第1章 生活安全の確保と犯罪捜査活動 

5 交番・駐在所の活動

 交番・駐在所では、パトロールや巡回連絡等の様々な活動を通じて、管轄する地域の実態や地域住民の要望を把握し、地域住民の要望にこたえている。また、昼夜を分かたず常に警戒体制を保ち、様々な警察事象に即応する活動を行うことにより、地域住民の安全と安心のよりどころとなり、国民の身近な不安を解消する機能を果たしている。
 平成19年4月1日現在、全国に交番は6,185か所、駐在所は7,123か所設置されている。

(1)パトロール、立番等

〔1〕 パトロール
 地域警察官は、パトロールを強化してほしいという国民からの要望にこたえ、事件・事故の発生を未然に防ぐとともに、犯罪を検挙するため、犯罪の多発する時間帯・地域に重点を置いたパトロールを行っている。パトロールに当たっては、不審な者に対する職務質問、危険箇所の把握、犯罪多発地域の家庭や事業所に対する防犯指導、パトロールカードによる情報提供等を行っている。
 
 パトロール
パトロール

事 例
 平成18年5月、深夜帯に徒歩でパトロール中の地域警察官が、管内で連続発生する強盗事件等の手配者と酷似した男(27)を発見した。警察官は、その姿を見て足早に走り去ろうとした男を呼び止めて職務質問したところ、その男が、いきなり警察官に突き飛ばすなどの暴行を加えたことから、公務執行妨害の現行犯として逮捕した。その後の捜査により、その男には、強盗事件等約60件の余罪があることが判明した(奈良)。

〔2〕 立番等による警戒
 地域警察官は、交番、駐在所等の施設の外に立って警戒に当たる立番を行っている。
 また、駅、交通要点等の人が多く集まる場所や犯罪が多発している場所において、一定の時間立って警戒する駐留警戒等を行っている。
 
 立番
立番

〔3〕 職務執行力の強化
 警察では、地域警察官の職務執行力を強化するため、職務質問、書類作成等の能力向上を目的とした研修・訓練を実施するとともに、卓越した職務質問の技能を有する者を選抜して、警察庁指定広域技能指導官又は都道府県警察の職務質問技能指導員として指定し、実践的な指導等を通じて地域警察官全体の職務質問技能の向上に努めている。
 18年中の地域警察官による刑法犯検挙人員は32万7,524人と、警察による刑法犯の総検挙人員の85.2%を占めている。

〔4〕 交番相談員の活用
 19年4月1日現在、全国で約5,600人の交番相談員が配置され、都市部の主要な交番等で活動している。
 交番相談員は、警察官の身分を有しない非常勤の職員であり、交番等で事件・事故発生時の警察官への連絡、住民の意見・要望の聴取、遺失・拾得届の受理、被害届の代書及び預かり、地理案内等の業務に従事している。その多くは、経験や知識を有する、警察官を退職した者である。
 
 交番相談員
交番相談員

(2)地域住民と連携した活動

〔1〕 巡回連絡
 地域警察官は、担当する地域の家庭、事業所等を訪問し、犯罪の予防、災害・事故の防止等、住民の安全で平穏な生活を確保するために必要な事項の指導・連絡や、住民からの意見・要望等の聴取を行う巡回連絡を行っている。
 
 巡回連絡
巡回連絡

〔2〕 交番・駐在所連絡協議会
 平成18年末現在、全国の交番・駐在所に1万2,995の交番・駐在所連絡協議会が設置されている。そこでは、地域警察官が、地域住民と地域の治安に関する問題について協議したり、地域住民の警察に対する意見要望を把握したりすることにより、地域社会と協力して事件・事故の防止等を図っている。

