第2節 精神的・身体的被害の回復・防止への取組
(1) 保健医療サービス及び福祉サービスの提供
○ 主な取組
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警察における性犯罪被害者に対するカウンセリングの充実(警察庁)
警察においては、カウンセリングに関する専門的知識や技術を有する職員の配置、精神科医や民間のカウンセラーとの連携等により、犯罪被害者等の精神的被害を軽減するための相談・カウンセリング体制を整備している。現在、都道府県警察においては、部外の精神科医、臨床心理士等に対し、犯罪被害者等へのカウンセリングや職員のカウンセリング技術向上を図るためのアドバイザー業務の委嘱を行っている。被害少年に対しては、少年補導職員等の専門職員が、部外専門家等から助言を得つつ、カウンセリングを実施している。また、警察庁では、平成24年度からカウンセリング指導係を設置し、犯罪被害者等へのカウンセリング経験が豊富で臨床心理士の資格を有する係員を配置して、全国警察に対するカウンセリングの指導を実施している。
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少年被害者に対する学校におけるカウンセリング体制の充実等(文部科学省)
文部科学省においては、児童虐待等の問題に対応するため、教育分野に関する知識に加えて、社会福祉の専門的な知識・技術を用いて児童生徒を支援するスクールソーシャルワーカーを各地域の実情に応じて学校等の教育機関に配置する地方自治体の取組やスクールソーシャルワーカーの資質向上に関する研修の実施等に対して補助を行っている。
(2) 安全の確保
○ 主な取組
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加害者に関する情報提供の拡充(警察庁、法務省)
警察においては、「再被害防止要綱」(平成19年6月11日付け警察庁刑事局長等通達)に基づき、同じ加害者により再び危害を加えられるおそれのある犯罪被害者等を再被害防止対象者に指定し、再被害防止のための関連情報の収集、関連情報の教示・連絡体制の確立と要望の把握、自主警戒指導、警察による警戒措置、加害者への警告等の再被害防止措置を実施している。
これらの再被害防止措置の実施に当たっては、関係機関が密接に連携しており、法務省においては、犯罪被害者等が加害者との接触回避等の措置を講じることにより再被害を避けることができるよう、出所情報通知制度を実施し、警察から再被害防止措置上必要とする受刑者の釈放等に関する情報の通報要請があった場合、通報を行うのが相当であると認められるときは、受刑者の釈放等に関する情報(自由刑の執行終了による釈放予定と予定年月日・帰住予定地、仮釈放による釈放予定と予定年月日・指定帰住地等)を通報している。
通知希望者数 | 通知者数 | |
---|---|---|
平成14年 | 264 | 125 |
平成15年 | 344 | 250 |
平成16年 | 622 | 440 |
平成17年 | 787 | 559 |
平成18年 | 1,135 | 779 |
平成19年 | 1,080 | 782 |
平成20年 | 855 | 663 |
平成21年 | 371 | 487 |
平成22年 | 391 | 490 |
平成23年 | 298 | 395 |
平成24年 | 300 | 361 |
平成25年 | 423 | 398 |
平成26年 | 414 | 338 |
平成27年 | 450 | 388 |
合計 | 7,734 | 6,455 |
提供:法務省 |
(3) 保護、捜査、公判等の過程における配慮等
○ 主な取組
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ビデオリンク等の措置の適切な運用(法務省)
法務省においては、刑事訴訟に関して、犯罪被害者等の意見をより適切に裁判に反映させるための犯罪被害者等の意見陳述の制度や、証人の証言時の負担・不安を軽減するためのビデオリンク等の制度の運用について、適切な対応が行われるよう、会議や研修等の様々な機会を通じて、検察の現場への周知徹底を図るとともに、施策の実施状況の把握に努めている。また、犯罪被害者等向けパンフレット「犯罪被害者の方々へ」にもこれらの制度の情報を掲載している。
平成27年中に、証人尋問の際に付添いの措置が採られた証人の延べ数は141人、証人尋問の際に遮へいの措置が採られた証人の延べ数は1,563人、ビデオリンク方式による証人尋問が行われた証人の延べ数は290人であった。
証人の保護等の状況 年次 証人の保護等 付添い 遮へい ビデオリンク 平成23年 136 1,317 242 平成24年 121 1,757 288 平成25年 116 1,792 278 平成26年 112 1,661 299 平成27年 141 1,563 290 (注)
1 最高裁判所事務総局の資料(概数)による。
2 いずれも高等裁判所、地方裁判所及び簡易裁判所における証人の数(延べ人員)である。提供:法務省