第4章 公安の維持と災害対策 

3 右翼の動向と対策

(1)右翼の動向

〔1〕 批判活動の展開
 右翼は、平成21年中、特に、北朝鮮によるミサイル発射や政権交代後の日本政府の政策等をとらえ、日本政府等に対する批判活動を執拗(よう)に行った。
 また、中国をめぐっては、東シナ海における資源開発等をとらえ、韓国をめぐっては、竹島問題等をとらえ、ロシアをめぐっては、北方領土問題等をとらえ、それぞれ関係国、日本政府等を批判した。
 右翼が上記の批判活動に動員した団体数、人数及び街頭宣伝車数は、表4-4のとおりである。
 このほか、民族主義・排外主義的主張に基づき、「外国人参政権反対」などと主張する市民運動が各地で展開され、一部で反対勢力とのトラブルもみられた。
 
表4-4 右翼による批判活動に伴う動員数(平成21年)
表4-4 右翼による批判活動に伴う動員数(平成21年)

〔2〕 右翼関係事件の傾向
 21年中は、「テロ、ゲリラ」事件の発生はなかったが、同年8月、右翼団体幹部が国会議員の政治姿勢を批判する文書を所持して国会議事堂正門前において短刀で自らの腹部を刺した「国会議事堂正門前における銃砲刀剣類所持等取締法違反事件」が発生した。
 
図4-12 「テロ、ゲリラ」事件の検挙状況の推移(平成12~21年)
図4-12 「テロ、ゲリラ」事件の検挙状況の推移(平成12~21年)
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図4-13 右翼関係事件の検挙状況の推移(平成17~21年)
図4-13 右翼関係事件の検挙状況の推移(平成17~21年)
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 21年中の右翼による違法行為(右翼関係事件)の検挙状況は、図4-13のとおりである。
 このうち、右翼運動に伴う事件(注)の検挙状況は、次のとおりである。
〈右翼運動に伴う事件の検挙状況〉
 検挙件数・・・152件(全検挙件数の9.1%) 検挙人員・・・274人(全検挙人員の14.7%)

 また、右翼による恐喝事件や詐欺事件等の資金獲得を目的とした事件の検挙状況は、次のとおりであり、道路交通法違反を除く全検挙件数の42.0%を占めている。
〈資金獲得を目的とした事件の検挙状況〉
 検挙件数・・・312件(道路交通法違反を除く全検挙件数の42.0%)
 検挙人員・・・411人(道路交通法違反を除く全検挙人員の44.3%)

 さらに、右翼及びその周辺者からの銃器押収状況は、次のとおりであり、銃器の多くを暴力団を通じて入手しているものとみられる。
〈右翼及びその周辺者からの銃器押収状況〉
 21年中の押収・・・11丁(前年比4丁(57.1%)増加)
 過去5年間の押収・・・63丁(暴力団と関係を有する者からの押収・・・37丁(58.7%))

注:右翼が街頭宣伝活動、抗議活動等を行う過程で引き起こした事件


(2)右翼対策の推進
〔1〕 「テロ、ゲリラ」事件の未然防止に向けた違法行為の検挙
 警察では、右翼による「テロ、ゲリラ」事件の未然防止を図るため、銃器犯罪や資金獲得を目的とした犯罪を中心に、様々な法令を適用して違法行為の徹底検挙に努めている。

事例
 政治団体幹部(45)らは、街頭宣伝車の継続検査に当たり、恒常的に設置している赤色灯火を一時的に取り外し、保安基準に適合する車両と認定させ、自動車検査証の返付を受けた。平成21年10月、道路運送車両法違反(不正車検)で逮捕した。
 さらに、同団体幹部(46)は、交通事故の際に、街頭宣伝車の触媒マフラーが損傷したように装って虚偽の見積書を損害保険会社に提出し、損害保険金等350万円をだまし取った。同年11月、詐欺罪で逮捕した(大阪)。
 
事例

〔2〕 街頭宣伝車対策の推進
 警察では、右翼が街頭宣伝車を用いて行う活動のうち、国民の平穏な生活に影響を及ぼす悪質なものについては、様々な法令を適用して徹底した取締りに努めている。
〈21年中の取締り状況〉
 静穏保持法違反による検挙…………1件、3人
 暴騒音条例に基づく停止・中止命令………94件
               勧告………132件
               立入………3件
 恐喝罪、名誉毀(き)損罪、暴力行為等処罰ニ関スル法律違反等による検挙………56件、106人
 
街頭宣伝車の取締り状況
街頭宣伝車の取締り状況

 第3節 公安情勢と諸対策

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