第2節 少年の非行防止と健全育成

少年非行の概況
(1)少年非行情勢
 平成13年は、刑法犯少年の検挙人員が10年以降3年ぶりに増加となったほか、凶悪犯が9年以降5年連続で、ひったくりが11年以降3年連続で、それぞれ2,000人を超えるなど、非行の凶悪化・粗暴化の状況がうかがわれ、依然として深刻な状況にある。
 昭和24年以降平成13年までの刑法犯少年の検挙人員、人口比(同年齢層の人口1,000人当たりの検挙人員をいう。)の推移は、図3-10のとおりである。
 13年中の少年非行の状況は、以下のとおりである。
・ 刑法犯総検挙人員に占める少年の割合は42.6%で、前年に比べ0.1ポイント減少
・ 刑法犯少年の人口比は16.0で、前年に比べ1.1増加
・ 初発型非行(万引き、自転車盗、オートバイ盗及び占有離脱物横領の4種をいう。)で検挙した少年は9万7,900人
・ 触法少年(刑法)の補導人員は2万67人
(2)平成13年の少年非行の主な特徴
①深刻な状況にある凶悪犯罪
○ 凶悪犯で検挙した刑法犯少年は、5年連続で2,000人を超えた。
○ 特に、強盗の検挙人員は、昭和42年以降の最悪を記録した平成9年に次ぐ人員となった。
②ひったくりの急増
○ 13年中にひったくりで検挙した少年は2,190人。
○ ひったくりの総検挙人員に占める少年の割合は71.2%。
(3)校内暴力、いじめに起因する事件
 「校内暴力事件」とは、学校内における教師に対する暴力事件、生徒間の暴力事件、学校施設、備品等に対する損壊事件をいう。
 「いじめ」とは、自分より弱い者に対して一方的に、身体的・心理的攻撃を継続的に加え、相手が深刻な苦痛を感じているものをいい、起こった場所は学校の内外を問わない。
○ 平成13年中に警察で取り扱った校内暴力事件は848件、検挙・補導人員は1,314人。
○ そのうち、教師に対する暴力事件は470件、検挙・補導人員は514人。
(4)性の逸脱行為・被害
○ 平成13年中に性の逸脱行為・被害で補導・保護した少年(注)は4,354人。
○ そのうち、「遊ぶ金欲しさ」を動機とする少年は1,617人。
注: 「性の逸脱行為・被害で補導・保護した少年」とは、売春防止法の売春をした少年、相手方となった少年、児童福祉法第34条第1項第6号の淫行させる行為により淫行した児童、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下「児童買春・児童ポルノ禁止法」という。)違反の買春した少年、相手方となった児童、描写された児童、刑法第182条の淫行勧誘罪の被害者となった女子少年、青少年保護条例のみだらな性行為又はわいせつな行為をした少年、相手方となった少年及びこれらには該当しないが、健全育成上支障のある性的行為をしていた少年をいう。なお、11年以前は女子のみの数値である。
(5)少年による不良行為
○ 平成13年中の補導人員を態様別にみると、喫煙が45.1%、深夜はいかいが38.1%。

総合的な少年非行防止対策
(1)少年事件捜査力の充実強化
 警察では、全都道府県警察の少年事件担当課に少年事件捜査指導官を設置し、少年事件における非行事実の厳密な立証の徹底等の指導に当たらせている。また、少年事件捜査の核となる少年事件特別捜査隊等を平成13年6月までに全都道府県警察の少年事件担当課に設置し、警察署との連携及び捜査力の集中投入による迅速・的確な捜査に努めている。
(2)少年相談活動
 警察では、少年の非行、家出、自殺等の未然防止とその兆候の早期発見や犯罪、いじめ、児童虐待等に係る被害少年等の保護のために少年相談の窓口を設け、少年や保護者等からの悩みや困りごとの相談を受け、教育学、心理学等に関する知識を有する少年相談専門職員や経験豊富な少年補導職員、少年係の警察官が必要な助言や指導を行っている。また、「ヤング・テレホン・コーナー」等の名称で電話による相談窓口を設けているほか、ファックスの設置やフリーダイヤルの導入等、少年が相談しやすい環境の整備を図っている。
 また、相談の内容についてみると、少年自身からの相談では交友関係に関するものが、保護者等からの相談では、非行問題に関するものが最も多くなっている(図3-16)。
(3)少年の社会参加、スポーツ活動
 警察では、関係機関・団体、地域社会と協力しながら、環境美化活動、社会福祉活動等の社会奉仕活動や伝統文化の継承活動、地域の産業の生産体験活動等地域の実態に即した様々な少年の社会参加活動を展開している。また、スポーツ活動については、特に、警察署の道場を開放して地域の少年に柔道や剣道の指導を行う少年柔剣道教室を全国的に展開しており、平成13年中は約800警察署において、約4万7,000人の少年が参加した。
