揚を図るよう努めている。
②民間団体・市町村等と連携した交通安全活動の推進
 交通安全教育、交通安全に関する広報啓発活動等の活動は、警察のみならず、民間団体・市町村等との連携により行うことが重要である。警察では、チャイルドシートのレンタル・リサイクル事業やキャンペーン等広報啓発活動に必要な協力を行うなど、連携を強化し、より効果的な交通安全対策の推進に努めている。
③地域ボランティア等の自主的な交通安全活動の促進
 地域の実態に即した交通安全活動が効果的に行われるためには、地域交通安全活動推進委員や交通指導員等の地域ボランティア等による交通安全教育、広報啓発活動、街頭における交通安全指導等の活動が重要である。警察では、このような指導者を対象とする研修会の開催、交通事故実態に関する情報の提供等の必要な支援を行っている。
(2)交通安全を目的とする諸団体の活動
①都道府県交通安全協会(連合会)及び(財)全日本交通安全協会
 各都道府県の交通安全協会(連合会)は、道路交通法に基づき、都道府県交通安全活動推進センター(以下「都道府県センター」という。)として指定されており、警察と連携し、交通事故に関する相談等の業務を推進するほか、民間の交通安全活動の中心的な役割を担っている。
 (財)全日本交通安全協会は、道路交通法に基づき、全国交通安全活動推進センターとして指定されており、都道府県センターの業務に関する研修等を行うほか、交通安全に関する広報啓発活動等を推進している。
②自動車安全運転センター
 自動車安全運転センターは、道路の交通に起因する障害の防止及び運転免許を受けた者等の利便の増進に資するため、自動車安全運転センター法に基づき、累積点数通知業務(免許停止等の直前の点数に達した者にその旨を書面で通知する業務)、無事故・無違反証明等の業務、交通事故証明業務、安全運転研修業務、調査研究業務等を行っている。
平成13年度の活動内容
・累積点数通知件数…約123万件
・無事故・無違反証明等の証明書の発行件数…約460万件
・交通事故証明書の発行件数…約404万件
・安全運転研修の受講人数…約5万7,000人(延べ)
③(財)交通事故総合分析センター
 (財)交通事故総合分析センター(以下「分析センター」という。)は、道路交通法に基づき、交通事故調査分析センターとして指定されており、交通事故に関する総合的な分析・調査研究を行っている。
 分析センターは、交通事故、運転者、車両、道路等に関する各種データを統合し、多角的なマクロ統計分析を実施するとともに、実際に発生した交通事故を総合的かつ科学的に調査する事故例調査(ミクロ調査)を実施している。
④交通安全関連事業の指導育成
 自動車運転代行業及び自家用自動車管理業については、いずれも適正に事業が行われれば、交通安全に寄与するものであることから、関係行政機関と連携し、(社)全国運転代行協会、(社)日本自家用自動車管理業協会に対する指導等を通じて、事業の健全育成を図っている。

運転者の資質の向上
(1)運転者教育の体系
 運転者教育の機会は、運転免許制度の各段階に設けられており、その流れは次のとおりである。
(2)運転免許を取得しようとする者に対する施策の充実
①自動車教習所における教習の充実
 指定自動車教習所は、初心運転者教育の中心的役割を果たしている。都道府県公安委員会では、教習指導員の資質向上を図るなどして、指定自動車教習所における教習の充実に努めている。また、都道府県公安委員会に届出をした自動車教習所のうち、同公安委員会の指定を受けていない教習所(以下「届出自動車教習所」という。)に対し、教習の適正な水準を確保するために必要な指導及び助言を行っている。
○ 自動車教習所の現状(平成13年末)
・ 指定自動車教習所…1,499か所
・ 指定自動車教習所の卒業者で運転免許試験に合格した者…197万4,554人
・ 指定自動車教習所の卒業者の合格者全体に占める割合…94.8%
・ 届出自動車教習所…259か所
②取得時講習
 普通免許、大型二輪免許又は普通二輪免許を受けようとする者は、それぞれ普通車講習、大型二輪車講習又は普通二輪車講習のほか、応急救護処置講習を受けなければならないこととされており、原付免許を受けようとする者は、原付講習を受けなければならないこととされている。また、平成13年の道路交通法改正により、大型第二種免許又は普通第二種免許を受けようとする者についても、応急救護処置講習等の取得時講習を受けなければならないこととされた。
 なお、指定自動車教習所及び特定届出自動車教習所を卒業した者は、取得時講習と同内容の教育を受けているため、取得時講習を受ける必要はないこととされている。
