警察庁 National Police Agency

警察庁ホーム  >  犯罪被害者等施策  >  公表資料の紹介:犯罪被害者白書  >  平成24年版 犯罪被害者白書  >  1 相談及び情報の提供等(基本法第11条関係)

[目次]  [戻る]  [次へ]

第4節 支援等のための体制整備への取組

1 相談及び情報の提供等(基本法第11条関係)

《基本計画において〔今後講じていく施策〕とされたもの》

(1) 地方公共団体における総合的対応窓口の設置の促進等

内閣府において、地方公共団体に対して、犯罪被害者等主管課室長会議や地方公共団体職員を対象とする研修会の開催などを通じ、「犯罪被害者支援ハンドブック・モデル案」の作成や活用、犯罪被害者等からの問い合わせ・相談があった場合に総合的な対応を行う窓口の設置などを要請するとともに、犯罪被害者等施策主管課室長会議や「犯罪被害者等施策情報メールマガジン」などで、先進的・実質的な取組事例を紹介している。

また、市町村における犯罪被害者等施策の窓口となる部局の確定状況等について定期的に確認するとともに、地方公共団体職員を対象とする研修会の開催などを通じ、犯罪被害者等に関する適切な情報提供を行う総合的な対応窓口の設置などを要請している。

また、犯罪被害者等施策への理解の促進や犯罪被害者等への対応のために必要となる基礎的知識等を習得できるよう、平成23年度は、北海道、青森県、長野県、三重県、鳥取県、大分県及び沖縄県で、地方公共団体職員を対象とする研修会を実施した。

関係省庁と地方公共団体の職員を対象としている「犯罪被害者等施策情報メールマガジン」では、各省庁の犯罪被害者等施策、各地方公共団体の先進的な取組事例などを紹介し、情報共有を図っている。

(2) 地方公共団体における性犯罪被害者支援への取組の促進

内閣府では、性犯罪被害者からの相談体制を整備促進するため「男女共同参画センター等における性犯罪被害者支援体制整備促進に係る担当課長等会議」を開催した。

(3) 性犯罪被害に遭った児童生徒への対応の充実

P8「性犯罪被害に遭った児童生徒への対応の充実」参照

(4) コーディネーターとしての役割を果たせる民間支援員の養成への支援

内閣府において、全国どこでも一定レベル以上の支援の質を確保するため、民間の団体で支援活動を行う者の養成・研修を実施する際の研修教材として、中級レベルまでの研修教材DVDを作成し関係機関に配布している。

警察において、認定特定非営利活動法人全国被害者支援ネットワークをはじめとする被害者支援団体に対し、研修内容に対しての助言や講師派遣などの協力を行っている。また、犯罪被害者等が必要とする支援についての相談や情報提供、適切な機関・団体への橋渡しなど、犯罪被害者等に対する支援全般を管理するコーディネーターとしての役割を果たす民間支援員の育成を支援するため、被害者支援連絡協議会等で具体的事例を想定した犯罪被害者支援についての実践的なシミュレーション訓練を実施している。

民間被害者支援団体における研修カリキュラム・モデル案
民間被害者支援団体における研修カリキュラム・モデル案

(5) 警察と関係機関・団体等との連携・協力の充実・強化及び情報提供の充実

警察において、他の犯罪被害者等支援に係る諸機関・団体などとの連携・協力を充実・強化し、それらの諸機関・団体などの犯罪被害者等支援のための制度などを説明できるよう努めている。さらに、犯罪被害者等支援のための諸制度を所掌する省庁の協力を得て、当該制度に関する案内書、申込書などを常備し、犯罪被害者等に提供している。

(6) 被害者支援連絡協議会及び被害者支援地域ネットワークにおける連携の推進

警察において、生活上の支援をはじめ、医療、公判に関することなど極めて多岐にわたる犯罪被害者等のニーズに応え、総合的な支援を行うため、警察のほか、地方検察庁、弁護士会、法テラス、医師会、臨床心理士会、知事部局や市の担当部、県や市の相談機関などによる「被害者支援連絡協議会」を全都道府県に設立し、関係機関・団体などの相互の連携を図っている。また、個々の事案において、犯罪被害者等の具体的なニーズを把握し、よりきめ細かな総合的支援を行うために、警察署を単位とした連絡協議会(被害者支援地域ネットワーク)を構築している。

