第3節 今後の警察の取組み

1 捜査力・執行力の充実・強化のための取組み
 第1節でみたとおり、路上犯罪の増加、来日外国人犯罪の増加等により、犯罪情勢が悪化し、国民の不安感が増大している。また、第2節でみたとおり、体制面での限界や国民の意識の変化等の警察活動を取り巻く課題は多い。
 これに対処するために、まず、警察が組織・人員の効率的な運用を始めとする合理化を徹底し、体制を整備するとともに、科学技術を活用すること等により捜査力・執行力の総合的な充実強化に取り組む必要がある。

(1)合理化の推進と警察力の運用
ア 合理化の推進と警察官の増員
 ~各都道府県警察における総合的な取組み
(ア) 組織・人員の効率的な運用
 限られた体制の中、厳しさを増す犯罪情勢に的確に対処するためには、組織・人員の効率的な運用を図り、増加する犯罪に対応できる体制を確立していかなければならない。
 各都道府県警察では、組織・人員の効率的運用を図るため、部門を越えた総合的な体制の確立、機動捜査隊・自動車警ら隊等の執行隊の統合、時差出勤制の導入等、組織・人員の配置の見直し、事案発生時の捜査力の集中投入・弾力的運用を行っている。
[事例1] 大阪府警察では、ひったくり、路上強盗等の街頭犯罪が多発していることを受けて、府警の街頭犯罪対策を一元的かつ総合的に推進するための組織として、平成14年1月、本部長を長とする「大阪府警察街頭犯罪総合対策本部」とその運営を専門的に行う組織として「街頭犯罪対策室」を本部に設置し、警察署には署長を長とする「警察署街頭犯罪対策本部」を設置した。対策室では、街頭犯罪の多くが少年によるものであることに着目し、非行少年グループの検挙・補導活動を重点とした少年非行対策、ひったくり等に対する検挙対策、共同危険行為等禁止違反事件の検挙を主眼とした暴走族対策等を強化し、一定の成果を収めている。
[事例2] 福岡県警察では、来日外国人犯罪の凶悪化、組織化等に的確に対処するため、9年5月、警察本部の関係課長を本部員とする「来日外国人組織犯罪対策統括本部」を設置し、情報の一元化・共有化を図るとともに、部門間の壁を越えた総合的な諸対策を推進したことにより、中洲地区における中国人犯罪組織を壊滅するなどの成果を収めている。
[事例3] ひったくりは、遊興費目的で行われることもあれば、暴走族等の資金獲得手段として敢行されることも多い。広島県警察では、暴走族対策を強化することによって、集団暴走を減少させるとともに、ひったくり等の街頭犯罪を封圧するため、13年10月、暴走族特別取締本部を設置して強力な取締りを実施することとし、その後、14年4月には、交通、生活安全、刑事の各部門を統合して、「暴走族・少年犯罪対策課」を設置し、暴走族の取締りや離脱対策等を強力に推進することとした。その結果、集団暴走が減少し、暴走族の解体が進んだほか、ひったくりの認知件数が大幅に減少するなど犯罪の発生を抑止する効果があった。
[事例4] 愛知県警察では、県民に身近な不安を与えるひったくり、路上強盗等の街頭犯罪の検挙・予防を目的に、自動車警ら隊、機動捜査隊、交通機動隊、警察航空隊、機動隊、高速道路交通警察隊の各執行隊及び警察署の直轄隊が、機動力を生かし部門の枠を越えた活動を行う「Aフォース活動」を11年6月から実施し、マウンテンバイクやオフロードバイクを活用したひったくり等の予防・検挙活動を積極的に行っている。
[事例5] 機動隊は警備実施の中核部隊として各警察署からの応援要請に応えているが、街頭活動を充実強化させる警察力として機動隊を運用する取組みが行われている。警視庁では、13年4月より、機動隊自動二輪部隊、遊撃捜査二輪部隊、遊撃捜査部隊、遊撃警ら部隊を編成し、凶悪化、多発化している国際組織犯罪やひったくり事件等の防圧、検挙等に従事している。
[事例6] 静岡県警察では、40時間労働の枠の中で、特に深夜時間帯におけるパトカーの稼働率を高め、警戒力を強化するため、管内に大規模な繁華街を有する4つの警察署において8時間3交替制を採用している。勤務員にとっては、5日連続で深夜に勤務することもあるなど厳しい勤務であるが、当該所管区における刑法犯の発生が抑制されるとともに、検挙実績が大幅に伸びるといった効果を挙げている。
(イ) 警察官の増員
 犯罪情勢が年々厳しさを増す中、国民の間に治安に対する不安感が増大しており、パトロール強化や犯罪被害者対策の強化等、国民の身近な要望にこたえる活動が求められている一方で、犯罪の増加等に伴い、警察官1人当たりの負担が増大している。このような現状に適切に対応し、国民が真に求めている安全と安心を確保するため、各都道府県警察では徹底した合理化を推進している。全国警察では、16年度までに1万2,000人弱の人員を内部捻出して体制が不足する部署に配置することとしているが、これを行ってもなお不足する人員については地方警察官の増員を行うとの考えのもと、14年度から3か年で全国で1万人の計画的増員を行うこととし、14年度は4,500人を措置した。なお、新たに採用された警察官には、警察官として必要な基礎的知識や技能を修得させるための教育訓練を施す必要があることから、14年度に増員された警察官は、一般的には15年度に第一線に配属されることとなる。
イ 捜査体制の整備
(ア) 初動捜査体制の整備
 犯罪の発生に際し、迅速・的確な初動捜査を行い、犯人を現場やその周辺で逮捕し、あるいは、現場にある証拠物や参考人の証言等を確保することが、犯罪の広域化・スピード化が進む中で、より重要となっている。初動捜査における犯人の検挙等を目的として、各都道府県警察本部に機動捜査隊が設置されているが、迅速な初動捜査を推進するため、機動捜査隊の充実、機動力強化のための車両・通信資機材の整備、関係各部門が連携した緊急配備等を行っている。
 また、近年では、機動性、高速性及び広視界性を有する警察用航空機(ヘリコプター)の特性を活用し、上空から、密入国者の捜索や逃走する盗難車両の追跡を行い、地上の捜査員と連携してこれを逮捕するなど、被疑者や逃走車両の捜索、追跡等に警察用航空機を活用している。
(イ) 広域捜査体制の整備
 交通手段の発達、社会情勢の変化に伴い、犯罪についてもその広域化が顕著であることから、これら広域事件に的確に対応するための施策を行っている。
 広域犯罪に係る初動捜査力を強化するため、各都道府県警察の機動捜査隊に、身の代金目的誘拐事件や人質立てこもり事件等に対する専門的捜査技術と広域的な機動捜査力を有する広域機動捜査班が設置されている。また、地理的条件、交通網の状況等から、地域の一体性の強い都道府県境付近の区域において発生した犯罪に即応するために、都道府県警察の単位を越え、広域的に捜査、訓練等を行う関係都道府県警察で構成される広域捜査隊の編成が進められ、初動捜査強化のための体制づくりが行われている。広域捜査隊は、現在、全国で11区域に設置され、殺人、強盗等の凶悪事件や、特に迅速な対応を要する特異な窃盗事件等の初動捜査を行っている。