(3)運転免許取得後の教育の充実
①更新時講習
 運転免許証の更新を受けようとする者は、更新時講習を受けなければならないこととされている。この更新時講習は、更新の機会をとらえて定期的に講習を行うことにより、安全な運転に必要な知識を補い、運転者の安全意識を高めることを目的としており、受講対象者の区分に応じ、優良運転者等講習と一般運転者講習とに分かれている(平成13年の道路交通法等の改正により、受講対象者の区分を優良運転者、一般運転者、違反運転者及び初回更新者の4区分として実施することとされた。)。また、更新時講習の実施に当たっては、高齢者学級、若者学級、二輪車学級等の特別学級を編成することにより、受講者の態様に応じた内容の講習となるよう努めている。
②高齢者講習
 運転免許証の有効期間が満了する日における年齢が75歳以上の者については、更新前に高齢者講習を受講することが義務付けられている(13年の道路交通法改正により、受講を要する者の範囲が70歳以上の者とされた。)。この高齢者講習は、危険予測や事故事例等に関する視聴覚教材を用いた講義のほか、コース又は道路における自動車等の運転、動体視力検査器等を用いた検査を通じて、運転に必要な適性に関する調査を行い、受講者に自らの身体機能の変化を自覚してもらうとともに、その結果に基づいて助言・指導を行うことを内容としている。13年中には398,927人が受講した。
③自動車教習所における交通安全教育
 自動車教習所は、地域住民に対する交通安全教育も行っており、地域における交通安全教育機関としての役割を果たしている。具体的には、運転免許を受けている者を対象として、運転の経歴や年齢等の区分に応じたいわゆるペ-パードライバー教育、高齢運転者教育等の交通安全教育を行っている。こうしたもののうち、一定の基準に適合するものについては、その水準の向上と免許取得者に対する普及を図るため、都道府県公安委員会の認定を受けることができるとされている。

危険運転者の排除と改善
(1)運転者の危険性に応じた行政処分の推進
 警察では、道路交通法違反を繰り返し犯す運転者や交通事故を起こす運転者を、道路交通の場から早期に排除するため、行政処分の迅速・確実な実施に努めている(表6-4)。
(2)危険運転者の改善のための教育
 道路交通法等に違反する行為をし、一定の基準に該当する者や行政処分を受けた者に対して、下表のとおり危険性の改善を図るための教育を行っている(表6-5)。
(3)運転免許試験
 運転免許を受けようとする者は、都道府県公安委員会の行う運転免許試験を受けなければならないこととされ、運転免許試験は免許の種類ごとに、自動車等の運転に必要な適性、技能及び知識について行うこととされている。
 運転免許試験のうち、学科試験は、国家公安委員会が作成する教則の範囲内で、自動車等の運転に必要な知識について行うこととされており、さらにイラストを使用して現実の交通場面での認知力・判断力を問う問題も取り入れている。
(4)障害を有する運転免許取得希望者に対する利便性の向上
 警察では、障害を有する運転免許取得希望者に対する利便性の向上を図るため、運転免許試験場において身体障害者用の技能試験車両の整備に努めているほか、受験者である身体障害者が持ち込んだ車両による技能試験を実施している。また、運転適性相談窓口を設け、病気や障害に係る運転適性等について知識の豊かな職員を配置し、相談に応じているほか、運転免許試験場施設の整備・改善、字幕入り講習用ビデオの作成・活用等、障害者のニーズに応じた施策の推進に努めている。
 このほか、指定自動車教習所に対しても、身体障害者用教習車両の整備や、身体障害者が持ち込んだ車両による教習の実施等に努めるように指導している。
 また、平成13年の道路交通法改正により、障害者等に係る運転免許の欠格事由が廃止され、障害者等について自動車の安全な運転への支障の有無を個別に判断することとされたことを踏まえ、障害者等に対する運転適性相談活動のより一層の充実を図っている。
(5)運転免許証のICカード化
 運転免許証の偽変造防止、プライバシー上の観点から本籍を運転免許証表面から削除してほしいとの要望があることへの対応等のため、高度なセキュリティ機能を有する電子技術を応用した運転免許証のICカード化について、平成13年の道路交通法改正により、運転免許証の記載事項の一部を電磁的方法により記録できることとされ、その具体化に向けた検討を進めている。
○ ICカード化によるメリット
・ 運転免許証の偽変造防止(セキュリティの向上)~精巧な偽造事案に対処
