第1節 厳しさを増す犯罪情勢

1 統計でみる犯罪情勢
 平成13年の刑法犯認知件数は273万5,612件と戦後最高を記録し、過去10年間で約100万件の増加となっており、とりわけ刑法犯認知件数の9割近くを占める窃盗犯の増加が著しい。また、過去10年間で路上強盗とひったくりの認知件数はそれぞれ4.5倍、3.6倍に増加するなど、路上犯罪の大幅な増加が目立っている。また、来日外国人(注)による凶悪犯や組織窃盗事件が増加し、来日外国人犯罪の全国への拡散化傾向がうかがわれるとともに、少年非行の凶悪化、粗暴化が進展し、ひったくりの総検挙人員に占める少年の割合は7割を超えるなど、少年非行が深刻化している。
(注) 来日外国人とは、我が国にいる外国人から定着居住者(永住者等)、在日米軍関係者及び在留資格不明の者を除いた者をいう。

(1)過去10年間の刑法犯総数の認知・検挙状況の変化
 過去10年間の刑法犯認知件数は、平成4年以降、多少の起伏はあるものの増加を続けており、13年には273万5,612件と戦後最高を記録し、過去10年間で99万3,246件(57.0%)増加した。
 検挙件数は、4年以降11年までの間、おおむね70万件台で推移していたが、13年は、54万2,115件となっている。また、検挙人員は、過去10年間、30万人前後で推移していたが、13年には、過去10年間で最高の32万5,292人を検挙している。
 検挙率は、4年以降10年までの間、40%前後で推移していたが、認知件数の増加等により、13年は、19.8%と戦後初めて20%を割った(図1-1)。
ア 刑法犯の認知・検挙状況の推移
イ 包括罪種別の認知・検挙状況の推移
 過去10年間の包括罪種別認知件数の構成比は、それぞれ凶悪犯が0.4%、粗暴犯が約2~3%、窃盗犯が約86~88%、知能犯が約2~4%、風俗犯が約0.3~0.4%、その他の刑法犯が約6~9%となっている。このように、刑法犯認知件数に占める窃盗犯の割合は、9割近くとなっており、最近の窃盗犯の大幅な増加が、認知件数全体を押し上げる形となっている(図1-2)。
(ア) 凶悪犯
 凶悪犯の認知件数は、4年以降9年までの間、6,000から7,000件台で推移していたが、10年には8,000件を超え、13年には1万1,967件と、4年と比べて5,629件(88.8%)増加した。検挙件数は、4年には5,110件であったが、その後増加傾向で推移し、13年は7,320件となり、4年と比べて2,210件(43.2%)増加した(図1-3)。
(イ) 粗暴犯
 粗暴犯の認知件数は、4年以降8年までの間、3万7,000件前後で推移していたが、12年に6万4,418件、13年には7万2,801件と急激に増加し、4年と比べて3万6,171件(98.7%)増加した。検挙件数は、4年以降11年まで2万9,000件前後で推移していたが、13年には3万9,924件となり、4年と比べて1万859件(37.4%)増加した(図1-4)。
(ウ) 窃盗犯
 窃盗犯の認知件数は、4年以降8年までの間、150万件台で推移しつつも増加傾向にあったが、9年以降急激に増加し、13年には234万511件になり、4年と比べて81万4,648件(53.4%)増加した。一方、検挙件数は、4年以降11年までの間、40万件台後半から50万件台で推移していたが、13年には36万7,643件に減少し、4年と比べて10万836件(21.5%)減少した(図1-5)。窃盗犯を侵入盗、乗り物盗、非侵入盗に分けると、侵入盗の認知件数は、4年に23万3,690件であったものが、13年には30万3,698件、乗り物盗の認知件数は、4年に71万3,823件であったものが、13年には82万7,593件、非侵入盗の認知件数は、4年に57万8,350件であったものが、13年には120万9,220件といずれも増加しているが、とりわけ非侵入盗は過去10年間で2.1倍となっており、増加が著しい。
(エ) 知能犯
 知能犯の認知件数は、4年以降10年までの間、6万件前後で推移していたが、11年から減少傾向となり、13年は5万3,007件となっている。罪種別でみると、詐欺の認知件数が過去10年間で6,000件近く減少している。4年の検挙件数は6万9件であったが、減少傾向で推移し、13年は3万7,800件となり、過去10年間で2万2,209件(37.0%)減少した(図1-6)。
(オ) 風俗犯
 風俗犯の認知件数は、4年以降10年までの間、6,000件台で推移していたが、13年には1万1,841件となり、4年と比べて5,640件(91.0%)増加した。検挙件数は、4年以降12年までの間、おおむね5,000件台で推移し、13年は6,066件となった(図1-7)。
(カ) その他の刑法犯
 その他の刑法犯の認知件数は、4年以降9年までの間、10万件台から11万件台で推移していたが、13年には24万5,485件となり、4年と比べて2.4倍と大幅に増加している。罪種別でみると、器物損壊の認知件数が10年間で約11万5,000件増加している。検挙件数は、4年には6万8,357件であったが、13年には8万3,362件となり、過去10年間で1万5,005件(22.0%)増加した(図1-8)。
コラム
「指標としての検挙率」
 検挙率とは、認知件数に対する検挙件数の割合のことをいう(注)。刑法犯の検挙率は、4年以降10年までの間、40%前後で推移していたが、11年から大幅に低下し、13年は19.8%と戦後最低を記録した。
 刑法犯の認知件数は、平成に入ってからおおむね170万件から180万件で推移していたが、10年には200万件を突破し、13年は273万5,612件と戦後最高を記録しており、認知件数の増加は、検挙率の低下を招いている。
 また、認知件数の増加により、事件の発生に伴う現場への臨場,鑑識活動等の捜査に追われ、余罪の捜査にまで手が回らない実情がある。余罪とは、ある事件で検挙された被疑者が犯していたその他の犯罪をいい、従来は、特に余罪が多い窃盗犯を中心に、余罪捜査に力を注ぐことができた。現在では、余罪の解明が困難となったため、検挙人員1人当たりの検挙件数が減少し、結果として検挙率が低下している。
 また、犯罪捜査を取り巻く環境の変化は著しく、組織窃盗グループによる窃盗の増加等犯罪の組織化の進展は、グループ内の役割分担の解明等捜査事項を増大させている。また、来日外国人犯罪が増加する中、来日外国人被疑者の取調べに当たっては通訳が必要となるなど、事件を検挙するために必要な捜査負担は確実に増加しており、この点も検挙率低下の一因となっている。
 なお、警察においては、刑法犯のうち個人の生命、身体及び財産を侵害する度合いが高く、国民の脅威となっている重要犯罪(殺人、強盗、放火、強姦の凶悪犯に略取・誘拐、強制わいせつを加えたものをいう。)、重要窃盗犯(侵入盗、自動車盗、ひったくり、すりをいう。)の検挙に重点を置いた捜査活動を行っているが、刑法犯検挙率の分子に当たる検挙件数においては、例えば、検挙するために多大な捜査力の投入を要する殺人と、そうではない比較的国民の権利侵害の度合いが低い犯罪とが、同様に1件として計上される点に留意する必要がある。
