第1章 国際化社会における警察の役割

~国際化の進展に対応する警察活動~

 近年における交通、通信手段の著しい発達に伴い、人、物及び情報、文化の各面における国際交流が活発化し、世界各国の国際的相互依存関係がますます深まるとともに、国際化が進展する過程において、我が国の国際的地位も飛躍的に向上してきた。例えば、昭和60年の日本人出国者数は約495万人、外国人入国者数は約226万人となり、10年前と比べて、それぞれ約2倍、約3倍となったほか、60年の輸出額、輸入額はそれぞれ約3倍、約2倍に、国際電話取扱数は約11倍にも増加した。また、60年の我が国のGNPは、世界全体の約1割を占め、米国、ソ連に次いで世界第3位の地位を占めるに至っている。現在、我が国は、社会のあらゆる分野において国際化の影響を免れることができず、国際化の進展がもたらす様々な事象への対応を迫られているほか、国際化社会において、その地位に見合う役割を果たすことが強く求められているといえよう。
 このような国際化の進展に伴い、警察活動の面でも新たな対応が要求されるようになってきた。まず、諸外国の警察機関等との緊密な協力、連携が、我が国の治安を維持していく上で不可欠となってきたことである。例えば、61年における来日外国人(注)による犯罪の検挙件数は、10年前と比べ約3倍にも増加しているほか、国外における保険金目的殺人事件、覚せい剤等の薬物やけん銃の密輸入事件等、諸外国との協力、連携なくしては解決することのできない様々な犯罪が増加している。ま た、いわゆるじゃぱゆきさんの増加や外国の有名ブランド商品等を模造した不正商品のはん濫等、国際的な対応を必要とする警察事象も数多く出現している。このため、警察では、治安維持のための諸施策を国内において実行するにとどまらず、国際刑事警察機構(ICPO)との密接な連絡をはじめ、諸外国の警察機関等との各種国際会議の開催、具体的事件の解決に向けた情報、資料の交換等の活動を活発に行っているが、今後とも、諸外国との協力、連携の下に、有効な諸施策を講じていくことが必要である。
 また、我が国の治安は、先進自由主義諸国の中で有数の水準にあると評価されており、諸外国から、警察行政の分野における技術援助等の協力に大きな期待が寄せられている。このため、警察では、鑑識技術、情報通信技術のほか、交番制度、交通安全教育制度等の技術や制度を諸外国に紹介し、その導入に協力しているが、今後とも、警察行政の分野において、我が国の国際的地位に見合う協力を積極的に行っていくことが必要である。
 今後ますます国際化が進展していく中で、以上のような観点から、警察では、諸外国との協力関係を更に緊密化することなどにより、国際的な広がりを有する警察事象に対処して有効な諸施策を推進していくとともに、諸外国への技術協力の強化、人的交流の推進等を通じて、世界各国の治安水準の向上に寄与することとしている。
(注) 来日外国人とは、我が国にいる外国人のうち、いわゆる定着居住者(永住権を有する者等)、在日米軍関係者、特定在留資格第2号該当者(出入国管理及び難民認定法施行規則第2条第2号に該当する者)及び在留資格不明の者以外の者をいう。


目次  次ページ