・ プライバシー保護~本籍欄の運転免許証上からの削除
・ 各種運転免許手続の簡素合理化と申請負担の軽減~各種申請書類の自動作成
・ 国際標準化への対応~運転免許証の国際標準規格に対応
・ 交通警察業務の合理化・効率化~切符作成システム等による所要時間短縮

道路交通のIT化
(1)交通管制の高度化
 自動車交通量が年々増加する中、都市部においては、慢性化した交通渋滞と多発する交通事故が都市機能を著しく阻害している。
 警察では、信号機や交通管制システムの機能の高度化を図り、この問題を解決しようとしている。交通管制センターは、その中心となる施設であり、道路上の信号機、交通情報板、車両感知器等と接続され、複雑・過密化した都市の自動車交通を適切に配分・誘導している。
○ 交通管制センターの機能
・ 交通情報の収集
 車両感知器等を用いて車両の交通量、走行速度等の交通情報を収集し、分析する。
・ 信号機の制御
 収集した交通情報を基に、時々の交通状況に応じて適切に信号制御をする。
・ 交通情報の提供
 渋滞情報等を、交通情報板、ラジオ、カーナビゲーション装置等を介して提供する。
○ 信号制御の高度化の例
・ 感応化(点の制御)
 車両感知器により把握された交通量に応じて青信号の時間を調整するもの
・ 系統化(線の制御)
 同一路線上の信号機を連動させ、赤信号により停止する回数を少なくするもの
・ 集中制御化(面の制御)
 地域全体の信号機を連動させ、交通管制センターの指令の下に交通の流れを整序化するもの
(2)警察によるITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)
①光ビーコンの整備拡充
 警察は、警察の行うITSのキーインフラとなっている光ビーコン(注)を、都市部の主要な一般道路等をおおむねカバーできるよう約6万基整備することを目指している。
注: 通過車両を感知して交通量等を測定するとともに、車載のカーナビゲーション装置等と交通管制センターの間の情報のやりとりを媒介する路上設置型の赤外線通信装置
②公共交通の通行を支援するITS
 警察では、一度に多くの者を輸送することができ、年少者や高齢者も多く乗車するバスや、その他の公共性の高い業務に用いられる車両の安全かつ円滑な通行を支援するためのシステムを整備している。
・ 公共車両優先システム(注1)
 バス専用・優先レーンの設定等の交通規制を行うとともに、バスがなるべく停止しないように進行方向の信号を優先的に青にすることにより、バスの定時運行と利便性向上を図るシステム。
 平成13年度末現在、18都道府県で運用
・ 車両運行管理システム(注2)
 光ビーコンにより収集したバス、貨物車等の事業用車両の走行位置等の情報を事業者に提供することにより、事業者が行う車両の運行管理を支援するシステム。
 13年度末現在、7道府県で運用
③緊急車両の通行を支援するITS
 警察では,人命救助その他の緊急業務に用いられる車両の安全かつ円滑な通行を支援するためのシステムを整備している。
・ 現場急行支援システム(注3)
 警察用車両や救急・消防用車両を優先的に走行させる信号制御等を行うことにより、緊急車両の現場到着時間の短縮及び緊急走行に伴う事故防止を図るシステム。
 平成13年度末現在、東京都で運用
・ 緊急通報システム(注4)
 衛星を利用して位置を測定するGPS技術を活用することにより、自動車乗車中の事故発生時等に携帯電話等を通じてその発生場所の位置情報等を通報するシステム。
 13年度末現在、32都府県で運用
注1: PTPS‥‥Public Transportation Priority Systems
注2: MOCS‥‥Mobile Operation Control Systems
注3: FAST‥‥FAST emergency vehicle preemption systems
注4: HELP‥‥Help system for Emergency Life saving and Public safety

交通情報提供の新時代
(1)交通情報提供の高度化
 慢性的な交通渋滞が国民生活に多大な影響を及ぼしている中、警察では、車両感知器等により収集した交通量、車両の走行速度等に関するデータを交通管制センターにおいて集約・分析し、これを信号制御の最適化に活用するとともに、交通情報として広く道路利用者に提供している。
 これにより、道路利用者が道路の混雑の状態、目的地までの所要時間等を的確に把握し、安全かつ快適に運転することができるようになるほか、交通の流れが適宜分散し、交通渋滞や交通公害の緩和が図られることとなる。
