第3節 快適な交通の実現と環境の保護

1 自動車交通量の増大と交通問題

(1) 交通渋滞の現状
 交通渋滞は、依然として厳しい状況にあり、東京都内の一般道路についてみても、昭和45年には渋滞時間(注)が1日平均589時間であったものが、50年代後半には1,000時間を超え、平成2年には2,150時間とそのピークを記録し、その後も目立った改善はみられないのが実情である。
(注) 渋滞時間とは、主な渋滞発生地点における一日当たりの渋滞発生時間を合計した値である。
(2) 違法駐車の現状
 違法駐車は、幹線道路における交通渋滞を悪化させる要因となるだけでなく、歩行者等の安全な通行の障害となるほか、緊急自動車の活動に支障を及ぼすなど住民の生活環境を害し、国民生活全般に大きな影響を及ぼしている。また、違法駐車車両は、交通事故の原因ともなっており、平成8年中の駐車車両への衝突事故の発生件数は2,705件で、172人が死亡している。さらに、110番通報された苦情・要望のうち、駐車問題に関するものが28.8%を占めており、駐車問題に関する国民の関心は相当に高いことがうかがわれる。
 なお、三大都市圏(東京都23区、大阪市、名古屋市)での瞬間路上駐車台数は、表2-7のとおりである。

表2-7 三大都市圏での瞬間路上駐車台数の推移(平成3~8年)

(3) 交通公害の現状
 自動車の走行に伴う騒音、排気ガスによる大気汚染等の交通公害が深刻な環境問題となっている。
 自動車騒音については、道路の種類別の環境基準の達成状況をみると、表2-8のとおり、

表2-8 道路の種類別の騒音の環境基準の達成状況(平成7年)

表2-9 二酸化窒素及び浮遊粒子状物質の環境基準の適合状況(平成2~7年度)

 全国の測定地点4,380点のうち、4時間帯のいずれかにおいて環境基準が達成されなかった測定地点は、3,825地点(87.3%)に及んでおり、依然として厳しい状況にある。
 自動車の走行に伴い発生する排気ガスには、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)、浮遊粒子状物質(SPM)等の汚染物質が含まれている。このうち昭和40代の後半に大きな問題となった一酸化炭素については、その後の単体規制の強化等により、近年、良好な状態が続いている。しかし、二酸化窒素や浮遊粒子状物質については、都市部を中心に依然として深刻な状況にあり、その環境基準の達成状況は、表2-9のとおりである。

2 快適な交通の実現

(1) 交通渋滞の緩和に向けた交通安全施設等の整備
ア 第6次交通安全施設等整備事業五箇年計画
 交通安全施設等を整備拡充し、道路交通の安全と円滑を確保するため、交通安全施設等整備事業に関する緊急措置法に基づき、交通安全施設等整備事業五箇年計画が策定されている。平成8年度を初年度とする第6次交通安全施設等整備事業五箇年計画の内容及び同年度の実施状況は、表2-10のとおりで、新交通管理システム(UTMS)の整備、生活の場における安全確保、交通需要マネジメント及び災害時に対応した交通管理の4点を重点事項として交通安全施設等の整備を推進することとしている。
イ 交通管制センター等の整備
 交通管制センターは、都市及びその周辺の交通を安全で円滑なものとするため、信号機、

