2.アンケート調査結果の整理・分析

2-8.犯罪被害者等施策に関する課題・意見等

[1] 犯罪被害者等施策を進めるにあたり、課題となっている事項

 全ての地方公共団体について、犯罪被害者等施策を進めるにあたって課題となっている事項について尋ねたところ、都道府県・政令市からは延べ81件、政令市を除く市区町村からは延べ324件の自由回答を得た。その中から主な課題を抜粋したものは、以下のとおりである。

◆施策の総合的な推進に向けた庁内関係部局等への働きかけ

○都道府県・政令市
  • 人事異動などの中の進捗であり、スムースな施策展開を図るまで一定の期間を要する。
  • 省庁からの縦の連絡を徹底すれば庁内の横の連携がより緊密になると考える。
  • 横断的な取組が求められるため、総合的な推進を行う部署の設置が必要。
  • 庁内関係部局及び関係機関・団体等との連携協力の確保。
○市区町村
  • 庁内関係部局との協議が不十分、協議に至る人員が不足している。
  • 財政的・人的余裕もなく、施策に対する庁内の理解も薄く、各部局への協力を仰ぐことは困難である。
  • 既存施策で対応できることは多いが、各部局とも被害者対策との意識は持っていない。
  • 被害者等の把握が警察からの情報提供によること、犯罪件数が少ないためノウハウも少なく働きかけが出来ない。
  • 地元警察署との連携が密でなければ、効果ある対策は打てない。
  • 被害者等情報について警察以外知りえる状況ではなく、タイムリーに共有できるネットワーク構築には大きなハードルがある。
  • 支援内容が多岐にわたるため、何処まで支援対象とするか理解を得ることが課題。
  • 被害者情報が新聞等しかなく、具体のことがつかめないため、働きかけも出来ない。
  • 施策を進めるにあたって情報を共有すると共に、専門的知識が重要と考えるため、事務分掌の見直しも検討する必要がある。

◆都道府県と市区町村との間の連携協力(都道府県のみ)

  • 法律及び基本計画で県と市町村の役割が整理されていないため県が市町村に働きかけ難い。
  • 何を行うか模索しており、より具体的な支援に係る連携協力を進めることが課題。
  • 市町村担当者の多くが兼任で支援の事例も少ないため、取組が具体化しない。
  • 窓口の設置促進、注意喚起。

◆総合的な対応窓口における体制の整備、関係機関・団体との橋渡し

○都道府県・政令市
  • 専用窓口は警察と民間支援団体にあり、知事部局は相談を受ける十分な体制に無く問い合わせも無い、知事部局の役割をその都度検討していく。
  • 県民に対する窓口の周知と、民間支援団体との連携・協力体制の充実が課題。
  • 専門知識を有する民間支援団体への委託を検討しているが、現状では受け皿として人的・財政的にも十分でないため橋渡しできない。
  • 担当職員の人的確保、窓口での対応範囲・個人情報の取扱・相談スペースの確保・財源の確保。
○市区町村
  • 被害者等が相談に訪れた際に、支援内容や関係書類の説明などができる体制づくり。
  • 財政的な問題、対応マニュアルの未整備、相談等に対応できる知識・技能を有する人材の不足。
  • 市の所管する事業ごとに被害者等に対する支援をスムースに対応できるような体制を整備すること。
  • 専門機関への問い合わせや照会がスムースに出来るようなマニュアル作成が必要。
  • 需要や実態が把握できていないのでどの様な体制を整備したらよいか不明、また個人情報保護から他機関から提供される情報は、対象者の実情を把握できる情報が取得しがたいのではないか。
  • 公務員の増員について世論の理解が得られない厳しい状況で人材を確保し体制を整備することは難しい、対象となる被害者等の幅も広くすぎて戸惑っている。
  • 小規模地方公共団体において支援対象者の有無や実態に応じた支援策の範囲など検討する課題も多い。
  • 個人プライバシーの問題もあり、なかなか地域で相談を受ける機運になっていない。
  • 狭い地域なのでプライバシーの守り方が課題である。

◆地域住民の理解・協力の促進

○都道府県・政令市
  • 自主防犯活動団体を活用するなどして、地域に根ざした施策展開を図ることとしているが、今後は具体的な手法について課題になると考えている。
  • 県と市町村の連携による広報啓発活動の強化。
  • 被害者等支援を進める上で、市民に求められる役割及びそれを助長する取組の検討、市民理解の増進を図るための広報啓発活動のあり方。
○市区町村
  • 地域住民が会員になって支援するボランティア団体の育成。
  • 被害者支援施策全般に関する理解・認知度の普及のための手段・手法の検討。
  • 危機意識を醸成させるための広報啓発活動の必要性。
  • 行政サイドでしっかりとしたサポート体制とメンタル面でのサービス提供が出来なければ却って逆効果となるのでなかなか促進できないでいる。

◆その他

○市区町村
  • 支援を必要とする犯罪被害者がほとんどいない状況の中でどの様に進めていくか。
  • 地方公共団体が実施すべき範囲が不明確である。
  • 担当職員が継続して知識等を習得する機会がもてない。
  • 事例の積み上げがないのでどの様な支援が必要なのか予測がつかない。
  • 対象者の把握が全く出来ないので、施策の必要性が感じられない。
  • 近隣市町村でモデルケースになるようなところがない。

