第2節 犯罪被害者等基本法の制定及び犯罪被害者等基本計画の策定

そのため、被害者側からその権利保護を前面に打ち出した総合的・抜本的な施策を求める声が高まり、それを受けて政府と与党内部で検討が進められ、平成16年12月1日に「犯罪被害者等基本法」(平成16年法律第161号、以下「基本法」という。)が議員立法により成立し、翌年4月1日に施行された。

基本法は、犯罪被害者等施策にとって、画期的な法律であり、その前文で被害者が置かれている苦境について言及し、被害者の権利利益の保護が図られる社会の実現を目指す旨を規定し、第3条では、3つの基本理念について個別に規定している。

さらに、国の責務だけでなく、地方公共団体や国民の責務を明確に規定したほか、講ずべき各種施策の概要を規定し、施策の推進体制につき、内閣官房長官を会長とし、閣僚と有識者を会議員とする犯罪被害者等施策推進会議(以下「推進会議」という。)を置き、同会議において、被害者施策の実施状況の検証・評価・監視などを行わせることとした。

▼基本法の概要
基本法の概要の図

その後、被害者施策を総合的かつ計画的に推進するために、犯罪被害者等基本計画(以下「基本計画」という。)を策定することとなり、平成17年2月に、犯罪被害者団体などからヒアリングが開始されるとともに、同年4月に、有識者と関係省庁幹部職員から構成された犯罪被害者等基本計画検討会(以下「基本計画検討会」という。)が設置され、同会において議論が交わされた。

▼基本計画策定までの経緯
基本計画策定までの経緯の図

基本計画検討会においては、被害者の意見・要望をヒアリングして集約された615の意見・要望に対する施策が一つひとつ検討され、同年8月に骨子案を取りまとめ、推進会議の決定を経て、意見募集(パブリック・コメント)が行われた。

そして、それに基づく多数の意見を同様に集約した上で一つひとつ検討して前記骨子に肉付けし、同年11月21日に基本計画検討会において基本計画案が取りまとめられ、同年12月27日に閣議決定された。

▼基本計画の作成方針・手順について
基本計画の作成方針・手順についての図

基本計画では、4つの基本方針が掲げられた。

そのうちの3つは、基本法に規定された3つの基本方針に由来するものであったが、基本計画ではさらに、国民の配慮と協力の重要性にかんがみ、「国民の総意を形成しながら展開されること」が4つめの基本方針として加えられた。

基本計画は、総数258の施策を掲げ、それぞれの施策につき担当省庁を明記した。

▼4つの基本方針、5つの重点課題
4つの基本方針、5つの重点課題の図

さらに、各施策の実施期限を定め、すぐに実施可能な施策は速やかに取り組むこととし、検討を要するものについては1年以内に、大きな制度改正などを必要とするものは2年以内に実施することとし(他に例外的に3年以内と規定した施策もごく少数あった)、できる限り迅速な施策の実施を目指した。

258の施策のうち、速やかに取り組むことを求められたものは

・被害者を支援する制度や刑事裁判手続などをわかりやすく被害者に説明するため、警察庁、法務省において、犯罪被害者向けのパンフレットを作成・配付する

・被害者がより容易に法律的な支援を受けられるよう、日本司法支援センターにおいて、電話相談を受けたり、刑事裁判手続に関する情報提供などを行う

・被害者遺族の経済的・精神的負担を軽減するため、都道府県警察において、司法解剖後の遺体搬送費用などを負担する

・被害者の雇用を安定させるため、厚生労働省において、事業主などの理解の増進を図る

・被害者に対する国民の理解を増進するため、内閣府において、被害者が置かれた状況などについての啓発を行う

などを始めとする211に及ぶ施策であったが、いずれも基本計画どおり速やかに実施された。

▼258の施策
258の施策の図

基本計画の中の一部の施策に関しては、更なる検討を要することから、別途、有識者と関係府省幹部職員から構成された検討会を設置して、そこで議論が重ねられることとなった。

その結果、平成18年4月に「経済的支援に関する検討会」、「支援のための連携に関する検討会」、「民間団体に対する援助に関する検討会」の3つの検討会が設置された。

各検討会においては、平成19年5月までに中間報告を取りまとめ、それについて意見募集が行われた。その結果を踏まえて、同年9月までに各検討会において最終取りまとめ案が作成され、同年11月6日付で、いずれの検討会の案も推進会議で決定された。

▼専門委員等会議と3つの検討会
専門委員等会議と3つの検討会の図

各検討会の最終取りまとめでは、主なものとして

○経済的支援に関する検討会

・犯罪被害者等に対する給付の抜本的な拡充

・刑事裁判への参加制度導入に伴う公費による弁護士選任

○支援のための連携に関する検討会

・関係機関・団体の連携ネットワークの充実・強化

・民間の団体で支援活動を行う者の養成・研修

○民間団体に対する支援に関する検討会

・犯罪被害者等早期援助団体とその指定を目指す団体への援助の拡充

などが提言された。

▼「経済的支援に関する検討会」最終取りまとめ(概要)
「経済的支援に関する検討会」最終取りまとめ(概要)の図
▼「支援のための連携に関する検討会」最終取りまとめ(概要)
「支援のための連携に関する検討会」最終取りまとめ(概要)の図
▼「民間団体への援助に関する検討会」最終取りまとめ(概要)
「民間団体への援助に関する検討会」最終取りまとめ(概要)の図

(最終取りまとめの要旨については、犯罪被害者等施策に関する基礎資料4.3つの「検討会」の最終取りまとめの要旨 参照


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