平成23年4月1日現在、被害者支援連絡協議会が47(全都道府県)、被害者支援地域ネットワークが1,130(全警察署数1,181)設置されている。

警察と関係機関・団体などとのネットワーク
警察と関係機関・団体などとのネットワーク
提供:警察庁

(7) 警察における相談体制の充実等

警察において、犯罪被害の未然防止などに関する相談に応じる窓口として、警察本部に警察総合相談室を設置している。また、電話による相談についても、全国統一番号の相談電話「♯9110番」を設置するとともに、このような総合的な相談に加え、犯罪被害者等のニーズに応じて、性犯罪相談、少年相談、消費者被害相談など個別の相談窓口を設け、相談体制の充実に努めている。さらに、犯罪被害者の住所地や、匿名や実名であるかにかかわらず相談に応じるとともに、犯罪被害者の要望により、被害者支援連絡協議会などのネットワークに参画する関係機関・団体に関する情報提供やこれらへの引継ぎを行うなど犯罪被害者がより相談しやすく、より負担が少なくなるような対応に努めている。

また、一定の少年福祉犯罪、児童虐待事案、人身取引事犯等に関する通報を匿名で受け付け、事件検挙への貢献度に応じて情報料を支払う「匿名通報ダイヤル」の適切な運用により、事件の早期の認知・検挙に努め、犯罪被害者の早期保護を図っている。

被害者相談窓口
被害者相談窓口
提供:警察庁

(8) 「指定被害者支援要員制度」の活用

警察において、専門的な被害者支援が必要とされる事案が発生したときに、捜査員とは別に指定された警察職員が犯罪被害者等への付添い、説明などの事件発生直後における犯罪被害者支援活動を行う「指定被害者支援要員制度」を各都道府県警察で導入している。

平成23年12月末現在、指定被害者支援要員として全国で3万2,403人が配置されている。

支援要員による病院の付添
支援要員による病院の付添
提供:警察庁

(9) 交通事故相談活動の促進

内閣府において、交通事故被害者救済対策の一環として、交通事故相談所に勤務する初任の相談員に対し、相談員として必要な基本的知識などの習得を目的とした「交通事故相談員中央研修会(初任者コース)」を開催している。

また、交通事故相談員総合支援事業を通して、被害者等からの相談に対する相談員の対応能力を向上させるため、民事損害賠償問題に関する研修会の開催、交通事故相談業務に関する資料の提供により、都道府県・政令指定都市の交通事故相談活動に対する支援を行っている。

(10) 警察における被害少年が相談しやすい環境の整備

警察において、全都道府県警察に設置されている少年サポートセンターや警察署の少年係などが窓口となって、少年や保護者などからの相談を受け付けている。相談には、警察官や少年補導職員が対応し、必要な助言、指導を行っている。

また、全都道府県警察において、「ヤングテレホンコーナー」などの名称で電話による少年相談窓口を設けており、フリーダイヤルによる相談や電子メールなどによる夜間、休日における受付など、少年や保護者などが相談しやすい環境の整備を図っている。

平成23年10月、警察庁では、少年や保護者に対する相談活動を強化するため、少年補導職員などを対象に全国少年相談協議会を開催した。

平成24年4月1日現在、全国193か所に少年サポートセンターが設置されているが、そのうち65か所は、少年や保護者などが気軽に立ち寄ることができるよう、警察施設以外の施設に設置されている。

(11) ストーカー事案への適切な対応

警察において、犯罪被害者等の意思を踏まえ、「ストーカー行為等の規制等に関する法律」(平成12年法律第81号。以下「ストーカー規制法」という。)に基づく警告、禁止命令、自衛策の教示などにより危害の拡大防止を図っているほか、ストーカー行為者の検挙に努めている。

各種法令に抵触しない場合でも、犯罪被害者等に自分の身を守るための方策を教示したり、避難などが必要となったときのために、婦人相談所などの関係機関を教示するほか、必要に応じて、ストーカー行為者に対する指導・警告を行うなど、犯罪被害者等の立場に立った積極的な対応を図っている。

平成23年中のストーカー規制法に基づく警察本部長などの援助件数は2,771件となっており、「被害防止措置の教示」や「被害防止交渉場所として警察施設の利用」などの援助を行っている(「ストーカー事案及び配偶者からの暴力事案の対応状況について」:http://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/23DV.pdf別ウインドウで開きます)。

ストーカー事案及び配偶者からの暴力事案の対応状況について
提供:警察庁

(12) 人身取引被害者の保護の推進

人身取引対策に関する関係省庁において、「人身取引対策行動計画2009」(平成21年12月22日犯罪対策閣僚会議決定)に基づき、被害者保護のための各種施策を推進している。

