第1章 生活安全の確保と犯罪捜査活動 

第4節 国民の身近な不安を解消するための諸活動

1 事件・事故への即応

 交番、駐在所等の警察官は、事件、事故等が発生した際、直ちに発生現場に向かい、犯人の逮捕等の措置をとっている。警察では、警察官が迅速に現場に駆けつけられるよう、110番通報の受理や警察署等への指令を行うシステムを整備するとともに、パトカー等の活用による機動力の強化に努めている。

(1)110番通報の現状
 110番通報受理件数は、平成19年中は約898万件と、前年より約16万件減少したが、依然として高い水準にある。これは、3.5秒に1回、国民約14人に1人の割合で通報したことになる。また、携帯電話等の移動電話からの110番通報が62.2%を占め、件数は過去10年間で1.3倍になっている。
 警察では、毎年1月10日を「110番の日」と定め、110番通報を適切に利用するよう、また、警察による緊急の対応を必要としない相談等の電話には、専用の「#9110」番を利用するよう呼び掛けている。移動電話を用いて110番通報をするときは、所在地や番地、目標物を確認するほか、通話中にはできる限り場所を移動しないことなどを呼び掛けている。
 
 図1-43 110番通報受理件数の推移(平成10~19年)
図1-43 110番通報受理件数の推移(平成10~19年)

(2)通信指令システム
 110番通報に迅速かつ的確に対応するため、都道府県警察に通信指令室が設けられている。110番通報を受理した通信指令室では、直ちに通報内容を警察署等に伝え、パトカーや交番等の地域警察官を現場に急行させるとともに、必要に応じて緊急配備(注1)の発令等を行っている。平成19年中の緊急配備の実施件数は7,540件(前年比700件減)であった。
 また、同年中に警察本部の通信指令室で直接受理した110番通報に対するリスポンス・タイム(注2)の平均は、7分2秒であった。
 警察では、リスポンス・タイムの短縮のため、通報場所を早急に把握できる地理情報システムやパトカーの活動状況を容易に把握できるカーロケータ・システムを導入するなど、通信指令システムの高度化に努めるとともに、警視庁ほか21道府県において、携帯電話等で110番通報した際に、音声通話と同時に位置情報が通知されるシステム(位置情報通知システム)を運用している。21年6月までには、新たに青森県警察のほか10県で同システムの運用を開始する予定である。

注1:重要事件等が発生した際に、迅速に被疑者を検挙するため、地域警察官を中心とする警戒員を配置して行う検問、張り込み等
 2:通信指令室が110番通報を受理し、パトカー等に指令してから警察官が現場に到着するまでの所要時間

 
 通信指令室
通信指令室

(3)パトカー、警察用航空機・船舶の活動
 全国の警察本部や警察署に配備されたパトカーは、交番・駐在所の地域警察官と連携して管内のパトロールを行うとともに、事件、事故等の発生時における初動措置をとっている。また、パトカー以外にも、全国に警察用航空機(ヘリコプター)が約80機、警察用船舶が約190隻配備されており、通信指令室やパトカーと連携し、その機動力をいかしたパトロール、事件・事故発生時の情報の収集、交通情報の収集、災害や山岳遭難等の事故発生時の捜索救護活動等を行っている。
 
 パトカー
パトカー
 
 警察用航空機
警察用航空機

事例

 平成19年4月、霧に覆われた北アルプス水晶岳山頂付近(長野・富山県境)において、民間ヘリコプターが墜落する事故が発生した。長野県警察航空隊は、捜索のためヘリコプターを出動させ、地上の富山県警察山岳警備隊等と連携して墜落機及び乗員を発見し、負傷者等8人を救助するとともに、2人の遺体を収容し、搬送した(長野、富山)。

(4)鉄道警察隊の活動
 鉄道警察隊は、列車内、駅等の鉄道施設及びその周辺のパトロールや警戒警備を行い、すり、置き引き、痴漢等の犯罪の予防及び検挙を図っている。また、駅構内に置かれている本隊や分駐隊において、痴漢の被害に遭った女性から相談を受理した場合は、女性に同行して警乗を行うなどしている。
 
 鉄道警察隊
鉄道警察隊

事例

 女子高校生は、平成19年4月上旬から数回にわたり、登校途中の電車内において、下半身を触られる痴漢被害に遭っていたことから、同月中旬、鉄道警察隊の「痴漢被害相談所」を訪れ、同隊に相談した。そこで私服の鉄道警察隊員が同高校生に同行して電車に乗り込み、周辺を警戒していたところ、同高校生の臀部を後ろから手で触った男(32)を発見し、迷惑防止条例違反(痴漢)で現行犯逮捕した(滋賀)。

 第4節 国民の身近な不安を解消するための諸活動

前の項目に戻る     次の項目に進む