 また、広域重要犯罪の発生時には、指揮系統を一元化し、関係都道府県警察が一体となって捜査を行う「合同捜査」や、指揮系統の一元化までは行わないが、捜査事項の分担やその他捜査方針の調整を図りつつ捜査を行う「共同捜査」を積極的に推進している。
[事例1] 13年2月、中国人の男(36)他数名は、共謀の上、東京都内の一般住宅に侵入し、家人を緊縛した上、頭部等を殴打するなどの暴行、脅迫を加え、金庫から現金約1億円及び貴金属を強奪した。4月以降、中国人の男ら6人を強盗致傷罪等で検挙した。捜査の結果、茨城、埼玉県内において発生した強盗致傷事件も同一犯の犯行である可能性が高まり、犯行が広域に及ぶことから、合同捜査を実施した(警視庁、茨城、埼玉、神奈川)。
[事例2] 12年9月、男(27)は、妻(28)と共謀の上、石川県内のホテルの浴槽で、次女を溺水させて殺害し、その死体を福井県内の駐車場脇に遺棄した。13年6月、男らを殺人罪及び死体遺棄罪で検挙した。被疑者らの身柄を確保した宮城県警察、殺害現場を管轄する石川県警察、死体遺棄現場を管轄する福井県警察の間で、捜査項目の多くが複雑に絡み合っていることから共同捜査(のち合同捜査)を実施した(宮城、石川、福井)。
 さらに、8年の警察法の一部改正により、都道府県警察は、広域組織犯罪等を処理するため、その固有の判断と責任の下に管轄区域外においてその権限を行使することができるようになり、また、警察庁長官が都道府県警察の役割分担等について指示を行うことにより、広域組織犯罪等に対処するための態勢を迅速かつ的確に整備することが可能となった。
 このほか、平成13年に管区警察局の組織改編により広域調整部を設置し、広域犯罪の捜査等の広域的対応を必要とする警察事象その他国の公安に係る警察事象に関する警察活動につき、管轄区域内各府県警察に対して調整を行うこととし、広域調整機能を強化した。
(ウ) 国際捜査体制の整備
 警察では、凶悪化・組織化する来日外国人犯罪の捜査に総合的に取り組むとともに、捜査体制の充実強化を図っている。
 かつて、警察庁刑事局では、ICPOとの連絡事務や国際捜査共助業務を刑事局調査統計官が、国際犯罪捜査の業務を主として刑事局捜査第一課が担当していたが、ICPOを中心とした国際捜査共助体制や国際犯罪の捜査体制の強化を図るため、昭和50年に国際刑事課が新設された。さらに、平成6年には、国際刑事課が所掌していた事務を含む国際協力業務、外国の警察行政機関等との連絡及び来日外国人問題への対応を統一的かつ効果的に推進する体制を整備することを目的として、同課を廃止し、長官官房に国際部を設置した。
 一方、都道府県警察の刑事部門においても、昭和63年に全国で初めて国際捜査課が警視庁に設置されて以降、大阪、愛知、千葉、神奈川、埼玉、長野及び石川の各府県警察に設置されている。このほか、茨城県警察に組織犯罪対策課、三重県警察に国際対策課が設置されるなど、専任捜査体制が拡充されている。
(エ) 少年事件捜査体制の整備
 凶悪・粗暴化し、かつ複雑・困難化する少年事件に対しては、各都道府県警察本部の少年事件担当課に少年事件捜査指導官を設置して、少年の特性及び少年審判の特質を踏まえた指導に当たらせている。また、平成13年6月までに、全国の都道府県警察本部に少年事件特別捜査隊等を設置し、警察署捜査員と連携した捜査活動を行い、捜査力の集中投入による迅速・的確な捜査に努めている。

(2)科学技術の活用
ア 捜査支援システムの活用
(ア) 自動車ナンバー自動読取システム
 自動車利用犯罪や自動車盗の捜査のために自動車検問を実施する場合、実際に検問が開始されるまでに時間を要すること、徹底した検問を行えば交通渋滞を引き起こすおそれがあることなどの問題がある。警察庁では、これらの問題を解決するために、走行中の自動車のナンバーを自動的に読み取り、手配車両ナンバーと照合する自動車ナンバー自動読取システムを開発し、整備を進めている。
 その結果、多くの自動車盗事件を解決しているほか、殺人、強盗等の凶悪犯罪等の重要犯罪の解決に多大な効果を挙げている。
(イ) 指紋・掌紋自動識別システム
 指紋自動識別システムは、コンピュータによるパターン認識の技術を応用したシステムであり、犯罪現場に遺留された指紋から犯人を特定する遺留指紋照合業務や、逮捕した被疑者の身元と余罪の確認業務等に活用している。各警察署に、指紋を光学的に短時間で採取できるライブスキャナを、各警察本部に優れた画像鮮明化機能等を備えた遺留指紋照会端末装置をそれぞれ設置するとともに、これらと警察庁の指紋情報管理システム等を通信回線で結ぶことにより、各種指紋業務を効率的に実施している。
 また、指紋と同様に万人不同・終生不変であり、個人識別資料として極めて有効な掌紋についても、犯罪捜査への積極的な活用を目指し、調査研究を行った結果、掌紋自動識別システムとしての実用化に成功した。掌紋自動識別システムは、平成14年3月から運用を開始しているが、これまで積極的に活用されることのなかった遺留掌紋から犯人を特定する遺留掌紋照合業務等に活用している。
 これまでにも、指紋自動識別システムの活用により、殺人、強盗等の重要凶悪犯罪等の解決に貢献してきたが、新たに運用が開始された掌紋自動識別システムを併用することにより、現場から採取した指掌紋がより効果的に活用され、増加する犯罪の捜査に資することが期待される。
(ウ) 警察総合捜査情報システム
 刑法犯の認知件数の増加等に伴い、各捜査書類の作成量が増え、署外活動時間の確保が困難になるなど、捜査員の負担が増大している。また、犯罪統計、犯罪手口、事件捜査等に係る各種情報は、個別に管理・活用されており、系統的な分類・蓄積及び共有化が十分になされていないことから、事件情報の検索、犯罪発生状況の分析等が容易でないなどの問題がある。
 そこで、警察庁では、限られた警察力をより効率的に運用するため、14年度から、犯罪統計、犯罪手口、事件捜査等に係る各種情報をデータベース化し、各捜査書類に必要な入力項目を自動転記して書類作成に関する業務の省力化を図り、各都道府県警察に設置される端末装置を全国的に通信回線で結ぶことにより、各種情報を有機的かつ多角的に活用するとともに、業務の合理化及び自動化を図る警察総合捜査情報システムの開発を進めている。
(エ) 組織犯罪対策情報管理システム
 暴力団や来日外国人犯罪組織等の組織犯罪グループは、ますます、その活動領域を拡大しており、その関与する罪種も、凶悪犯、窃盗犯、薬物犯罪、銃器犯罪等多岐にわたっている。また、資金源活動も金融ブローカー等と結託した債権回収等、様々な方法での不正な資金獲得動向を強めている。
 そこで、警察庁では、組織犯罪グループに係る情報をデータベース化して全国的に共有し、組織犯罪グループの活動実態の解明と個別事件における内偵捜査の効率化及び検挙の推進を図るため、組織犯罪対策情報管理システムの開発を進めている。
イ 鑑識鑑定技術の高度化
