第1部 犯罪被害者等のための施策と進捗状況

第2章 犯罪被害者等のための具体的施策



(9) 思春期精神保健の専門家の養成

 病院、診療所、精神保健福祉センター、保健所、児童相談所等で思春期児童の専門相談等を受け入れ、各機関での活動の充実強化を図るため、厚生労働省において、医師、看護師、保健師、精神保健福祉士等を対象とした「思春期精神保健対策専門研修会」を平成13年度から開催し、その中で児童虐待や家庭内暴力に関するカリキュラムも実施している。平成18年度には、同研修を引き続き実施するとともに、医師を対象としたアドバンスコースを設ける予定である。

(10) 少年被害者のための治療等の専門家の養成、体制整備及び施設の増強に資する施策の検討及び実施

 厚生労働省において、近年、虐待を受けた子どもの児童養護施設等への入所が増えていることから、児童養護施設等に心理療法担当職員等を配置する等適切な援助体制を確保してきた。平成16年度には、全施設に家庭支援専門相談員や被虐待児個別対応職員を配置する等大幅な拡充を行った。平成18年度には、これまで児童養護施設、乳児院等に非常勤として配置されてきた心理療法担当職員を常勤化することにより、より濃密に入所者への心理的ケアを行うこととし、併せて、児童自立支援施設についても常勤の心理療法担当職員を配置することにより、支援体制の充実を図っている。

 また、児童相談所においては、諸般の業務遂行のため、所長、次長及び各部門の長のほか、教育・訓練・指導担当児童福祉司(スーパーバイザー)、児童福祉司、相談員、精神科を専門とする医師(嘱託も可)、児童心理司、心理療法担当職員等が配置されている。児童相談所における児童精神科医の配置状況は平成17年度では51名であったところ、平成18年度においては57名(速報値)となっている。

 さらに、平成17年から「子どもの心の診療医の養成に関する検討会」を開催し、小児科及び子どもの診療に携わる精神科医に、子どもの心身の健康に関する基本的な知識や技能を修得させるための方策について検討している。

(11) 犯罪被害者等への適切な対応に資する医学教育の促進

 文部科学省において、平成13年3月に「医学・歯学教育の在り方に関する調査研究協力者会議」がとりまとめた「医学教育モデル・コア・カリキュラム」(注4)に基づく各大学におけるカリキュラム改革を促進しており、犯罪被害者等基本計画の策定を受けて、「国立大学医学部長、歯学部長及び病院長会議」等において同計画の内容を説明するとともに、各大学におけるカリキュラム改革の取組を要請している。

(注4)各大学のカリキュラム改革に資するよう、平成13年3月に文部科学省の「医学・歯学教育の在り方に関する調査研究協力者会議」において、すべての医学生が卒業までに最低限習得すべき教育内容をガイドラインとして示したもの。

(12) 犯罪被害者等に関する専門的知識・技能を有する臨床心理士の養成

 文部科学省において、財団法人日本臨床心理士資格認定協会に委嘱している「臨床心理士の資質向上に関する調査研究」の中で、犯罪被害者等に対する支援活動等についての調査研究を実施し、その結果に基づき、同協会等に働きかけ、犯罪被害者等に関する専門的な知識・技能を有する臨床心理士の養成及び研修の実施を促進することとされた。現在、同協会と事業の具体的内容について検討中である。

(13) 検察官等に対する研修の充実

 検察官等に対する研修において、「犯罪被害者支援」等のテーマの講義を行うとともに、検察官に市民感覚を学ばせるため犯罪被害者支援団体等公益的活動を行う民間団体や民間企業に一定期間派遣する研修を実施したり、地方検察庁に配置されている被害者支援員を対象とする研修を実施している。

 また、検察官等に対し、検察庁内外における被害者支援の現状等につき必要な情報提供を随時行っている。

(14) 法科大学院における教育による犯罪被害者等への理解の向上の促進

 文部科学省において、平成18年2、3月に、法科大学院制度の一層の充実のための調査審議を行う中央教育審議会大学分科会「法科大学院特別委員会」及び全法科大学院が加盟する法科大学院協会総会において、犯罪被害者等基本計画の趣旨及び法科大学院に関連する内容等について説明・周知した。

(15) 児童虐待に対する夜間・休日対応の充実等

 厚生労働省において、児童虐待に対する夜間・休日対応の充実等を図ることとされた。

 虐待件数の増加や困難事例の増加、また児童福祉法の平成16年の改正により市町村からの相談等連携強化が必要であること等を踏まえ、児童相談所において夜間休日を問わず、いつでも相談に応じられる体制の整備を図るため、24時間・365日体制対応協力員を配置する「24時間・365日体制強化事業」を実施している。

(16) 少年被害者の保護に関する学校及び児童相談所等の連携の充実

 文部科学省及び厚生労働省において、学校と児童相談所等少年被害者の保護に資する関係機関との連携を充実することとされた。

 関係機関の連携については、児童福祉法の平成16年の改正により、要保護児童等に関し、関係者間で情報の交換と支援の協議を行う機関として「要保護児童対策地域協議会」を法的に位置付けるとともに、その運営の中核となる調整機関を置くことや、地域協議会の構成員に守秘義務を課すこととされた。

 この法律の一部改正を受けて、厚生労働省、警察庁、法務省及び文部科学省が連携して、「要保護児童対策地域協議会設置・運営指針」を作成し、平成17年2月、各都道府県・指定都市教育委員会等に通知し、虐待を受けている子どもを始めとする要保護児童の適切な保護を図るために、関係機関との適切な連携について周知している。

▼要保護児童対策地域協議会の設置

要保護児童対策地域協議会の設置

出典:内閣府犯罪被害者等施策ホームページ
(第4回「支援のための連携に関する検討会」厚生労働省資料)



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