表2-10 第6次交通安全施設等整備事業五箇年計画実施状況

可変標識、中央線変移装置等のコンピュータ制御、交通情報の提供等による交通管理の中枢を担う施設であり、全国に170箇所整備されている。
 交通管制センターには、各都道府県庁所在地に整備される警察本部交通管制センター(47箇所)と、一定規模以上の主要都市に整備される都市交通管制センター(28箇所)のほか、これらの交通管制センターから遠距離にある地域に整備される交通管制サブセンター(95箇所)がある。
 警察では、最適な交通管理を行うため、都市内の信号機を交通管制センターのコンピュータに接続し、広域的に信号制御を行う集中制御化を推進している。7年度末の信号機の集中制御エリアは、昭和60度末と比べて1.8倍に拡大しており、第6次交通安全施設等整備事業五箇年計画では、更に集中制御エリアの拡大を図るため、全国で1万6,000基の集中制御機を整備することとしている。
 さらに、交通量の変化に応じて信号の青の時間を自動的に変える感応化、同一路線上の複数の信号機を相互に連動させて制御する系統化を推進しているほか、夜間等に交通量が減少する地域においては、閑散時半感応化、閑散時押ボタン化等による合理的な信号制御の実現に努めている。
 また、災害時においては、建物の崩壊、道路の損壊等により、通行可能な道路が著しく限られ、交通の混乱が予想されることから、災害時の道路状況及び交通状況を即座に把握し、緊急通行車両等の通行及び円滑な避難誘導活動を確保するための適切な交通管理を行うことが不可欠となる。そこで、主要幹線道路等において、各種車両感知器、交通監視カメラ、交通情報板等の交通安全施設等の整備を進めるとともに、災害発生時における送電不能による信号機の機能停止に備え、主要交差点において自動起動型信号機電源付加装置の整備に努めるなど、災害に強い交通管制システムの構築を推進している。
ウ 交通安全施設等の高度化
 高速走行抑止システムは、速度超過に起因する交通事故が多発している区間において、車両感知器によって高速走行中の車両を検出し、これに対し警告板で警告を与え、減速、安全運転を促すことにより、高速走行による事故防止を図るものであり、平成8年度には24基が設置された。対向車接近表示システムは、見通しの悪いカーブ等において、車両感知器によって対向車の接近を感知し、「対向車接近中」等の警告を表示することにより、衝突事故の防止を図るものであり、8年度には60基が設置された。
 これらのシステムは、自動車騒音等の交通公害の防止や走行中の判断負担の軽減等にも資するものであり、第6次交通安全施設等整備事業五箇年計画において引き続き整備を推進することとしている。
(2) 快適な運転を実現するための交通情報の収集・提供
 交通事故による死者数が毎年1万人前後で推移し、都市部において交通渋滞が恒常的に発生するなど、依然として厳しい交通情勢の下で、交通の安全と円滑を確保するためには、交通規制等の手法に加え、運転者に対する交通渋滞、交通規制、旅行時間等の適切な交通情報の提供により、自律的な交通流の分散を図ることが効果的である。
 警察は、交通管理者としての立場から、光学式車両感知器(注1)、R形車両感知器(注2)等各種車両感知器、交通監視用カメラ等の交通情報収集装置を整備し、交通量、通行車両の速度、旅行時間等の情報を収集しており、その情報は、交通管制センターにおいて統合、処理され、信号制御方式の決定に用いられる。そして、主要地点に設置されている交通情報板、路側通信設備等の交通・情報提供施設、テレビ、ラジオ放送及び電話照会に対する回答等の様々な手段を利用して、交通渋滞情報、旅行時間情報、駐車場への誘導に関する情報等の交通情報を幅広く提供している。
(注1) 赤外線により、車両との双方向通信機能をもつ車両感知器
(注2) マイクロ波により、車両の速度を計測する機能をもつ車両感知器
 また、よりきめ細かな交通情報を広域的に提供するため、交通情報収集・提供装置の一層の整備充実を図るほか、複数の交通管制センターのネットワーク化、交通情報の編集、提供の自動化を促進している。
 さらに、ち密な交通情報の収集と提供を同時に行う光ビーコン(光学式車両感知器)の双方向通信機能の活用等により、道路交通情報をリアルタイムで車載機へ提供する道路交通情報通信システム(VICS:Vehicle Information and Comunication System)を関係行政機関との連携の下、積極的に推進している。

 また、近年、運転者の交通情報に対する需要の増加・多様化や、情報通信技術の高度化に伴い、民間事業者による交通情報の提供が活発化しており、交通情報の内容が運転者の行動、ひいては交通流に大きく影響することから、平成9年の道路交通法の一部改正により、交通情報を提供する事業者は、正確かつ適切に交通情報を提供することにより、交通の安全と円滑に資するように配慮しなければならないこととされ、9年10月からの施行を予定している。
(3) 交通流の変化に対応した事前対策
ア 先行的交通対策
 現在の交通社会においては、都市構造、物流システムの変化等が交通流・量に大きな影響を与えることから、警察では、都市計画地方審議会等に参画して、都市計画事業、土地区画整理事業等各種の開発事業、駐車場の整備、大規模施設の建設等について、交通管理面からの必要な指導、提言を行うことなどにより、交通管理上望ましい都市交通が形成されるように働き掛けている。
 また、道路の新設及び交差点改良等の道路の改築が行われる場合などには、周辺道路を含めた交通対策を行う必要性から道路管理者等と協議を行っているほか、高速自動車国道等の新設・改築が行われる場合においても、そのルートの選定、一般道路との取付位置等が一般道路の交通に与える影響を考慮して、道路管理者との協議に基づき先行的な交通対策を行っている。
イ 道路使用の適正化
 道路工事、路上競技、祭礼等の通行目的以外の目的による道路使用を求める声は、年々増加傾向にある。