 科学技術の急速な発展、情報化社会の著しい進展等は、社会・経済事象に大きな変革をもたらすとともに、犯罪情勢にも重大な影響を与えている。このような情勢の変化に的確に対処し、科学的・合理的な捜査を推進していくためには、鑑識・鑑定への最先端の科学技術の導入等を図る必要がある。
(ア) 鑑識資機材の開発・整備と鑑識活動の強化
 警察では、科学技術の発達に即応した鑑識資機材の開発・整備を進めるとともに、機動鑑識隊(班)や現場科学検査班等を設置・運用し、現場鑑識活動の強化に努めている。指紋自動識別システムや掌紋自動識別システム(ア(イ)参照)等の捜査支援システムによる照合、分析等には、遺留指掌紋等各種資料が不可欠であるため、増加する犯罪の現場において、資料の効率的な検索・採取を可能とする資機材の開発・整備を積極的に推進することとしている。
 また、警察庁の鑑識資料センターでは、収集した各種資料の分析結果等をデータベース化し、都道府県警察が犯罪現場から採取した微量・微細な資料と比較照合することによって、資料の性質を解明し、製造業者等を迅速に割り出すなど犯罪捜査に役立てている。
(イ) DNA型鑑定の導入等による鑑定技術の高度化
 警察では、迅速・的確な鑑定を行うため、鑑定技術の高度化に努めている。
 例えば、DNA型鑑定を導入し、その個人識別能力を活用して、被害者の特定や、犯罪現場に残された血液、精液等による犯人の特定を行うなどしている。DNA型鑑定は、ヒトの身体組織の細胞内に存在するDNAの塩基配列の多型性に着目し、これを分析することによって個人識別を行う鑑定手法であるが、科学警察研究所及び各都道府県警察の科学捜査研究所において導入され、これまでに、殺人、強姦等の重要凶悪犯罪の解決に大きく寄与している。型分類が豊富で個人識別能力に優れるDNA型鑑定は、ABO式血液型鑑定と併せて実施することにより、同一の型が現れる割合は最も出現頻度が高いものでもおよそ日本人数万人に1人となる。現在、各都道府県警察では、4種類の鑑定法を実施しているが、より高度な鑑定精度を確保するため、警察では、新たな鑑定法の導入に向け、必要な資機材等の整備、都道府県警察の鑑定技術職員に対する研修の実施等の準備を進めている。
 また、(財)高輝度光科学研究センター(兵庫県)が管理運営するSPring-8は、10年に発生した和歌山における毒物混入事件において、その犯行に用いられた毒物と押収された毒物が同一であることを証明したことで知られているが、薬・毒物を始め毛髪、繊維、塗膜片等超微量・微細な資料の鑑定を可能とする画期的な大型放射光施設である。警察では、このSPring-8を利用した鑑定を導入し、犯罪捜査への活用を図ることとしている。
(ウ) 鑑定技術職員の育成
 的確な鑑定を行うためには、各鑑定技術職員の知識、技能の修得、向上を図っていかなければならない。
 各都道府県警察では、新たに採用した鑑定技術職員に対する各種教養を始め、各職員のレベルに見合った知識と技能を習得させるための教養を実施するなど、鑑定技術職員の計画的な育成に努めている。また、科学警察研究所の法科学研修所では、警察において実施する鑑定の高度化、標準化を図るため、各都道府県警察の鑑定技術職員に対する生物学、化学、工学、指紋、写真、足こん跡等各専門分野の研修を実施している。
ウ 科学技術活用の新たな取組み
(ア) 警察活動を支援するためのGISの活用
 GIS(Geographic Information Systems:地理情報システム)とは、地理的位置を手掛かりに、位置に関する空間データを総合的に管理・加工し、視覚的に表示し、高度な分析や迅速な判断を可能にする技術のことをいい、現在諸外国の警察ではGISを用いた犯罪発生実態の分析を行い、成果を挙げている。政府においても「GISアクションプラン2002~2005」(14年2月20日地理情報システム関係省庁連絡会議決定)において、GISを活用した行政の効率化が盛り込まれ、警察においても、科学警察研究所においてGISによる犯罪発生状況の分析に関する調査研究を実施するなど、GISの活用の推進を図っている。
 警察庁では、厳しさを増す犯罪情勢に的確に対処するため、GISの効果的な活用を可能にするシステムの整備を進めることを検討しており、犯罪発生状況を詳細に分析するとともに、警察本部・警察署間、隣接警察署間で犯罪発生状況に関する情報の共有を図り、部門を横断した適切な対策を講じていくこととしている。
コラム
警察官ロケータ・システム(千葉県警察)
 通信指令システムの機能を高度化するため、GISやカーロケータ・システムの導入が進められているが、千葉県警察では、警察署の限られた人員体制の中で、様々な警察事象に対処し、迅速・的確な初動措置等を講じるため、地域警察官の活動状況を警察本部通信指令室及び警察署通信室(以下「通信指令室等」という。)で把握し、効果的、効率的な活動を支援する警察官ロケータ・システムの導入を進めている(注)。
 警察官ロケータ・システムは、地域警察官が携行するGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)の受信機を内蔵した移動端末と、通信指令室等に整備された地図上に地域警察官の位置を表示する地図端末から構成されている。
 従来、地域警察官が実際に活動している位置を把握するには、当該地域警察官からの報告によるほかなかったため、街頭で活動している地域警察官一人一人の位置や全体的な活動状況を瞬時に把握することができなかったが、導入後は、通信指令室等において地域警察官一人一人の位置や全体的な活動状況を瞬時に把握することができるようになったため、通信指令室等において、事案発生場所の近くにいる地域警察官を現場に急行させることや、その現場まで迅速に誘導すること等、効果的、効率的な指令を行うことが可能となった。
(注) 14年4月現在、千葉県内の5つの警察署管内において運用されている。
コラム
ニューヨークにおける犯罪情報分析の活用
 1993年11月のニューヨーク市長選挙で選出されたジュリアーニ前市長は、市警本部長に「破れ窓理論(Broken Windows Theory)」(2(2)イ(ア)コラム参照)の実践を命じた。その結果、例えば、ニューヨーク市における1993年と1998年の犯罪の認知件数を比較すると、殺人(murder and nonnegligent manslaughter)は67.5%、強盗(robbery)は54.2%、強姦(forcible rape)は27.4%とそれぞれ大幅に減少した(注)。このようなニューヨーク市における大幅な犯罪減少の成功要因の一つとして、犯罪データベースを用いてリアルタイムの戦略策定を行うコムスタット(COMPSTAT:computerized statistics)の導入が挙げられる。コムスタットとは、犯罪統計から得られたデータを分析し、犯罪への有効な対処を支援するコンピュータシステムである。このシステムは、GISを活用し、犯罪の発生状況を電子地図上に表示する機能を有しているが、コムスタット・ミーティングと呼ばれる週2回の定期的な会合において、分署司令官は、上級幹部に対し、管轄地区内の犯罪情勢とその対策についてコムスタットシステムを活用して説明を行っている。
