平成21年警察白書概要 

平成21年警察白書概要
特集:日常生活を脅かす犯罪への取組み

第1節 日常生活を脅かす犯罪の現状
  平成16年以降、毎年250億円を超える振り込め詐欺(恐喝)の被害が生じている。匿名社会に身を潜め、警察の捜査をかいくぐり、離合集散を繰り返しながら、いわばビジネスとして振り込め詐欺(恐喝)を悪質・巧妙な手口によって敢行する犯行グループは、国民の日常生活を脅かす存在となっている。
  また、社会経済情勢に応じて常に変化を続ける悪質商法、悪質・巧妙化の一途をたどるヤミ金融事犯、身近で手軽なインターネットを利用した詐欺によって、国民の財産が脅かされている。
  さらに、日常生活において摂取・利用する身近な食品・製品等に係る安全・安心を脅かす事犯や健康志向・美容願望につけ込む保健衛生事犯が、国民に大きな不安を与えている。

第2節 日常生活を脅かす犯罪への取組み
  警察では、総力を挙げて、日常生活を脅かす犯罪の取締活動及び予防活動を推進するとともに、関係機関・団体との連携強化を図っている。
  特に、振り込め詐欺(恐喝)については、犯行グループの検挙を徹底するとともに、国民一人一人の心に響く広報啓発に努め、官民一体となった予防活動を行っている。さらに、関係事業者等の理解と協力を得て、架空・他人名義の携帯電話や預貯金口座等の犯行ツールを一掃する対策を推進している。

第3節 今後の展望
  日常生活を脅かす犯罪を撲滅するためには、警察の取組みだけではなく、関係機関・団体による取組みはもちろんのこと、国民一人一人の理解と協力が欠かせず、被害に遭わないための社会における相互の注意喚起の仕組みを根付かせていくとともに、国民の犯罪に対する「抵抗力」を高めていくことが必要である。
  警察では、今後とも、取締りを推進していくことはもとより、広報啓発に努めるなど、社会全体が一丸となって日常生活を脅かす犯罪を撲滅するための取組みを推進していく。

トピックスI:「犯罪に強い社会の実現のための行動計画2008」について
 政府では、平成20年12月、犯罪を起こさせないためのより広範な政策を総合的かつ持続的に講じていくため「犯罪に強い社会の実現のための行動計画2008」を策定した。
 警察では、真の治安再生を実現するため、国民の協力を得ながら、関係機関・団体等と連携し、同行動計画に基づく取組みを強力に推進していく。

トピックスII:警察捜査における取調べをめぐる諸施策
 警察では、裁判員裁判における自白の任意性の効果的・効率的な立証方策を検討するため、平成20年9月から取調べの録音・録画の試行を開始した。また、被疑者取調べ適正化のための監督に関する規則が21年4月に施行され、捜査部門以外の部門による取調べに関する監督が制度化された。
 警察では、取調べをめぐる諸施策を着実に実施し、警察捜査に対する国民の信頼を確かなものとするよう全力を尽くしていく。

トピックスIII:デジタルフォレンジックの強化
 コンピュータ、携帯電話等の電子機器が一般に普及し、あらゆる犯罪に悪用されるようになってきており、その捜査に当たっては、各種電子機器に保存されている電磁的記録の解析が必要不可欠となっている。
 警察では、消去、改ざん等が容易な電磁的記録の適正な手続による解析・証拠化等を行うため、関係機関等と連携しながら、デジタルフォレンジックを強化している。

トピックスIV:大規模災害に対する警察の取組み
 警察は、24時間体制で災害に備えており、大規模災害発生時等には、直ちに災害警備本部等を設置するなど体制を整えるとともに、必要に応じて広域緊急援助隊を運用し、都道府県警察の単位を越え、一体となって被災者の救出救助、交通対策、防犯活動、被災者支援等、幅広い活動を行う。また、平素から、関係機関・団体と連携しながら、地域住民等による防災活動を促進している。