(注) 認知とは、犯罪について、被害の届出若しくは告訴・告発を受理し、事件の移送を受け、又はその他の端緒によりその発生を確認することをいう(事件を移送する場合を除く。)。また、検挙とは、犯罪について被疑者を特定し、送致・送付又は微罪処分に必要な捜査を遂げることをいう。

(2)罪種別傾向
ア 重要犯罪
 過去10年間の重要犯罪の認知件数は、平成10年までほぼ横ばいで推移していたが、11年以降増加し、13年には2万1,530件に達し、4年の2.1倍となった。検挙件数は、増加傾向で推移し、13年には1万1,418件に達し、4年と比べて3,436件(43.0%)増加した。検挙人員は、増加傾向で推移し、13年には9,905人となり、4年と比べて3,781人(61.7%)増加した。検挙率は、10年まで80%以上の水準で推移していたが、認知件数の急激な増加に検挙が追い付かず、13年には53.0%となった(図1-9)。
(ア) 殺人
 殺人の過去10年間の推移をみると、認知件数は1,300件前後で横ばいとなっている。検挙件数も1,200件前後から1,300件前後で推移しており、検挙率については、過去10年間、95%前後を維持している(図1-10)。
 13年には、大阪府池田市内の小学校における児童・教員被害の多数殺人等事件が発生し、国民に大きな衝撃を与えたほか、衝動的で動機が必ずしも判然としない事件、金銭目的で短絡的に敢行された事件等が多発し、国民の治安に対する不安感を増大させた。
[事例] 13年6月、男(37)は、大阪府池田市内の小学校に侵入し、所携の刃物で児童・教員23人を刺し、うち8人を殺害した。男を殺人罪等で検挙した(大阪)。
(イ) 強盗
 強盗の認知件数は、過去10年間で増加を続けており、13年は6,393件で4年と比べて2.9倍となった。また、検挙件数及び検挙人員についても増加傾向にあり、13年は、4年と比べてそれぞれ検挙件数で2.0倍、検挙人員で2.3倍となっている(図1-11)。
 過去10年間の認知件数の増加分のうち約半数が路上強盗の増加によるものであり、路上強盗は、4年と比べて4.5倍となっている(図1-12)。また、強盗の発生時間帯別認知件数については、13年は午後10時から翌日午前4時の深夜の間に発生した強盗の認知件数が2,719件と全体の42.5%を占めており、4年の863件(全体の39.4%)と比べて3.2倍と大幅に増加している。
 金融機関対象強盗事件については、おおむね100件台で推移していたものが、13年になって229件と急増した(図1-13)。なかでも、13年には郵便局強盗事件が急増し、152件を数えたが、そのほとんどが職員数の少ない特定郵便局を対象としたものであった。
 また、深夜スーパーマーケット対象強盗事件(注)は、9年までおおむね100件台で推移していたが、10年には308件に急増し、13年には527件を数えた(図1-14)。24時間営業の店舗が増加したことに加え、これらの店舗においては夜間の従業員数が少ないことなどが、認知件数増加の大きな原因になっていると考えられる。
(注) 深夜スーパーマーケット対象強盗事件とは、午後10時から翌日午前7時までの間に、営業中のコンビニエンスストア等のスーパーマーケットの売上金等を目的として敢行された強盗事件をいう。  この外に13年に発生した事件をみると、青森県弘前市内の消費者金融における強盗殺人・放火事件を契機に、この事件を模倣して、金融機関等において液体をまくなどして脅迫し、金品を強取する事件が急増したことが目立った。
 また、来日外国人による強盗事件が多発しており、13年における来日外国人による強盗の検挙件数は219件、検挙人員は309人となり、過去10年で最高となっている。なかでも、中国人を始めとする来日外国人がグループで資産家とみられる個人の居宅やいわゆる風俗店等に押し入り、家人や従業員を緊縛して金品を強取する事件が頻発したが、これらの事件では、不法滞在している来日外国人と日本の暴力団とが結び付き、犯罪を敢行していることがうかがえた。
[事例1] 13年5月、男(43)は、青森県弘前市内の消費者金融において、所携のガソリンを店舗内にまいて現金を要求したが、これを拒否されたことから、同店舗に放火し、同店従業員5人を殺害し、4人を負傷させた。14年3月、強盗殺人罪等で検挙した(青森)。
[事例2] 13年4月、日本人と中国人の男8人は、金品強取の目的で、一般住宅に侵入し、家人を所携の刃物で突き刺すなどして、1人を殺害し、1人に傷害を負わせたが、負傷した被害者がその場から逃げ出したため、犯行の発覚を恐れて逃走し、その目的を遂げなかった。8人のうち、9月までに暴力団員等日本人4人、中国人3人を強盗殺人罪等で検挙した(山形)。
(ウ) 強姦・強制わいせつ
 過去10年間の強姦の認知件数は、9年まではおおむね1,500件台から1,600件台で推移していたが、10年以降増加傾向にあり、13年は2,228件となった(図1-15)。
 また、過去10年間の強制わいせつの認知件数は、6年までは3,500件台で推移していたが、7年以降は増加傾向にあり、13年には9,326件と4年と比べて2.7倍になっている(図1-16)。
 被害者を年齢別にみると、強姦、強制わいせつとも、13~29歳の女性の占める割合が高く、13年は強姦で86.0%、強制わいせつで68.2%を占めている。このうち、最近は10歳代の女性の被害が20歳代の女性の被害より多くなってきている。
 警察では、性犯罪の被害者がしゅう恥心等から警察に対する被害申告をしゅん巡する傾向が強いことを踏まえ、女性警察官による事情聴取の拡大、専用相談電話の設置等、被害者心情に配意した各種施策を推進しており、これらの施策による被害申告の増加が性犯罪の認知件数の増加の要因の一つとなっていると考えられる。
コラム
性犯罪被害の訴えを促す英国警察の取組み
 強姦等の性犯罪の被害者は、一般的に被害の申告をためらう傾向にあるといわれる。心身共に深く傷ついた被害者にとって、しゅう恥心を押して警察を訪れ、自己の被害体験を語るのは、相当の決意と勇気を要するものであろう。
 しかし、被害者の被害申告と捜査への協力は、犯人を検挙し、同様の被害が繰り返されるのを防ぐとともに、被害者自身の安全を確保する上でも重要である。逆に被害者の沈黙は、犯人にとっては好都合となる。
 これは各国の警察機関が共通に直面する悩みである。諸外国の警察も、性犯罪の被害者にとって近づきやすい場所となるように、事情聴取に伴う精神的な負担を和らげるための様々な工夫を講じている。  この分野で最も先進的な国といえるのが英国である。英国では、性犯罪の被害者が警察で事情聴取を受ける際に、信頼する知人の同席を認めたり、被害者の希望を踏まえて同性警察官による対応を原則とするのはもちろん、特別の訓練を受けた警察官が介添人として指名され、司法手続を懇切に説明するほか、被害者との連絡の一切を取り仕切る。
