特集 交通安全対策の歩みと展望

3 新たな技術の活用

今後、なお一層の交通事故防止を図っていくためには、これまで実施してきた各種施策の深化はもちろんのこと、交通安全の確保に資する先端技術を積極的に取り入れた新たな時代における対策に取り組む必要がある。

特に、情報通信技術は、人間の認知や判断等の能力や活動を補い、また、人間の不注意によるミスを打ち消し、さらには、それによる被害を最小限にとどめるなど、交通安全に大きく貢献することが期待されており、ITSの推進にも活用されている。

また、自動運転の技術は、交通事故の多くが運転者のミスに起因していることを踏まえれば、交通安全の飛躍的向上に資する可能性があると考えられるほか、交通渋滞の緩和、環境負荷の低減、高齢者等の移動支援等、従来の道路交通社会の抱える課題の解決に大きく資するものとなることが考えられる。一方、運転者が存在しない形態の自動運転を実現する自動車は、これまで一般に理解されている「自動車」とは全く異なったものとなることから、その導入に当たっては、社会的受容性を踏まえつつ、制度の在り方を検討する必要がある。さらに、複数の車両を電子連結させる技術を活用した隊列走行や、電気通信技術を活用して車両外から操作する遠隔操縦を始め、様々な形態の自動運転の早期実現に向けた技術開発が今後更に活発化することが予想されることから、その具体的形態に応じて、国際条約との整合性を図りつつ、交通の安全と円滑を確保するための措置を講ずる必要がある。

そこで、警察庁では、引き続きITSを推進し、プローブ情報の活用を含む最先端の情報通信技術等を用いて交通管理の最適化を図るとともに、自動運転に関する具体的な技術開発の方向性を常に確認しながら、導入過程における安全確保を図りつつ、法制度面の検討を含め、自動運転の段階的実現に向けた取組を推進することとしている。

技術開発は日進月歩であり、警察では、刻々と変化する情勢を的確に捉え、新たな技術を活用しながら、将来を見据えた効果的な交通安全対策を講ずることによって、世界一安全な道路交通の実現を目指していく。



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