第3章 組織犯罪対策 

3 暴力団対策法の運用

 指定暴力団員がその所属する暴力団の威力を示して暴力的要求行為等を行った場合等には、暴力団対策法に基づき、都道府県公安委員会は中止命令等を発出することができる。
 都道府県公安委員会が最近5年間に発出した中止命令等の発出件数は表3-5のとおりである。
 
図3-3 暴力団対策法に基づく命令の概要
図3-3 暴力団対策法に基づく命令の概要
 
表3-5 暴力団対策法に基づく中止命令等の発出件数(平成19~23年)
表3-5 暴力団対策法に基づく中止命令等の発出件数(平成19~23年)
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事例
 山口組傘下組織構成員(26)は、脱退の意思を示した構成員に対し、「お前勝手にそんなこと通用すると思っとるんか」などと告げて威迫し、脱退を妨害した。平成23年1月、県公安委員会は、同人に対し、同組織からの脱退を妨害することや脱退を妨害する目的で電話をかけたり、信書を送り付けたり、面会を要求してはならない旨命じた(静岡)。

コラム② 暴力団対策法の一部改正案


1 暴力団対策法の制定
 民事介入暴力を始めとする暴力団の資金獲得活動や対立抗争事件その他暴力団員の不当な行為への効果的な対策が強く求められた社会情勢を背景に、3年、暴力団対策法が制定され、4年3月から施行された。
 暴力団対策法は、一定の要件に該当する暴力団を指定し、この指定された暴力団(指定暴力団)の暴力団員(指定暴力団員)の一定の行為を規制の対象とし、指定暴力団員が指定暴力団の威力を示して行う典型的な不当な金品等の要求行為(暴力的要求行為)を規制するほか、対立抗争事件に伴う事務所の使用の制限、少年に対する加入強要の禁止等も規定しており、暴力団の活動を多面的に抑止することが可能となっている。また、都道府県ごとに暴力追放運動推進センター(以下「暴追センター」という。)を指定し、暴力団員の活動による被害の予防等に資するための民間公益活動の促進を図ることを内容としており、我が国における暴力団排除活動を活発化させる原動力となった。
 その後、暴力団情勢の変化や同法の施行状況等を踏まえ、これまでに、5年、9年、16年及び20年の4回にわたって改正されている。
 
図3-4 過去の暴力団対策法改正の概要
図3-4 過去の暴力団対策法改正の概要

2 24年の暴力団対策法の改正内容
 近年、九州地区で道仁会と九州誠道会の対立抗争が継続しているほか、暴力団との関係遮断を図ろうとする事業者が襲撃される事件等も相次いで発生しており、市民生活に対する大きな脅威となっていることなどから、24年2月、第180回国会に
  ① 市民に対する危害を防止するための規制の強化
  ② 付近住民等の委託を受けた適格都道府県センターによる事務所使用の差止め請求を可能にする制度の導入
  ③ 指定暴力団員の不当要求に対する規制の強化
等を内容とする暴力団対策法の一部を改正する法律案を提出した(24年6月21日現在)。
 
図3-5 24年暴力団対策法改正案の概要
図3-5 24年暴力団対策法改正の概要

 第1節 暴力団対策

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