第1部 犯罪被害者等のための施策と進捗状況

第2章 犯罪被害者等のための具体的施策



(15) 児童虐待の防止、早期発見・早期対応のための体制整備等

 警察において、子どもの死亡例に関する適切な検視等の実施に資する教育、児童虐待の発見に資する指導・教育、児童の保護等を行う職員に対する虐待を受けた児童の特性等に関する教育等職員の児童虐待に関する知識・技能の向上に努めることとされた。

 警察では、警察職員に対し、早期に児童虐待を発見するための観点や児童虐待防止法の内容等について指導・教育を行うとともに、虐待を受けた児童の特性や関係機関との連携の在り方等、児童の保護及び保護者への支援を行う警察職員に対して、児童虐待問題に関する専門的な知識・技能の向上のための教育を実施している。

 特に、都道府県警察本部において児童虐待防止対策の業務に従事する警察職員については、関係機関との行動・連携の在り方を含めた児童虐待への対応要領等について教育を実施している。

 また、都道府県警察の少年サポートセンター等に勤務する少年補導職員等に対しては、大学教授やカウンセラー等の専門家を講師としたカウンセリング技術専科等の教育を実施しており、児童虐待又は被害少年対策に関する業務を担当する警察官等に対し、平成17年度以降、少年保護対策に関する専科教育を実施している。

 平成17年3月、「児童福祉法の一部を改正する法律の施行について」を発出し、要保護児童対策地域協議会への積極的参加による関係機関と連携した児童虐待への取組の推進について指示した。

 文部科学省において、職務上虐待を受けている子どもを発見しやすい立場にある学校教育関係者等が、虐待発見時に適切に対応できるよう、通告義務の周知徹底を図る等、早期発見・早期対応のための体制の整備に努めることとされ、また、平成17年度に、学校等における児童虐待防止に向けた取組を推進するため、国内外の先進的取組事例を収集・分析することとされた。

 これを踏まえ、「児童虐待の防止等に関する法律の施行について」(平成12年11月)、「児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律の施行について」(平成16年8月)通知を行い、通告義務等の虐待防止法の趣旨の徹底を図るとともに、「児童虐待防止に向けた学校における適切な対応について」(平成16年1月)の通知等により、学校における虐待防止の取組の推進について指導している。

 また、平成17年4月には「学校等における児童虐待防止に向けた取組に関する調査研究会議」を設置し、学校等における児童虐待防止に関する現状調査と国内外の取組事例を調査研究し、平成18年5月に「学校等における児童虐待防止に向けた取組について」(報告書)をとりまとめるとともに、本報告書を教育委員会等に周知する際に、通告義務等の虐待防止法等の趣旨について改めて周知徹底し、学校等における児童虐待防止のための取組が一層適切に推進されるよう指導している。

 厚生労働省において、児童虐待の早期発見に資するため、児童相談所を中心とした多種多様な関係機関の連携による取組について、全国の好事例を収集し、周知徹底を図ることとされた。

 これを踏まえ、随時、各種関係会議に係る行政説明等において、収集した好事例の内容を報告する。

(16) 児童虐待防止のために行う児童の死亡事例等の検証の実施

 厚生労働省において、児童虐待による死亡事例等の検証は、事件の再発防止と対策を構築する上での課題を抽出するために重要な意義を持つものであり、平成16年の改正児童虐待防止法により国及び地方公共団体の責務として児童虐待の防止等のために必要な事項についての検証を行うことが明確にされたこと等を踏まえ、同年10月に厚生労働省社会保障審議会児童部会の下に「児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会」を設置し、全国の事例を専門的かつ多角的な角度から検証を行うこととし、その検証結果の第1次報告を平成17年4月に、第2次報告「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について」を平成18年3月30日に公表した。

(17) 再被害の防止に資する教育の実施等

 法務省において、矯正施設に収容されている加害者に、被害者の心情を理解させるため、犯罪被害者やその支援に携わる者の意見を踏まえ、被害者の視点を取り入れた教育の内容の一層の充実を図り、再被害の防止に資することとされた。

 矯正施設における被害者の視点を取り入れた教育への取組について検証するとともに、同教育の在り方やその内容・方法等の充実方策について検討するため、平成16年度、犯罪被害者支援団体を含めた外部の有識者を構成員とする「被害者の視点を取り入れた教育」研究会を開催した。そして、刑事施設、少年院双方において、平成16年度に開催した同研究会における提言等を踏まえて策定した標準プログラムに基づき、被害者感情理解用オリジナルビデオ教材等を活用した指導を実施し、平成17年度末に「被害者の視点を取り入れた教育」研究会のフォローアップ報告会を開催し、これまでの取組について検証した。

 平成18年度においては、犯罪被害者等や支援団体の方々から直接話を伺うゲストスピーカー制度を拡大する等、同教育の充実に努めており、刑事施設においては、刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律の施行(平成18年5月24日)に伴い、必要な者には被害者の視点を取り入れた教育を義務付けている。

 また、法務省において、仮釈放に際し、地方更生保護委員会が、事案に応じた犯罪被害者等の安全確保に必要な遵守事項の適切な設定に努め、保護観察所が、当該遵守事項を遵守させるための加害者に対する指導・監督を徹底していくこととされ、また、犯罪被害者等の意向等に配慮し、謝罪及び被害弁償に向けた保護観察処遇における効果的なしょく罪指導を徹底していくこととされた。

 ストーカー事犯者、性犯罪事犯者等の仮釈放に際しては、事案に応じて、被害者への接近を禁止する等の特別遵守事項を設定し仮釈放後の指導を実施している。執行猶予者保護観察法一部改正法の施行後は、ストーカー事犯者、性犯罪事犯者等の保護観察付執行猶予者に対して、被害者等への接近を禁止する特別遵守事項を設定して指導を強化している。

 しょく罪指導についても各保護観察所において実施しており、平成18年3月までに、その実績に関する情報を収集して指導の在り方について検討を進めた。遅くとも平成18年中を目途に、標準的な指導プログラムを策定する予定である。

 文部科学省において、非行少年等の立直り支援を行う中、再被害の防止に資するよう、加害少年の立直りを図っていくこととされた。

 非行等の問題を抱える青少年の立直りの支援策として、地域のボランティア団体、青少年団体、スポーツクラブ等と連携・協力し、社会奉仕活動や体験活動、スポーツ活動等を行うことができる継続的活動の場(居場所)を構築する事業を平成16年度より実施しており、平成18年6月20日に策定された「子ども安心・安全加速化プラン」において、「問題を抱える青少年の立直りのための継続的活動の場づくり」を推進していく。

 また、就学時健診など多くの親が参加する様々な機会を活用し、全国的に開催している家庭教育講座等において、親としての在り方やしつけの在り方についての学習機会を提供してきている。併せて、子育てサポートリーダーが保健師等と連携し、子育ての悩みや問題を抱える家庭を訪問し、親に対する育児相談や地域の家庭教育・子育て等の支援に関する情報提供を行う、訪問型の家庭教育支援を実施している。



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