平成23年7月、人身取引対策に関する関係省庁連絡会議において、人身取引事案の被害者保護のための着眼点及び関係行政機関において講ずべき措置について整理した「人身取引事案の取扱方法(被害者の保護に関する措置)」を申し合わせた。

(13) 検察庁の犯罪被害者等支援活動における福祉・心理関係の専門機関等との連携の充実

法務省において、犯罪被害者等に配慮した捜査・公判活動を行うため、検察官などの研修において、福祉・心理関係の専門機関の関係者を講師に招くなど、その連携・協力の充実・強化を図っている。

(14) 検察庁における被害者支援員と関係機関・団体等との連携・協力の充実・強化及び情報提供の充実

法務省において、犯罪被害者等の支援に携わる被害者支援員を対象とする研修において、被害者支援団体の関係者を講師に招くなど、その連携・協力の充実・強化を図るとともに、犯罪被害者支援員の意義や役割についても記載されている犯罪被害者等向けパンフレット「犯罪被害者の方々へ」を犯罪被害者支援関係機関・団体等に配布するなどして犯罪被害者支援員制度に係る情報提供の充実を図っている。

(15) 地方公共団体に対する子ども・若者育成支援についての計画に関する周知

内閣府において、都道府県・政令指定都市に対し、都道府県・指定都市青少年行政主管課長等会議の開催を通じて、子ども・若者育成支援推進法(平成21 年法律第71 号)に基づく子ども・若者育成支援についての計画を作成又は変更する場合には、「子ども・若者ビジョン」(平成22 年7月23 日子ども・若者育成支援推進本部決定)に盛り込まれた「犯罪被害に遭った子ども・若者とその家族等への対応」に関する記述も勘案するよう、周知した。

(16) 「子どもの人権110番」及び人権擁護委員の活用・充実

法務省の人権擁護機関において、法務局・地方法務局に専用相談電話「子どもの人権110番」(0120(007)110「フリーダイヤルぜろぜろななのひゃくとおばん」)を設置し、犯罪等による被害を受けた子どもが安心して相談できる環境を整備して、人権擁護委員や法務局職員が相談に応じている。平成23年中における「子どもの人権110番」を利用した犯罪被害者等からの相談件数は18件であった。

また、平成23年6月27日から同年7月3日までの間を「全国一斉『子どもの人権110番』強化週間」とし、相談時間を延長するなどして積極的に犯罪被害者等である子どもからの相談に応じており、同強化週間は平成24年度も実施を予定している(6月25日から7月1日まで)。

このほか、全国の小中学校の児童・生徒に、「子どもの人権SOS ミニレター」(便箋兼封筒)を配布したり、法務省のホームページ上に「インターネット人権相談受付窓口」を開設して、パソコンや携帯電話からインターネットでいつでも相談を受け付ける体制を整備するなど、更なる犯罪被害者等への相談体制の強化を図っている(P87(41)「犯罪被害者等からの各種人権相談への対応」参照)。

「子どもの人権110番ポスター」
「子どもの人権110番ポスター」
提供:法務省

(17) 教育委員会と関係機関・団体等との連携・協力の充実・強化及び学校における相談窓口機能の充実

文部科学省において、平成20年2月に、「児童生徒の安全の確保及び犯罪被害の防止について」(通知)を発出し、関係機関と連携した取組の推進を促したほか、各種会議においても、学校・教育委員会・関係機関などの連携・協力を促している。

(18) 学校内における連携及び相談体制の充実

文部科学省において、学校内で児童生徒等の相談などに適切に対応ができるよう、スクールカウンセラーや子どもと親の相談員の配置の拡充やスクールカウンセラーの緊急支援のための派遣に対して補助を行ってきた。平成22年度に引き続き、平成23年度においても小・中学校等にスクールカウンセラーを適切に配置し、相談体制などの充実を図っている。

(19) 学校における相談対応能力の向上等

文部科学省において、学校の教職員が児童生徒の相談などに的確に対応できるよう、生徒指導の指導者となる教員に対して教育相談に関する研修を実施している。

また、性犯罪の被害者を含めて児童生徒等の相談等に対して適切に対応できるよう、スクールカウンセラーや子どもと親の相談員の配置の拡充や、スクールカウンセラーの緊急支援のための派遣に対して補助を行ってきた。

また、児童虐待などの問題へ対応するため、教育分野に関する知識に加えて、社会福祉の専門的な知識・技術を用いて児童生徒を支援するスクールソーシャルワーカーを、各地域の実情に応じて学校などの教育機関に配置する地方自治体の取組に対して補助を行い、学校における教育相談体制の充実を支援している。

