第1章 生活安全の確保と犯罪捜査活動 

2 交番・駐在所の活動

 交番・駐在所では、パトロールや巡回連絡等の様々な活動を通じて、管轄する地域の実態や地域住民の要望を把握し、地域住民の要望にこたえている。また、昼夜を分かたず常に警戒体制を保ち、様々な警察事象に即応する活動を行うことにより、地域住民の安全と安心のよりどころとなり、国民の身近な不安を解消する機能を果たしている。
 平成20年4月1日現在、全国に交番は6,191か所、駐在所は7,020か所設置されている。

(1)パトロール、立番等
〔1〕 パトロール
 地域警察官は、パトロールを強化してほしいという国民からの要望にこたえ、事件・事故の発生を未然に防ぐとともに、犯罪を検挙するため、犯罪の多発する時間帯・地域に重点を置いたパトロールを行っている。パトロールに当たっては、不審な者に対する職務質問、危険箇所の把握、犯罪多発地域の家庭や事業所に対する防犯指導、パトロールカードによる情報提供等を行っている。
 
 パトロール
パトロール

事例

 平成19年11月下旬、パトカーでパトロール中の地域警察官が、パトカーを見て急転回した不審な車両を発見した。運転していた男(61)に停車を求め職務質問したところ、けん銃を発砲し抵抗したことから、銃砲刀剣類所持等取締法違反(加重所持)の現行犯として逮捕した。男はけん銃を2丁所持しており、捜査の結果、男は道仁会傘下組織幹部であり、隣接県の殺人事件の被疑者であることが判明した(福岡)。

〔2〕 立番等による警戒
 地域警察官は、交番、駐在所等の施設の外に立って警戒に当たる立番を行っている。また、駅、交通要点等の人が多く集まる場所や犯罪が多発している場所において、一定の時間立って警戒する駐留警戒等を行っている。
 
 立番
立番

〔3〕 職務執行力の強化
 警察では、地域警察官の職務執行力を強化するため、職務質問、書類作成等の能力向上を目的とした研修・訓練を実施するとともに、卓越した職務質問の技能を有する者を選抜して、警察庁指定広域技能指導官又は都道府県警察の職務質問技能指導員として指定し、実践的な指導等を通じて地域警察官全体の職務質問技能の向上に努めている。
 19年中の地域警察官による刑法犯検挙人員は31万2,966人と、警察による刑法犯の総検挙人員の85.6%を占めている。
〔4〕 交番相談員の活用
 20年4月1日現在、全国で約6,000人の交番相談員が配置され、都市部の主要な交番で活動している。
 交番相談員は、警察官の身分を有しない非常勤の職員であり、住民の意見・要望等の聴取、遺失・拾得届の受理、被害届の代書及び預かり、事件・事故発生時の警察官への連絡、地理案内等の業務に従事しており、その多くは、経験や知識を有する退職警察官である。
 
 交番相談員
交番相談員

(2)地域住民と連携した活動
〔1〕 巡回連絡
 地域警察官は、担当する地域の家庭、事業所等を訪問し、犯罪の予防、災害・事故の防止等住民の安全で平穏な生活を確保するために必要な事項の指導・連絡や、住民からの意見・要望等の聴取を行う巡回連絡を行っている。
 
 巡回連絡
巡回連絡

〔2〕 交番・駐在所連絡協議会
 平成19年末現在、全国の交番・駐在所に1万2,703の交番・駐在所連絡協議会が設置されている。そこでは、地域警察官が、地域住民と地域の治安に関する問題について協議したり、地域住民の警察に対する意見要望を把握したりすることにより、地域社会と協力して事件・事故の防止等を図っている。
 
 交番連絡協議会
交番連絡協議会

〔3〕 情報発信活動
 地域警察官は、様々な活動を通じて、地域住民に対し管轄地域の事件・事故の発生状況やその防止策等の身近な情報を伝えている。例えば、管轄地域で侵入窃盗事件が発生した場合に、発生地域や手口等を記載した「交番速報」を作成し、あらかじめ登録した送付先にファックスで送付したり、自治会の掲示板のような地域住民の目に触れやすい場所へ掲示したりしている。また、地域の身近な出来事や事件・事故の発生状況を記した「ミニ広報紙」を作成し、自治会を通じた回覧等を行っている。
 
 ミニ広報紙
ミニ広報紙

(3)交番機能の強化
 交番は、地域住民の安全と安心のよりどころとなっているが、近年、対応を要する事件・事故等が急増していること、悪化する治安情勢に対応してパトロールを強化していることなどの要因により、交番に地域警察官が不在になることが多い「空き交番」(注1)が多数生じていた。その解消のため、地域住民の理解を得ながら取組みを進めてきた結果、平成19年4月1日までに、「空き交番」は解消された。警察では、今後とも治安情勢の変化等により「空き交番」が生じることのないよう努めるとともに、引き続き、交番機能の強化に努めることとしている。

注1:地域警察官の不在が常態化している交番


(4)遺失物の取扱い
 警察では、拾得物を速やかに遺失者に返還するため、拾得物・遺失届の受理業務を行っている。平成19年中に届出のあった拾得物は、特例施設占有者保管分(注2)を含め約1,272万点に上っており、警察に提出された拾得物のうち、通貨については69.6%が、物品については32.3%が遺失者に返還されている。

注2:一定の公共交通機関又は都道府県公安委員会が指定した施設占有者(特例施設占有者)は、拾得物に関する事項を警察に届け出たときは、その物件を自ら保管することができる。


 拾得物の取扱方法等について定めた遺失物法は、18年に改正され、19年12月10日から施行された。改正法は、
・ 拾得物の保管期間の短縮(6か月から3か月に)
・ インターネットによる拾得物に関する情報の公表
・ 特例施設占有者に係る警察署長への物件(高額物件を除く。)の提出の免除
・ 携帯電話やキャッシュカード等の個人情報が入った拾得物における拾得者の所有権の取得制限
・ 傘等、大量・安価な物件や保管に不相当な費用を要する物件の売却等の処分
等を主な内容とし、国民にとって利便性が高く、合理的な拾得物の取扱いが図られることとなった。
 
 図1-44 改正遺失物法における遺失物の取扱いの流れ
図1-44 改正遺失物法における遺失物の取扱いの流れ
 
 表1-30 拾得物・遺失届の取扱状況(平成15~19年)
表1-30 拾得物・遺失届の取扱状況(平成15~19年)
 
 拾得物の保管状況
拾得物の保管状況
 
 改正遺失物法リーフレット
改正遺失物法リーフレット

 第4節 国民の身近な不安を解消するための諸活動

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