第1部 犯罪被害者等のための施策と進捗状況

第2章 犯罪被害者等のための具体的施策



(17) 少年被害者に対する学校におけるカウンセリング体制の充実等

 文部科学省において、少年被害者に対する学校におけるカウンセリング体制の充実等を図ることとされた。

 平成13年度からスクールカウンセラーを、同16年度から地域人材を活用した「子どもと親の相談員」を学校に配置し、各学校において関係機関や地域の人材と連携しながら、学校での教育相談体制の充実を図り、個々の状況に応じた支援を実施している。

 教職員が犯罪被害者等である児童生徒の相談等に的確に対応できるよう、大学の教職課程におけるカウンセリングに関する教育については、教職課程を有する大学への実地視察や、教職課程の認定の事前相談において、各大学においてその内容が取り扱われるよう指導している。平成18年8月には、犯罪被害者等である児童生徒に対する心のケアに関する内容を含める等各大学においてその充実を図るよう、特別支援学校制度の創設に伴う教育職員免許法施行規則の改正等に係る通知の中に併記した。

 教員に対するカウンセリングに関する研修については、生徒指導上の諸課題に対応するための指導者の養成を目的とした研修において、引き続き実施するとともに、教育委員会を対象とした各種会議において、犯罪被害者に対する心のケアの視点も含めて実施するよう促している。

 また、犯罪被害者等である児童生徒の相談等に的確に対応できるよう、教職員による相談の充実のための研修等に加え、養護教諭の資質の向上のための研修の充実を図ることとしている。

(18) 被害少年が受ける精神的打撃軽減のための継続的支援の推進

 警察において、被害少年(注5)が受ける精神的打撃の軽減を図るため、保護者の同意を得た上で、カウンセリングの実施、関係者への助言等の継続的な支援を推進することとされた。

 人格形成の途上にある少年が犯罪等により被害を受けた場合、その後の健全育成に与える影響が大きいことから、警察では、被害少年の再被害を防止するとともに、その立直りを支援するため、少年補導職員、少年相談専門職員等による指導・助言のほか、被害少年に対するカウンセリング等、継続的な支援を行っている。被害少年の支援に際しては、臨床心理学、精神医学等の高度な知識・技能や豊富な経験を有する部外の専門家を「被害少年カウンセリングアドバイザー」として委嘱し、その適切な指導・助言を受けながら支援を実施している。

 また、それぞれの地域において、保護者等との緊密な連携の下に、日常の少年を取り巻く環境の変化や生活状況を把握しつつ、きめ細かな訪問活動を行うボランティアを「被害少年サポーター」として委嘱し、これらの者と連携した支援活動を推進している。

 なお、平成17年12月、「通学路等における子どもの犯罪被害を防止するための諸対策の徹底について」を発出し、犯罪被害に遭った子どもへの支援等について指示し、平成18年5月には、少年の健全な育成に障害を及ぼす行為により被害を受けた少年に対する少年指導委員による援助等の事項を内容とする「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律」が施行されている。

(注5)「被害少年」とは、犯罪その他少年の健全な育成を阻害する行為により被害を受けた少年(20歳未満)をいう(少年警察活動規則(平成14年国家公安委員会規則第20号)第2条第7号)。

(19) 里親制度の充実

 厚生労働省において、少年被害者の保護に資するよう、里親養育援助事業や里親養育相互援助事業による里親の支援等により、里親制度の充実を図っていくこととされた。

 これまで、平成14年度に専門里親、親族里親制度を創設する等、里親制度に関する大幅な制度改正を行い、里親研修や里親養育相談等の里親支援事業を新たに創設しており、平成16年度には、児童福祉法改正により、法律上新たに里親の定義規定を設けるとともに、里親が監護・教育・懲戒に関し、児童の福祉のため必要な措置を採ることができることを明確化する等所要の改正を行い、里親の養育負担を軽減するための事業を創設している。

 また、平成16年12月に策定された「子ども・子育て応援プラン」においては、里親への子どもの委託率を平成21年度までに15%に高めること及び専門里親登録者総数を500人まで増やすことが目標に掲げられている。

 里親委託を一層推進するために、平成18年度には、児童相談所に新たに「里親委託推進員」を配置するとともに、「里親委託推進委員会」を設け、乳児院等の児童福祉施設及び里親との連携を図りつつ、施設から里親への子どもの委託を総合的に推進する里親委託推進事業を創設する。

(20) 少年被害者の相談・治療のための専門家・施設等の周知

 厚生労働省において、少年被害者の被害に対する相談・治療等を行う専門家、医療施設その他の施設等を把握し、警察とも連携してその周知に努めることとされた。

 児童相談所は、子どもに関するあらゆる相談に対応することとしており、犯罪の被害によって心のケア等を必要とする少年からの相談についても児童相談所の本来業務としている。当該児童相談所の場所や機能に関する周知は、設置主体である各都道府県、指定都市及び児童相談所設置市において、広報、パンフレット、ホームページ等により行われている。

(21) 犯罪被害者等に対する医療機関に関する情報の周知

 厚生労働省において、犯罪被害者等が利用しやすいように、医療機関の情報を周知させるとともに、関係機関において、当該情報を共有し、適時適切に犯罪被害者等に提供することとされた。

 これを踏まえ、平成18年通常国会において成立した、「良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律」により、患者等が医療に関する情報を十分に得られ、適切な医療を選択できるよう支援するために、医療機関の管理者に対し、医療機能に関する一定の情報について報告を義務化することで、都道府県が医療機関に関する情報を集約し、インターネット等で分かりやすく住民に情報提供し、住民からの相談に応じ助言を行う仕組みを制度化している。

(22) 犯罪被害者等の受診情報等の適正な取扱い

 厚生労働省において、犯罪被害者等の受診情報が医療機関や保険者から流出しないよう、個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)に基づき、医療機関や保険者に対して適切に対応していくこととされた。

 医療機関が診療情報の開示も含め個人情報を適切に取り扱うよう、「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン」(平成16年12月24日)等の関連ガイドラインとともに、個人情報保護法に基づく開示に当たっては「診療情報の提供等に関する指針」(平成15年9月12日)の内容に配慮しつつ適切に対応することについて、改めて周知を依頼する旨の通知を平成17年12月、都道府県に発出した。

 また、保険者については、「健康保険組合等における個人情報の適切な取扱いのためのガイドラインについて」(平成16年12月27日)等の関連ガイドラインを作成・通知し、個人情報保護法に基づいた適切な対応を依頼している。

 金融庁において、犯罪被害者等の保健医療に関する情報を始めとする個人情報の取扱いに関し、損害保険会社に問題があると認められる場合には、保険業法(平成7年法律第105号)に基づき、保険会社に対する検査・監督において適切な対応をしていくとされ、これまで適切な対応を行っている。



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