 特に施設面で効果を挙げているのが、警察署や近隣の病院内に設置された通称「レイプスウィート(rape suite)」と呼ばれる性犯罪被害者専用の事情聴取室の活用である。警察署に相談に訪れた被害者は、まずこの事情聴取室に案内される。ためらうことなく相談に来られるように、警察署の施設外から人目に触れず入室することができるようになっている。レイプスウィートの内部には、民家のような造りの応接セットや洗面所が用意されている。また、被害直後には、隣接の診察室に医師を呼び身体検査や診察を行えるようになっている。証拠の採取後には,備え付けのシャワー室を利用することが可能である。
 レイプスウィートは、英国では、1980年代から導入され始め、現在では多くの警察署で活用されている。また、アイルランドやノルウェーでも整備が進み、ヨーロッパでは、被害者保護のみならず、刑事司法制度全体の質的向上につながる効果的な施策の一つに数えられている。
イ 窃盗犯
(ア) 重要窃盗犯
 過去10年間の重要窃盗犯の認知件数は、10年まで30万件から33万件台で推移していたが、11年から増加傾向となり、13年には44万3,502件と4年と比べて13万4,062件(43.3%)増加した。検挙件数は、7年から減少傾向となり、10年までおおむね20万件台で推移したが、11年に20万件を切った後減少を続け、13年には12万183件となった。検挙人員は、5年から減少傾向で推移し、13年には2万2,493人となり、4年と比べて3,657人(14.0%)減少した(図1-17)。
a 侵入盗
 過去10年間の侵入盗の認知件数は、4年は23万3,690件であり、その後ほぼ横ばいで推移していたが、10年以降増加傾向に転じ、13年は30万3,698件にまで増加した。一方、検挙件数は、4年は14万5,000件台で、6年には19万件台に達したが、7年以降減少傾向に転じ、13年には8万9,456件となった(図1-18)。
 侵入盗の中でも、この1、2年で急に目立つようになったのがピッキング用具を使用したものである。12年中は、約2万9,000件のピッキング用具を使用した侵入盗を認知し、13年中は約1万9,000件と減少したものの、13年8月以降、再び増加傾向に転じている(図1-19)。また、検挙人員の約7割が中国人であり、組織的に犯行を重ねていた状況がうかがえる。その特徴としては、マンションや事務所等に侵入し、現金のほか、預金通帳や有価証券等を盗んだ上、即刻、銀行窓口で預金を引き出す事例や、有価証券等を闇ルートに流す事例がみられる。また、中国人被疑者の中には、一度逮捕され、退去強制処分となった者が、偽造旅券を使用するなどして再入国し、再び犯行を重ねる者もいる。
[事例] 中国人の男(39)らは、11年6月以降、日本人を車両の運転手や盗品処分者として利用し、中高層ビルの会社事務所を対象に、ピッキング用具使用による金庫破り等を敢行し、盗んだ預金通帳等の印影を偽造し、預金の引き下ろし等を組織的に敢行していた。13年3月までに、10都府県において金庫破り事件等57件、被害総額1億3,505万円相当の犯行を確認し、28人を窃盗罪等で検挙した(大阪、長崎)。
b 自動車盗
 過去10年間の自動車盗の認知件数は、10年までは3万5,000件前後で推移していたが、11年以降増加傾向に転じ、13年には6万3,275件となり、4年と比べて1.8倍となっている。検挙件数は、5年以降約2万件前後で推移していたが、8年からは減少傾向となり、12年には1万1,415件まで減少した。しかし、13年は1万3,390件と6年ぶりに増加に転じた。一方、5年までは6,000人台で推移していた検挙人員は、6年からは減少傾向となり、12年には4,590人にまで減少したが、13年は4,933人と3年ぶりに増加に転じた(図1-20)。
 被害状況をみると、10年までは、エンジンキーを付けたままの自動車が被害に遭う場合が多かったが、11年以降、エンジンキーを抜いて駐車していた自動車が被害に遭う場合が多くなった(図1-21)。検挙事例をみると、これまではエンジンキーを抜き忘れた自動車を単独犯が場当たり的に盗んで自己の足代わりにするというものが主流であったが、最近は、暴力団関係者、来日外国人等が、組織的に自動車を盗み、車両の所有者名義を偽って他人に売却する事例、車台番号を改ざんして海外に不正に輸出する事例、他の暴力団関係者等に転売する事例等が目立っている。
[事例] アフガニスタン人の男(36)は、暴力団関係者等と結託して、自動車窃盗組織をつくり、近畿圏を中心に関東から九州にわたり、主として高級四輪駆動車を対象とした自動車盗を敢行し、盗んだ車をUAE(アラブ首長国連邦)等に輸出していた。13年7月までに、13府県において、自動車盗等341件、被害総額11億6,517万円相当の犯行を確認し、関連被疑者17人を窃盗罪等で検挙した(大阪、奈良、兵庫)。
コラム
(社)日本損害保険協会実施の「第3回自動車盗難事故実態調査」
 (社)日本損害保険協会が14年3月にまとめた「第3回自動車盗難事故実態調査結果」(注)によると、全国における調査期間中の保険金支払額は30億5、836万円であり、そのうち全損が全体の93.8%を占めている。
 国産車・外国車別被害状況については、国産車が保険金支払額全体の82.1%を占めている。  車両を最後に確認してから盗難に気付くまでの時間については、6時間以上12時間未満が全体の29.9%、12時間以上24時間未満が全体の26.6%と目立っており、これらの自動車の9割以上はエンジンキーを抜きロックをしていた状態で盗難被害に遭っていた。他方、30分未満での盗難も106件(9.3%)発生しているが、これらの自動車の約8割はドアをロックしていなかったか、エンジンキーを付けたままのいずれかの状態で盗難被害に遭っていたことが分かる(図1-22)。
(注): (社)日本損害保険協会が、保険会社30社を対象に、全国で発生した自動車盗難事故で13年11月中に車両保険金を支払った事案について調査したもの。)
c ひったくり
 過去10年間のひったくりの認知件数は、4年には1万4,000件台であったが、その後増加を続け、13年には5万838件と4年の3.6倍となっている。検挙件数は、認知件数の増加に伴って増加を続け、11年には2万597件を数えたが、12年から減少に転じ、13年には1万2,925件となっている。検挙人員も、検挙件数と同様に増加を続け、11年には3,000人を超え、13年は3,078人となっている(図1-23)。
 13年中のひったくりの発生状況をみると、東京、大阪、名古屋等の大都市圏を中心に発生しており、地域的に発生の傾向に相当の差があることが分かる。ひったくりの特徴としては、高齢者や女性が被害対象となることが多く、強盗等の凶悪犯に転じる事例もみられる。また、検挙人員のうち少年が7割前後を占めているが、遊興費欲しさに軽い気持ちで敢行している例が多い。また、特定の者が連続的にひったくりを敢行している事例も多いことから、警察は、刑事、少年、暴走族対策、地域等の各部門の連携を図り、対策に取り組んでいる。
[事例] 男子中学生(15)ら8人は、12年6月から11月にかけて、覆面をした上、オートバイを利用して集団でひったくりを敢行し、ひったくり34件、被害総額170万円相当に及ぶ犯行を重ねていた。13年2月までに、窃盗罪等により検挙した(神奈川)。
(イ) その他の窃盗犯