 交通情報の提供には、これまでにも新聞、テレビ、カーラジオ、交通情報板等様々な媒体が用いられてきたが、最近では、媒体の多様化が一層進展しており、特にカーナビゲーション装置の普及がめざましい(表6-6)。その累積出荷台数は、平成13年度末現在、約905万台に達している。
 警察では、関係機関・団体と連携して、VICS(Vehicle Information and Communication System:道路交通情報通信システム)によるカーナビゲーション装置への交通情報提供を推進しており、時々刻々と変動する道路交通の状況を地図画面上にリアルタイムで表示し、運転者の適切な経路選択を支援している(図6-19)。
(2)交通情報提供事業の活発化
 情報通信技術の飛躍的発展に伴い、カーナビゲーション装置のほか、携帯電話、インターネット等を活用して交通情報を提供する民間事業が活発化している。平成11年に電気通信技術審議会が行った試算によると、22年には、関連市場規模が約1兆円に上るとされている。
 民間事業者により正確かつ適切に交通情報が提供されれば、交通事故の防止や交通渋滞の緩和等が図られるため、警察では、関係団体の協力の下、警察の保有するリアルタイムの交通情報を民間事業者の求めに応じてオンラインで供与するシステムを構築するなどして、民間事業者が付加価値の高い交通情報を作成することができるような環境を整備している。
 また、交通情報提供事業が交通の安全と円滑に資するものとなるよう、13年の道路交通法の一部改正により、
・ 交通情報提供事業者は国家公安委員会が作成する交通情報の提供に関する指針に従って正確かつ適切に交通情報を提供しなければならないこと。
・ 道路の混雑の状態や目的地までの所要時間を予測する事業を行う者は国家公安委員会に届出をしなければならないこと。
などの規定が整備された。
 この指針には、
・ 歩行者の交通事故を防止するため、住宅地域や商店街の細街路等に車両を誘導してはならないこと。
・ 安全運転を妨げることのないよう、自動車走行中にはカーナビゲーション装置の画面にテレビ番組やビデオ映像を表示してはならないこと。
などの規定が定められている。

道路交通のバリアフリー化と安全通行権の確保
(1)「歩行者主権」の回復
 平成12年中の交通事故死者数に占める歩行者及び自転車利用者の割合は4割を超え、欧米各国と比べても著しく高い水準にある(表6-7)。また、13年中の交通事故死者数に占める高齢者の割合は36.8%となり、歩行者に限れば、その割合は61.8%にも達している(表6-8)。
 このように、少子高齢化が進展する中、道路交通環境をくるま中心からひと中心のものへと転換させ、高齢者、子ども、身体障害者等を含む歩行者・自転車利用者の交通事故被害を抑止することが急務となっていることから、警察では、これらの者が道路を安全かつ快適に通行することができるよう、「道路交通のバリアフリー化」を推進している。
(2)地域の特性に応じた交通安全対策の推進
 警察では、徒歩や自転車で通学する児童や生徒の多い地域、高齢者や身体障害者が利用する施設の周辺地域、歩行者で賑わう商店街等の存する地域等において、通過交通量の減少、走行速度の低下等を目的とした交通規制を行ったり、高齢者、身体障害者等が利用しやすい信号機、道路標識等を整備したりするなど、それぞれの地域の特性に着目した交通安全対策を推進している。
 また、平成13年度第二次補正予算では、交通事故が多発するなど特に交通安全対策を実施する必要性の高い箇所を重点に、約4,000基の信号機を新設するなどの緊急対策を講じたところである。
(3)バリアフリー対応型信号機等の整備
 高齢者や身体障害者の中には、信号表示を識別しにくい、歩く速度が遅いなどの理由により、道路の横断に不安を覚える者も少なくない。このため、警察では、音響により信号表示の状況を知らせたり、押ボタン等の操作により歩行者用信号の青の時間を延長したりすることのできる機能を有する信号機の整備を推進している。また、道路標識及び道路標示を見やすく分かりやすいものとするため、表示板を大きくしたり、夜間に自動車の前照灯を反射しやすい素材を用いたりするなどの対策を講じている。
(4)歩車分離式信号の運用
 信号交差点を横断中の歩行者が右左折する自動車と接触する事故を防止するためには、両者の進路が交わらないよう両者を別の時間に進行させる信号表示方式を用いることが有効である。他方、この方式によれば、自動車に割り当てられる青信号の時間が相対的に短くなり、交差点を通過することのできる交通量が減少することにより、道路の混雑を招くおそれもある。
