3.インタビュー調査結果の整理・分析析

3-3.犯罪被害者等施策に関する各種取組

(1)総合的な対応窓口の設置・運営

[1] 対応窓口の主な機能

 多くの地方公共団体の総合的な対応窓口において、十分に被害者等の話を聴いた上で適切な庁内関係部局や関係機関・団体への橋渡しを行っている。

 また、地方公共団体によっては窓口において、裁判所をはじめ関係機関への付添いや、自宅訪問、各種申請手続の補助、ヘルパーの手配・派遣、さらに支援金等の条例が制定されている場合には、支援金の申請手続など、各種の直接支援も行っているところもある。

(具体的な事例)
  • 区民が地方で被害に遭ったため、地方の裁判所への付添いを行った。今後も被害者からの付添い要請があれば裁判所などへの付添いを行う(東京都杉並区)。
  • 被害者等の心情を汲むと、事情によっては、支援金支給の申請手続の場合でも来庁しなくてもいいように、郵送による申請・職員が自宅へ出向くなど、町として出来る限りきめ細かな対応を心がけている(埼玉県嵐山町)。

[2] 対応窓口設置・運営にあたっての工夫・留意している点

 被害者等が来庁した際に別室で対応する、専用電話を設置するなど、被害者等が安心して相談できるハード面での環境づくりに取り組んでいる地方公共団体が多く見られた。

 また、支援ハンドブックの作成に着手したり、相談機関同士の連絡会議を開催したり、窓口担当者に継続的に研修を受けさせるなど、関係機関・団体との連携、窓口担当者による二次的被害の防止に配慮している事例も見られた。

 さらに、住民への窓口の周知についても、案内看板を掲げて窓口を明示するほか、広報誌やホームページに掲載するなど取り組んでいる事例も見られた。

専用電話を設置した個室を設け電話相談を受けるようにしている(東京都杉並区)
(具体的な事例)
  • 窓口表示のあり方については、被害者等が訪問した時点で周囲から被害者等と特定されてしまうとの御遺族からの声を受け、敢えて窓口表示をしていない(東京都杉並区)。
  • 住民へ周知することも兼ねているので、庁舎1階ロビーに犯罪被害者等総合相談窓口を開設している(神奈川県)。
  • 電話をした際に受け手(対応者)側の周囲の声が入らないように配慮し、専用電話を設置した個室を設け、そこで電話相談を受けるようにしている(東京都杉並区)。
  • 窓口担当者として適切な対応が出来るよう、関係機関・民間支援団体等が開催する研修等に参加している(大阪市、大阪府など)。
  • 窓口担当者はある程度の知識等が必要となることから、相談窓口を民間支援団体に委託している(群馬県)。
  • 窓口担当者として、被害者等と接する経験を持つ警察OBを非常勤職員として雇用し、「支援アドバイザー」として対応してもらっている(滋賀県)。

[3] 窓口の相談実績

 実際の窓口における相談実績としては、大都市部で比較的多くなっているものの、窓口開設以来、相談件数がほとんどない状況も見られる。

 しかしながら、多くの団体では窓口を開設して間もないことから、住民への周知や都道府県警察との連携協力を図りながら、今後の状況を見守っている状態にあると思われる。

(具体的な事例)
  • 相談窓口に寄せられる相談には、一概に犯罪被害とは言えず、支援に結びつかない相談も多い。しかし、こうした相談も十分に話を拝聴し、できる範囲で対応方法を教示するなどの対応をしている(神奈川県など)。
  • 実際に支援の手伝いをさせてもらった際に、被害者から「ありがとう」と言われて感謝され嬉しかった(埼玉県嵐山町)。
  • 警察には差し支えのない範囲での被害者情報の提供を求めているが、警察からの連絡や情報が入ってこないので支援ができない(都道府県)。

(2)広報啓発

[1] 印刷物等の作成・配布

 当該施策に係る広報啓発手段としてパンフレットやポスター、手記などの印刷物等の作成は、多くの場面で利用されており、作成したものは公的施設等や街頭で一般の人々に配布され、取組の周知や理解促進などに役立っている。

(具体的な事例)
  • 被害者等からの要望で手記を作成したところ、学校関係者から「総合学習の時間に活用したい」との問い合わせがあり、他の住民団体などからも好評であった(秋田県)。

[2] イベント等の開催

 地域住民への理解を促進させる有効な手段として、被害者本人やその遺族等による講演会、被害者等に係るパネル展、及び民間支援団体と協力してシンポジウム等を開催している。

(具体的な事例)
  • 平成18年度から設けられた「犯罪被害者週間」(11月25日~12月1日)において関係機関・団体等と連携・協働したシンポジウム等を実施しており、今後も啓発イベントを開催していく予定である(大阪府、熊本県など)。

(3)人材育成

 当該施策を進めていくためには、ある程度の知識等を有する人材が求められる。アンケート調査の自由回答でも、近年の行財政改革の影響で人材不足が顕在化しており、特に小規模な団体では、職員が多くの業務を兼務している状況も見られることから、庁外における新たな人材の育成が求められている。

(具体的な事例)
  • 杉並区では区民を対象とした「すぎなみ地域大学」を開講しており、その中のカリキュラムに犯罪被害者支援員(入門編・実践編)を養成する講座を開き、修了者を支援員として登録している。支援員は、現在40名となっており、担当職員とともに広報啓発活動をはじめ、裁判所等への付添いや寄り添い(話し相手)の支援をお願いしている(東京都杉並区)。
  • 神奈川県では、県が実施しているコミュニティカレッジの中に犯罪被害者支援ボランティア養成講座を設け、民間支援団体に講座の企画・実施を依頼して人材育成を始めている(神奈川県)。

(4)地方公共団体独自の取組

 地方公共団体独自の取組としては、以下のようなものが挙げられる。ヘルパーの派遣や公営住宅の斡旋、カウンセラーの派遣などは比較的多くの団体で実施されている。その中で担当部局と専門家、関係機関等がチームを編成して総合的支援を行う新たな取組も始まっている。

(具体的な事例)
  • 家事や育児を支えるヘルパーの派遣(埼玉県嵐山町など)
  • 暮らしの基盤を支える公営住宅の優先入居・一時使用(熊本県など)
  • 民間被害者支援団体との協働によるカウンセラーによる精神的支援(神奈川県など)
  • 犯罪被害者等が、再び平穏な生活を営むことができるよう、公的・民間機関が連携した犯罪被害者サポートチームを設置、臨床心理士や社会福祉士で自身も被害者遺族である方などをコーディネーターとして配置し、支援機関への橋渡しなどを実施。(京都府、下図参照)
図表:京都府犯罪被害者サポートチームの体制イメージ(詳細は省略)