 重要窃盗犯以外の窃盗犯の認知件数は、189万7,009件と窃盗犯の全認知件数の81.1%を占めている。主要な手口別の割合をみると、自転車盗が52万1,801件と窃盗犯の全認知件数の22.3%を占め、次いで車上ねらい(注1)が43万2,140件(18.5%)、オートバイ盗が24万2,517件(10.4%)、自動販売機荒し(注2)が17万470件(7.3%)、部品盗(注3)が12万9,380件(5.5%)等の順になっている(図1-24)。このうち、過去10年間でみると、車上ねらい及び部品盗の増加が著しく、最近の自動車盗の急増と併せて、自動車に関連する犯罪の増加が目立っている。
(注1) 車上ねらいとは、自動車等の積荷等を窃取するものである。
(注2) 自動販売機荒しとは、自動販売機又はその中の現金若しくは物品を窃取するものである。
(注3) 部品盗とは、自動車等に取り付けてあるナンバープレート、タイヤ等の部品、付属品を窃取するものである。
a 車上ねらい
 過去10年間の車上ねらいの認知件数は、9年まで22万件前後で推移していたが、10年以降増加傾向に転じ、13年は43万2,140件で4年の2.0倍となった。検挙件数は、11年まではおおむね7万件台で推移していたが、12年、13年ともに4万件台と減少した。一方、検挙人員は、多少の増減はあるものの、9年を底に増加に転じ、13年は3,027人となった(図1-25)。
b 部品盗
 過去10年間の部品盗の認知件数は、8年までは4万件台で推移していたが、9年に5万件を超え、その後も増加を続け、13年は12万9,380件で4年の2.9倍となった。検挙件数は、11年までは8,000件台から1万件台で推移していたが、12年以降は約6,500件に減少した。一方、検挙人員は若干の増減はみられるものの、9年に底を打った後増加に転じ、13年は2,082人となった(図1-26)。
ウ 粗暴犯
(ア) 暴行
 過去10年間の暴行の認知件数は、11年までは、6,000件台から7,000件台で推移していたが、12年には1万3,225件と急増し、13年も1万6,928件と増加傾向にある。検挙件数は、11年までは5,000件前後で推移していたが、12年以降、認知件数の増加に伴って増加し、13年は7,852件となった。また検挙人員は、11年までは6,000人前後で推移していたが、検挙件数と同様、12年以降増加を続け、13年は8,636人となった(図1-27)。
(イ) 傷害
 過去10年間の傷害の認知件数は、11年までは、ほぼ横ばいで推移していたが、12年に急増し3万件を超え、13年は3万3,965件と、4年の1.8倍となった。検挙件数、検挙人員も、12年、13年ともに認知件数の増加に伴って増加している。
 13年中の主な傷害事件をみると、電車内や駅のホームにおいて、口論を発端に暴行を加えて死亡させた事案や、少年らがホームレスに対して集団で暴行を加えて死亡させた事案等、「キレる」、「ムカつく」という言葉に象徴されるような風潮を反映し、自制心を欠き、結果の重大性を認識できない者による犯行がみられた(図1-28)。
[事例] 13年4月、男(24)ら2人は、路上で男性と肩が触れたことから口論となり、暴行を加え、死亡させた。14年2月、男2人を傷害致死罪で検挙した(大阪)。
エ 少年犯罪
 刑法犯少年の検挙人員、人口比(注)の推移は、図3-10のとおりである。刑法犯少年の検挙人員は、4年には13万3,882人であったものが、7年を底に増加傾向へ転じ、13年には13万8,654人となっている。過去10年間の人口比は4年の11.8から増加を続け、13年には16.0と、成人の8.9倍となっている。少子化により少年人口が減少する一方で、少年検挙人員が増加しているため、人口比は上昇している。また、少年の凶悪犯、粗暴犯が依然として高水準で推移し、さらに、ひったくりが増加するなど、非行の凶悪化・粗暴化の状況がうかがわれ、依然として深刻な状況にある(第3章第2節参照)。
(注) 人口比とは、同年齢層の人口1,000人当たりの検挙人員をいう。
(ア) 凶悪、粗暴な非行の深刻化
 過去10年間の凶悪犯で検挙した少年(以下「凶悪犯少年」という。)の人員は、13年には2,127人と5年連続で2,000人を超える高い水準で推移しており、依然として深刻で予断を許さない状況が続いている(図3-11)。人口比は4年の0.10から上昇を続け、13年には0.24と10年間で2.4倍に、また、成人の4.8倍に達している。
 過去10年間の推移を罪種別にみると、強盗と放火が増加し、殺人と強姦が減少した(図1-29)。  凶悪犯少年の検挙人員のうち、強盗の検挙が最も多く、13年の凶悪犯少年の総検挙人員に占める割合も78.5%となっている。過去10年間の強盗の検挙人員は4年の694人から増加を続け、10年間で2.4倍に達している(図1-30)。また、人口比も4年以降増加を続け、10年間で3.1倍に、また、成人の8.0倍に達している。
 手口別にみると、侵入強盗、非侵入強盗は、いずれも増加しているが、非侵入強盗の中でも、とりわけ路上強盗の検挙人員の増加が著しく、4年には425人であったものが13年には1,103人と2.6倍になっており、13年の少年による強盗の検挙人員の66%が路上強盗の検挙人員である。また、少年による強盗の検挙事件を共犯形態別にみると、検挙件数に占める共犯事件の割合は4年の56.1%を底に増加傾向へ転じ、13年は66.5%と、10年間で10.4ポイント増加した。
 過去10年間の粗暴犯で検挙した少年(以下「粗暴犯少年」という。)の人員は、4年には1万5,162人であったが、6年の1万4,655人を底に増加傾向へ転じ、13年には1万8,416人と増加している。人口比は4年の1.34から上昇を続け、13年には2.12と10年間で1.6倍に、また、成人の6.6倍に達している。  13年の検挙人員を罪種別にみると、前年に比べ、暴行、傷害、脅迫、恐喝が減少したが、凶器準備集合が増加した(図1-31)。
 このように凶悪化、粗暴化している少年犯罪情勢に対応するため、13年4月から、少年法等の一部を改正する法律が施行されている。
[事例] 有職少年(18)、専門学校生(18)ら4人は、13年4月、地下鉄ホームに停車中の車両内及び同ホーム上において、会社員の男性(43)とささいなことから口論となり、同人の顔面等を殴るなどの暴行を加え、死亡させた。同年5月、傷害致死罪で検挙し、このうち2人は検察官への送致(逆送)が決定、6月に起訴された(警視庁)。
(イ) 多発するひったくり
 過去10年間のひったくりの認知件数・検挙人員の推移は、図1-32のとおりである。13年の検挙人員は2,190人で、前年に比べ11人増加し、3年連続して2,000人を超え、4年の3.6倍に増加した。また、ひったくりの総検挙人員に占める少年の割合は71.2%で、前年に比べ0.3ポイント、4年に比べて12.3ポイント増加している。
オ 来日外国人犯罪
(ア) 検挙状況の推移
 13年中の来日外国人による犯罪の検挙状況は、検挙件数は2万7,763件、検挙人員は1万4,660人となっている。過去10年間の来日外国人犯罪の検挙状況の推移をみると、検挙件数、検挙人員ともに増加傾向にあり、13年は4年と比べてそれぞれ2.3倍、1.6倍となっている(第9章第1節「来日外国人による犯罪」参照)。