[事例] 隅田川クリーンキャンペーンと称して少年警察ボランティア等と連携し、地域の小・中学生とともに、吾妻橋から台東リバーサイドまでの落書き消し活動と清掃活動等を実施している(警視庁)。
(4)ボランティア活動
 警察では、少年の非行を防止し、その健全な育成を図るため、約6,000人の少年指導委員、約5万1,000人の少年補導員、約1,100人の少年警察協助員等のボランティアを委嘱している(平成14年4月1日現在)。
○ 少年指導委員
・ 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に基づき、都道府県公安委員会から委嘱を受け、少年を有害な風俗環境の影響から守るための少年補導活動や風俗営業者等への協力要請活動に従事
○ 少年補導員
・ 街頭補導活動、環境浄化活動を始めとする幅広い非行防止活動に従事
○ 少年警察協助員
・ 非行集団の解体補導活動に従事
 警察では、少年補導職員等の警察職員とこうしたボランティアとの連携の強化を図っており、警察職員とボランティアとが一体となって、地域に密着したきめ細かな活動の展開に努めている。
 また、(社)全国少年補導員協会は、全国各地で行われている少年補導員等の活動を支援しているほか、13年11月には、ボランティア、PTA等約400人の参加を得て少年問題シンポジウム「21世紀を担う少年のために~見つけよう非行の兆し、手を打とう今」を(財)社会安全研究財団と共催するなど、少年の非行防止と健全育成を目指した活動を推進している。

少年の薬物乱用問題
(1)少年の薬物乱用の現状
(2)少年の薬物乱用の原因、背景
○ 薬物の危険性、有害性についての認識の欠如
・ 覚せい剤がダイエットに効果があるなどと誤った認識を持っている。
○ 薬物への抵抗感の希薄化
・ 覚せい剤をファッション感覚で「S(エス)」や「スピード」等と呼んでいる。
○ 薬物の入手の容易化
・ 携帯電話等の普及により、密売人等との接触が容易になっている。最近では、インターネット上のホームページを通じ規制薬物を販売している事案もみられる。
(3)少年の薬物乱用防止対策
 少年による薬物乱用が依然として高い水準にあることから、警察では、以下の四本の柱を、少年の薬物乱用防止のための総合的な対策として推進している。
・ 覚せい剤等の供給源に対する取締りの強化
・ 薬物乱用少年の発見・補導等の強化
・ 教育委員会、学校等との連携の強化
・ 家庭、地域に対する広報啓発活動の強化
 少年が薬物の危険性・有害性を正しく認識することが薬物乱用防止のために重要であることから、警察では、警察職員を派遣して薬物乱用防止教室を開催し、薬物乱用の具体的事例の紹介や薬物の危険性、有害性の説明をしている。平成13年度は、全国の高校の58.4%にあたる3,198校、中学校の49.7%にあたる5,559校で開催したほか、地域の座談会、街頭キャンペーン等の機会を活用して幅広く広報啓発活動を推進している。また、大型スクリーン、パネル、パソコン、薬物標本等の視覚的効果を有する資機材を搭載した薬物乱用防止広報車を11年度に全都道府県警察に配備し、その効果的な運用を図っている。

少年の犯罪被害
(1)少年が被害者となった刑法犯の状況
 平成13年中の少年が被害者となった刑法犯の認知件数は41万507件であり、凶悪犯、粗暴犯でみると次のとおりである。
(2)被害少年対策
①支援体制の整備・充実
 被害少年に対しては、長期にわたる継続的な支援が必要とされることから、警察では、少年補導職員等の増員や適切な配置等に努めている。
 また、「被害少年カウンセリングアドバイザー」及び「被害少年サポーター」(注)の委嘱を推進している。
(注)
 被害少年カウンセリングアドバイザー
 被害少年に対するカウンセリング等の継続的支援に当たっては、専門的な知識、技能が必要とされるが、支援担当者がその対応を誤れば、二次的被害を与えることも懸念されるなど、少年補導職員等のみでは対応が困難なケースも予想されることから、大学の研究者、精神科医、臨床心理士、民間のカウンセラー等の部外の専門家を「被害少年カウンセリングアドバイザー」として委嘱し、支援担当者がいつでも専門的な助言を受けることができるようにしている。
(注)
 被害少年サポーター
