第3章 サイバー空間の安全の確保

第3章 サイバー空間の安全の確保

第1節 サイバー空間の脅威

1 サイバー空間をめぐる脅威の特徴

インターネットが国民生活や社会経済活動に不可欠な社会基盤として定着し、今や、サイバー空間は国民の日常生活の一部となっている。こうした中、インターネットバンキングに係る不正送金事犯等のサイバー犯罪(注1)が多発しているほか、重要インフラ(注2)の基幹システム(注3)を機能不全に陥れ、社会の機能を麻痺させるサイバーテロ(注4)や情報通信技術を用いて政府機関や先端技術を有する企業から機密情報を窃取するサイバーインテリジェンスといったサイバー攻撃が世界的規模で頻発するなど、サイバー空間における脅威は深刻化している状況にある。平成26年中は、インターネットバンキングに係る不正送金事犯や標的型メール攻撃等における手口の悪質・巧妙化や、悪質な中継サーバを始めとするサイバー空間における犯罪インフラの存在が確認された。また、個人がウェブサイトからダウンロードした銃の設計図を基に3Dプリンタを用いて手製拳銃を製造する事件が発生するなど、サイバー空間とつながりを持ち、犯罪のツールとして悪用される危険をはらんだ新たな技術・サービスの出現や、不正ログイン攻撃、インターネットを通じた私事性的画像記録の提供による被害等、インターネットの利用によって犯罪に巻き込まれるリスクの拡大といった特徴もみられた。警察では、このようなサイバー空間をめぐる脅威の情勢を的確に見定め、適切な対策を講じていくこととしている。

 
図表3-1 サイバー空間をめぐる脅威
図表3-1 サイバー空間をめぐる脅威
注1:高度情報通信ネットワークを利用した犯罪やコンピュータ又は電磁的記録を対象とした犯罪等の情報技術を利用した犯罪
注2~4:128頁参照
注5:Distributed Denial of Serviceの略。特定のコンピュータに対し、複数のコンピュータから、大量のアクセスを繰り返し行い、コンピュータのサービス提供を不可能にするサイバー攻撃

事例

26年11月、米国ソニー・ピクチャーズ・エンターテインメントが、不正プログラムによるシステムの破壊を伴うサイバー攻撃を受けたことが判明した。本攻撃により、数千台のコンピュータが動作不能となり、同社の企業活動が阻害されるとともに、従業員の個人情報等が窃取された。FBI(注1)は、本攻撃で使用されたツールが、25年3月に発生した韓国の銀行等に対するサイバー攻撃事案(注2)において使用されたものと類似していることや、不正プログラム内に記録されていたIPアドレスと北朝鮮のインフラに関連がみられることなどから、北朝鮮政府が本件攻撃に責任を有すると結論付けたことなどを発表した。

注1:Federal Bureau of Investigation(米国司法省連邦捜査局)の略
注2:韓国政府は北朝鮮の関与を指摘している。
 
サイバー攻撃を受けたコンピュータに表示された画像
サイバー攻撃を受けたコンピュータに表示された画像


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