(注) 米国司法省連邦捜査局の犯罪統計書による。
(イ) 科学捜査のためのプロファイリング等各種研究の推進と先端技術の捜査への活用
 多様化する犯罪に対処するために、警察では、生物学、工学、化学等の分野において、新しい鑑定法や検査法の研究開発を行っている。また、更なる知識、技能の向上を図ることを目的に、大学、諸外国の研究機関等において職員の研修を実施するとともに、職員を各種学会へ参加させるなどして、鑑識科学分野における先端技術の導入を推進し、これらの先端技術の捜査への積極的な活用を図っている(第10章第2節参照)。
[研究例1] 3次元/2次元顔画像スーパーインポーズシステムによる顔貌の個人識別に関する研究  防犯ビデオの普及に伴い犯罪現場で撮影された犯人の顔画像を個人識別に利用する鑑定が増加している。しかしながら、犯人の顔画像は下方を向いていたり、帽子やマスクで顔を隠していたりすることが多く、検挙した被疑者の写真との比較が困難な場合にしばしば遭遇する。そこで、被疑者の顔貌を3次元データとして取得し、その3次元顔画像と犯人の防犯ビデオで撮影された2次元顔画像と同じ撮影角度及び大きさに調整した後、両画像のスーパーインポーズによる顔貌の個人識別法を開発した。現在、本システムは鑑定に応用され、良好な成果を挙げている。
[研究例2] 犯罪者プロファイリングに関する研究と捜査への活用
 プロファイリングとは、犯罪現場から得られた資料及び被害者に関する情報等を分析し、犯人の性別、年齢層、生活スタイル、心理学的特徴、前歴の有無、居住地域等犯罪捜査に役立つ情報を推定することをいう。警察では犯罪捜査に活用が可能な情報提供を行うための手法の一つとして、連続して発生している性犯罪、放火、通り魔事件及び性的な犯行動機が強く推認される殺人事件に関するプロファイリングの研究を進めている。
 また、北海道警察では、科学捜査研究所に「特異犯罪情報分析班」を設置し、連続放火事件等についてプロファイリングによる捜査支援を行い、被疑者の検挙等に役立つ情報を提供している。

(3)捜査力・執行力の強化
ア 国際捜査力の強化
(ア) 国際捜査官の育成
 来日外国人犯罪の捜査に従事する警察官には、外国語はもとより、出入国管理、国際捜査共助、刑事手続等に関する条約その他内外の法制等極めて幅広い分野に関する特別の知識、手法が要求される。
 警察では、国際捜査官を体系的に養成するため、警察大学校国際捜査研修所において、国際捜査に関する実務研修、北京語、韓国語等アジア諸国の言語を中心とした語学教育、海外研修等を実施しているほか、特に高い語学能力を備えた者を中途採用し、国際捜査力の確保に努めている。
(イ) 通訳体制の整備
 来日外国人犯罪の捜査においては、外国人被疑者の人権に十分配慮して、被疑者等の供述を正確に把握することはもとより、我が国の刑事手続を理解させ、権利の告知を確実に行うことが不可欠である。各都道府県警察においては、高い語学能力を備えた者を警察職員として採用し、取調べにおける通訳等に当たらせている。
 また、近年、アジア出身者を中心とする来日外国人犯罪の増加に伴い、アジア系言語等の通訳の需要が急増している。このため、警察部内でそのすべてに対応することが困難となっており、通訳の一部を部外の通訳人に依頼することにより、現在約70か国語に対応することができる。これらの部外通訳人に対しては、刑事手続等の理解が深められるよう、「通訳ハンドブック」等の配布や、研修会を開催するなどしている。
 通訳人の運用に当たっては、夜間等に突発的に発生する事件に迅速に対応するなどの必要があるため、各都道府県警察に通訳センターを設置するなどして、その体制の整備に努めている。
 なお、被疑者に対しては、刑事手続の流れ等について各国語の対訳を作成し、適宜被疑者に提示しながら通訳を介して説明するなど、被疑者の権利内容等の理解の徹底を図っている。
(ウ) 外国捜査機関との協力
 国際犯罪の増加に伴って、外国捜査機関に対する各種照会や証拠資料の収集の依頼等が一層重要になっている。そのため、警察庁では、ICPOルートや外交ルート等により外国捜査機関と情報交換等を行っている。例えば、薬物の不正取引は、国際的な薬物犯罪組織により国境を越えて敢行され、一国のみでは解決できない問題であることから、警察では、関係国との捜査員の相互派遣、各種国際会議への参加等を通じて緊密な情報交換を行うとともに、個別具体の事件において薬物犯罪組織壊滅に向けて海外捜査機関との共同による摘発を推進している。
イ 高度な専門的知識・技能の活用のための専門捜査力の強化
 新たな形態の犯罪の出現や社会の複雑化・高度化を背景に、捜査に当たり、特定の分野に関する高度な専門的知識や技能が必要となっている。
 このため、警察大学校や警察学校で、特殊事件捜査、科学捜査、財務捜査、ハイテク犯罪捜査、薬物犯罪捜査等の特に専門的知識や技能を必要とする分野の捜査に従事する捜査員に対し、その捜査要領や技能について教育訓練を行うとともに、警察大学校特別捜査幹部研修所において、上級の警察幹部に対し、捜査指揮、捜査管理等の専門技術についての研修や研究を行っている。また、都道府県警察において、専門的技能を有する捜査員が職務を遂行しながら若手の捜査員を指導するなど、実戦的な教育訓練を行っている。
 少年事件捜査の分野においても、各都道府県警察において、少年事件を担当する捜査員に対する各種教養の充実を図っているほか、若手の捜査員がベテラン捜査員の下で捜査手法の指導を受ける実務研修、弁護士や裁判官等の部外講師を招いた教養の実施等の様々な施策を講じている。
 また、科学捜査、財務捜査、ハイテク犯罪捜査の分野において、語学能力に卓越した者や高度な科学的知識を有する者等専門知識等を有する者の中途採用を積極的に推進している。
 このほか、一の都道府県警察では捜査に必要な知識を有する捜査員を確保することが困難な場合は、他の都道府県警察からの応援派遣が有効であることから、都道府県公安委員会が相互に協定を結び、国際犯罪捜査、特殊事件捜査等の捜査に必要な知識、技能及び経験を有する捜査員を専門捜査員として派遣できる制度を確立し、その円滑な実施を推進している。
 さらに、警察庁では、極めて卓越した専門技能又は知識を有する警察職員を広域技能指導官(注)として指定し、捜査員に対する必要な助言や支援及び教育を行わせることにより、警察全体の財産として、都道府県の枠を越えその能力の広域活用を図っている。
(注) 14年4月現在、すり犯捜査、指紋鑑識、職務質問、薬物事犯捜査等の分野において計26人の警察職員が広域技能指導官に指定されている。
ウ 麻薬特例法・組織的犯罪処罰法・通信傍受法の活用
 組織的な犯罪に効果的に対処するためには、犯罪収益のはく奪による資金面からの対策を推進するとともに、新たな捜査手法の活用を図ることが必要である。
