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第5節 国民の理解の増進と配慮・協力の確保への取組


1 国民の理解の増進(基本法第20条関係)

《基本計画において、「速やかに実施する」とされたもの》
(1) 学校における生命のかけがえのなさ等に関する教育の推進

文部科学省において、学校・地域の実情などに応じた多様な道徳教育を支援するため、道徳教材の活用をはじめ、道徳教育の充実のための外部講師派遣、保護者・地域との連携など自治体による多様な事業への支援を行う「道徳教育総合支援事業」を実施しており、生命を大切にする心を育成する道徳教育の一層の推進を図っている。

(2) 学校における体験活動を通じた命の大切さの学習についての調査研究の実施及びその成果の普及

文部科学省において、学校における自然体験活動や社会奉仕体験活動の充実を図っており、小学校の農山漁村での民泊を取り入れた自然体験活動などを推進している。調査研究の成果については、教育委員会の担当者などを集めたブロック協議会を開催するとともに、平成22年7月には「農山漁村での宿泊体験による教育効果の評価について」(報告)を取りまとめ、全国の教育委員会や学校に普及を図っている。

(3) 学校における犯罪被害者等の人権問題も含めた人権教育の推進

文部科学省において、「人権教育・啓発に関する基本計画」を踏まえ、学校、家庭、地域社会が一体となって教育上の総合的な取組を推進する「人権教育総合推進地域事業」、学校における人権教育について実践的な研究を委嘱する「人権教育研究指定校事業」を実施している。

また、学校における人権教育に関する指導方法の在り方などについて調査研究を行う「人権教育の指導方法の在り方等に関する調査研究」などを実施し、平成20年3月に「人権教育の指導方法等の在り方について【第三次とりまとめ】」をまとめた。

さらに、各都道府県教育委員会等の人権教育担当者が参加する「人権教育担当指導主事連絡協議会」を開催するとともに、独立行政法人教員研修センターにおいて「人権教育指導者養成研修」を実施している。

(4) 学校における犯罪抑止教育の充実

文部科学省において、平成18年5月に「児童生徒の規範意識を育むための教師用指導資料(非行防止教室を中心とした取組)」を作成して、各教育委員会・学校などに配布し、これらを活用して非行防止教室の実施を始めとした犯罪抑止教育の充実を図っている。

(5) 子どもへの暴力防止のための参加型学習への取組

文部科学省において、上記「児童生徒の規範意識を育むための教師用指導資料(非行防止教室を中心とした取組)」を活用した非行防止教室の実施を始め、子どもへの暴力防止のための参加型学習の取組を推進している。

(6) 家庭における命の教育への支援の推進

文部科学省において、命の大切さを実感させる意義などを記述している「家庭教育手帳」を文部科学省HP へ掲載し、全国の教育委員会やPTA、子育て支援団体などが主催する子育て講座等での活用を促している。

(7) 生命・身体・自由の尊重を自覚させる法教育の普及・啓発

法務省において、法教育を推進するための方策について多角的な視点から検討するため、法教育推進協議会を開催している。

平成20年度から、同協議会の下に、私法分野における法教育の在り方を検討するための「私法分野教育検討部会」、小学生を対象とした法教育教材の作成を行うための「小学校教材作成部会」を開催し、それぞれ検討を行ってきたが、平成21年度は、両部会からの報告を受けて、同協議会で、「私法分野教育の充実と法教育の更なる発展に向けて」(平成21年5月)、「小学生を対象とした法教育教材例の作成について」(同年8月)を取りまとめ、法務省ホームページに公表した。

平成22年度からは、法教育推進協議会において、法教育推進のための新たな取組として、法教育の中心的な担い手である教育関係者や法律関係者、将来の法教育の担い手となる大学生及び大学院生などを対象とした法教育に関する論文コンクールを実施している。

また、平成22年10月29日には、京都市において、法教育の更なる普及と発展を目的として、法教育シンポジウムを開催した。

(8) 「犯罪被害者週間」にあわせた集中的な啓発事業の実施、犯罪被害者等の置かれた状況等について国民理解の増進を図るための啓発事業の実施

内閣府において、11月25日から12月1日までの7日間を「犯罪被害者週間」として設定している。平成22年度は、「被害者の 悲痛な気持ちに 時効なし」を標語として、内閣府主催の「犯罪被害者週間」国民のつどい中央大会を開催するとともに、内閣府・地方公共団体(千葉県、福井県、兵庫県、和歌山県)共催の地方大会を開催した。また、開催結果を、内閣府犯罪被害者等施策ホームページに掲載するとともに、報告書として関係機関へ配布した。

平成23年度においても、中央大会を東京で開催し、地方大会を複数の地域で開催する予定である(P111 コラム7「犯罪被害者週間の実施」参照)。

(9) 犯罪被害者等施策の関係する特定期間における広報・啓発事業の実施

内閣府において、春(平成22年4月6日から同月15日)と秋(平成22年9月21日から同月30日)の全国交通安全運動において、「子どもと高齢者の交通事故防止」などを基本として、交通事故被害者等の視点に配意しながら、交通事故の悲惨さや生命の尊さを広く国民に訴えた。

法務省において、平成22年度においては、犯罪被害者等の人権問題に対する配慮と保護を図るため、「犯罪被害者とその家族の人権に配慮しよう」を啓発活動年間強調事項の1つとして掲げ、人権週間(12月4日から同月10日)を始め、1年を通して、全国各地で、講演会などの開催、啓発冊子の配布などの啓発活動を実施している。