 このうち、来日外国人による刑法犯の検挙件数は、11年の2万5,135件をピークにその後減少しているが、13年は4年の2.4倍となった。刑法犯の検挙人員も増加傾向にあり、13年は4年の1.2倍となった。  また、来日外国人による特別法犯の検挙件数、検挙人員ともに増加傾向にあり、13年は4年と比べてそれぞれ2.0倍、2.1倍となっている(表1-4、図9-3)。
(イ) 特徴的傾向
a 凶悪化の進展
 過去10年間の凶悪犯の検挙状況の推移は、検挙件数、検挙人員ともに増加傾向にあり、13年は、4年と比べてそれぞれ1.9倍、2.2倍となっている。特に強盗の検挙件数、検挙人員は10年以降大幅に増加しており、13年は、4年と比べてそれぞれ2.3倍、2.6倍となっている(図1-33)。  また、中国人を始めとする来日外国人がグループで資産家とみられる個人の居宅やいわゆる風俗店等に押し入り、家人や従業員を緊縛して金品を強取する事件が頻発するなど、手荒い手口で敢行される犯罪が多くみられた。
[事例] 14年1月、中国人留学生(23)ら5人は、共謀の上、金品強取の目的で大分県内の民家に押し入り、刃物で男性を殺害し、その妻に重傷を負わせた。2月、中国人留学生ら3人を強盗殺人罪等で検挙した。なお、被害者は、被疑者のうち1名の国内留学時の保証人であった(大分)。
b 組織化の進展
 来日外国人による犯罪は、組織化の傾向がみられる。13年中の刑法犯の検挙件数を共犯形態別にみると、日本人は共犯事件比率(注)が18.3%と単独による犯罪が目立つのに対し、来日外国人は共犯事件比率が55.9%と、日本人の3.1倍となっている(図1-34)。
 刑法犯共犯事件の検挙件数を共犯者数別にみると、日本人では2人組が63.9%を占め、比較的少人数により犯罪を敢行しているのに対し、来日外国人では2人組は32.9%にすぎず、3人組24.7%、4人組以上42.4%とグループで犯罪を行う傾向が強い。
 特に、来日外国人が敢行する組織窃盗事件(多数の被疑者が首領の指揮の下、下見、窃取、盗品の運搬、処分等の役割を分担して行う窃盗事件)や組織的な強盗事件が目立っており、その被害が深刻化している。
[事例] 中国人窃盗グループは、ピッキング用具を用いて東北から中部地方の広域にわたり、組織的に強盗及び窃盗を敢行していた。13年8月までに、3管区1都8県にわたる強盗及び窃盗212件(被害総額7,813万円相当)で、被疑者16人を検挙した(埼玉、愛知、宮城)。
(注) 共犯事件比率とは、刑法犯検挙件数のうち、共犯事件(2人以上の共犯者による事件をいう。)の占める比率をいう。
c 全国への拡散
 4年から13年の来日外国人刑法犯検挙件数の増加率を発生地域別に比較すると、警視庁管内(東京)が1.1倍と横ばいとなっている一方、他のブロック(北海道及び7管区警察局管内)では、北海道の10.7倍、四国の9.0倍、中部の8.5倍を始め、すべて大幅な増加率となっており、来日外国人犯罪の全国への拡散化傾向がうかがわれる(表1-5)。
d 来日外国人犯罪の温床となる不法入国・不法滞在
 13年の来日外国人検挙人員に占める不法滞在者の割合は、検挙人員全体では50.7%である。刑法犯検挙人員全体に占める不法滞在者の割合は19.2%であるが、そのうち、凶悪犯検挙人員に占める不法滞在者の割合は44.7%となっており、高い割合を占めている。
 また、旅券の偽変造や日本人との偽装結婚等により、繰り返し不法入国を行う来日外国人犯罪者が、犯罪グループの中核を形成するという実態もみられる。
(ウ) 国籍・地域別検挙状況
 過去10年間の来日外国人刑法犯の検挙状況をみると、4年以降13年までの間、中国が検挙件数、人員ともに大幅に増加しており、13年は4年と比べて、それぞれ4.3倍、1.8倍となっている。また、ブラジルが件数、人員ともに7年から大幅に増加し、13年は4年と比べて、それぞれ15.6倍、5.5倍となっている。
 13年の来日外国人の国籍・地域別刑法犯検挙状況の内訳をみると、中国の割合が最も高く、検挙件数8,945件、検挙人員3,232人となっており、それぞれ49.2%、45.1%を占めている(表9-2)。
カ 薬物犯罪
 過去10年間の覚せい剤事犯の検挙状況を見ると、検挙人員、押収量及び初犯者(初めて覚せい剤取締法により検挙された者)の検挙人員は、特に7年以降いずれも高い水準で推移している。
 検挙人員は、7年以前は1万5,000人前後であったが、8年以降2万人に迫る勢いで推移しており、特にピークの9年には、1万9,722人もの検挙人員があった。押収量については、11年、12年ともに1トンを超え、ピークを迎えたが、13年は隠匿方法の巧妙化が進んだことなどから、押収量は減少した。また、初犯者も7年以降全体の50%前後を占める状況が続いている(第3章第4節「深刻な覚せい剤情勢」参照)。

(3)都道府県内における発生の状況
 これまで過去10年間の全国の犯罪情勢の変化をみてきたが、これが都市部のみに顕著にみられる問題であるのか、また、各都道府県内においても中心部と周辺部で犯罪の増加の程度が異なるのかなどを検証するため、青森県、群馬県、京都府を例示的に取り上げ、その犯罪情勢の推移を分析することとする。
ア 青森県の場合
 青森県における過去10年間の刑法犯認知件数の推移は図1-35のとおりである。平成13年の刑法犯認知件数は1万7,051件であり、4年と比べて6,740件(65.4%)と大幅に増加している。なかでも、13年の自動販売機荒し、器物損壊、自転車盗、ひったくりの認知件数は4年と比べてそれぞれ6.4倍、4.4倍、3.2倍、2.6倍と増加が著しい。
 青森県内の警察署を規模別に大規模警察署、中規模警察署及び小規模警察署に分類し(注)、それぞれの規模別の刑法犯認知件数の推移をみた結果は、図1-36、1-37及び1-38のとおりである。犯罪の発生状況については、11年からすべての規模の警察署において増加傾向にあるが、特に小規模警察署における犯罪の増加が顕著である。
(注) 各警察署の警察職員定員を基準として、大規模警察署には、青森、八戸、弘前の3警察署、中規模警察署には、五所川原、十和田、三沢、黒石、むつの5警察署、小規模警察署には、野辺地、木造、三戸、鰺ヶ沢、金木、浪岡、七戸、大鰐、蟹田、五戸、板柳、大間の12警察署をそれぞれ分類した。
イ 群馬県の場合
 群馬県における過去10年間の刑法犯認知件数の推移は図1-39のとおりである。13年の刑法犯認知件数は3万2,544件であり、4年と比べて1万911件(50.4%)と大幅に増加している。なかでも、過去10年間で、重要犯罪のうち強制わいせつが3.2倍、強盗が2.2倍に、重要窃盗犯のうちひったくりが5.4倍、自動車盗が2.5倍にそれぞれ大幅に増加している。
 群馬県内の警察署別の刑法犯認知件数について、各警察署における4年の認知件数を100としたときの13年の認知件数を指数で表し、地図を色分けしたものが図1-40である。指数が200以上の警察署は6署あるが、その要因としては、当該警察署管内が隣接の都市のベッドタウン化し、人口が増加していることや、高速道路の開通等により周辺都市から当該警察署管内への人の流入が容易となったことが考えられる。