(20) 相談及び情報提供のための教育委員会による取組の促進

文部科学省では、性犯罪の被害者を含めて児童生徒等の相談等に対して適切に対応できるよう、児童生徒の臨床心理に関して高度に専門的な知識・経験を有するスクールカウンセラーの配置に対して補助を行ってきた。

また、児童虐待などの問題へ対応するため、教育分野に関する知識に加えて、社会福祉の専門的な知識・技術を用いて児童生徒を支援するスクールソーシャルワーカーを、各地域の実情に応じて学校などの教育機関に配置する地方自治体の取組に対して補助を行っている。

(21) 各都道府県警察に対する犯罪被害者等への情報提供等の支援に関する指導・督励及び好事例の勧奨

警察庁において、情報提供をはじめとする基本的な犯罪被害者支援施策が確実に実施されるよう、各種会議などを通じて各都道府県警察に対し指導・督励するとともに、毎年、被害者支援担当者体験記を発行し、各都道府県警察に配付している。

(22) 「被害者の手引」の内容の充実等

警察庁において、平成20年11月、「被害者の手引」モデル案を改訂し、新たに、被害者参加制度や損害賠償命令制度の情報を掲載したほか、刑事手続や裁判で利用できる制度についての情報や、犯罪被害給付制度などの経済的支援や被害の回復についての情報、各種相談機関・窓口についての情報の充実を図っている。

また、平成22年4月、少年事件の処理の流れが分かりやすく「被害者の手引」に示されるようそのモデル案を作成するなど、少年犯罪の被害者に向けた情報提供の充実を図っている。

「被害者の手引」は、これまでと同様に被害者連絡の対象者に配布するほか、被害者連絡の対象者以外にも、刑事手続・犯罪被害者等のための制度を教示する際などに広く活用することとしている。

さらに、都道府県警察に対し、外国語版の「被害者の手引」についても、それぞれの都道府県の事情に応じて、積極的に作成・配布するよう、引き続き指示している。

被害者の手引

(23) 医療機関等と関係機関・団体等との連携・協力の充実・強化及び医療機関における情報提供等の充実

厚生労働省において、医療機関と犯罪被害者等支援に係る諸機関・団体などとの連携・協力を図るため、「支援のための連携に関する検討会」の検討結果を踏まえ、必要に応じて、情報提供に関して協力要請をするなど、適切に対応している。

また、平成17年度より3年計画で行っている「犯罪被害者の精神健康の状況とその回復に関する研究」では、地域精神保健機関の犯罪被害者支援における関係諸機関との連携に関する調査を実施した。19年度は、17年度、18年度の調査研究の結果などを踏まえて、精神科医療機関における犯罪被害者治療を促進するための提言をまとめた。20年度には、「犯罪被害者等支援のための地域精神保健福祉活動の手引」(http://www.ncnp.go.jp/nimh/seijin/www/pdf/shiryo_tebikizenbun.pdf別ウインドウで開きます)を作成し、精神保健福祉センターに配布した。

なお、精神保健福祉センター、保健所において、現在、心のケアが必要な犯罪被害者等に対して、精神保健に関する相談支援を行っている。

(24) 性犯罪被害者による情報入手の利便性の拡大

P8「性犯罪被害者による情報入手の利便性の拡大」参照

(25) 地域包括支援センターによる支援

地域包括支援センターにおいて、高齢者に対する虐待への対応を含む権利擁護業務の実施を推進している。

(26) 日本司法支援センターによる支援

法テラスにおいて、平成18年10月から犯罪被害者支援業務を行っている。

業務の具体的な内容は、犯罪被害者等が、そのとき最も必要な支援が受けられるよう

  • 刑事手続への適切な関与や、損害・苦痛の回復・軽減を図るための法制度に関する情報の提供
  • 犯罪被害者支援を行っている機関・団体の案内
  • 犯罪被害者支援の経験や理解のある弁護士の紹介
  • 被害者参加人のための国選弁護制度に関する業務

を実施することである。

利用の窓口としては、固定電話であれば、全国どこからでも3分8.5円(税別)の通話料で利用できる法テラス・サポートダイヤル(コールセンター)のほか、全国各都道府県に地方事務所を設けており、電話や面談による問合せを受け付けている。法テラス・サポートダイヤル(コールセンター)では、相談内容を問わず、様々な法的トラブルに関する問合せを受け付ける一般ダイヤル(0570-078374「おなやみなし」)のほか、犯罪被害者支援ダイヤル(0570-079714「なくことないよ」)という専用の電話番号を設け、犯罪被害者支援の知識・経験を持った専門の担当者が、被害者に二次的被害を与えないよう心情に配慮しながら情報提供を行っている(利用時間:平日9:00~21:00、土曜日9:00~17:00)。犯罪被害者支援ダイヤルにおける平成23年1月1日から同年12月末日までの問い合わせ件数は9,868件であった。主な問合せ内容は、生命・身体犯被害、配偶者等からの暴力(DV)、性被害、ストーカー被害などである。