[2] 犯罪被害者等施策に関して、国・都道府県に対する要望・意見等

 全ての地方公共団体について、犯罪被害者等施策に関して国や都道府県に対する要望・意見等について尋ねたところ、都道府県・政令市では11団体から、政令市を除く市区町村では180団体から自由回答を得た。その中から主な意見等を抜粋したものは以下のとおりである。

○都道府県・政令市
  • 都道府県と市町村の連携のあり方のモデル案を示して欲しい。
  • 都道府県・市町村で活用できる効果的な啓発コンテンツを提供してもらいたい、民間支援団体への管理費を含めた財政的支援について検討して欲しい。
  • ハンドブックのモデル案を出来るだけ早く示して欲しい。
○市区町村
【国や都道府県・警察での対応を求めるもの】
  • 法制度が先行している状況なので、先ず国・都道府県の負担で専門家等を市町村に配置して体制確立を実施して欲しい。
  • 体制づくりにおいて専門人材を派遣してもらえるとスムースに進むと思う。
  • 市町村では、当該相談以外の相談も多く、担当も多岐にわたるので国・都道府県で民間委託を考えて欲しい。
  • 全国には民間支援団体が設置されており、それらを核としたネットワークを確立し、国からそれら団体へ委託により施策を行った方が効率的である。
  • 同一市内に民間支援団体があり専門相談員も配置しているため新たな総合窓口を設ける必要性はない。また、当該団体に補助金を支出している本体が窓口を設ければ補助金支出の必要がなくなり、国の一貫性がなくなるのではないか。
  • 現状で相談等は微小であることが予想され、費用対効果の面で市町村レベルでの対応は難しいことから、都道府県レベルでの対応が望ましい。
  • 都道府県が地方事務所に窓口を常設し、市町村へ移動窓口を設置してみてはどうか。
  • 小規模町村にある程度専門性を要する当該支援のための窓口設置は、ケースも少なく不合理であり、県市区レベルで対応して欲しい。或いは、地方公共団体間で格差が生じないように県がモデルを示し補助事業により実施するなど統一性を図ってほしい。
  • 町村ごとではなく、周辺町村数箇所で策定が望ましいと思う。
  • 小規模町村では、専門性の確保が難しい。町村が取り組むよりも警察を有効活用できないか。
  • 個人情報保護の観点からも、情報とノウハウは警察に集約する方が良いと思われる。
  • 被害者に係る情報は警察のみにあり、地方公共団体は受動的立場であることから自主的に展開しにくい。
【施策等に関する情報提供等を求めるもの】
  • 当該施策を進めるにあたり何ら説明を受けておらず、どの様に実務を運営していくのか無知である。
  • 犯罪被害者に理解のある各種医療機関及び専門家等のリストの作成。
  • 関係機関の連携と言うが、警察署単位で設置している被害者支援ネットワークがあることも今回のアンケートで初めて知った次第で警察の担当課すら知らなかった。まず、住民への周知の前に市町村への周知が必要である。
  • 民間支援団体の負担金について、法令外負担金になっているにもかかわらず半ば半強制的に支出を求められる、活動内容の問い合わせをしても情報提供されないなど不明瞭な点が多い。
【犯罪被害者等の確認に関するもの】
  • 相談者が犯罪被害者であるかどうかを判断することが難しい場合が多い。自ら名乗らないケースも考えられこうした被害者の掘り起こしは難しいのではないか。
  • 見舞金条例を設けているが、事実確認に苦慮している。公安委員会の通知の写しによって確認しているが、国の給付がされなかった場合書類が入手できないため、裁判傍聴などを行った経緯がある。検察庁において事件の内容については公開してもらえないため、事実確認書類の入手方法について指導・助言が欲しい。
【その他地方公共団体における施策の進め方に関するもの】
  • 国のように細分化された業務を小さな町村が実践することは不可能で、既存部署がケースに応じて対応するしか方法はない。
  • 住民の相談業務は市制施行当時から実施しており、現行制度上で被害者支援になる施策への重点的配慮を行うだけでも効果があると考える。
  • 実際に被害者支援を理解し実行するための土台が確立していなければ本当の支援とはいえない。条例などを作り社会的な風潮をとして理解を呼びかけることは可能だが、現場レベルで早急な対応は困難である。
  • 各相談窓口の担当と調整が重要にもかかわらずそれが出来ていないため、形だけの窓口になってしまう。
  • 当該施策は居住地に関係なく、一定の支援が受けられるようにすることが基本だと思う。
  • 一律的な啓発も必要に思われるが、都市部と農村地域の社会状況も違い活動のありかや方法も違ってくると思われる。
  • 報道等のあり方には問題を感じており、被害者等のプライバシー保護という点でガイドラインがあっても良いのではないか。
  • 被害者側だけでなく、加害者側の施策も実施することは出来ないか。犯罪を加害・被害と総体的に見ていくことが必要ではないか。