 このため、警察では、平成14年1月から、全国100の交差点にこの方式を導入し、利用者の意見を聴取するとともに、交通の安全と円滑に与える影響を分析して、今後の運用方針を検討していくこととしている。

交通管理による環境対策
(1)交通公害等の現状
①大気汚染・地球温暖化の現状
 自動車から排出される窒素酸化物、浮遊粒子状物質等による大気汚染は、都市部を中心に依然として深刻な状況にある(表6-9)。
 また、地球温暖化は、自然の生態系や人の健康に悪影響を及ぼすものとして国際的な問題となっているが、その原因となる二酸化炭素は、自動車から排出されるものが全体の18.6%を占めており、運輸部門からの排出量は増加を続けている(図6-22)。
②道路交通騒音の現状
 道路交通騒音に関する環境基準の達成状況は深刻な状況にあり、全国3,123地点のうち、昼間(6時~22時)及び夜間(22時~6時)ともに環境基準を達成していない地点は1,427地点(45.7%)に及んでいる(表6-10)。
(2)警察の行う環境対策
①交通管制技術の高度化
 警察では、深刻化する交通公害の低減を図るため、
・ 交通状況に即応した信号機の制御等による交通の円滑化
・ きめ細かな交通情報の提供による交通流・量の誘導及び分散
・ バス優先の信号制御等によるマイカー需要の低減と交通総量の抑制
等高度な交通管制技術を活用した対策を講じている。
②環境対応型交通管理プロジェクト
 警察では、学識経験者、関係省庁、地方公共団体等と連携し、地区全体の交通公害の発生を極小化させるための交通管理施策の在り方について検討を進めている。
 平成14年度からは、東京都と神奈川県の都県境付近をモデル地区として、交通流データと大気汚染データをリアルタイムで交通管制センターに集約し、その相関関係を分析するとともに、信号制御の高度化、交通情報板を用いたう回誘導、都県境を越える信号制御の連動等により交通公害を低減するプロジェクトを推進している。
③環境対策のための交通規制
 警察では、特に、道路交通騒音対策、振動対策等の観点から、
・ 通過車両の走行速度を低下させ、エンジン音等を低く抑えるための最高速度規制
・ エンジン音等の大きい大型車を沿道から遠ざけるための中央寄り車線規制
等の対策を、沿道地域の交通公害の状況や道路交通の実態に応じて実施している。

効果的な交通指導取締りの推進
(1)悪質・危険性、迷惑性の高い運転行為への対策の強化
 道路における交通の安全と円滑を確保するため、街頭における機動的な交通取締り活動等を強化し、違反行為の未然防止に努めるとともに、無免許運転、飲酒運転、著しい速度超過、信号無視等交通事故に直結する悪質・危険性の高い違反及び迷惑性が高く住民からの取締り要望の多い違反に重点を置いた取締りに努めている(図6-24)。
(2)使用者等の背後責任追及
 企業の事業活動に関して行われた放置駐車、過積載運転、過労運転、最高速度等の違反やこれらに起因する事故事件については、運転者の取締りにとどまらず、使用者に対する指示及び自動車の使用制限命令を行うほかに、これらの行為を下命・容認した使用者等を検挙するなど、その背後責任の追及に努めている(図6-25、図6-26、図6-27、図6-28)。

迅速・適正な交通事故事件捜査の推進
(1)交通事故事件の検挙状況
 平成13年中、交通事故に係る業務上(重)過失致死傷事件の検挙件数は84万5,909件(前年比3万3,270件(4.1%)増)であった。また、物件事故の発生は約322万件であった(表6-11)。
(2)適正な交通事故事件捜査の推進
 各都道府県警察本部の交通捜査担当課に事故捜査指導官を配置し、警察署が取り扱う事故事件のうち、事故原因の究明が困難なケース等について、実地に指導を行うなど、組織的な捜査により、適正な交通事故事件捜査の推進に努めている。
 特に、一方の当事者が死亡、重体等のため事情聴取ができない事故や、当事者の言い分が食い違うなどする事故の場合には、初期の段階から重点的な捜査を推進し、目撃者や物証の確保等に努めるなどしている。
 また、ひき逃げ事件については、迅速な初動捜査を徹底するとともに、現場こん跡画像検索システム等の交通鑑識資機材の効果的活用により、被疑者の早期検挙に努めている。
(3)交通事故事件捜査の科学化・合理化
 ち密かつ科学的な交通事故捜査を求める国民の声を踏まえ、衝突実験に基づく事故解析等の専門的教養を行う交通事故鑑定専科等により、高度な知識技能を有する交通捜査員の養成を図っている。
