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2 精神的・身体的被害の回復・防止への取組

(1) 保健医療サービス及び福祉サービスの提供

○主な取組

  • 「PTSD対策に係る専門家の養成研修会」の内容の充実等(厚生労働省)

    厚生労働省において,医師,看護師,保健師,精神保健福祉士などを対象としたPTSD(心的外傷後ストレス障害)専門家の養成研修などを行い,精神保健福祉センター,病院,保健所などでPTSD を抱える地域住民等に対する相談支援を実施するなど,各施設での活動の充実を図っている。

    「PTSD 対策専門研修会」では,犯罪被害者の心のケアに関する研修も実施しており,平成25年度は174人が受講した。

  • 警察における性犯罪被害者に対するカウンセリングの充実(警察庁)

    現在,全ての都道府県警察において,部外の精神科医,臨床心理士などに対し,犯罪被害者等へのカウンセリングや職員のカウンセリング技術向上を図るためのアドバイザー業務の委嘱を行っている。また,被害少年に対しては,少年補導職員などの専門職員が,部外専門家などから助言を得つつ,カウンセリングを実施している。

    また,警察庁では,平成24年度からカウンセリング指導係を設置し,犯罪被害者等へのカウンセリング経験が豊富で臨床心理士の資格を有する係員を配置して,全国警察に対するカウンセリングの指導を実施している。

    さらに,平成19年度から,臨床心理士の資格を有する職員やその他の警察職員に対し,カウンセリング技能の向上を図るための専門的な研修への参加の促進を図っている(カウンセリング専門職員に対する専門研修に要する経費(国庫補助金):25年度9百万円,26年度10百万円)。

(2) 安全の確保

○主な取組

  • 判決確定,保護処分決定後の加害者に関する情報提供拡充の検討及び施策の実施(法務省)

    被害者等通知制度の平成25年の実施状況については,通知希望者数は,75,516人であり,実際に通知を行った延べ数は129,036人であった。また,判決確定後の加害者に関する情報のうち,刑の執行終了予定時期について延べ13,341件,刑事施設における処遇状況について延べ15,818件,受刑者の釈放について延べ2,511件,執行猶予の言渡しの取消しについて延べ138件の通知がそれぞれ行われた。

    被害者等通知制度実施状況
      通知希望者数 通知者数
    平成14年 47,690 76,691
    平成15年 44,442 76,087
    平成16年 45,967 75,877
    平成17年 46,953 74,813
    平成18年 50,504 76,377
    平成19年 51,676 77,487
    平成20年 55,330 91,818
    平成21年 61,007 107,464
    平成22年 62,993 114,996
    平成23年 63,542 118,933
    平成24年 67,750 122,376
    平成25年 75,516 129,036
    合計 673,370 1,141,955
    提供:法務省

    また,保護処分を受けた少年に関する情報のうち,少年院での処遇に関する事項について延べ337件,仮退院審理に関する事項について延べ165件,保護観察状況に関する事項について延べ752件の通知がそれぞれ行われた。

    法務省において,被害者等通知制度の更なる充実について検討した結果,平成26年4月1日から,加害者の受刑中の刑事施設における処遇状況に関する事項として,懲罰の状況及び褒賞の状況を,加害者の少年院在院中における処遇状況に関する事項として,賞,懲戒及び問題行動指導の状況を新たに通知することとした。

    また,保護観察の開始に関する事項の一つとして,従来から保護観察の終了予定年月を通知してきたが,これを年月日まで通知するほか,保護観察の処遇状況に関する事項として,特別遵守事項に基づき実施する特定の犯罪的傾向を改善するための専門的処遇プログラムの実施状況を新たに通知するなどの充実を図った。

  • 配偶者等からの暴力被害者の安全確保の強化についての検討及び施策の実施(内閣府,警察庁,法務省,厚生労働省)

    平成25年6月に配偶者暴力防止法が改正され,生活の本拠を共にする交際(婚姻関係における共同生活に類する共同生活を営んでいないものを除く。)をする関係にある相手からの暴力及びその被害者についても同法の適用対象となったことに伴い,同法に基づく基本方針について,所要の規定の整備を行うとともに,警察における被害者の意思決定を支援する手続や保護命令制度の適切な運用の実現のための施策等について規定するなどの改正を行った。同法及び同基本方針は平成26年1月3日に施行された。

    警察では,配偶者からの暴力事案等に一元的に対応するための体制を全国の警察本部に確立し,迅速かつ的確な対応の徹底を図っているほか,被害者に対し事案の危険性や警察の執り得る措置等を分かりやすく説明する「被害者の意思決定支援手続」や事案の危険性等を判定する「危険性判断チェック票」を導入するなど被害者の安全の確保を最優先とした対応を行っている。

    法務省入国管理局において,配偶者からの暴力による被害者である外国人に対し,関係機関と連携して被害者の身体の保護を確実なものにする一方,配偶者からの暴力の被害のために別居を余儀なくされたり,提出資料が用意できない被害者から,在留期間更新許可申請又は在留資格変更許可申請があった場合には,被害者本人の意思及び立場に十分考慮しながら,個々の事情を勘案し,人道上の観点から適切に対応している。また,配偶者からの暴力の被害を要因として不法残留等の出入国管理及び難民認定法違反となっている場合も,個々の事情を勘案し,人道上の観点から適切に対応している。

    婦人相談所において,配偶者暴力防止法に基づき,配偶者暴力相談支援センターの機能を担い,配偶者からの暴力被害者・同伴する家族を自ら一時保護したり,婦人保護施設などへの一時保護委託を実施している。加えて,配偶者からの暴力被害者などが入所する婦人保護施設については,夜間警備体制の強化を図るとともに,心理療法担当職員や同伴児童のケアを行う指導員の配置を進めている。

(3) 保護,捜査,公判等の過程における配慮等

○主な取組

  • ビデオリンク等の措置の適切な運用(法務省)

    法務省において,犯罪被害者等の意見をより適切に裁判に反映させるための犯罪被害者等の意見陳述の制度や,証人の証言時の負担・不安を軽減するためのビデオリンクなどの制度の適切な運用に努めている。

    平成25年1月から同年12月までの間に,証人尋問の際に付添いの措置が採られた証人の延べ数は116人,証人尋問の際に遮へいの措置が採られた証人の延べ数は1,792人,ビデオリンク方式による証人尋問が行われた証人の延べ数は278人であった。

    証人の保護等の状況
    年次 証人の保護等
    付添い 遮へい ビデオリンク
    平成21年 79 1,094 235
    平成22年 102 1,295 261
    平成23年 136 1,317 242
    平成24年 121 1,757 288
    平成25年 116 1,792 278
    (注)
    1 最高裁判所事務総局の資料(概数)による。
    2 いずれも高等裁判所,地方裁判所及び簡易裁判所における証人の数(延べ人員)である。
    提供:法務省

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