全国の地方事務所における電話及び担当者との面談による情報提供件数は平成23年1月1日から同年12月末日までに13,158件あった。また、犯罪被害者支援の経験や理解があるとして弁護士会から推薦を受けている弁護士を、個々の状況に応じて紹介しており、平成24年1月現在、2,273人の弁護士を紹介用名簿に登載している。平成23年1月1日から同年12月末日までの紹介件数は829件であった。

法テラスでは、弁護士を通じた援助制度として、経済的に余裕のない方に民事訴訟などにおける弁護士費用などを立て替える民事法律扶助業務を行っている。また、法テラスでは、平成19年10月から、日本弁護士連合会から委託を受けて法律援助に関する業務を行っている。この日本弁護士連合会からの委託業務は、被害者参加人のための国選弁護制度や民事法律扶助制度などではカバーされない方を対象に、人権救済の観点から弁護士費用の援助を行うもので、生命、身体、自由又は性的自由に対する犯罪、配偶者等からの暴力(DV)、ストーカー行為などによる被害を受けた方などに係る告訴・告発、法廷傍聴付添い、刑事手続における和解の交渉、加害者との対話、マスコミ対応、犯罪被害者等給付金申請などを援助する「犯罪被害者法律援助」や、虐待やいじめなどを受けた子どもに係る行政手続や訴訟の代理活動を援助する「子どもに対する法律援助」などがある。

被害者参加人のための国選弁護制度においては、法テラスは、国選被害者参加弁護士の候補となる弁護士の確保のほか、国選被害者参加弁護士の候補を裁判所に指名通知するなどの業務を行っている。平成24年1月現在、被害者参加弁護士契約弁護士は2,801人となっており、平成23年1月1日から同年12月末日までの国選被害者参加弁護士の選定請求受付件数は260件331人であった。

法テラスの犯罪被害者支援業務においては、警察庁や日本弁護士連合会などの関係機関・団体に対する法テラスの周知とともに、これら関係機関・団体と十分な連携を図っていくことが求められており、各都道府県警察などが事務局となって主催している被害者支援連絡協議会のほか、警察、地方公共団体、日本弁護士連合会、民間被害者支援団体などの関係機関・団体を招いて開催する地方協議会において被害者参加制度や被害者参加人のための国選弁護制度に関する説明及び被害者週間における啓発・広報活動などを行い、被害者支援に関する関係機関・団体との連携・協力関係の強化を図った。

これらの取組を通じて、法テラスは、犯罪被害者等の支援に携わる弁護士によるサービスの質の向上を目指し、弁護士会や犯罪被害者支援団体との連携・協力の下、犯罪被害者支援のための研修について広く実施できるよう努めたり、犯罪被害者等が必要とする支援にたどり着けるよう、犯罪被害者等の内容に応じた最適の専門機関・団体を紹介するコーディネーターとしての役割を果たしたりしている(法テラスホームページ「法テラスの目的と業務(犯罪被害者支援業務)」:http://www.houterasu.or.jp/houterasu_gaiyou/mokuteki_gyoumu/hanzaihigaishashien/別ウインドウで開きます)。

今後も、各地の関係機関・団体とより緊密な連携・協力関係を構築するため、関係機関・団体が実施する連絡会議において、業務現況の説明や協力要請、実務担当者間における情報交換の実施などの積極的な働きかけ、取組を行っていく。

また、国民への制度周知・広報の取組としては、国民にとって見やすく、かつ分かりやすい表現を心掛けた犯罪被害者支援業務リーフレット(改訂版)、Q&A リーフレット(「犯罪被害者支援Q&A」、「ドメスティックバイオレンス(DV)」)などの各種広報物(法テラスホームページ「刊行物」:http://www.houterasu.or.jp/houterasu_gaiyou/kankoubutsu/別ウインドウで開きます)の発行、地方公共団体などに依頼して広報物を窓口に備え置いてもらう、各団体の機関紙に法テラスの紹介記事を掲載してもらうなど、関係機関・団体を通じた地道な広報活動を進めているほか、全国各地でテレビや新聞などのマスメディアを利用した広報を展開した。