 国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(以下「麻薬特例法」という。)は、4年7月に施行された。薬物犯罪組織は薬物の密輸・密売により得られる莫大な薬物犯罪収益によって組織の維持・拡大を図っていることから、警察では、薬物犯罪収益のはく奪による資金面からの打撃を与えるため、麻薬特例法による薬物犯罪収益の隠匿、収受及び仮装(マネー・ローンダリング)の事件化、薬物犯罪収益の没収、追徴及び保全の徹底等の薬物犯罪収益対策を強力に推進している。また、薬物犯罪組織の壊滅を図るため、コントロールド・デリバリー等の効果的な捜査手法を積極的に活用している。
 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(以下「組織的犯罪処罰法」という。)は、組織的な犯罪の処罰の強化により、この種の犯罪に対する厳正な処罰の実現を図るとともに、犯罪収益等の規制により組織的な犯罪に対し資金面からも効果的な対処を可能にする目的で12年2月に施行された。13年中に加重規定(第3条第1項等)を11件適用するとともに、犯罪収益等隠匿(第10条第1項)を10件、犯罪収益等収受(第11条)を2件検挙している。また、起訴前における没収保全命令が、警察の請求により1件発出されている。
 犯罪捜査のための通信傍受に関する法律は、12年8月に施行された。12年、13年中は、傍受令状の請求、通信傍受の実施はなかった。
[事例1] ベトナム人密売人が、薬物の密売によって得た犯罪収益約400万円を借名口座に預け入れて、その取得の事実を仮装していた事件について、麻薬特例法を適用し、起訴前の没収保全を行い、薬物犯罪収益のはく奪を推進した(警視庁)。
[事例2] 暴力団幹部は、所属する組織が縄張としている地域のデートクラブ経営者がみかじめ料を滞納し始めたことから、他の組員と共謀の上、同組織の縄張を維持することを目的として、デートクラブ経営者に対し、暴力団の威力を誇示するとともに、みかじめ料名下に金員の要求を語気鋭く行い、合計36万円を喝取したことから、組織的犯罪処罰法違反(第3条第2項)で検挙した(大分)。
エ 捜査官の育成
 「捜査は人なり」とも言われ、優れた人材を登用し、捜査官の育成を図ることが、捜査力の充実強化を図る上で不可欠である。
 犯罪捜査に従事するに当たっては、刑法、刑事訴訟法等の捜査に必要な法律的知識はもちろんのこと、取調べ、逮捕、聞き込み、鑑識資料収集、捜査指揮等様々な技能のほか、激務に耐えうる体力、仕事に対する熱意、責任感、積極性、協調性、誠実さ等の資質も求められる。
(ア) 刑事の任用
 警察庁では、刑事の適正な選考と資質の向上を図るため、捜査に従事する巡査及び巡査部長の階級にある警察官の選考、教育訓練、任用等について「刑事選考要綱準則」を定めている。各都道府県警察では、同準則に基づき、刑事適任者の選考を行うとともに、新たに刑事部門に任用されることが予定されている者に対し、任用時の教育訓練を実施し、犯罪捜査に関する基礎的知識及び技能の修得を図っている。
(イ) 教育・訓練
 捜査に必要な各種技能を確実に修得するためには、警察学校において知識、理論及び技能についての教育を図る一方で、実務を通じてその技能を実践的に体得させることが有効である。このため、平素の実務を通じて、日常的、計画的な指導を行うとともに、各種の捜査技能について、個別の研修を行っている。
 また、現実に発生した重要事件で、その教訓や捜査手法等を共有できる研修(刑事実戦塾)を実施し、同種の捜査を担当する捜査員がその経験を今後の捜査に活用することができることとしている。
 そのほか、実務経験が豊富なベテラン捜査官の専門的技能又は知識を活用し、若手捜査官の専門的技能の向上に資するため、技能指導官制度、警察庁指定広域技能指導官制度を活用し、学校教養や実務を通じた教養により若手捜査官に対する専門的技能等の伝承を図っている。
オ 地域警察官の職務執行力の強化
 国民の身近な不安を解消するためには、警察官の総数の4割弱を占め、13年の刑法犯検挙人員32万5,292人の75.8%を検挙している地域警察官が犯罪による被害の未然防止とともに、犯罪の検挙にも積極的に取り組む必要がある。
 地域警察官が犯罪を検挙するためには、職務質問技能を始めとする職務執行力の強化が不可欠である。そのため、警察では、職務質問技能、書類作成能力等の向上を目的とした各種教養を実施するなどして、個々の地域警察官の職務執行力の強化を図っている。
 具体的には、管区警察学校において、職務質問による犯罪検挙に秀でた都道府県警察の地域警察官を対象として、職務質問技能の更なる向上を図るとともに、他の地域警察官に対する実務指導を行うためのノウハウを修得させることを目的とした職務質問専科を実施しているほか、各都道府県警察でも、警察庁が実施するものとは別に、独自に、地域警察官を対象として、職務質問技能、書類作成能力等の向上を目的とした各種教養を実施している。
 さらに、卓越した職務質問技能を有する者を警察庁指定広域技能指導官(注)又は都道府県警察の職務質問技能指導員として指定し、他の地域警察官への同行指導等を行わせるなど、専門的な実務指導に当たらせ、地域警察官の職務質問技能の向上を図っている。
(注) 14年4月現在、3人(警視庁2人、大阪府警察1人)の地域警察官が卓越した職務質問技能を有するとして警察庁指定広域技能指導官に指定されている(イ参照)。
[事例1] 警察庁指定広域技能指導官の講習を受けた地域警察官が、講習により修得した内容を実践して職務質問を実施し、覚せい剤所持被疑者を検挙した(徳島)。
[事例2] 「地域警察官検挙活動等強化要綱」を制定し、地域警察官の検挙活動への取組みを強化するとともに、中堅捜査員を地域警察に派遣配置するなどして地域警察官の実務能力の向上を図った結果、13年中の職務質問による検挙が大幅に増加した(青森)。

2 犯罪の発生を抑止するための取組み
 厳しさを増す犯罪情勢や警察活動を取り巻く課題に対処するための取組みとして、1では、警察の捜査力・執行力の総合的な充実強化について取り上げた。
 現下の厳しい情勢に対処し、国民の不安感を払拭するためには、これらに加え、犯罪の発生を抑止するための取組みを推進する必要がある。
 犯罪の発生抑止に万全を期すには、警察のみによる努力では限界があり、国民、地域社会、様々な機関や団体が果たすべき役割は大きい。しかしながら、第2節でみたように、近年は、社会の犯罪抑止機能が低下しつつあり、加えて、少年を始めとして国民の規範意識が低下していることがうかがえるなど、犯罪の発生を抑止するための社会環境は、非常に厳しいものとなっている。
 警察は、このような情勢を踏まえ、犯罪の発生を抑止するための自らの取組みを充実強化することに加え、国民一人一人や関係機関・団体による防犯行動を促進することなどにより、犯罪に強い新たな社会システムの構築に向けた施策を展開することとしている。

(1)犯罪の発生を抑止するための新たな取組みの方向性