ウ 京都府の場合
 京都府における過去10年間の刑法犯認知件数の推移は図1-41のとおりである。13年の刑法犯認知件数は6万3,051件であり、4年と比べて2万5,469件(67.8%)と大幅に増加している。なかでも、13年のひったくり、自動車盗、強制わいせつの認知件数は4年と比べてそれぞれ7.0倍、3.2倍、2.6倍と増加が著しい。
 京都府内の警察署別の刑法犯認知件数について、各警察署における4年の認知件数を100としたときの13年の認知件数を指数で表し、地図を色分けしたものが図1-42である。認知件数では、京都市内の南部を管轄する山科警察署、伏見警察署等が最も多いものの、増加状況でみると、京都市に隣接する地域を管轄する警察署(亀岡警察署、宇治警察署等)で2倍以上の増加(指数200以上)となっており、京都市の隣接地域での犯罪の増加が顕著である。その要因としては、京都市周辺部がベッドタウン化していること、学校教育機関が市の周辺部に移転する傾向にあることなどにより、京都市周辺部の人口が増加していることや、幹線道路の整備等が進み、車両による人の移動が容易となったことなどが考えられる。

(4)増加が目立つ犯罪に関する調査
 警察庁では、特に認知件数が目立つ罪種・手口について、恒常的な犯罪統計からは読み取ることができない詳細な事項を把握するため、平成14年3月、各都道府県警察を対象に「認知件数の増加が目立つ犯罪に関する実態調査(認知事件)」(以下「認知事件に関する調査」という。)(注1)及び「認知件数の増加が目立つ犯罪に関する実態調査(検挙被疑者)」(以下「検挙被疑者に関する調査」という。)(注2)を実施した。
(注1) 認知事件に関する調査は、各都道府県警察において14年4月中に認知した強盗、強制わいせつ、自動車盗、車上ねらい、部品盗及び器物損壊の各事件について、その認知件数の多寡にかんがみ、罪種・手口ごとに一定期間(強盗及び強制わいせつは2週間、自動車盗は2日間、車上ねらい、部品盗及び器物損壊は1日間)を指定してこれを取り扱った警察官に対して調査票を記入させて調査したもの。回収数は、強盗が191件、強制わいせつが269件、自動車盗が280件、車上ねらいが957件、部品盗が323件、器物損壊が410件で、合計が2,430件であった。
(注2) 検挙被疑者に関する調査は、各都道府県警察において14年4月中に検挙した強盗、自動車盗、車上ねらい、部品盗、暴行・傷害、器物損壊の各事件について、その検挙人員の多寡にかんがみ、罪種・手口ごとに一定期間(強盗、車上ねらい、部品盗及び器物損壊は4週間、自動車盗は2週間、暴行・傷害は1週間)を指定してその間に検挙した被疑者に対し、同意を得た上で、警察官が聞き取りを実施するなどにより調査したもの。回収数は、強盗が226人、自動車盗が145人、車上ねらいが171人、部品盗が127人、暴行・傷害が427人、器物損壊が291人で、合計が1,387人であった。
ア 認知事件に関する調査
(ア) 強盗
 発生場所についての回答は、図1-43のとおりであり、全体の6割近くが屋外で発生しており、特に4割以上が路上での発生である。
 発生場所が路上である事件についてみると、発生時間帯における人通りについての回答は、「ほとんど人通りはない」が36件(43.4%)、「あまり人通りはない」が32件(38.6%)であり、路上における強盗の8割以上が人通りがないところで発生していた。夜間(注)に発生した場合の発生場所の明るさについての回答は、「やや暗い」が29件(63.0%)、「非常に暗い」が7件(15.2%)で、8割近くが暗い場所で発生していた。
 また、発生場所がスーパー又はコンビニエンスストアである事件についてみると、営業時間中に敢行されたか否かについての回答は、「営業時間中」が21件(91.3%)と9割以上を占めていた。事件発生時に店舗内にいた店員数についての回答は、「1人」が11件(47.8%)、店舗内にいた他の客の数についての回答は、「0人」が18件(78.3%)と、店舗内にいる人数が少ない方が狙われやすいことがうかがえる。
(注) 認知事件に関する調査において、夜間とは、午後8時から午前4時までの間をいうものとした。
(イ) 強制わいせつ
a 届出
 被害を届け出た人のうち、「自ら進んで」届け出た人は131人(48.7%)、「人に勧められて」届け出た人は132人(49.1%)であり、約半数は人に勧められていた。届け出た主たる理由(複数回答)については、「早く犯人を捕まえて欲しい」、「犯人を許せない」、「他の被害者が出ないように」という回答が多かった。
 また、届け出るに当たってためらいがあったか否かについては、「ためらいはなかった」が133人(49.4%)、「若干ためらいがあった」が109人(40.5%)、「非常にためらいがあった」が16人(5.9%)であり、5割弱の人がためらいを感じつつ届け出ていることがうかがえる。ためらいがあった者に対するためらった理由の質問についての回答(複数回答)は、「届け出るのが恥ずかしかったから」が74人(59.2%)であった。
 このように、届出にためらいを感じた被害者が、周りの人に勧められるなどして被害を届け出ていることがうかがえる。
b 発生場所
 発生場所についての回答は、図1-44のとおりであり、7割近くが屋外で発生しており、全体の45.4%が路上における発生である。また、アパート等の共用部分における発生も13.0%を占めている。
 発生場所が路上であった事件についてみると、発生時間帯における人通りについての回答は、「ほとんど人通りはない」が57件(46.7%)、「あまり人通りはない」が41件(33.6%)であり、路上で発生した強制わいせつの約8割が人通りがないところで発生していた。また、夜間に発生した場合の発生場所の明るさについての回答は、「やや暗い」が37件(64.9%)、「非常に暗い」が12件(21.1%)で、9割弱が暗い場所で発生していた。
 また、発生場所が住宅であった事件についてみると、どのような住宅かについての回答は、「一戸建て住宅」が8件(38.1%)、「アパート・マンション等」が11件(52.4%)であった。また、アパート等の共用部分で発生した事件についてみると、具体的な場所についての回答は、「階段(踊り場を含む。)」が13件(37.1%)、「エレベーター」が6件(17.1%)であり、防犯カメラの設置の有無については「なし」が32件(91.4%)と9割以上を占めていた。
(ウ) 自動車盗
a エンジンキーの有無
 エンジンキーの有無については、「あり」が91件(32.5%)、「なし」が187件(66.8%)であり、エンジンキーを抜き忘れるなどして被害に遭っている場合が3割以上であった。
b 発生場所
 発生場所についての回答は、図1-45のとおりであり、6割が駐車場において発生している。
