3.インタビュー調査結果の整理・分析

3-4.施策の評価・フォローアップの方法及び地域への波及効果

(1)施策の達成状況や結果等を評価・フィードバックする手法

 ほとんどの地方公共団体においては取組自体を始めたばかりであり、個々の事業に関する評価・フォローアップまで至っていない状況である。今後、窓口での相談業務など取組を進める中で、様々な課題が明らかになってくるものと思われる。

[1] 各種会議等の活用

 インタビュー調査の結果から、担当者からは現段階において、被害者支援連絡協議会や庁内連絡会義、有識者による検討会議などの仕組みを活用していく考えが聴かれた。

(具体的な事例)
  • 都道府県警察本部や警察署単位で設置されている被害者支援連絡協議会において、1年に最低1回は総会が開催されており、この機会を活用して当該施策の進行状況とその評価、次年度以降へのフィードバックする点などについて議論する場を設ける(秋田県など)。
  • 安心・安全なまちづくりについての取組や、当該施策に関する計画・指針等を検討する際に設置した有識者による検討委員会等を活用する(京都府など)。

[2] 現場の声

 窓口担当者等が被害者等の相談業務をはじめ、様々な支援を行っている場合には、支援の現場を通じて多様な課題なども生じてくることから、これらを次の支援に活かすために現場の声が上がった時点で、解決に向けて迅速に検討するものである。

(具体的な事例)
  • 小規模な団体においては、問題等が発生した際に直ちに関係部署の担当者を集めて対応を検討する慣習が出来上がっているところも散見できるため、当該施策においても特に評価等を行う組織などを設けずに、現場において声が上がった時点で適宜関係者を集めて結果報告や評価、意見交換などを実施していく(秋田県藤里町、埼玉県嵐山町)。
  • 現場で被害者等と直接接して活動するコーディネーターの声を活かし、何か問題が生じた場合には迅速に支援関係者間で検討・改善を行うなど、迅速な対応を実施していく予定である(京都府)。

(2)施策の実施前後における地域の情勢変化

[1] イベント開催による住民意識の高まり

 現段階では、住民の当該施策に対する意識は高いものとはいえない状況であるが、イベント等を通じて参加者へのアンケート調査などを実施したところ、住民の関心の高さを感じ、今後の取組に推進の必要性を再認識した団体も見られた。

(具体的な事例)
  • 広報啓発の一環で実施される犯罪被害者等に関するイベント開催の際に、参加者へのアンケート調査や感想を募ったところ、当該問題における住民の意識は予想以上に高まってきている、あるいは高まる可能性を秘めていることを実感し、改めて施策推進の必要性を認識した(熊本県など)。

[2] 町民の犯罪に対する意識変化

 施策の効果とは直接の関係性はないが、これまで平和であった小さな町の中で地域全体を揺るがすような凶悪事件が発生した時に、地域住民の意識に変化をもたらす事態が起きることが窺えた。

(具体的な事例)
  • これまで事件のない地域であったことから、"犯罪"というものに対する意識が低い状況にあった。しかし、現実に地域の中で凶悪犯罪が起きたことを契機に、それ以降、地域住民の犯罪に対する意識が高まり、ちょっとした周辺住民の変化等を察知し、行政等への通報が増えた。通報の内容は、家庭内暴力、児童や高齢者虐待、DV等今までなかったものが出てくるようになった(秋田県藤里町)。

[3] 周辺地方公共団体からの視察や問い合わせの増加

 先駆的な取組を実施すると周辺をはじめ多くの地方公共団体の関係者やマスコミから、問い合わせや視察の要請が増加する。

(具体的な事例)
  • 早くから当該施策に関連する条例等を制定し、先駆的・機動的取組を実施することでモデル的な存在となっている団体では、複数の地方公共団体からの問い合わせや、視察の申し入れ、講演依頼などがあり、マスコミにも取り上げられた(埼玉県嵐山町、東京都杉並区)。

[4] 都道府県における計画策定等による管下市町村への効果

 広域的行政圏域をカバーする都道府県がいち早く当該施策に対して取り組むことは、管下市区町村にとっては、ひとつのモデルとなると共に、役割も明確になってくることから、都道府県の取組への効果が窺える。

(具体的な事例)
  • 県において基本計画を策定し、その後、管下市町村に対して積極的に施策への取組を要請した結果、条例の制定が拡がり、施策担当窓口部局も全ての市町村で確定している(秋田県)。