3 振り込め詐欺
(1)振り込め詐欺の現状
振り込め詐欺とは、いわゆるオレオレ詐欺(注1)、架空請求詐欺(注2)、融資保証金詐欺(注3)及び還付金等詐欺(注4)の総称であり、架空・他人名義の携帯電話や預貯金口座等を利用し、不特定多数の者から現金をだまし取る犯罪(現金を脅し取る恐喝も含む。)である。
平成21年中の振り込め詐欺の認知件数は7,340件、被害総額は約96億円と、20年中の認知件数及び被害総額の約3分の1にまで減少した。
また、21年中の検挙件数は5,669件、検挙人員は955人と、過去最高となった。
図1-19 振り込め詐欺の認知件数・被害総額の推移(平成17~21年)
図1-20 振り込め詐欺の検挙状況の推移(平成17~21年)
(2)振り込め詐欺を撲滅するための取組み
警察庁では、平成20年6月、警察庁次長を長とする「振り込め詐欺対策室」を設置し、組織を挙げた取締活動及び予防活動を推進している。また、同年7月、法務省と共同で、振り込め詐欺対策における基本的な考え方及び方針を取りまとめた「振り込め詐欺撲滅アクションプラン」を策定・公表し、官民を挙げた取組みを推進している。
このような取組みにより、振り込め詐欺の被害は、21年には大幅に減少したものの、それでもなお年間100億円近い多額の被害が発生していることから、振り込め詐欺を撲滅するため、引き続き各種対策を推進している。
〔1〕 警察の総力を挙げた取締活動の推進
都道府県警察では、振り込め詐欺対策に専従する組織の設置や要員の確保、部門横断的な集中取締体制の構築等により、体制の強化を図っている。また、警察庁では、集約した情報を都道府県警察に還元し、戦略的な取締活動を推進するとともに、都道府県警察間の合同・共同捜査を積極的に推進している。
振り込め詐欺においては、架空・他人名義の携帯電話や預貯金口座等が利用されていることから、警察では、これらの流通を遮断し、犯行グループの手に渡らないようにするため、振り込め詐欺を助長する行為についても、関係法令を駆使して取締りに当たっている。
〔2〕 国民から寄せられた情報による先制的抑止措置の推進
警察では、110番通報のほか、警察相談専用電話(全国統一電話番号「♯(シャープ)9110」)及び専用メールアドレス等、様々な窓口を設け、振り込め詐欺に関する相談や情報を幅広く受け付けている。また、国民から寄せられた情報を活用し、警察官による警告電話の実施、「だまされた振り作戦(注1)」による犯人の検挙、事業者に対する犯行に利用された携帯電話の契約者確認の求めや金融機関に対する振込先指定口座の凍結依頼による犯行ツールの無力化等を実施し、効果的な取締りや被害防止を推進している。
〔3〕 官民一体となった予防活動の推進
ア 広報啓発活動の推進
振り込め詐欺の被害を防止するためには、国民の犯罪に対する「抵抗力(注2)」を高めていくことが重要である。このため、警察では、防犯教室や巡回連絡等の機会や、テレビ等マスコミを通じて、その手口や被害に遭わないための注意点等の情報を積極的に国民に対して提供している。また、振り込め詐欺の犯人は、被害者をだますための口実を社会情勢に応じて頻繁に変化させるため、生活安全相談等日々の警察活動から得られる情報を集約・分析し、最新の発生動向を踏まえた広報啓発活動を実施している。
図1-21 振り込め詐欺被害防止のポイント
イ 関係機関・団体等との連携
振り込め詐欺の被害金の多くがATMや金融機関窓口を利用して送金されていることから、金融機関の職員等による利用者への声掛けは、被害防止のために極めて重要である。このため、警察は、金融機関、コンビニエンスストア等に対し、振り込め詐欺が疑われる場合の利用者への声掛けや警察への通報を積極的に行うよう求めている。また、効率的に広報啓発を行うため、病院や福祉関係事業者等と連携し高齢者への注意喚起を行うなど、被害者層が日常的に接することの多い関係機関・団体等と連携した取組みを推進している。
コラム2 ATM周辺における声掛けによる振り込め詐欺被害防止
警察では、ATM周辺における声掛けを一層推進するため、金融機関と連携して声掛けの共同訓練を実施したり、声掛けの着眼点等を示した資料を金融機関に提供したりしている。
21年中は、声掛けにより、認知件数の16.7%に当たる1,229件の振り込め詐欺被害を未然に防止している。
ATM周辺での取組み
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