ア これまでの取組み
 これまで警察では、ソフト面の施策として、犯罪危険箇所におけるパトロールの実施、防犯懇談会の開催、防犯広報の実施等、生活に危険を及ぼす犯罪・事故・災害を未然に防止する「地域安全活動」を防犯協会、地域住民等と協力して推進するとともに、ハード面の施策として、平成12年2月に制定した「安全・安心まちづくり推進要綱」に基づき、道路、公園等の公共施設や共同住宅の構造、設備、配置等について、犯罪防止に配慮した環境設計を行うなど、犯罪被害に遭いにくいまちづくりを推進してきた。
[事例1] 12年度に、「経済新生対策」(11年11月経済対策閣僚会議決定)の「歩いて暮らせる街づくり」の一環として全国10地区の道路・公園にそれぞれ19基の街頭緊急通報装置(スーパー防犯灯)(注)(第3章第1節「安全・安心まちづくりの推進」参照)を設置した。
(注) 街頭緊急通報装置(スーパー防犯灯)とは、防犯灯に非常用赤色灯・非常ベル、連絡用モニターカメラ、インターホン等を装備し、緊急時に警察に直接通報することができる装置である。
[事例2] 東京都新宿区歌舞伎町地区は、12年中の刑法犯認知件数が都内平均の約40倍、凶悪犯に至っては約185倍となっており、犯罪が発生するがい然性が極めて高い地域であった。警視庁は、13年度に、同地区内に街頭防犯カメラ50台を設置し、その結果、ひったくり、すり、粗暴犯等の認知件数が大幅に減少したほか、殺人未遂や悪質客引き事件等の検挙につながった。
イ 新たな取組み
 犯罪の発生抑止を図るためには、警察は、今後もアで述べた施策の充実に継続的に取り組むことに加え、現状の犯罪の増加傾向を踏まえて、新たに、犯罪対策のマネジメント・サイクルの確立及び「犯罪に強い社会」の構築に取り組んでいく。
(ア) 犯罪対策のマネジメント・サイクルの確立
 警察は、次のような犯罪対策のマネジメント・サイクルを確立して、地域ごとに実効ある犯罪対策を推進する。
① 地域ごとに、今後開発される警察総合捜査情報システム(1(2)ア(ウ)参照)等の活用により被害者類型の分類その他詳細なデータによる緻密な犯罪分析を行い、地域ごとの犯罪対策計画を立案する。
② 地域ごとの犯罪対策計画に従って、実効ある街頭警察活動を推進するとともに、地域安全情報の的確な提供等による自主防犯行動の促進に取り組む。
③ 地域ごとの犯罪対策計画の実施効果を検証し、その改良を行う。なお、検証結果を罪種別の犯罪分析や犯罪対策手法の開発等の全国的な取組みに活用していく。
(イ) 「犯罪に強い社会」の構築
 「犯罪に強い社会」を構築するため、警察は次の施策に取り組む。
○ 「犯罪に強い社会」を構築するために、都市計画、情報通信ネットワーク、保険契約等の犯罪の発生と関連の深い社会・経済の仕組みに、犯罪の発生抑止に資する防犯システムを組み込む。
○ 国民の自主防犯行動を補完又は代行する警備業及び防犯設備が果たす役割の拡大にかんがみ、これらの防犯システムが生活安全産業として国民のニーズに的確に応えることができるように法整備も含め検討を行う。
○ 犯罪の増勢に歯止めをかけるため、秩序違反行為の規制の在り方の検討を行う。
○ 治安問題に関する議論の場の設置や警察署協議会の活用等、幅広い主体による犯罪の発生抑止の取組みへの参画を促進していく。

(2)犯罪対策のマネジメント・サイクルの確立
ア 地域ごとの犯罪対策計画の立案
 地域ごとに、警察総合捜査情報システムの活用、犯罪手口分析等により、罪種ごとに被害者類型の分類、発生場所、発生時間帯、発生曜日その他の詳細なデータに基づく緻密な犯罪の発生傾向の分析を迅速かつ適切に行い、警察が行う犯罪対策の内容を定めた地域ごとの犯罪対策計画を立案する。
イ 地域ごとの犯罪対策計画の実施
 地域ごとの犯罪対策計画に基づき、警察は、次のような施策を推進することとしている。
(ア) 実効ある街頭警察活動の推進
 パトロール、立番、検問等の街頭警察活動は、国民の身近にあって制服で活動している警察官の特性を活かし、警察官の姿を積極的に街頭に示すことにより犯罪等の発生を未然に防ぐとともに、発生した犯罪を積極的に検挙するものである。
 警察は、警察官の配置・運用の合理化を進め(1(1)ア(ア)参照)、警察総合捜査情報システムを活用して、犯罪実態の分析に基づき犯罪が発生するおそれの大きい場所、曜日及び時間帯に警察力を集中させるなど警察力の最適配分を行い、積極的に職務質問を行わせるなど的確な街頭警察活動を推進する。また、犯罪の発生に際しては幹部等が警察官の活動状況を迅速に掌握し適宜指示するなど警察官の運用管理を適切に行うことが不可欠であるため、カーロケータ・システム、警察官ロケータ・システム(1(2)ウ(ア)コラム参照)の導入など警察官の運用の高度化を継続していく必要がある。
コラム
破れ窓理論
 「破れ窓理論(Broken Windows Theory)」は、地域住民の安心感と警察への親近感を醸成することを目的として警察官の徒歩によるパトロールを実施した米国ニュージャージー州の取組みをきっかけとして、1982年に米国で提唱された理論である。この理論は、従来では軽微な犯罪とされていた行為(公共空間での落書き、酔っ払い、物乞い等)であっても、それがコミュニティの利益を大きく侵害するものであるならば、警察やコミュニティは真剣に考え、対策を講じなければならないとするものである。例えば、窓ガラスの損壊は、軽微な事犯であり、初犯であることも多いため、厳しい処罰がなされることはあまりないが、壊れた窓が放置されていれば、そのビルには管理が行き届いていないことが明らかになる。他人の管理下にない財産はいたずらや犯罪の格好の餌食になり、瞬く間にビル全体、さらに地域全体が崩壊していく。「破れ窓」とは崩壊するコミュニティの比喩であり、破れ窓理論は、こうした悪循環に陥る前に警察とコミュニティが適切な対策を講じるべきだと主張するものである。
[事例] 「パトロールの強化」は、交番で勤務する地域警察官による徒歩又は自転車によるパトロールを積極的に行うという形が主体であるが、第2節で取り上げた群馬県伊勢崎警察署では、平成13年10月にパトロールを専門に行う特別警ら班(SPU(「Special Patrol Unit」の略))を設置して、パトロールを強化している。
 特別警ら班は、同署の管内のうち、犯罪が多発している地域やパトロールの要望が多く寄せられている地域等において、交番等で勤務する地域警察官と連携しながら、パトカーによるパトロールを実施し、不審者の発見に努めているほか、防犯のための広報活動も行い、犯罪等の未然防止と職務質問による被疑者の検挙に努めている
。  なお、群馬県警察では、14年4月、既に設置されている伊勢崎警察署に加え、前橋警察署、高崎警察署及び太田警察署にも特別警ら班を設置し、パトロールの強化に努めている。
(イ) 国民の自主防犯行動の促進
 犯罪の発生抑止を図るため、地域ごとの犯罪対策計画に基づき、地域安全情報の的確な提供を通じて自主防犯意識を高揚することにより国民の自主防犯行動を促すとともに、その助長を図るため、国民の自主防犯行動に関する取組みを支援していくこととする。