 被害少年に対する継続的支援は、少年補導職員等によるカウンセリングの実施等による専門的支援ばかりでなく、平素から保護者等と連携を密にしながら、きめ細かな訪問活動を行うことが効果的であることから、地域において実施担当者の指導、助言の下に、これらの活動を行う民間ボランティアを「被害少年サポーター」として委嘱し、継続的支援を効果的に実施するようにしている。
②カウンセリング等の継続的支援の実施
 警察では、被害少年が精神的ダメージを早期に克服して立ち直ることができるように、少年補導職員や少年相談専門職員等による個々の少年の特性を踏まえたカウンセリング、保護者等と連携した家庭環境の改善等のきめ細かな継続的な支援を行っている。
③関係機関との連携の強化
 警察では、被害少年の継続的な支援に当たって、専門的な知識・技能に基づいたカウンセリング、きめ細かな支援活動を行うため、被害少年支援ネットワークを構築するなど、児童相談所、カウンセリング専門機関、保健医療機関やボランティア団体等との連携の強化に努めている。
[事例] 平成13年3月から8月までの間、愛知県臨床心理士会の協力を得て、名古屋市内のホテル等において、被害少年等を対象とした無料相談会を3回開催し、犯罪、児童虐待、いじめ等の被害少年とその保護者等から相談を受けた(愛知県)。
④警察職員に対する指導、教養
 警察では、少年補導職員等に対し、被害少年の心理等に関する知識やカウンセリング技術を修得、向上させるため、臨床心理士、精神科医等の部外講師を招いた教養等を実施している。このほか、被害少年と接する警察職員に対し、被害少年対策の必要性、被害少年に接する際の留意事項等について教養を実施している。

少年保護対策
(1)少年の福祉を害する犯罪
 少年を虐待し、酷使し、その他少年の福祉を害し、又は少年に有害な影響を与える犯罪である福祉犯の取締りを推進するとともに、その被害を受けている少年の保護に努めている。
・ 未成年者飲酒禁止法違反が77人(前年比93.9%増)、児童買春・児童ポルノ禁止法違反が249人(前年比32.0%増)それぞれ増加
・ テレホンクラブ営業に係る福祉犯の検挙人員は563人で、86人(前年比13.3%減)減少
・ 被害少年のうち834人(10.2%)が家出中の被害
(2)児童買春・児童ポルノ事犯
 児童買春、児童ポルノに係る行為は、児童の権利を著しく侵害し、児童の心身に有害な影響を及ぼすものである。警察は、児童買春・児童ポルノ禁止法に基づき、積極的な取締りを推進している。また、被害児童の保護対策の重要性を認識し、少年補導職員、少年相談専門職員等によるカウンセリングや継続的な指導等被害児童の保護や支援に万全を期している。
[事例1] 男性客が女性と店外で交際する料金を競りで決める店の店長(31)は、女子中学2年生(14)を店内で客の会社員に買春相手として紹介した。平成13年4月、児童買春・児童ポルノ禁止法違反で検挙した(埼玉)。
[事例2] 土木作業員(30)は、カンボジアにおいて、販売目的で同国の児童(6)の裸体を写真撮影した。13年1月、児童買春・児童ポルノ禁止法違反で検挙した(大阪)。
(3)少年を取り巻く環境の浄化
①テレホンクラブ・出会い系サイトの問題
 携帯電話やインターネットの普及に伴い、テレホンクラブや出会い系サイトへのアクセスが少年でも容易となり、児童買春などの被害に遭う事例が増加している。
 警察では、テレホンクラブ営業に対する指導取締りを徹底するとともに、テレホンクラブ、出会い系サイト等を利用した犯罪に関する注意を呼び掛けるなど、被害防止のための広報啓発活動の強化に努めている。
②インターネット上の有害情報の問題
 インターネット上には、違法・有害コンテンツがはん濫しており、極めて過激な性や暴力等の表現があるコンテンツにすら少年が容易にアクセスできる状況になっている。警察では、関係機関と連携をとりながら、こうした有害情報に少年がアクセスできないようにするため、フィルタリングシステム(注)の普及に向けた広報啓発活動を推進している。
(注) フィルタリングシステムとは、インターネット上の違法・有害コンテンツへのアクセスをコントロールする機能のことであり、受信者側でこれらの情報を受信するかどうかを選択できるシステムである。
③酒類やたばこの問題
 少年の飲酒や喫煙を防止するため、平成13年の法改正により、未成年者飲酒禁止法及び未成年者喫煙禁止法において、酒類やたばこの販売者等は、年齢確認その他の必要な措置をとるものとすることが規定されたことを踏まえ、指導取締りを徹底するとともに、コンビニエンスストアや自動販売機等で少年に酒類やたばこを販売しないように関係業界による自主的措置の働き掛けを行っている。