今後も引き続き、法テラスにおける犯罪被害者等に対する援助制度についての周知・広報に努めていく。

Q&A リーフレット(「犯罪被害者支援Q&A」、「ドメスティックバイオレンス(DV)」)
提供:法務省
犯罪被害者支援業務リーフレット(改訂版)
提供:法務省

(27) 自助グループの紹介等

警察において、犯罪被害者等の要望を踏まえ、相談や支援などの機会や民間被害者支援団体を通じて、犯罪被害者等に自助グループを紹介している。

(28) 犯罪被害者等施策のホームページの充実

内閣府において、犯罪被害者等施策に関する情報を提供することにより、国民の理解や犯罪被害者等の被害からの回復に役立つものとなるよう、犯罪被害者等施策のホームページの充実を図っている。

現在、相談機関、犯罪被害者団体等の一覧、被害者の手記、広報・啓発行事の告知・開催報告、各種調査結果などの情報を掲載するとともに、基本法・基本計画・白書といった犯罪被害者等施策に関する基本的な情報、推進会議、基本計画策定・推進専門委員等会議(以下「専門委員等会議」という。)、などの各種会議の議事内容など、幅広く情報提供を行っている。

引き続き、コンテンツの充実を図るとともに、国民が必要な情報を利用しやすいサイト環境の整備改善に努めていく。

(29) インターネット以外の媒体を用いた情報提供

各省庁において、インターネットなどで情報を得ることができる者とそうでない者との間に不公平が生じることのないよう配慮するとともに、積極的な情報提供に努めている。

内閣府において、「犯罪被害者週間」国民のつどいの開催に関する広報啓発ポスター・チラシを作成している。また、推進会議や専門委員等会議などの議事の概要を会議開催後にメディアに対して説明するなど、積極的な情報提供に努めている。

警察庁において、「被害者の手引」(P81(22)「『被害者の手引』の内容の充実等」参照)・「警察による犯罪被害者支援」(P113(11)「様々な広報媒体を通じた犯罪被害者等施策に関する広報の実施」参照)などにより積極的な情報提供に努めている。

総務省において、住民基本台帳の閲覧制度改正について、地方公共団体に対する説明会を開催し、その模様を自治体衛星通信機構において放映するとともに、同通信機構において紹介番組を放映した。また、ポスターやリーフレットを作成し、全市町村の窓口に配置した。

法務省において、「犯罪被害者等の方々へ」、「もしも…あなたが犯罪被害に遭遇したら」などにより積極的な情報提供に努めている(P66(11)「刑事の手続等に関する情報提供の充実」参照)。

文部科学省において、犯罪被害者等施策にかかわる省庁の協力を得て、「被害者の手引」など当該制度に関する案内書や申込書を教育委員会に常備し、教育関係者などに提供している。

厚生労働省において、児童虐待について幅広く国民の理解を深め、社会的関心を喚起するため、全国フォーラムの開催、広報啓発ポスター・リーフレットの作成、配布、政府広報を活用したイベントや、テレビスポットCMやラジオ、新聞等により児童相談所全国共通ダイヤルの周知徹底を図るなどの広報啓発活動を実施している(P113(9)「犯罪被害者等施策の関係する特定期間における広報・啓発事業の実施」参照)。

国土交通省において、公営住宅の管理主体に対し、配偶者からの暴力被害者や犯罪被害者等を対象とした公営住宅への入居に係る配慮を依頼する通知を発出し、地方公共団体においても、募集パンフレットへの記載等を通じて、適切な運用が図られるよう努めている。また、法務省作成の犯罪被害者用パンフレット「犯罪被害者の方々へ」に公営住宅への優先入居などの施策について記載し、制度の周知に努めている。

(30) 更生保護官署と保護司との協働による刑事裁判終了後の支援の充実

法務省において、全国の保護観察所に被害者担当官及び被害者担当保護司を配置し、その協働態勢の下、主として、被害に係る刑事裁判が終了した後又は被害に係る加害者が保護処分を受けた後に、犯罪被害者等に対して相談・支援を行っている。相談・支援の実施においては、犯罪被害者等の悩みや不安を傾聴するとともに、犯罪被害者支援に必要な情報を提供するなどしているほか、支援の円滑な実施及び支援内容の充実を期するため、国や地方公共団体の機関、犯罪被害者等の援助を行う民間の団体等との連携の強化を図り、協力関係を発展させるよう努めている。