a 地域安全情報の的確な提供による自主防犯意識の高揚
 警察は、国民の自主防犯行動を促すため、居住地域における犯罪の発生状況等の住民が身近に実感できる犯罪情報を的確に提供することにより、国民の自主防犯意識の高揚を図っていく必要がある。また、これに際しては、犯罪発生の誘因の除去や犯罪発生時の対処等の具体的な犯罪からの防御手法についても併せて提供していくことが、実効ある自主防犯行動を図る上で重要である。すなわち、犯罪情報、犯罪からの防御手法等を内容とする的確な地域安全情報の提供に積極的に取り組むこととする。
 第2節8でみたように、生活様式の多様化、都市化、核家族化等の地域社会の変化によって、一部の地域については、地域の連帯意識が希薄化し地域住民によるネットワークが形成されにくい状況が生じており、その結果、従来地域社会に存在していた情報の伝達・周知の機能は失われつつある。また、平成14年調査(第2節8参照)の結果からは、住民の犯罪等に関する情報の入手先が新聞等のマスメディアに依存しがちであることもうかがわれる(コラム参照)。
コラム
犯罪等に関する情報の入手先
 平成14年調査(第2節8参照)において、犯罪の発生状況等の情報の入手先を質問したところ、①の結果が得られた。また、全国調査(第1節2参照)において、居住地域の治安、我が国全体の治安について質問したところ、②、③の図の示すとおりであった。
 地域安全情報の提供により自主防犯意識を高揚するためには、警察総合捜査情報システムを活用して、犯罪の発生傾向、犯罪手口、被害者類型等を集約整理し、地理情報システム等により分かりやすく提供することが必要である。また、これに当たっては、提供する目的や対象ごとに提供する情報を体系化した地域安全情報の提供の指針を策定するとともに、提供の方法についても電子的提供方法も含め迅速かつ的確な方法とすることを検討する必要がある。
[事例] 警視庁では、都民が求める身近な事件・事故等の地域安全情報を分かりやすく提供するため、13年7月よりタブロイド版の広報紙を2、3か月の間隔で発行している。広報紙の記事は、警視庁本部が中心となって編集しており、東京都の治安情勢のほか犯罪被害者支援活動、少年非行総合対策、暴力団追放活動等の施策を写真・イラスト等を用いて紹介するとともに、出会い系サイトやコンピュータ・ウイルス等のトピックを分かりやすく解説している。広報紙は、日刊紙6紙に折り込んで管内439万世帯(東京都内世帯数は558万世帯)に配布するとともに、約1,100か所の関係機関に配送しており、警視庁のホームページ(http://www.keishicho.metro.tokyo.jp)上にも公開している。このホームページには、14年6月末現在約9万件のアクセスがあり、電話、葉書による反響は7,500件を超えている。
b 自主防犯行動の支援
 警察は、地域ごとの犯罪対策計画に従い、巡回連絡におけるパトロールカードの活用等による個別の防犯指導や発生が増加している罪種や手口に対応する防犯設備等の提供・あっせん等を進めるなど、国民の自主防犯行動を積極的に支援していく。
 また、ボランティア活動や職域防犯団体等の組織的な取組みを積極的に支援していくことが必要である。警察は、独自に地域安全に資する目標を掲げて活動するボランティアの発掘に努めるとともに、自主性を尊重しつつ側面的支援を行うことにより、その活動の活発化を促していくこととしている。例えば、少年補導員、少年指導委員等の少年警察ボランティアについては、女性や大学生等への積極的な委嘱による活性化や公募制の導入によるボランティア数の増加等を推進している。また、自主防犯活動において中心的な役割を担っている防犯協会に対しては、防犯指導等の委託先としての役割やボランティアのコーディネーターとしての役割を期待していくこととしている。
 犯罪の被害を受けやすい業種、犯罪に利用されやすい業種等を中心として、組織的な防犯対策を講ずるための職域防犯団体が結成されているが、「金融機関の防犯基準」や「深夜スーパーマーケットの防犯基準」を作成するなど業界全体の自主防犯体制を整備させる取組みと併行して、地域ごとに企業、団体の防犯行動を支援することが必要である。
[事例] 東京都世田谷区のある商店街では、「安全で住みやすく楽しい街づくり」を行うため、警察を始め区役所等の関係機関の協力を得て自警組織を結成した。この自警組織は、世田谷区と鉄道会社に申し入れ土地の提供を受けることにより、駅前広場に「詰め所」を設置し、ボランティア活動の拠点としている。詰め所には午前8時から午後8時までの間、ボランティアのメンバーが常駐し、付近の自主パトロールを実施している。警察は、地域の犯罪発生状況等について各メンバーに対し情報提供を行うとともに、事件情報の通報等を依頼している。

(3)「犯罪に強い社会」の構築
ア 社会・経済の仕組みへの防犯システムの組込み
 「犯罪に強い社会」を構築するために、警察は、都市計画、情報通信ネットワーク、保険契約等の犯罪の発生と関連の深い社会・経済の仕組みに、犯罪の発生抑止に資する「防犯システム」をその特性に応じて組み込むこととしている。
(ア) 防犯に留意した公共空間の環境設計
 これまで、警察では、道路、公園等の公共施設や住居の構造、設備、配置等に関して防犯上の基準や留意事項(第3章第1節「安全・安心まちづくりの推進」参照)を策定し、街頭緊急通報装置(スーパー防犯灯)等の防犯施設のモデル整備を行ってきたが、これらに基づき、都市計画や住宅整備に当たり犯罪防止に配慮した環境設計を行うように、関係する整備主体に働き掛けを行っていくほか、防犯施設の整備の推進を検討していく。
(イ) 損害保険会社による防犯診断
 例えば、ある大手損害保険会社では、保険契約者の住居や自動車の管理状況等から侵入盗や自動車盗等の犯罪被害に遭うリスクを個別に診断し、その診断結果に基づいて改善のアドバイスを行っている。
 このような取組みは、経済的行動原理によって自主防犯行動の実践を促す有意義なものであり、警察は、犯罪の発生状況や手口等に関する情報提供等の支援を行い、これらの取組みを警察の立案する犯罪対策体系の中に位置付けていくことが必要である。
(ウ) 不正品に関する情報の交換
 チケット商の協同組合では、偽造又は盗難された高速券、商品券等のチケットに関する情報や偽造品・盗難品を持ち込んだ顧客等の情報を交換することにより、不正品の買受けを未然に防止する取組みを行っている。警察は、このような取組みに対して、偽造品・盗難品の発見時における通報の依頼や偽造・盗難の手口に関する情報の提供等の協力関係を積極的に構築していくこととしている。
(エ) 防犯登録制度
 盗難の防止や盗難被害品の早期回復を目的とする防犯登録制度は、自転車、自動二輪車及び原動機付自転車について実施されているところである。警察は、利用者に対する広報啓発活動や製造業者及び販売業者に対する協力要請を通じて登録率及び被害回復率の向上を図るための施策を講じることとしている。