④その他
 少年に有害な影響を与える情報を含む雑誌やビデオ、深夜に不良行為少年のたまり場となるカラオケボックス、ゲームセンター等の娯楽施設及びコンビニエンスストア等に対し、関係機関・団体や地域住民と連携して、自主的措置の働き掛けを行っている。
(4)少年に対する暴力団等の影響の排除
 福祉犯への暴力団等の関与の状況をみると、職業安定法違反や覚せい剤取締法違反等福祉犯の中でも悪質なものほど暴力団等が関与する事例が多くみられ、その資金源となっている状況がうかがえることから、暴力団等が関与する福祉犯等の取締りに努めるとともに、補導活動や少年事件の取扱い等の警察活動を通じて少年の暴力団員等を把握するとともに、機を失することなく、把握した少年の暴力団員等及びその保護者等に対する働き掛けを行い、当該少年への暴力団等の影響の排除のための対策を推進している。

児童虐待問題 (1)児童虐待に関する少年相談の受理状況
 平成13年中の警察の相談窓口における児童虐待に関する相談の受理件数は232件(前年比17.3%増)増加した(表3-15)。
[事例] 12年11月、少年課少年育成室に児童虐待に関する相談、情報を広く受け付けるために、児童虐待相談専用電話(愛称:チャイルド・レスキュー110番)を設置し、24時間の相談体制を確立した(大阪)。
(2)児童虐待の検挙状況
①態様別検挙状況
 児童虐待の防止等に関する法律(以下「児童虐待防止法」という。)における「児童虐待」とは、保護者(親権を行う者、未成年者後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。)がその監護する児童(18歳に満たない者をいう。)に対し、次に掲げる行為をすることをいう。
・ 児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること(身体的虐待)
・ 児童にわいせつな行為をすること、又は児童をしてわいせつな行為をさせること(性的虐待)
・ 児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること(怠慢又は拒否)
・ 児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと(心理的虐待)
②罪種別検挙状況
(3)児童虐待事件への取組み
①児童虐待の早期発見と事件化
 児童虐待は、早期に認知することが重要であることから、警察では、児童を被害者とする事件の捜査、街頭補導、少年相談、110番通報の取扱い等の様々な警察活動の機会をとらえて、その早期発見に努めており、発見した場合には、速やかに児童相談所に通告するほか、児童虐待事案が犯罪に当たる場合には、児童を保護する観点から、適切な事件化に努めている。さらに、早期発見のため、児童虐待防止広報啓発用パンフレットを活用するなどして、国民に対し児童虐待と思われる事案を発見した場合には、警察、児童相談所等へ相談、通報をするよう広報啓発している。
②警察官の援助
 児童虐待防止法により、児童相談所長等は、児童の安全確認、一時保護、立入調査等の職務執行に際し、必要があると認めるときは警察官の援助を求めることができることとされている。
 警察では、児童相談所長等からの援助の要請を受けた場合には、対応の方法、役割分担等を速やかに検討し、事案に即した適切な援助を行うよう努めている。
③児童の支援
 警察は、少年サポートセンターを中心に、児童虐待の被害を受けた児童に対する支援体制の充実を図っており、少年相談専門職員、少年補導職員による被害児童のカウンセリング、保護者に対する助言指導や訪問活動による家庭環境の改善等の支援を実施している。
④関係機関との連携の強化
 警察では、自らが中心となる被害少年支援ネットワークを構築するとともに、児童相談所を中心に学校、保健医療機関等関係機関・団体により構成されるネットワークに積極的に参加することにより、各機関・団体がその特性に応じた機能を十分に発揮し、総合的な被害児童支援対策を講じることができるよう努めている。
⑤警察職員に対する指導、教養
 警察では、様々な部門で活動する警察職員に対し、児童虐待防止法の内容等について各種教養の機会を活用して指導しており、児童の保護及び保護者への支援を行う職員に対しては、カウンセリング技術その他の専門的知識・技能の向上のための教養を実施している。