(31) 保護司に対する研修等の充実

刑事裁判終了後の相談対応の充実のため、保護観察所に配置されている被害者担当保護司を対象とする研修における犯罪被害者等支援の実務家による講義、事例研究及び犯罪被害者等支援の実践的技能を修得させるためのロールプレイ方式による演習の実施など、被害者担当保護司の犯罪被害者等への適切な対応を確実にするための研修等の充実を図っている。また、被害者担当保護司以外の保護司を対象とした研修においても、更生保護における犯罪被害者等施策を取り上げ、研修内容の充実を図っている。

(32) 犯罪被害者等である児童生徒が不登校になった場合における継続的支援の促進

文部科学省において、不登校児童生徒への対応に際して、中核的な機能を果たす教育支援センター(適応指導教室)などの整備充実を促進するとともに、「生徒指導・進路指導総合推進事業」において、不登校などの問題を抱える児童生徒の支援のために効果的な取組について、子どもの状況の把握の在り方、関係機関とのネットワークを活用した早期からの支援の在り方などの観点から、調査研究を引き続き実施している。

(33) 犯罪被害者等である児童生徒が問題を抱えるに至った場合における継続的支援の促進

文部科学省において、問題行動を起こす個々の児童生徒に着目して的確な対応を行うため、学校、教育委員会、関係機関からなるサポートチームの組織化など、地域における支援システム作りを行い、警察庁と共催による「問題行動に対する連携ブロック協議会」を開催し、各地域における効果的な取組の普及を図っている。

また、「生徒指導・進路指導総合推進事業」において、いじめや暴力行為などの問題を抱える児童生徒の支援のために効果的な取組について調査研究を実施している。

さらに、児童生徒の抱える問題に適切に対応できるよう、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置に必要な経費を補助し、教育相談体制の充実を図っている。

(34) 日本司法支援センターによる長期的支援

法テラスにおいて、被害を受けた時からの時間的経過の長短を問わず、情報提供などを通じた支援を行っている。

(35) 海外における邦人の犯罪被害者等に対する情報提供等

外務省において、海外で邦人が犯罪被害者となった場合に在外公館(大使館、総領事館)が提供している問題解決に資する情報(現地の弁護士や通訳者のリストなど)・支援について、より広く周知を図るためパンフレット「海外で困ったら~大使館・総領事館のできること~」、「海外安全虎の巻~海外旅行のトラブル回避マニュアル~」を改訂・増刷の上、全国の都道府県旅券事務所や在外公館などに配布するとともに、海外安全ホームページ(http://www.anzen.mofa.go.jp/別ウインドウで開きます)に掲載し、より多くの国民がこれらの情報を入手しやすくなるよう努めている。

また平成19年12月より、「海外で困ったら~大使館・総領事館のできること~」のフラッシュ動画を海外安全ホームページに掲載している。

今後とも、パンフレットの改訂・増刷や海外安全ホームページでの広報などを通じ、海外における邦人の犯罪被害者等に対する情報をさらに分かりやすくするとともに、国民が事前にこれらの情報を得る機会が増加するよう取り組んでいく。

警察庁において、外務省と連携し、海外における邦人の犯罪被害に関する情報の収集に努めるとともに、関係機関・団体と連携し、帰国する犯罪被害者や日本国内の遺族等に対し、国内での支援に関する各種情報の提供や帰国時の空港等における支援など適切な支援活動に努めている。

パンフレット「海外で困ったら~大使館・総領事館のできること~」、「海外安全虎の巻~海外旅行のトラブル回避マニュアル~」
提供:外務省ホームページ
「海外で困ったら~大使館・総領事館のできること~」のフラッシュ動画

《基本計画には盛り込まれていないが、基本法・基本計画を踏まえ、実施しているもの》

(36) 「NPO ポータルサイト」による情報取得の利便性確保

内閣府において、犯罪被害者等の援助を行う特定非営利活動法人などの情報を検索により取得可能とする「NPO ポータルサイト」の管理・運営を行っている(内閣府NPOホームページ:https://www.npo-homepage.go.jp/別ウインドウで開きます)。

(37) 犯罪被害者等への訪問・連絡活動の実施

警察において、犯罪被害者等からの要望がある場合には、交番・駐在所の地域警察官が犯罪被害者等を訪問し、被害の回復、拡大防止などに関する情報の提供、防犯上の指導連絡などを行っている。また、被害の態様などによっては、必要に応じて、パトロールや女性警察官による訪問・連絡活動などを行っている。

警察庁において、平成19年2月に地域部門と事件捜査部門の連携強化や警察署長などを責任者とする指導監督体制を盛り込むなどの改正を加えた「地域警察官による被害者への訪問・連絡活動実施要領」を各都道府県警察に発出しており、同要領の効果的運用を指示している。

