第1章 生活安全の確保と犯罪捜査活動

5 良好な生活環境の保持

(1)風俗営業等の状況

<1> 風俗営業の状況

警察では、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下「風営適正化法」という。)に基づき、風俗営業等に対して必要な規制を加えるとともに、風俗営業者の自主的な健全化のための活動を支援し、業務の適正化を図っている。

表1―16 風俗営業の営業所数の推移(平成18~22年)

<2> 性風俗関連特殊営業の状況

性風俗関連特殊営業の状況については、近年、無店舗型性風俗特殊営業や映像送信型性風俗特殊営業の届出数が増加している一方、店舗型性風俗特殊営業の届出数は減少傾向にある。

表1―17 性風俗関連特殊営業の届出数の推移(平成18~22年)

<3> 深夜酒類提供飲食店営業の状況

深夜酒類提供飲食店の営業所数は、最近5年間はほぼ横ばいである。

表1―18 深夜酒類提供飲食店の営業所数の推移(平成18~22年)

(2)売春事犯及び風俗関係事犯の現状

<1> 売春事犯

平成22年中の売春事犯の総検挙人員に占める暴力団構成員及び準構成員の割合は16.8%(122人)と、依然として売春事犯が暴力団の資金源になっていることがうかがわれる。

最近では、携帯電話の出会い系サイトを利用する事犯のほか、女性に債務を負わせて売春を強要したり、派遣型ファッションヘルスを仮装したりするなどの悪質な事犯もみられる。

表1―19 売春防止法違反の検挙状況の推移(平成18年~22年)

<2> 風俗関係事犯

22年中の風営適正化法による検挙状況についてみると、前年に比べ、年少者使用及び構造設備・遊技機無承認変更の検挙件数が特に減少している。

わいせつ事犯の検挙状況についてみると、検挙件数は、最近3年間は連続して増加している。また、近年、コンピュータ・ネットワークを利用してわいせつな画像情報が記録されたDVD 等を販売する事犯が多くみられる。

表1―20 風営適正化法違反の検挙状況の推移(平成18~22年)

表1―21 わいせつ事犯の検挙状況の推移(平成18~22年)

事例

エステ10店舗の各経営者(33)らは、22年9月、法令により店舗型性風俗特殊営業を営むことが禁止されている地域において、当該営業を営むなどしていた。同月、当該10店舗の各経営者ら22人を風営適正化法違反(禁止地域営業、同幇助)で逮捕した(神奈川)。

コラム〔7〕 類似ラブホテル及び出会い系喫茶営業の規制

風営適正化法上の規制が及んでいなかったいわゆる類似ラブホテルや出会い系喫茶営業については、住宅地域や学校の直近での営業、店舗周辺での派手な広告宣伝の氾濫等、清浄な風俗環境を害している実態がみられ、また児童買春等の温床となるなど、善良の風俗や少年の健全育成への悪影響が問題となっていた。これらの問題に対処するため、22年7月、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行令が改正され、風営適正化法上のラブホテル等営業に該当する営業の範囲が拡大されるとともに、出会い系喫茶営業が新たに店舗型性風俗特殊営業として規制されることとなった。23年1月、これらの規定は施行された。

(3)人身取引事犯に対する取組

<1> 人身取引事犯の検挙状況等

近年、人身取引の防止・撲滅及び被害者の保護が国際的な課題となっており、警察では、平成21年に策定された「人身取引対策行動計画2009」に沿って引き続き、入国管理局等の関係機関と連携し、悪質な経営者、仲介業者等の取締りを強化し、被害者の早期保護及び国内外の人身取引の実態解明を図っている。また、関係国の在日大使館、被害者を支援する民間団体等と緊密な情報交換を行っている。

22年中の人身取引事犯の検挙人員は24人で、その内訳は、経営者が6人、仲介業者が3人であった。また、警察で保護した人身取引事犯の被害者は37人で、その国籍は、フィリピン(24人)、日本(12人)が多数を占めた。被害者の保護時の在留資格は、「日本人配偶者」(13人)、「定住者」(6人)が半数を占めた。

事例

飲食店経営者(45)らは、フィリピン人女性を偽装結婚させ、ホステスとして働かせていた。22年3月、同女性が保護を求めてきたことから、同女性を人身取引被害者と認めて保護措置をとった後、経営者ら3人を電磁的公正証書原本不実記録・同供用罪で逮捕するとともに、同経営者が同様に働かせていたフィリピン人女性5人を保護した(岐阜)。

<2> 匿名通報ダイヤルの運用

19年10月1日から、被害者本人からの申告が期待しにくく潜在化しやすい犯罪を早期に認知して検挙に結び付けるため、警察庁から委託を受けた民間団体が少年の福祉に関係する一定の犯罪(注1)や児童虐待、人身取引事犯や人身取引事犯のおそれがある犯罪(注2)に関する通報を国民から電話又はインターネットにより匿名で受け付け、事件検挙への貢献度に応じて情報料を支払う「匿名通報ダイヤル」を運用している。22年末現在、通報件数は3,110件であり、このうち17件が事件解決等に結びついた。

注1:福祉犯のうち、未成年者喫煙防止法、未成年者飲酒禁止法に規定する罪等一部の罪を除き、刑法の強制わいせつ罪(少年が被害者になるものに限る。)、未成年者略取、誘拐罪等を含めたもの

注2:風営適正化法、売春防止法及び出入国管理及び難民認定法に規定する罪のうち一定のもの

(4)銃砲刀剣類の適正管理と危険物対策

<1> 銃砲規制の厳格化と刃物規制の強化

平成22年末現在、銃砲刀剣類所持等取締法(以下「銃刀法」という。)に基づき、都道府県公安委員会の所持許可を受けている猟銃及び空気銃の数は26万6,649丁で、13万1,766人が許可を受けている。警察では、所持許可の審査と行政処分を的確に行って不適格者の排除に努めており、22年中、申請を不許可等とした件数は26件、所持許可を取り消した件数は112件であった。

また、猟銃等の事故及び盗難を防止するため、毎年一斉検査を行うとともに、講習会等を通じて適正な取扱いや保管管理の徹底について指導を行っている。

他方、19年12月に長崎県佐世保市で発生した散弾銃使用殺傷事件及び20年6月に東京都千代田区で発生したダガーナイフ使用による無差別殺傷事件等を受け、20年12月、銃砲規制の厳格化と刃物規制の強化を内容とする銃刀法の一部を改正する法律が公布され、所持の禁止の対象となる剣の範囲の拡大、銃砲刀剣類の所持者に対する監督の強化及び銃砲刀剣類の所持許可の要件の厳格化等に係る規定が21年12月までに施行された。

<2> 危険物対策

火薬類、特定病原体等、放射性物質等の危険物の運搬に当たっては、火薬類取締法、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律等の規定に基づき、都道府県公安委員会にその旨を届け出ることとされている。

警察では、これらの危険物が安全に運搬されるよう、関係事業者に対して事前指導や指示等を行うとともに、これらの危険物の取扱場所への立入検査等により、その盗難、不正流出等の防止に努めている。

表1―22 運搬届出・立入検査の状況(平成22年)


第3節 安全で安心な暮らしを守る施策

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