 さらに、平成14年3月に、児童虐待事案への適切な対応のため、警察職員用の対応マニュアルを作成し活用している。

少年サポートセンター
 少年サポートセンターを中心とした非行防止対策の推進
 少年の重大な非行の前兆として、飲酒、喫煙や深夜遊興等の不良行為がみられることが指摘されており、不良行為で補導した段階で、個々の少年や家庭に対する助言、指導等の充実を図ることが必要である。また、人格形成期にある少年が犯罪、いじめ、児童虐待等により被害を受けた場合、その心身に大きな打撃を受け、その後の健全育成に支障が生じるおそれが大きいことから、心理学等の専門的な知識を有する者がカウンセリングを行うなど、少年の精神的負担を軽減し、立ち直りを図ることが必要である。
 これらの取組みを推進するため、少年補導職員や少年相談専門職員等を中核とする「少年サポートセンター」を設置し、具体的には次のような活動を行っている。
①少年警察ボランティア等との共同での補導活動
・ 盛り場、公園等非行の行われやすい場所での補導活動を日常的に実施
・ 重大な非行の前兆ともなり得る不良行為等の問題行動の早期認知
・ 不良行為少年やその家庭等に対する適切な助言、指導等
②関係機関・団体等とのネットワークの構築
 少年問題に対しては、関係機関・団体が相互に連携を強化し、社会全体として取り組んでいくことが重要である。そのため、警察では、少年サポートセンターを中心として関係機関・団体との日常的な情報交換、意見交換等を行い、少年や家庭等に対する支援体制の充実強化に向けたネットワークの構築に努めている。
③情報発信活動の充実強化
 最近の少年非行の深刻化の背景の一つとして、少年の規範意識の欠如や家庭、地域社会の無関心が指摘されている。
 警察では、少年の規範意識の形成や家庭、地域社会における共通の問題認識を醸成するため、警察活動で得た情報の発信に力を入れており、学校に警察職員を派遣して行う薬物乱用防止教室の開催や学校、地域と連携した非行防止教室や座談会の開催等、情報発信活動の充実強化に努めている。
コラム
少年警察を取り巻く状況等の変遷
 平成14年2月から3月にかけて、警察庁が、都道府県警察において15年以上の実務経験を有する少年補導職員、少年相談専門職員及び少年担当警察官に対して実施したアンケート調査の中で、補導、少年相談を通じて感じていることとして、次のような意見等がみられた(第1章第2節8(2)イ参照)。
1 不良行為少年の補導に関すること
○ 携帯電話の出会い系サイト利用により、少年の交友範囲・行動範囲が飛躍的に拡大した結果、不特定多数との性的行為が可能となり、援助交際も目立つ。
○ 喫煙、深夜はいかい等の不良行為自体にさほど変化は見られないが、全体的に、見て見ぬ振りをする大人の前で、制服を着たまま堂々と行うようになった。
○ 以前は、パチンコ店、ボーリング場、スケート場、スーパー等での補導が多かったが、最近は、コンビニエンスストア、深夜飲食店、カラオケ店等でのたむろや不良行為が目立つ。
○ 以前は、少年補導職員等の話をよく聞き、万引き等では泣いて謝る者も多かったが、最近は、罪悪感に乏しく、開き直って全く反省しない者が多くなった。
○ 以前は、子どもの行為について謝罪し、又は補導されたことについて感謝する保護者が多かったが、最近は、子どもの非行を交友関係や学校等に責任転嫁したり、警察官に対して抗議の態度をとったり、子どもの非行にあまり関心を示さない保護者が増えた。
2 少年相談に関すること
○ 以前は、進路相談、友人問題、不登校等の学校に関する問題が多数を占めていたが、最近は、親子関係が全く崩壊しているがゆえに起こっている事案や対人関係能力の低さからくる相談、人間関係の悩み、引きこもり等の相談が多くなった。
○ 以前は、子どもの非行やしつけに関する相談が多かったが、最近は、いじめ、性被害、親同士のトラブル、学校への不満等のほか、児童虐待、家庭内暴力、過保護、過干渉、引きこもり等の家庭に絡む相談が増えている。
○ 以前は、面接又は加入電話での相談が主であったが、携帯電話の使用による匿名の電話相談や、直接話す必要のない電子メールでの相談が増えてきた。
○ 以前は、一度指導、助言すれば解決するものが多かったが、最近は、継続的な相談が増加するとともに、児童相談所、保健所、病院等の関係機関への引き継ぎを要するケースや、関係機関等と連携して措置するケースが増加している。


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