 また、交通事故の発生件数が依然として増加傾向にある中で、交通事故当事者の負担軽減や迅速な事故処理による円滑な交通流の早期回復等の要請にこたえるため、交通事故自動記録装置等の各種捜査支援システムの効果的活用、一定の要件を満たす軽微な物件事故について現場見分を省略する現場見分省略制度の積極的な運用等に努めている。
〈交通事故自動記録装置の概要〉
 この装置は、センサー部(ビデオカメラ、マイク)及び制御機(音源識別部、画像メモリー、VTR)から構成されており、交差点内で交通事故が発生した場合、衝突音やスリップ音等を感知して、その前後の状況を自動的に記録するものである。
 この装置により、事故当時の車両の走行状況、信号現示等がVTRに記録され、客観的な資料に基づく事故状況の早期把握が可能になるとともに、事故当事者の現場立会い時間の短縮や事故に伴う交通渋滞の早期解消が図られることとなる。

総合的な暴走族対策の推進
(1)暴走族の実態と動向
 平成13年末現在、警察が把握している全国の暴走族の総数は約2万6,400人である。この内訳は、爆音暴走等を集団で行う共同危険型の暴走族約2万2,700人、山岳道路等でコーナリング等の運転技術を競う「ローリング族」、400メートルの直線区間の走行速度を競う「ゼロヨン族」等の違法競走型の暴走族が約3,700人となっている。
 暴走族の引き起こす犯罪は、道路交通関係法令違反のほか、刑法犯、薬物乱用等様々な罪種にわたっており、暴走族同士のナイフ、鉄パイプ等を利用した対立抗争や脱会者等に対するリンチ事件のほか、暴走族に関係のない人を巻き込んだ凶悪事件も発生している。
 また、一部には上納金を納めるなど暴力団とかかわりが深く、その予備軍的な存在となっているグループも確認されている。
(2)暴走族の取締りとグループの解体
 警察では、交通、少年、地域等各部門が連携しながら、共同危険行為等の道路交通法違反や番号表示義務違反等の道路運送車両法違反を始めとする取締りにより、グループの解体や構成員の離脱を図っている(表6-12)。
 また、いわゆる初日の出暴走等の特に大規模な集団暴走の取締りに際しては、機動隊を投入して暴走行為を封圧するなどしてその取締りを徹底している。
(3)関係機関等と連携した諸対策の推進
 最近の暴走族の実態や、これに対する国民の強い取締り要望にかんがみ、警察では、交通、少年部門等が連携し、関係機関等と協力して次のような対策を推進している。
○ 関係機関等と連携した暴走族対策
・ 平成13年2月、警察庁を始めとする暴走族対策関係8省庁により「暴走族追放気運の高揚」、「家庭、学校等における青少年の指導の充実」、「暴走行為阻止のための環境整備」、「暴走族に対する指導取締りの強化」等を柱とする暴走族対策の強化についての申合せを行い、政府一体となった暴走族対策をより一層強力に推進している。
・ 13年4月から、少年問題、暴走族問題に関する学識経験者、有識者により構成される「暴走族への加入防止等施策検討懇談会」が開催され、11月、暴走族への加入防止、離脱促進対策の強化に向けた提言を受けた。
・ 地域における暴走族追放気運の高揚を図るため、地方公共団体における暴走族根絶条例の制定及び運用に協力している。
○ 少年が暴走族に加入することを阻止するための対策等
・ 関係機関・団体等と連携し、中学校、高校において暴走族加入阻止教室を開催している。
・ 暴走行為等で検挙した少年等に対して、家庭、学校、暴走族相談員、保護司等と連携して、暴走族から離脱させる措置を推進するなど再犯の防止に努めている。

総合的な駐車対策の推進による都市の再生
(1)違法駐車の現状
 違法駐車は、幹線道路における交通渋滞を悪化させる要因となるだけでなく、歩行者等の安全な通行の障害となるほか、緊急自動車の活動に支障を及ぼすなど、住民の生活環境を害し、国民生活全般に大きな影響を及ぼしている。
 また、違法駐車は、交通事故の原因ともなっており、平成13年中には駐車車両への衝突事故が2,933件発生し、109人が死亡している。
 さらに、110番通報された苦情・要望のうち27.3%が駐車問題に関するものであり、この問題への国民の関心の高さがうかがわれる。
(2)違法駐車対策の推進
①違法駐車の取締り
 駐車違反の取締りは、幹線道路、横断歩道やバス停留所付近等における悪質、危険性、迷惑性の高い違反に重点を置いて行っている。平成13年中の駐車違反取締り件数は181万6,870件であり、42万9,809台をレッカー移動した。