表2-11 道路使用許可件数(指数)の推移(昭和48年度~平成7年度)

 表2-11は、昭和48年度の道路使用許可件数を指数100とし、平成7年度までの道路使用許可件数の推移を表したものであるが、許可件数は、過去23年間で約1.9倍の増加を示している。
 特に、道路使用許可件数の74.1%(7年度現在)を占めている1号許可(道路工事・作業)は約2.2倍、4号許可(祭礼行事・路上競技等)は約1.6倍と著しく増加している。
 しかし、これらの道路使用が、交通渋滞等の要因となっていることも少なくなく、道路使用の適正化を推進していく必要がある。
 警察では、工事方法等の改善、競技コースの変更等について指導を行うとともに、許可に当たり必要な条件を付すなどして、交通渋滞の防止をはじめ交通の安全と円滑の確保に努めている。
 また、道路交通法に基づき都道府県ごとに指定されている都道府県道路使用適正化センターは、道路の使用等に関する事項について、相談事務や広報啓発活動を行うとともに、警察署長の委託を受けて道路使用許可条件の履行状況、原状回復状況等の調査を行っている。
ウ 行楽期等における交通円滑化対策
 行楽期等には、行楽地に通じる幹線道路や行楽地周辺の道路に車両が集中し、大規模な交通渋滞が発生することから、その発生を予測し、事前広報を行うとともに、臨時交通規制、交通情報の提供、警察官等による交通整理、道路における工事・作業の抑制等の対策を実施し、その予防及び解消に努めている。


column [7] 長野オリンピック冬季競技大会対策

 第18回長野オリンピック冬季競技大会は、平成10年2月、長野市を中心として開催される予定であるが、会場周辺は、例年一般スキーヤーの車両で恒常的な交通渋滞が発生しており、オリンピック開催時には、大会関係者及び観客の円滑な輸送が非常に困難となることが予想される。
 特に、大会関係者等が通行する道路では、容量不足から生ずる渋滞の発生が予想されることから、大会期間中は不要不急の車両の乗り入れの抑制を呼び掛ける広報等の交通総量抑制対策を全国規模で展開するほか、パーク・アンド・バスライドシステム((5)参照)によるシャトルバスの利用促進及び会場等を結ぶ道路を重点とした大規模な交通規制を計画している。
 また、交通情報収集・提供装置の整備、大会関係者輸送ルートに対応した交通管制システムの高度化等の施設整備を行い、大会関係車両等の交通の安全と円滑の確保を図ることとしている。


(4) 総合的な駐車対策の推進
ア 違法駐車の効果的な取締り
(ア) 駐車取締りの現状
 駐車違反の取締りは、幹線道路の交差点、横断歩道、バス停留所等における悪質・危険性、迷惑性の高い違反に重点を置いて行っている。
 平成8年中の駐車違反取締り件数は、244万7,840件であり、約56万台をレッカー移動した。
 また、違法駐車が常態的に行われている道路の区間について、都道府県公安委員会が「車輪止め装置取付け区間」を指定し、当該区間の違法駐車車両に対して車輪止め装置の取付け措置を講じており、8年中には、約2万3,000件の措置を行った。
 なお、8年中、全国で新たに35区間、約38キロメートルが車輪止め装置取付け区間として指定されており、東京都内で新たに指定された区間では、指定前と比べて、違法駐車車両の台数が平均で65.1%減少している。