〔3〕 情報発信活動
 地域警察官は、様々な活動を通じて、地域住民に対し管轄地域の事件・事故の発生状況やその防止策等の身近な情報を伝えている。例えば、管轄地域で侵入窃盗事件が発生した場合に、発生地域や手口等を記載した「交番速報」を作成し、あらかじめ登録した送付先にファックスで送付したり、自治会の掲示板のような地域住民の目に触れやすい場所へ掲示したりしている。また、地域の身近な出来事や事件・事故の発生状況を記した「ミニ広報紙」を作成し、自治会を通じた回覧等を行っている。
 
 交番連絡協議会
交番連絡協議会
 
 ミニ広報紙
ミニ広報紙

(3)遺失物の取扱い

 警察では、拾得物を速やかに遺失者等に返還するため、遺失・拾得届の受理業務を行っている。平成18年中に拾得届のあった金品のうち、通貨は約7割、物品は約3割が遺失者に返還されている。
 
 表1-14 遺失物・拾得物の取扱い状況(平成14~18年)
表1-14 遺失物・拾得物の取扱い状況(平成14~18年)

 警察の遺失物取扱業務は、明治32年に制定された遺失物法に基づいて行われているが、近年、経済の発展や社会情勢の変化に伴い、拾得物の数は増大し、また、携帯電話等、新しい種類の拾得物も多くなっている。こうした情勢を踏まえ、国民にとって利便性が高く、合理的な遺失物の取扱いの仕組みを構築するため、平成18年6月、遺失物法が改正された(改正遺失物法は、19年12月10日から施行される予定)。改正遺失物法の概要は、次のとおりである。
 ・ 遺失場所を問わず拾得物を発見することができるようにするため、インターネットにより拾得物に関する情報の公表等を行うこと。
 ・ 拾得物の保管期間を6か月から3か月に短縮すること。
 ・ 傘等、大量・安価な物件や保管に不相当な費用を要する物件については、2週間以内に返還ができないときは売却等の処分をすることができること。
 ・ キャッシュカードや携帯電話等、個人の一身に専属する権利や個人の秘密が記録された文書等(個人情報関連物件)については、拾得者が所有権を取得できないこと。
 ・ 鉄道事業者やバスの事業者等、取り扱う拾得物が多数に上り、かつ、これを適切に保管できる施設占有者(特例施設占有者)については、高額な物件等を除き、届出をした物件の警察署長への提出を免除すること。
 
 図1-39 改正遺失物法における遺失物の取扱いの流れ
図1-39 改正遺失物法における遺失物の取扱いの流れ

(4)交番機能の強化

 交番は、地域住民の安全と安心のよりどころとなっているが、近年、対応を要する事件・事故等が急増していること、悪化する治安情勢に対応してパトロールを強化していることなどの要因により、交番に地域警察官が不在になることが多い「空き交番」(注)が多数生じていた。
 その解消を求める国民の要望は強く、警察では、交番の地域警察官の増配置、交番の配置見直し、交番相談員の活用等によって「空き交番」を解消するための計画を策定し、地域住民の理解を得ながら取組みを進めてきた。
 計画では、平成19年春を目途に「空き交番」を解消し、交番機能を強化することを目標とし、交番には、原則として一当務に2人以上の地域警察官を配置することとした。管内の警察事象が少ない交番は、例外的に一当務2人未満の配置とする場合もあり、このような交番については、交番相談員やパトカーの活用、テレビ電話等の不在対策機器の設置等による補完体制を確立することとした。
 その結果、18年4月1日現在、「空き交番」は全国に268所(全交番の4.2%)あったが、19年4月1日現在、「空き交番」は解消されている。警察では、今後とも「空き交番」が生じないよう、交番機能の強化に努めることとしている。
 なお、「空き交番」解消後も、事件・事故等に対応するため、地域警察官が一時的に不在にすることはあり得るので、住民に不安感を与えないよう、補完体制の更なる充実に努めている。

注:地域警察官の不在が常態化している交番
 
 図1-40 空き交番解消計画(平成16~19年)
図1-40 空き交番解消計画(平成16~19年)

 第2節 犯罪の検挙と抑止のための基盤整備

前の項目に戻る     次の項目に進む