 発生場所が駐車場であった事件についてみると、夜間に発生した場合の発生場所の明るさについての回答は、「やや暗い」が28件(51.9%)、「非常に暗い」が11件(20.4%)で、7割以上が暗い場所で発生していた。駐車場の管理人の有無についての回答は、「管理人はいない」が148件(88.1%)と9割近くに管理人がいなかった。また、防犯対策の実施状況(複数回答)についての回答は、「なし」が143件(85.1%)、「周囲からの見通しが確保されている」が13件(7.7%)と、8割以上の駐車場において防犯対策が講じられていなかった。
(エ) 車上ねらい
a ドア又はトランクの施錠の有無
 施錠の有無についての回答は、「施錠あり」が714件(74.6%)、「施錠なし」が204件(21.3%)であり、7割以上が施錠していたにもかかわらず被害に遭っていた。
b 発生場所
 発生場所についての回答は、図1-46のとおりであり、7割以上が駐車(輪)場において発生している。
 発生場所が駐車(輪)場であった事件についてみると、夜間に発生した場合の発生場所の明るさについては、7割近くが暗い場所で発生していた。駐車(輪)場の管理人の有無については、9割以上に管理人がいなかった。また、防犯対策の実施状況(複数回答)については、9割弱の駐車(輪)場において防犯対策が講じられていなかった。
(オ) 部品盗
a 品名
 被害品の具体的な品名についての回答は、図1-47のとおりであり、「ナンバープレート(四輪)」が93件(28.8%)と最も多かった。その他にも、「ナンバープレート(二輪)」、「カーオーディオ」、「タイヤ(四輪)」等の回答が多かった。
b 発生場所
 発生場所についての回答は、図1-48のとおりであり、8割近くが駐車(輪)場において発生している。
 発生場所が駐車(輪)場であった事件についてみると、夜間に発生した場合の発生場所の明るさについては、7割以上が暗い場所で発生していた。駐車(輪)場の管理人の有無については、約9割に管理人がいなかった。また、防犯対策の実施状況(複数回答)については、9割近くの駐車場において防犯対策が講じられていなかった。
(カ) 器物損壊
a 被害品
 被害品についての回答(複数回答)は、図1-49のとおりであり、「車」が204件(49.8%)と最も多かった。その他には、「窓・ドア等のガラス」、「壁・塀」、「玄関ドア等の施錠設備」等の回答が多かった。
b 届出
 届け出た理由についての回答(複数回答)は、「犯人を捕まえて欲しかったから」が252人(61.5%)、「保険手続きのために必要であったから」が126人(30.7%)であった。
 また、届け出るに当たってためらいがあったか否かについての回答は、「ためらいはなかった」が347人(84.6%)、「若干ためらいがあった」が57人(13.9%)、「非常にためらいがあった」が2人(0.5%)であった。ためらいがあった者に対するためらった理由の質問についての回答(複数回答)は、「届け出るのが面倒だから」が31人(52.5%)、「保険手続きのためだから」が13人(22.0%)であった。保険手続きのため届け出た者に対する保険の種類の質問についての回答は、「車両保険」が74人(58.7%)と6割近くを占め、「総合動産保険(クレジットカード付帯保険サービス)」が21人(16.7%)であった。
c 発生場所
 発生場所についての回答は、図1-50のとおりであり、4割以上が駐車(輪)場において発生しており、路上や住宅における発生も1割以上と多い。
イ 検挙被疑者に関する調査
(ア) 被疑者の特性
 被疑者の性別についての回答は、図1-51のとおりであり、ほとんどの被疑者が男性であった。
 被疑者の年齢についての回答は、図1-52のとおりであり、部品盗については、少年が占める割合が5割以上であった。暴行・傷害については、20歳代及び30歳代以上が占める割合が合わせて5割以上と高かった。
 被疑者の職業についての回答は、図1-53のとおりである。自動車盗、車上ねらい、強盗については、「無職」(注)と回答した者が6割前後と高かった一方で、暴行・傷害については、「有職」と回答した者が約6割であった。
(注) 職業の質問に対し、「無職」又は「主婦」と回答した者を無職に分類した。
 検挙歴についての回答は、図1-54のとおりであり、自動車盗、車上ねらい及び強盗については、被疑者の6割以上が過去に検挙歴を有しており、これらについては常習的に犯罪を敢行している者が多いことがうかがわれる。
 被疑者が少年の場合の補導歴の有無についての回答は、図1-55のとおりであり、強盗、自動車盗及び暴行・傷害については、検挙された少年の6割以上が過去に補導された経歴を有していた。
 暴力団との関係についての回答は、図1-56のとおりであり、自動車盗で検挙された被疑者のうち2割以上が暴力団と関係を有している点に特徴があり、暴力団等による組織的な自動車盗が増加していることを裏付けている。
 共犯者人数についての回答は、図1-57のとおりであり、強盗、自動車盗及び部品盗については、単独犯の被疑者よりも共犯者のいる被疑者の方が多く、組織的に敢行される強盗や自動車盗が増加していることを裏付けている。
(イ) 強盗被疑者による被害者の選定
 強盗被疑者の被害者の選定についての回答(複数回答)は、図1-58のとおりであり、反抗されないように見える者、お金を持っているように見える者、女性等が強盗の被害に遭いやすいことがうかがえる。
(ウ) 犯行の動機・背景
a 犯行の動機
 犯行の動機についての主な回答(複数回答)は、図1-59、1-60、1-61、1-62、1-63及び1-64のとおりである。強盗については、生活費目的よりも遊興費目的で敢行する者が多い。また、自動車盗、部品盗については、被害品そのものを目的とする者が最も多いほか、スリルや遊興費目的で敢行する者が生活費目的で敢行する者を上回っている。また、自動車盗については、職業的、常習的に敢行している者が他の罪種・手口に比べると目立っている。他方、車上ねらいについては、生活費目的で敢行する者が最も多く、次いで遊興費目的となっている。暴行・傷害や器物損壊については、「被害者に対しカッときたためやった」と回答した者が多く、衝動的に犯罪を敢行していることがうかがえる。
b 犯行の背景
 生活に困っているか否かについての回答は、図1-65のとおりであり、車上ねらい、強盗及び自動車盗については、「生活に困っている」被疑者の占める割合が比較的高いことがうかがえる。
 無職の者(主婦を除く。)に対するどれくらいの期間無職なのかの質問についての回答は、図1-66のとおりであり、1年以上無職だった者は、暴行・傷害、器物損壊で6割弱、強盗、自動車盗で5割前後、車上ねらい、部品盗で約4割であった。
 無職の者(主婦を除く。)に対する働く意志はあるか否かの質問についての回答は、図1-67のとおりであり、「職探しをしているが仕事が見つからない」被疑者は部品盗や器物損壊で2割を超えたが、それ以外の被疑者では2割に満たなかった。他方、「働く意志は全くない」、「あまり働きたくないが、場合によっては働いてもいい」と回答した者は、自動車盗、器物損壊で6割弱、強盗、暴行・傷害、車上ねらいで5割前後、部品盗で4割弱といずれの罪種・手口についても高かった。


2 国民の抱く不安感の実態調査等