(イ) 背後責任の追及
 自動車の使用者、安全運転管理者等が運転者に対し放置行為を下命・容認している場合については、その背後責任の追及を徹底している。8年中の放置行為の下命・容認の検挙件数は、202件であった。
 また、都道府県公安委員会は、放置行為を防止するために必要な運行の管理を行っていると認められない使用者に対しては、必要な指示及び自動車の使用制限命令を行い、駐車に係る車両の運行管理の適正化に努めている。8年中の指示件数は1万8,545件(1万8,566台)、自動車の使用制限命令件数は193(212台)であった。
イ 駐車対策のための各種システムの整備
(ア) 違法駐車抑止システムの整備
 違法駐車抑止システムは、交差点に設置されたテレビカメラ及びスピーカーを用いて、違法駐車車両を監視し、必要に応じ音声で警告することにより、違法駐車の抑制を図るもので、交通安全施設等整備事業五箇年計画に基づきその整備が進められている。8年中には、山形市で新たに運用が開始され、同年末現在98都市で運用されている。
(イ) 駐車誘導システムの整備
 駐車誘導システムは、駐車場を探したり、その空き待ちをしている車両による交通渋滞の緩和や交通事故の防止を図るとともに、違法駐車を抑止するため、交通管制システムと連動して、駐車場の位置、満空状況、駐車場までの経路、交通渋滞の状況等に関する情報を運転者に提供し、空き駐車場への誘導を行うものである。交通安全施設等整備事業五箇年計画に基づきその整備が進められており、8年中には、岡山市等で新たに運用が開始され、同年末現在、56都市で運用されている。
(ウ) パーキング・メーター集中管理・誘導システムの整備
 パーキング・メーター集中管理・誘導システムは、パーキング・メーターの運用、作動状況等を管理し、運転者に対しパーキング・メーターの満空状況、パーキング・メーターへの誘導経路に関する情報を提供するシステムである。8年末現在、横浜市及び熊本市において運用されており、パーキング・メーターの利用率の向上、駐車スペースを探している車両による交通渋滞の緩和及び交通事故の抑止、違法駐車の抑止、パーキング・メーターの不正使用の防止等に役立っている。
ウ 関係機関・団体との連携による総合的な駐車対策の推進
(ア) 違法駐車防止条例の制定
 2年に、東京都武蔵野市において、自治体に違法駐車の防止に関する必要な施策の策定及び実施を、市民に違法駐車防止の努力及び自治体が行う駐車対策への協力をそれぞれ義務付ける武蔵野市違法駐車の防止に関する条例が制定され、その後全国各地の自治体で同様の条例が制定されている。8年末現在当該条例を制定しているのは、162市8区135町14村であり、警察もその運用に必要な協力と支援を行っている。
(イ) 関係機関・団体との連携の強化
 警察では、都道府県道路使用適正化センター、報道機関等の協力を得て、違法駐車に起因する交通事故の実態、交通渋滞の状況等違法駐車の危険性、迷惑性についての情報の提供を積極的に行うなど、違法駐車抑止のための広報啓発活動を進めているほか、地域交通安全活動推進委員等の民間の指導者を対象とする研修会の開催、違法駐車実態等に関する資料の配付等違法駐車抑止のための活動が効果的に行われるよう必要な支援を行っている。
 また、地方公共団体、道路管理者等とともに駐車対策協議会を設立し、地域における駐車問題を協議検討して、各種の駐車対策を推進するほか、地方公共団体に対し、一定の建築物を新築しようとする者等に対して、駐車施設の設置を義務付ける条例の早期制定、公共駐車場の整備等を働き掛けている。
 さらに、トラック協会、安全運転管理者協会等を通じて、各企業に対し従業員による車両の自宅持ち帰りの自粛を推進するキャンペーン等を行っている。
エ 保管場所の確保対策
 道路が自動車の保管場所として使用されることを防止するため、警察では自動車の保管場所の確保等に関する法律に基づき、保管場所証明書の交付、軽自動車の保管場所に係る届出の受理等を行っている。
 軽自動車の保管場所に係る届出義務等の適用地域は、当初東京都の特別区及び大阪市の区域に限定されていたが、8年に、人口30万人以上の市及び東京圏又は大阪圏として一体に扱うべき市に拡大された。以後、段階的に、適用地域を拡大することとしている。
 道路を自動車の保管場所として使用するいわゆる青空駐車の8年中の検挙件数は4万6,984件となっている。
 また、自動車の使用の本拠の位置、保管場所等を偽り、保管場所証明を受けるいわゆる車庫とばしの取締りにも努めており、8年中の検挙件数は3,808件となっている。
(5) 交通需要マネジメントの推進
 近年、特に都市部においては、交通需要の増加に対応した交通容量の拡大を図ることが困難であることから、交通渋滞、交通公害対策として、交通需要そのものを軽減し、又は平準化する交通需要マネジメント(TDM:Transportation Demand Management)の手法が注目されており、警察としても、関係機関と連携しながら積極的に推進していくこととしている。
ア 交通需要軽減対策
(ア) 公共交通機関への転換対策
 マイカー利用者の利用交通手段を路線バス等の公共交通機関に転換させ、都市部等における交通需要を軽減するため、バス専用・優先レーンの設定、バスの走行実態に応じた信号制御を行うためのバス感知器及びバス感応式信号機の整備等のバス優先対策を推進している。
 また、バス、鉄道事業者等に、パーク・アンド・ライドシステム(注1)の導入を促すとともに、バス・ロケーションシステム(注2)の導入、バス運行時間の見直し、低床式バスの導入等利用者の利便性の向上を図るための対策を働き掛けている。
(注1) マイカーで最寄りの駅又はバス停まで行き、そこで駐車し、鉄道又はバスにより、都心の目的地に向かう交通形態をいう。
(注2) バスの位置情報を集約し、バスへ運行の指示をするほか、バス停においてバスの接近情報を提供するシステムをいう。
(イ) 自動車利用の効率化
 自動車利用の効率化を図るため、公共交通機関への転換対策と併せて、工業団地等における共同企業バスの運行、事業所単位等の相乗り組織等の結成を働き掛けている。
 また、自動車が物流を担う中心手段となっている一方で、交通混雑等による輸送効率の低下、駐車場所の不足等の問題が生じていることから、警察では、荷主、運送事業者等に対して共同集配システムの構築等の働き掛けを行っている。
イ 交通需要平準化対策
 交通渋滞情報、旅行時間情報等の交通情報を迅速かつ的確に提供することにより、交通流・量の誘導及び分散を促している。また、通勤や業務に伴う交通需要を平準化するため、関係機関・団体等に対して、時差出勤、フレックスタイム制の導入を働き掛けている。