(オ) アクセス管理者による防御措置
 情報通信ネットワークにおける安全の確保は、利用権者をID・パスワード等の識別符号により識別するアクセス制御機能により実現されている。不正アクセス行為の禁止等に関する法律においては、不正アクセス行為を防止するため、アクセス管理者(注)は、識別符号の適正な管理等の防御措置を講ずるよう努めるとともに、都道府県公安委員会は、アクセス管理者に対し不正アクセス行為の手口等につき必要な資料の提供、助言、指導その他の援助を行うものと定めており(第3章第5節「ハイテク犯罪対策への取組み」参照)、アクセス管理者が情報通信インフラを担う一員として自主的な防犯行動をとるように促している。
(注) アクセス管理者とは、電気通信回線に接続している電子計算機の利用につき当該特定電子計算機の動作を管理する者をいう。
イ 防犯システムたる生活安全産業の育成
 国民の自主防犯行動を補完又は代行する警備業や防犯設備は、犯罪に強い社会を構築するに当たり大きな役割を担う、まさに防犯システムとして期待されており、今後、これらの防犯システムが生活安全産業として国民のニーズに的確に応えることができるようにその在り方について法整備も含め検討を行う。
(ア) 警備業
 現在、警備業は、警備業者9千数百社余り、40万人を超える警備員を擁し(平成13年末現在)、自主防犯行動を補完又は代行する重要な役割を担っている。警察による警備業者に対する指導、監督等は、警備業務を適正に実施させる観点から行われてきたが、今後は、警備業が犯罪に強い社会を構築する上で不可欠な存在となっている状況を踏まえ、警備業を警察が立案する犯罪対策体系の中に積極的に位置付けていくことも検討課題の一つである。
 その前提として、警備員等の検定制度を活用して、警備業務の種別に応じて専門的な知識及び能力の向上を図ること等、質の高い警備員を確保し養成していくことを進めていく。あわせて、国、地方公共団体、企業や一般国民が警備業を活用しようとする場合に、適切な警備業者を選択することができるようにするための環境整備を検討していく。
(イ) 防犯設備
 国民が自主的に適切な防犯行動をとるためには、安価で十分な量の優良な防犯設備が供給されていることが条件となる。防犯設備には、錠前、緊急通報装置、ドアスコープ、防犯カメラ、位置探知システム等様々なものがあるが、ほとんどのものが民間によって開発・供給されていることから、警察は、犯罪の手口情報等を開発者に提供するなど、民間における開発を支援していくことが必要である。なかでも、錠前については、不正な解錠により侵入盗を敢行する事案の多発を踏まえ、錠前製造業者に対して不正な解錠方法に関する情報を提供する制度的枠組みを検討する必要がある。また、優れた防犯設備の普及を促進するため、防犯設備の効果が適正に評価され公表される仕組みも検討の価値がある。
 他方で、国民のニーズを把握することに積極的に努めている防犯設備業者もある。例えば、広島県では、防犯設備業者が特定非営利活動法人を設立(13年)し、防犯設備に関する相談の受理や錠前の付け替え等の防犯指導を実施している。
ウ 秩序違反行為の規制
 最近では、条例の制定により秩序違反行為を禁止する例が相次いでいる。大阪府は、「大阪府安全なまちづくり条例」(14年)に鉄パイプ等使用犯罪による被害の防止やピッキング用具の有償譲渡等の禁止等を定め、また、東京都は、「性風俗営業等に係る不当な勧誘、料金の取立て等の規制に関する条例」(いわゆるぼったくり防止条例)(12年)に不当な勧誘、料金の取立て等の禁止を定めている。ぼったくり防止条例については、続けてこれまでに大阪府等5道府県においても制定されており、これらの条例の制定により、不当な勧誘、料金の取立て等を行う店舗が減少し、店舗内での暴行・傷害等や金銭をめぐるトラブル等の発生を抑止することにつながった。
 犯罪に強い社会を構築するためには、これまで取締りの対象外であった秩序違反行為を規制することにより犯罪の増勢に歯止めを掛けることも重要な対策の一つであると認められる。
エ 社会的合意を形成する場づくり
 国民の自主防犯意識を高め、自主防犯行動の実践を拡大していくには、地域の安全についての考え方や犯罪対策の方針について、あらかじめ住民や関係機関等との間で合意を形成しておくことが望ましい。警察は、各個人、事業者、関係機関等の幅広い主体が犯罪の発生抑止の取組みへ参画することを促すため、治安問題を議論する場をつくることに主体的に取り組んでいく。また、地域ごと、罪種ごとにつくられた議論の場を一元的に把握し、情報の集約・分散や相互の調整を図る体制も検討に値する。
(ア) 地域の安全を議論する場
 地域の安全を確保するためには、国により示された分析結果や施策の方向性を地域の実情に合わせて捉え直し、当該地域にとって最も効果的な手法により施策を推進することが適当である。地域の安全を議論する場では、関係機関のほか、地域住民の参画を促すことで、地域住民の要望を把握するとともに、地域全体が当事者意識をもって犯罪の発生抑止に取り組む気運を醸成することが有益である。警察署協議会は、このような役割の一端を担うものとして重要な機能を有している。
(イ) 犯罪の類型別対策を議論する場
 悪質化、巧妙化する犯罪の発生を抑止するためには、犯罪の類型ごとに犯罪の発生状況や抑止対策を検討することが必要である。犯罪の類型別対策を議論する場では、侵入盗、乗り物盗、ひったくり、強制わいせつ、金融機関強盗、コンビニエンスストア強盗、偽造カード使用事犯等犯罪の類型ごとに発生状況等を詳細に分析し、被害に遭いやすい条件を抽出した上で、これに該当する個人や事業者に対し、効果的な防犯手法を教示することが必要である。検討に当たって、各分野の専門家や関係機関の担当者を参画させることは、専門的知見の集積に有益であり、かつ、社会全体で犯罪の発生抑止に取り組む気運の醸成に資するものである。
[事例] 自動車盗難は11年以降急激に増加したが、自動車盗の発生を抑止するためには、警察の検挙活動を強化するだけでなく、自動車の構造、流通・販売の在り方、中古自動車の輸出制度等に関する総合的な対策が必要と認められた。
 警察庁、財務省、経済産業省、国土交通省と関係民間9団体は、「国際組織犯罪等対策に係る今後の取組みについて」(13年8月、国際組織犯罪等対策推進本部決定)に基づき「自動車盗難等に関する官民合同プロジェクトチーム」を設置して、自動車の盗難及び盗難自動車の不正輸出を防止するための総合的な対策について検討を行い、「自動車盗難等防止行動計画」(14年1月)を策定した。現在、同計画を指針として、盗難防止性能の高い自動車の普及、自動車の使用者に対する防犯指導及び広報啓発等の自動車盗難防止対策や自動車盗難事件に対する取締りの強化、盗難自動車の不正輸出防止対策等が推進されている。


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