第4章 組織犯罪対策 

警察活動の最前線

暴力団を野放しにしない

前 熊本県警察本部刑事部組織犯罪対策課(現 熊本県牛深警察署地域・交通課)

池永 拡之(いけなが  ひろゆき) 警部

 
ゆっぴー

ゆっぴー

 
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「警察が24時間守ってくれるんですか?」

この言葉は、私が暴力団捜査への協力を依頼した市民や事業者の方々から時折耳にする言葉であり、暴力団との付き合いがある人ほど、暴力団を恐れる気持ちが心に染みついているように感じます。

暴力団犯罪の取締りに従事していると、年々暴力団が潜在化し、実態がつかみにくくなっているほか、暴力団犯罪も巧妙化、複雑化しており、捜査活動も以前に比べて困難を極める事案が増加していることを実感します。すなわち、これまで以上に、市民の方々の協力がなければ、効果的な暴力団の取締りができない時代に突入しているのです。

一方、近年の全国的な暴力団排除気運の高まりとともに、勇気を出して警察に協力してくださる方々も増え、このような方々を支援するための法整備も進んでいます。私も、暴力団と戦おうとする方々を全力でサポートしたいと思っています。

定職にも就かず、弱者を食い物にする暴力団を野放しにすることはできません。

誰もが安全で安心して暮らすことのできる街づくりのため、今後も市民の皆さんの協力をいただきながら、暴力団に立ち向かっていく決意です。

 
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犯罪に国境はない、捜査にも国境はない

前 大阪府警察本部刑事部国際捜査課(現 大阪府東成警察署地域課)

三輪 剛史(みわ たけし) 警部

 
フーくん、ケイちゃん

フーくん、ケイちゃん

 
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「国外犯事件」私が初めてこの言葉を耳にしたのは、警察署の強行犯担当の刑事をしていた時でした。その事件は、管内に居住する日本人男性が外国で惨殺された事件でした。御遺族と面談した時の「息子は外国で殺されたが、絶対に犯人を大阪府警で捕まえてください」という御遺族の言葉は、私の胸に深く突き刺さりました。そして、たとえ国外での犯罪であれ、「絶対に逃げ得は許さない!必ず犯人を捕まえてやる」と強く決意しました。私のこの思いが通じたのか、その後国際捜査課に異動となり、引き続きこの事件の捜査に専従することになりました。

事件現場が外国であり、客観的証拠や目撃者・関係者等の捜査対象のほとんどが外国にあることから捜査は難航し、国外犯捜査の困難性を痛感しました。しかし、犯行現場である外国への出張も行いながら、捜査を進めた結果、立ちはだかる「国境の壁」、「言葉の壁」という障害を乗り越え、ついに主犯格の日本人被疑者を検挙することができました。

私はこの事件捜査から、「信じて前に進めば、道は開け必ず結果を出せること」「犯人を逮捕するという思いに国境はないこと」など多くのことを経験し学びました。

これからも「捜査に国境なし」を自分の信念に国際犯罪に立ち向かって行く所存です。

 
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注:掲載されているキャラクターは、都道府県警察のマスコットキャラクターです。


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