第1章:生活安全の確保と犯罪捜査活動

 平成20年中の刑法犯認知件数は減少したが、治安情勢は依然として厳しい。
 警察では、街頭犯罪・侵入犯罪抑止総合対策を推進するとともに、カード犯罪、知的財産権侵害事犯、サイバー犯罪等の取締りの強化、被害防止に向けた広報啓発活動の推進等に努めている。
 また、犯罪の検挙と抑止のための基盤整備として、検視体制の強化等捜査体制の整備、科学技術の活用、事件・事故へ即応するための取組み等を推進しているほか、法務省と凶悪重大犯罪等に係る出所情報等を共有し、連携を図る仕組みを構築している。
 さらに、安全で安心な暮らしを守る施策として、ストーカー事案への対応等女性を守る施策、通学路の安全対策等子どもを守る施策、「安全・安心なまちづくり全国展開プラン」に基づく施策等を推進するとともに、銃砲規制の厳格化や刃物規制の強化等良好な生活環境を保持するための取組みを行っているほか、少年の非行防止と健全育成にも取り組んでいる。

第2章:組織犯罪対策の推進

 暴力団による犯罪、犯罪組織の関与がうかがわれる薬物・銃器に関する犯罪、来日外国人犯罪組織による犯罪等の情勢は、依然として厳しい。
 警察では、資金獲得犯罪を始めとする暴力団犯罪の取締り、暴力団対策法の効果的な運用、暴力排除活動の推進等により暴力団の壊滅を目指すとともに、薬物の供給の遮断及び需要の根絶に向けた対策、犯罪組織の武器庫や密輸・密売事件の摘発に重点を置いた銃器の取締り、国内外の関係機関と連携した国際組織犯罪対策等を推進している。
 また、犯罪組織を弱体化させ、壊滅に追い込むためには、犯罪収益の移転を防止し、これを確実にはく奪することが重要であることから、犯罪収益移転防止法に基づく関係機関等と連携した取組み、組織的犯罪処罰法の積極的な活用等により、犯罪収益対策を推進している。

第3章:安全かつ快適な交通の確保

 平成20年中の交通事故による死者数は5,155人と、昭和28年以来54年ぶりに5千人台となった前年を更に下回った。また、発生件数及び負傷者数も4年連続で減少し、負傷者数は10年ぶりに100万人を下回った。しかしながら、いまだ70万件以上の交通事故が発生するなど、依然として憂慮すべき情勢にある。
 警察では、交通安全教育や運転者教育、悪質性・危険性・迷惑性の高い違反に重点を置いた取締りやち密な交通事故事件捜査等、交通事故を防止し、その被害軽減を図るための施策を総合的に推進している。
 また、道路交通のIT化、交通安全施設等整備事業、総合的な駐車対策等、安全かつ快適な交通の確保のための諸対策を推進している。

第4章:公安の維持と災害対策

 我が国に対するテロの脅威が依然として高い状況にある中、警察では、テロの未然防止に向けた諸対策、的確な警衛・警護警備諸対策等を推進するとともに、北朝鮮等による対日有害活動やオウム真理教、右翼、極左暴力集団等に関する情報収集、取締り等を推進し、国民の安全・安心と要人の身辺の安全を確保している。
 また、平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震等が発生した際、広域緊急援助隊等を出動させるなどして、被災者の救出救助、行方不明者の捜索等の活動を適切に実施したほか、新型インフルエンザが国内外で発生した21年4月以降、「警察庁新型インフルエンザ対策行動計画」に基づき関係機関と連携した諸対策を実施している。

第5章:公安委員会制度と警察活動の支え

 警察では、公安委員会による管理の下、適正な警察活動を確保するための取組みを推進するとともに、組織及び人員の効率的運用、教育訓練の充実強化、装備品・情報通信システムの開発改善等、警察活動の基盤を整備している。
 このほか、犯罪被害者等に対する支援の充実、適正な留置業務の運営の徹底、警察署協議会の活用、我が国の警察の特質をいかした知識・技術の移転による国際協力の推進、警察政策研究センター、警察情報通信研究センター及び科学警察研究所における調査研究等にも取り組んでいる。

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