 また、車両の放置行為を防止するために必要な運行管理を怠っている使用者に対する指示及び自動車の使用制限命令、放置行為の下命・容認事件の検挙等により、違法駐車の背後責任の追及にも努めている。
②きめ細かな駐車規制
 警察では、道路の構造や地域の交通実態を勘案して都市全体の駐車の整序化を図ることに重点を置き、
・ 幹線道路等特に必要がある区間における駐車規制の実施
・ 駐車需要が減少する特定の時間帯、曜日等における駐車規制の解除
・ 都市部の短時間駐車需要に対応するためのパーキング・メーター及びパーキング・チケット発給設備の設置
等、駐車の効用にも配意した、きめ細かな駐車規制を行っている。
コラム
スムーズ東京21
 東京都内では、違法駐車に起因する交通渋滞を解消し、都市機能の回復を図るため、駐車規制を含めた総合的な駐車対策である「スムーズ東京21」を推進している。
 通常、交差点の側端から5mとされている駐停車禁止区間を30mに延長し、そこを赤色のカラー舗装(通称「ギラギラ舗装」。写真参照)で目立たせることにより交差点付近の駐停車車両を排除する施策や、必要やむを得ない短時間の路上荷さばきの需要に応じるため、荷さばき用パーキング・メーター(右下写真)を設置し、駐車の整序化を図る施策等を地方公共団体と連携して実施している。
③保管場所確保対策の推進
 道路が自動車の保管場所として使用されることを防止するため、警察では、自動車の保管場所の確保等に関する法律に基づき、保管場所証明書の交付、軽自動車の保管場所に係る届出の受理等を行うとともに、道路を自動車の保管場所として使用するいわゆる青空駐車や、自動車の使用の本拠の位置、保管場所の位置等を偽り、保管場所証明を受けるいわゆる車庫とばしの取締りを行っている。
[事例] 建築物解体会社社長(61)は、自動車から排出される窒素酸化物の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法(自動車NOx法)の適用を免れるため、同法の適用地域外に営業実体のない架空の支社を設け、自社所有の大型貨物自動車12台について同所を使用の本拠の位置とする虚偽の申請により不正に変更登録を受けた。13年10月、電磁的公正証書原本不実記録・同供用罪で検挙した(茨城)。

高速道路における交通警察活動
(1)高速道路ネットワークの現状
 現在、従来の高速道路に比べてかなりの高規格となる第二東名・名神高速道路等の建設が進められている。他方、列島横断道路として整備される路線は、中央帯により往復の方向別に分離されていない部分が極めて多く、また、山間部を通過することから雪氷対策が必要となるなど、交通管理の難しい路線が増加する傾向にある。
・高速道路の全供用距離(平成13年末現在)…116路線、8,644.3キロメートル(高速自動車国道6,897.4キロメートル、指定自動車専用道路1,746.9キロメートル)
(2)高速道路における交通事故の現状
 高速道路における交通事故は、増加傾向にあり、平成8年から連続減少していた死者数も11年を境として増加傾向となった。
 高速道路においては、高速走行のため、わずかな運転上のミスが重大事故に結び付きやすく、しかも死傷者が多数に及ぶ場合が多い。13年の高速道路の死亡事故率(発生件数に占める死亡事故件数の割合)は、その他の道路の2.6倍となっている。また、高速道路を走行する車両には貨物自動車による重大事故が多く発生している。
 13年中の高速道路における死亡事故のうち、24.1%が大型貨物自動車によるものであった。
(3)高速道路における交通の安全と円滑の確保
①大型貨物自動車等に対する事故防止対策
 大型貨物自動車等について、最も左側の車線を通行すべき車両通行帯として指定する交通規制(第一通行帯通行区分規制)を東名高速道路等8路線の区間において実施しているところであるが、同規制の一層の定着化を図るなどして、事故防止に努めている。
②安全対策の積極的展開
 高速道路の計画段階から、道路管理者と道路線形の改良、ランプウェイの取付け位置等について必要な協議を行うとともに、最高速度規制等の交通規制の決定に当たっては、道路構造、気象条件等を総合的に勘案し、その適正を期している。また、既に供用開始されている道路に対する交通安全施設整備についても、道路管理者との間において、融雪・凍結防止施設、排水性舗装等の整備や中央分離帯施設の改良に関して事前に協議し、また、交通規制の内容を運転者が認識しやすいようにオーバーヘッド型の標識の採用等の対策を進めている。
③高速道路における交通違反取締状況