厚生労働省において、児童虐待について各界各層の幅広い国民の理解を深め、社会的関心を喚起するため、11月を「児童虐待防止推進月間」と位置付け、集中的な広報啓発活動を実施している。平成22年度は、「見すごすな 幼い子どもの SOS」を月間標語として決定し、「子どもの虐待防止推進全国フォーラムin ひろしま」の開催(11月23日)、広報啓発ポスター・チラシの作成・配布、政府広報を活用した各種媒体(テレビ、新聞など)による広報啓発などを行い、関係省庁や地方公共団体、関係団体などと連携した集中的な広報啓発活動を実施している。

▼全国交通安全運動ポスター
全国交通安全運動ポスターの写真
▼児童虐待防止推進月間ポスター
児童虐待防止推進月間ポスターの写真
提供:厚生労働省
(10) 様々な広報媒体を通じた犯罪被害者等施策に関する広報の実施

内閣府において、政府広報などを活用し、犯罪被害者等の置かれた状況やそれを踏まえた施策実施の重要性、犯罪被害者等の援助を行う団体の意義・活動などについて広報を実施している。

警察庁においては、シンポジウム・フォーラムなどの開催・後援や様々な広報媒体を通じて、犯罪被害者等が置かれている実態や警察、関係機関、民間被害者支援団体などが取り組んでいる犯罪被害者等支援についての広報啓発活動を行っている(犯罪被害者支援に関する国民の理解と共感の増進に要する経費(国費):23年度3百万円)。

また、広報用冊子「警察による犯罪被害者支援」を発行するとともに、警察による犯罪被害者支援ホームページ(http://www.npa.go.jp/higaisya/home.htm別ウインドウで開きます)を通じ、警察による犯罪被害者支援に関する理解増進に努めている。

広報用冊子「警察による犯罪被害者支援」の写真
提供:警察庁
(11) 交通事故被害者等の声を反映した国民の理解増進

警察において、交通事故の被害者等の実態や惨状などに関する国民の理解増進のため、交通事故被害者等の手記を取りまとめた冊子などの作成・配布や、交通安全の集いなどにおける交通事故被害者等の講演を実施している。平成22年中は、手記を取りまとめた冊子などを約148万部作成するとともに、講演会などを約380回実施した。

また、都道府県公安委員会による運転者等に対する各種講習において、交通事故被害者等の切実な訴えが反映されたビデオ、手記などを活用するほか、交通事故被害者等の講話を取り入れるなどにより、交通事故被害者等の声を反映した講習を実施している。

(12) 国民の理解の増進を図るための情報提供の実施

内閣府において、施策の推進のための情報提供を行うため、毎年、関係省庁の職員、地方公共団体の職員を対象として講演会を実施している。講演会の概要は、内閣府犯罪被害者等施策ホームページに掲載し、広く一般に情報提供を行っている。

(13) 調査結果の公表を通じた犯罪被害者等の置かれた状況についての国民理解の促進

内閣府において、犯罪被害者等の置かれた状況や当該状況の経過などを把握するため、平成19年度から平成21年度まで3年間継続して行った犯罪被害類型別継続調査について、その結果を報告書にまとめ、関係機関・団体に配布するとともに、内閣府ホームページに掲載した。

(14) 学校における犯罪被害児童生徒への的確な対応のための施策の促進

文部科学省において、虐待を受けた子どもへの対応に関して、養護教諭の資質向上を図るための研修会を実施した。また、児童虐待に関して「養護教諭のための児童虐待対応の手引き」を作成し、全国の教育機関へ配布している。本手引書により、養護教諭が児童虐待に対する知見を深め、児童虐待の早期発見、早期対応が可能となることが望まれる。

(15) 犯罪被害者等に関する個人情報の保護

警察庁において、犯罪被害者等の実名発表・匿名発表について、引き続き適切な発表がなされるよう、都道府県警察の担当課長などを招致した全国会議などを通じて、都道府県警察を指導している。

(16) 犯罪被害者等に関する個人情報の保護に配慮した地域における犯罪発生状況等の情報提供の実施

都道府県警察において、ホームページを開設し、犯罪発生の情勢や不審者に係る情報などの防犯情報を掲載するとともに、ホームページの防犯情報コーナーへのアクセスが容易となるよう、トップページに明示的にリンクを掲げるなど、工夫を行っている。また、防犯対策に係る冊子やチラシ、防犯対策に係るビデオをホームページに掲載している。

ホームページ以外での情報提供については、都道府県警察において、携帯電話やパソコンのメール機能を活用して、あらかじめ登録した住民に犯罪発生の状況や不審者(声かけ)情報などの身近な情報を発信する取組が行われている。さらに、地元テレビやラジオを通じて、定期的に情報を提供する体制を構築したり、新聞の折込みチラシなどを活用した情報提供を行っている。

なお、これらの犯罪発生情報などを提供するに当たっては、犯罪被害者等の個人情報の保護に十分配意している。

(17) 交通事故の実態及びその悲惨さについての理解の増進に資するデータの公表

警察において、交通事故の実態やその悲惨さについての理解の増進のため、事故類型や年齢層別など交通事故に関する様々なデータを公表し、その実態などについての周知を図っている。


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