 犯罪情勢の厳しさを把握するためには、関係する統計のみならず、地域の安全に関する国民の意識についても分析することが必要である。ここでは、(財)社会安全研究財団により実施された「犯罪に対する不安感等に関する世論調査」(平成14年3月実施。以下「全国調査」という。)(注1)の結果から、国民が犯罪に対して抱く不安感等について分析した。また、警察庁が実施した「治安に関する不安感等の調査」(14年4月実施。以下「警察庁調査」という。)(注2)の結果も併せて分析した。
(注1) 全国調査は、全国の満20歳以上の男女2,000人(層化二段無作為抽出法、150地点)に対して犯罪の被害に遭う不安感や少年の非行・犯罪等に関するアンケート調査を行い、1,455人(72.8%)の回答が得られたものである。
(注2) 警察庁調査は、代表的な60の警察署に勤務する警察職員に対して調査票による調査を行ったものである(調査項目は全国調査から抜粋)。調査の対象とした警察署は、犯罪の発生状況や都市の規模によって全国の警察署を分類した後、各グループから代表的な警察署を選定したものである。

(1)治安について国民の抱く不安感
ア 不安感の度合い
 全国調査において、自分が犯罪被害に遭いそうな不安を感じるかどうか住民に対して質問をしたところ、「不安を感じる」者の割合は41.4%(「よくある」:3.6%+「たまにある」:37.8%)、「不安を感じない」者の割合は58.3%(「ほとんどない」:40.5%+「全くない」:17.8%)となっており、平成9年に行った同じ質問(標本数は同じ)の結果と比べると、「不安を感じる」者の割合が高まっていることがわかる(図1-68)。また、不安を感じる割合は、都市規模別にみると都市部で高く、地域別では関東、中部で高く、北海道は低くなっている(図1-69、1-70)。
イ 不安を感じる犯罪
 被害に遭う不安を感じる者に対してどのような犯罪に不安を感じるか質問をしたところ(複数回答)、「空き巣」と答えた者の割合が最も高く63.5%であった。次に、「通り魔的犯罪」(33.4%)、「すり・ひったくり」(32.6%)、「車上ねらい」(31.4%)、「自転車盗」(30.4%)が続いている(図1-71)。
 これらのうち「通り魔的犯罪」を除くものは、全刑法犯認知件数の42.2%を占めるほど多発しており、13年の認知件数が「空き巣」で124,387件(全刑法犯認知件数の4.5%。以下同じ。)、「すり・ひったくり」で76,529件(2.8%)、「自転車盗」で521,801件(19.1%)、「車上ねらい」で432,140件(15.8%)となっている。国民は、日常生活に身近な場で多発する窃盗犯に最も不安を感じていることが分かる。
ウ 不安を感じる場所
 全国調査において、犯罪被害に遭う不安を感じる場所について質問をしたところ(複数回答)、「繁華街」と答えた者の割合が最も高く(29.8%)、次いで、「駐車場」(19.4%)、「駅」(18.7%)、「通勤に使う道」(14.1%)であった。「特に不安を感じる場所はない」と答えた者の割合は、39.7%である。

(2)少年の非行・犯罪についての国民の意識
ア 少年の非行・犯罪の増加
 全国調査において、少年の非行・犯罪が増えていると思うか質問をしたところ、「増えている」と答えた者の割合が54.6%と過半数を占めた。「減っている」と答えた者の割合はわずか1.2%であった。「変わらない」と答えた者の割合は25.3%であり、「分からない」と答えた者の割合は18.6%であった(図1-72)。
イ 少年の非行・犯罪の悪質化
 全国調査において、少年の非行・犯罪は悪質になっていると思うか質問をしたところ、「悪質になっていると思う」と答えた者の割合は63.4%であった。「悪質になっていると思わない」と答えた者の割合は9.9%であり、「分からない」と答えた者の割合は25.9%であった(図1-73)。
ウ これからの社会にとって問題となる少年の行動
 全国調査において、これからの社会にとって問題となる少年の行動を質問したところ(複数回答)、「マナー無視の振る舞い」と答えた者の割合が最も高く、64.9%であり、次いで、「シンナー、覚せい剤等の薬物乱用」(43.9%)、「いじめ」(27.5%)であった(図1-74)。
エ 少年が非行・犯罪に走る原因
 全国調査において、少年が非行・犯罪に走る原因について質問をしたところ(複数回答)、「しつけ・親子関係」と答えた者の割合が73.3%と集中していた。次いで、「子どもの規範意識の欠如」、「有害環境・情報(性・暴力等)」、「悪い友人との付き合い」等の回答割合は2割程度であった(図1-75)。

(3)警察官からみた住民の不安感
ア 不安感の度合い
 警察庁調査において、警察職員に対し、管轄区域の住民の間で犯罪の被害に遭う不安が高まっているかどうか質問をしたところ、「高まっている」と回答した者の割合は92.2%(「大いに高まっている」:31.7%+「まあまあ高まっている」:60.5%)、「高まっていない」と回答した者の割合は7.8%(「あまり高まっていない」:7.6%+「全く高まっていない」:0.2%)となった(図1-76)。
イ 不安を感じる犯罪
 続いて、住民の間で不安が高まっていると回答した警察職員に対して、どのような犯罪に対する不安が高まっていると思うか質問をしたところ(複数回答)、図1-77に示すとおり、「車上ねらい」、「自転車盗」、「少年による犯罪」、「すり・ひったくり」の割合が高かった。
ウ 不安を感じる場所
 住民が犯罪被害に遭う不安を感じる場所について質問をしたところ(複数回答)、「繁華街」と答えた者の割合が最も高く(62.6%)、次いで、「駐車場」(54.1%)、「通勤等に使う道」(43.1%)、「駅」(41.1%)であった。
コラム
外国人から見た日本の治安
 「平成13年度首都圏整備に関する年次報告」によると,過去に海外主要都市に居住したことがあり現在東京に居住する外国人に対し、東京の治安について質問したところ、図1-78のとおり、「非常に良い」と感じている者が約49%、「やや良い」と感じている者が約38%で、合計で約87%の者が東京の治安水準につき評価していることが分かる。
 また、治安に関する質問に対する回答を,過去に居住した都市別でみると、図1-79のとおりであり、ニューヨークに居住経験のある者の約95%、ロンドンに居住経験のある者の約93%、パリに居住経験のある者の約91%が東京の治安につき、「非常に良い」又は「やや良い」と回答しており、特に欧米3都市居住経験者が東京の治安につき高い評価をしていることが分かる。
注: 調査は、13年3月、国土交通省が東京の魅力や欠点について外国人居住者の認識を把握するため、アンケート形式で行ったもの。有効回答数は514人であり、都市別回答状況は、ニューヨークが76人、ロンドンが76人、パリが72人、ソウルが130人、香港が97人、シンガポールが63人であった。また、職業別回答状況は、従業員が231人、会社管理職が59人、自営業者が30人、学生が154人、主婦が30人、無職が10人であった。


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