1.犯罪被害者等の抱える様々な問題

1-2 具体的に困難な状況

(2)生活上の問題

仕事上の困難

精神的・身体的被害のために、仕事上で小さなミスが増えたり、仕事の能率が落ちたり、職場の同僚との関係がうまくいかなくなることがあります。また、治療のための通院や捜査・裁判手続のためのやむを得ない欠勤などが続くと、周囲に気兼ねをすることになりがちです。
このような状況について職場で理解を得られず、仕事を辞めざるを得ない場合もあります。

不本意な転居など住居の問題

犯罪被害のために、転居をしたり、自宅以外に居住場所が必要になることがあります。その理由は、様々です。

経済的な困窮(問題)

直接的被害のほか、犯罪被害により生計維持者を失う場合や犯罪被害による受傷・精神的ショックのため生計維持者の就業が困難になる場合など、収入が途絶え、経済的に困窮することがあります。生計維持者が死亡した場合、相続関係が確定しないため、その銀行口座は凍結されることがあり、そうなると遺族は現金を引き出すことができず、当面のお金の工面に困ることになります。
犯罪被害直後には、警察や病院などに急行するためのタクシー代、亡くなった場合の葬祭費などの当面の出費、治療のための医療費などが発生します*3。さらに、長期療養や介護が必要な場合には、将来にわたって経済的に負担がかかることもあります。
また、裁判所に出向くたびに交通費や、場合によっては宿泊費がかかるほか、訴訟記録の写しを得るための複写代、弁護士を依頼した場合の費用など、予期しない出費が必要となる場合もあります。
たとえ損害賠償請求に係る民事裁判で勝訴しても、加害者に支払い能力が無い場合には、損害賠償金を受け取ることはできず、何の補償も受けることができないおそれがあります。

家族関係の変化

犯罪被害を受けた本人ばかりでなく、家族もショックを受けて、お互いを支えあうという精神的な余裕を失いがちです。また、家族各人のストレスの感じ方、被害についての捉え方や考え方はそれぞれで、感情の表し方や対処方法も異なるため、家族の中でいさかいが生じたり、家族関係に危機をもたらしたりします。場合によっては、家族崩壊に至ることすらあります。
犯罪被害者が子どもで、きょうだいがいる場合には、親がきょうだいに十分な愛情を注ぐ余裕がなくなり、後にきょうだいへの影響が出てくる可能性もあります。

*3 これまで、犯罪被害に関しては医療保険が利用できないとの誤解もありましたが、法律上、医療機関が保険診療を拒否することはできません。もしそのような事例があれば、地方厚生(支)局に報告してください。
 また、犯罪被害等により収入が途絶え、国民健康保険料(税)の支払いが難しい場合は、住居地の市町村に相談してください。