第6章 公安の維持と災害対策

第2節 公安情勢と諸対策

1 オウム真理教の動向と対策

(1)オウム真理教の動向

オウム真理教(以下「教団」という。)は、麻原彰晃こと松本智津夫への絶対的帰依を強調する主流派(「Aleph(アレフ)」)と松本の影響力がないかのように装う上祐派(「ひかりの輪」)を中心に活動している。

主流派は、依然として松本を「尊師」と尊称し、同人の「生誕祭」を開催しているほか、肖像写真を拠点施設の祭壇に飾るなど、同人への絶対的帰依を強調する「原点回帰」路線を徹底させている。こうした中、松本の妻が二男の教団復帰を画策し、これに反対する三女が全国の幹部信者に復帰反対を訴えたことに端を発し、内紛が生じている。

一方、上祐派は、同派のウェブサイトに旧教団時代の反省・総括の概要を掲載して、「松本からの脱却」を強調するなど、松本の影響力がないかのように装って活動しているほか、著名人との対談やマスコミ取材を積極的に受け入れるなどし、「開かれた教団」や組織の刷新のアピールに努め、団体規制法(注)に基づく観察処分の適用回避に全力を挙げている。しかし、その実態は依然として、松本及び同人の説く教団の教義を基盤としているものと認められる。

なお、平成27年1月、公安審査委員会は、教団に対し、現在も無差別大量殺人行為に及ぶ危険性があるなどとして、団体規制法に基づき、公安調査庁長官の観察に付する処分の期間を3年間(30年1月末まで)更新する決定を行った。

注:無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律
 
図表6-1 オウム真理教の拠点施設等(平成27年12月31日現在)
図表6-1 オウム真理教の拠点施設等(平成27年12月31日現在)

(2)オウム真理教対策の推進

警察は、無差別大量殺人行為を再び起こさせないため、引き続き、関係機関と連携して教団の実態解明に努めるとともに、組織的違法行為に対する厳正な取締りを推進しており、平成27年7月、観光庁長官等の登録を受けずに旅行業を営んだとして、旅行業法違反(無登録営業)で上祐派出家信者1人を検挙した(警視庁)。

また、地域住民の平穏な生活を守るため、教団施設周辺の地域住民や関係する地方公共団体からの要望を踏まえるなどして、教団施設周辺におけるパトロール等の警戒警備活動を行っているほか、地下鉄サリン事件等教団による一連の凶悪事件に対する記憶の風化を防止するとともに、教団の現状について適切な理解を得るため、各種機会を通じ、教団の現状等について広報活動を行っている。

 
教団施設周辺における警戒警備活動状況
教団施設周辺における警戒警備活動状況


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