 高速道路における交通の安全と円滑を確保するため、無免許運転、飲酒運転、著しい速度違反を始め、通行帯違反、車間距離不保持等の悪質・危険性、迷惑性の高い違反に重点を置いた交通違反の指導取締りに努めている(図6-32)。

国際化への対応
(1)交通安全教育に係る国際協力の推進
 我が国の警察は、アジア諸国に対し、現地において交通安全教育の手法を指導したり、アジア諸国の交通安全担当者を日本に招き、意見交換をしたりして、交通安全教育に係る国際協力を積極的に推進している。平成13年中は、我が国からはラオス、タイに専門家として職員を派遣し、ラオスからは公共事業省幹部を受け入れた。
(2)ITSの国際化への対応
 ITSについては、日米欧を中心とした世界的規模の研究開発が進められており、我が国の警察は、その中で世界各国と協力しつつ、重要な役割を演じている。
①ITSに関する国際協力の推進
 ITS世界会議は、ITSに関する世界規模での情報交換と協力体制の構築を目的として平成6年以降毎年、欧州地域、アジア・太平洋地域及びアメリカ地域の3地域持ち回りで開催されており、我が国の警察はこれに積極的に参加している。13年9月30日から10月4日には、第8回会議が世界46か国から産学官の関係者約3,800人の参加を得てオーストラリアのシドニーで開催され、我が国の警察からも多数参加し、研究開発・普及の状況等について発表等を行い、ITSに関する国際協調の推進を図った。
 また、11年9月には、米国運輸省交通安全局との間で、交通安全、高度道路交通システム及び緊急時対応の協力に関する文書に署名し、13年度には、職員を米国運輸省に派遣するとともに、日本で合同会議を開催した。
②ITS関連技術の国際標準化への対応
 我が国の警察は、6年から、ISO(国際標準化機構)における、光ビーコンを始めとするUTMS、音響信号機の視覚障害者用付加装置、車両信号灯器等の国際標準の策定に向けた取組みに協力している。
 また、発展途上国への交通管理技術の移転に取り組んでおり、タイに専門家として職員を派遣し、交通管理に関する技術協力を行っている。
(3)国際化に対応した運転免許行政
①国外運転免許証の交付等
 国際化の進展により、国外運転免許証の交付件数は、最近数年は、年間約40万件前後で推移している。警察では、国外運転免許証の申請・交付窓口の拡大、電子計算機処理による国外運転免許証の発行事務の迅速化等、国際化に対応した事務の合理化を促進している。
・ 平成13年の交付件数…38万1,886件(10年前と比較して約1.2倍)
②国内の外国人運転者施策
 我が国に滞在する外国人のうち、我が国の運転免許を有する者は、13年末に53万9,404人となっている。
 外国の行政庁の運転免許を有する者については、一定の条件の下に運転免許試験のうち技能試験及び学科試験を免除することができることとされている。13年中にこの制度により交付した我が国の運転免許証の数は2万7,726件であり、また、140の外国行政庁の運転免許を有する者に及んでいる。
 一方、国際化の進展に伴い、真正でない外国の運転免許証を使用し運転免許試験の一部免除制度を悪用して我が国の運転免許を取得しようとする事案が発生していることから、警察では、慎重な審査を行うことにより不正取得の防止に努めている。また、偽造又は不正取得された国際運転免許証により自動車を運転する事案が発生していることから、その発見検挙に努めている。
③運転免許管理技術等の移転
 発展途上国から我が国の運転免許管理技術や運転者教育制度に対して高い関心が寄せられており、警察では、これらの技術や制度を積極的に紹介している。8年から運転免許管理技術等に関するセミナーを毎年開催しており、13年10月には、中国の運転免許行政担当者4人を招いて、我が国の運転免許に関する法制度、運転免許証作成技術、運転者教育関連施設等を紹介した。また、ベトナムに運転免許管理技術の専門家を派遣し、協力の実施に向けた調査を行った。
コラム
国際協力の第一線から(ラオス)・・・交通安全教育の指導に当たった日本の警察官の手記
 悲惨な交通事故を防止するためには、まず交通安全教育が重要である。その第一歩として、私は、ラオスの将来を担う小中学生等約3万8,000人に対し、現地の警察とともに、登下校時の道路横断指導や交通安全講習を行った。
 私の指導に対する彼らの姿勢は真剣そのものであり、私としても、このラオスに安全な交通社会を確立しなければならないという使命感をより強くしたのだった。


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