(38) 犯罪の発生直後からの総合的・横断的な支援活動の展開

警察において、犯罪被害者等早期援助団体や被害者支援連絡協議会をはじめとする関係機関・団体、関係省庁などとの連携を図り、犯罪の発生直後から、被害の回復・軽減、再発防止などのための支援活動が総合的・横断的かつ充実して展開されるよう努めている。

(39) 被害者支援員の配置

検察庁において、被害者等に対し、よりきめ細かな配慮を行うため、犯罪被害者等の支援に携わる「被害者支援員」を配置し、特に大規模庁においては、常時複数名を配置している。

被害者支援員は、犯罪被害者等からの様々な相談への対応、法廷への案内・付添い、事件記録の閲覧、証拠品の返還などの各種手続の手助けをするほか、犯罪被害者等の状況に応じて精神面、生活面、経済面などの支援を行っている関係機関や団体などを紹介するなどの支援活動を行っている。

(40) 被害者ホットラインの設置

検察庁において、犯罪被害者等による電話やファックスでの被害相談の受付のため、地方検察庁本庁に、被害者相談専用電話であるホットラインを置き、被害者支援員などが電話対応をしている。

(41) 犯罪被害者等からの各種人権相談への対応

法務省の人権擁護機関において、各種人権相談への対応を実施している。法務局・地方法務局やその支局で開設している常設相談所や社会福祉施設などで開設する特設相談所においては、犯罪被害者等からの人権相談に応じており、常設相談所の電話番号を全国共通化するなど相談しやすい環境の整備に努めている。また、犯罪被害者等である子どもや女性については、専用相談電話「子どもの人権110番」(P79(16)「『子どもの人権110番』及び人権擁護委員の活用・充実」参照)や「女性の人権ホットライン」を設置するとともに、全国一斉の「子どもの人権110番」強化週間や「女性の人権ホットライン」強化週間を実施するなどの相談体制の充実に努めている。加えて、全国一斉「高齢者・障害者の人権あんしん相談」強化週間を実施しており、さらには、全国8か所の法務局・地方法務局に英語や中国語などの通訳を配置した「外国人のための人権相談所」を開設するなど、幅広く犯罪被害者等からの人権相談に応じている。

このほか、法務省の人権擁護機関では、全国の小中学校の児童・生徒に「子どもの人権SOS ミニレター」(便箋兼封筒)を配布して、犯罪等による被害を受けた子どもの悩みごとの把握に努めているほか、法務省のホームページ上に「インターネット人権相談受付窓口」を開設して、パソコンや携帯電話からインターネットでいつでも相談を受け付ける体制を整備するなど、更なる犯罪被害者等への相談体制の強化を図っている。

平成23年中における犯罪被害者等からの相談件数は372件であった。

(42) 人権侵犯事件の調査及び処理等

法務省の人権擁護機関において、人権相談などで犯罪被害者等に対する人権侵害の疑いのある事案を認知した場合には、人権侵犯事件として調査を行い、その結果、人権侵害の事実が認められれば、関係機関と連携・協力して当該事案に即した適切な解決を図っている。

平成23年中に取り扱った犯罪被害者等に対する人権侵犯事件は18件であった。

(43) 被害者連絡の実施

海上保安庁において、犯罪被害者等に対し捜査や公判に支障を及ぼしたり、関係者の名誉などの権利を不当に侵害するおそれのある場合を除き、当該事件の捜査の経過などを通知している。

(44) 犯罪被害者等支援主任者の指定

海上保安庁において、犯罪被害者等の支援、関係機関との連絡調整を行う犯罪被害者支援主任者を部署ごとに指定し、犯罪被害者等の個々の具体的な事情を把握し、その事情に応じ犯罪被害発生直後から犯罪被害者等へ必要な助言、情報提供などを行うとともに、具体的な支援の説明を行うなど、犯罪被害者等への経済的・精神的負担の軽減に努めている。

(45) 支援制度に関する情報提供

海上保安庁において、ホームページで犯罪被害者支援制度に係る周知を図るとともに犯罪被害者等支援に係る業務を専門的かつ総合的に取り扱う警務管理官の指導の下、犯罪被害者等支援主任者に指名された海上保安官により、関係機関との連携・情報提供などに努めている。

[目次]  [戻る]  [次へ]
警察庁 National Police Agency〒100-8974 東京都千代田区霞が関2丁目1番2号
電話番号 03-3581-0141(代表)