3 生活環境を脅かす道路交通公害への対応

(1) 道路交通騒音を低減させるための諸対策
ア 関係行政機関が連携した総合的な道路交通騒音対策の推進
 自動車の走行に伴う騒音は、沿道住民等の日常生活に深刻な影響を与えている。平成7年7月の「国道43号・阪神高速道路騒音排気ガス規制等請求事件」に係る最高裁判決において、国及び阪神高速道路公団の損害賠償責任が認められたことを契機に、警察庁、環境庁、通商産業省、運輸省及び建設省の関係5省庁は、12月に、「道路交通騒音の深刻な地域における対策の実施方針について」を取りまとめ、関係省庁が協力して、総合的な道路交通騒音対策を推進していくこととしている。
イ 警察の対応
 警察としては、交通管制システムを高度化し、交通状況に即応した信号機の制御による交通の円滑化、きめ細かな交通情報の提供により交通流の分散を図る交通総量削減等を行うほか、自動車の走行速度を落とし、エンジン音等を低く抑えるための最高速度規制や相対的にエンジン音等の大きい大型車を沿道から遠ざけるための中央寄り車線規制等の交通規制、著しい騒音を生じさせている速度超過車両や消音器等の不法改造車両等の取締りの徹底等、騒音を減少させるための交通流対策を推進することとしている。
(2) 窒素酸化物(NOx)等を削減するための諸対策
 近年、自動車から排出される窒素酸化物による人の心肺機能への影響や二酸化炭素(CO2)による地球の温暖化が懸念されている。窒素酸化物や二酸化炭素の排出量は、自動車の発進・停止回数の増加に伴って、増加するとされていることから、警察としては、道路交通の円滑化を促進するため、交通管制システムの整備、各種の交通規制、総合的な駐車対策等の施策を実施している。また、バス専用・優先レーンの設定等の公共交通機関優先対策を推進し、マイカーから公共交通機関への転換を促進することなどにより、交通量を抑制し、窒素酸化物や二酸化炭素の排出量を削減するための対策を推進している。
 このほか、自動車から排出される窒素酸化物の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法(以下「自動車NOx法」という。)では、特定の地域に使用の本拠を置く特定車種の自動車については、窒素酸化物の排出基準が定められており、この基準に適合しない車両については道路運送車両法の規定により、運行の用に供することができないこととされている。警察では、自動車の使用者が自動車NOx法の適用を逃れるため使用の本拠の位置を偽って自動車登録を行ういわゆる車庫とばし等の違法行為がみられることから、その取締りに努めている。


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