第3節 安全で安心な暮らしを守る施策
1 安全・安心なまちづくりの全国展開
(1)犯罪対策閣僚会議と都市再生本部の連携
近年、全国の地域住民の間では、警察等の取締りだけに頼るのではなく、自らの手で街の安全・安心を確保しようとする気運が高まっている。政府では、こうした地域の自主的な取組みを支援し、官民連携した安全で安心なまちづくりを全国に展開するため、平成17年6月、犯罪対策閣僚会議と都市再生本部の合同会議を開催し、「安全・安心なまちづくり全国展開プラン」及び都市再生プロジェクト「防犯対策等とまちづくりの連携協働による都市の安全・安心の再構築」を決定し、両者を調和させて推進していくこととした。警察庁も、これらの取組みに積極的に参画している。
(2)「安全・安心なまちづくり全国展開プラン」
このプランは、官民連携した安全・安心なまちづくりに関し、平成15年12月の「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」を補完するとともに、更にこれを加速化させるため、当面重点的に推進すべき施策を取りまとめたものである。同プランには、図1-43の〔1〕~〔3〕の重点課題別に合計61の推進施策が盛り込まれている。
図1-41 安全・安心まちづくり全国展開プラン
(3)「安全・安心なまちづくり全国展開プラン」に基づく施策の推進
平成17年12月、犯罪対策閣僚会議において、犯罪に強い社会の実現のため、安全・安心なまちづくりを推進する機運を全国的に波及・向上させ、国民の意識と理解を深めることを目的として、毎年10月11日を「安全・安心なまちづくりの日」とするとともに、安全・安心なまちづくりの推進に顕著な功績又は功労のあった団体・個人を首相が表彰する制度を新設することが決定された。これに基づき、18年10月11日、首相官邸において、10団体に対し、安全・安心なまちづくり関係功労者表彰が行われた。
安全・安心なまちづくり関係功労者表彰
安全・安心なまちづくりの日ポスター
また、「安全・安心なまちづくりの日」関連行事として、10月9日には全国で活躍する防犯ボランティア団体の活動内容を発表する場として「防犯ボランティアフォーラム2006」((財)全国防犯協会連合会主催、警察庁後援)が、10月10日には防犯まちづくりに積極的な取組みを行っている自治体の発表・意見交換の場として「安全・安心なまちづくりワークショップ」((社)都市防犯研究センター主催、警察庁後援)が、それぞれ開催された。
防犯ボランティアフォーラム
安全・安心なまちづくりワークショップ
(4)繁華街・歓楽街を再生するための総合対策の推進
全国各地の繁華街・歓楽街における風俗環境は、取締り等の強化により改善されつつあるものの、
依然いかがわしい広告や悪質な客引き行為が後を絶たず、また、暴力団や来日外国人犯罪組織による資金の獲得や謀議、情報交換の拠点となっているなど憂慮すべき状況にある。
「安全・安心なまちづくり全国展開プラン」及び都市再生プロジェクト「防犯対策等とまちづくりの連携協働による都市の安全・安心の再構築」には、それぞれ「健全で魅力あふれる繁華街・歓楽街の再生」及び「大都市等の魅力ある繁華街の再生」が盛り込まれている。主要な繁華街・歓楽街を管轄する都道府県警察では、それぞれの繁華街・歓楽街が健全で魅力あふれるものとして再生することを目指し、違法性風俗店、不法就労、暴力団等の犯罪組織等に対する取締りを行うとともに、街の新たな魅力づくりとの効果的な融合を目指した取組み等を推進している。
図1-42 繁華街・歓楽街の再生に向けた取組み
〔1〕 違法風俗店、客引き及び風俗案内所等の取締り
警察では、繁華街・歓楽街の環境浄化のため、違法営業に対する取締りを強化している。
図1-43 違法営業に対する取締りの強化
事例1
札幌市は、風俗環境を浄化するため、性風俗店等に係る勧誘行為・誘引行為の禁止、卑わいな広告物の掲示等の禁止行為等を盛り込んだ「札幌市公衆に著しく迷惑をかける風俗営業等に係る勧誘行為等の防止に関する条例」(通称「薄野条例」)を制定したことから、警察が集中的に取締りを展開したところ、いわゆる「カラス族」(黒服を着た客引き)等による悪質な客引きが減少し、卑わいな看板が姿を消すなどの効果を上げている(北海道)。
条例制定前の状況
↓
条例制定後の状況
条例制定前の状況
↓
条例制定後の状況
|
〔2〕 繁華街・歓楽街における犯罪組織の取締り
暴力団は、依然として各地の繁華街・歓楽街において、違法性風俗店や違法カジノ店等の経営への関与、規制薬物の密売、性風俗店や飲食店等からのみかじめ料、用心棒料等の徴収を資金源とするなど、不当な資金獲得活動を活発に行っている。また、繁華街・歓楽街においては、利権をめぐっての暴力団同士の縄張り争いに起因するとみられる事案が発生している。警察では、これらに対し、各種法令を駆使して取締りを強化している。
〔3〕 関係行政機関・防犯ボランティア団体との連携
警察では、繁華街・歓楽街を健全で魅力あふれるものとして再生することを目指し、入国管理局、消防等の関係行政機関と連携して、合同の取締り・立入調査を行っているほか、防犯ボランティア団体、商店街振興組合等と連携し、合同パトロール、街の環境浄化、暴力団排除活動等の取組みを推進している。
広報啓発ポスター
事例2
平成18年12月、警視庁、新宿区及び新宿繁華街犯罪組織排除協会の働き掛けに応じ、東京都新宿区の歌舞伎町地区のいわゆるホストクラブ、キャバクラその他の飲食店の経営者、一般企業の関係者等約1,300名は、「みかじめ料不払い宣言大会」を開催し、暴力団の資金源を遮断するための「みかじめ料等不払宣言」を行い、暴力団からの要求を断固拒否することを誓い合った。
みかじめ料等不払宣言
みかじめ料不払宣言大会
ステッカーのサンプル
|
〔4〕 交通秩序の回復・向上と健全なにぎわいの創出
繁華街・歓楽街では、違法駐車、道路上での営業を不法に常態化している露店や屋台、道路上に不当に設置された性風俗店の立て看板等により、交通秩序が乱されている実態がみられる。警察では、繁華街・歓楽街における交通秩序を回復・向上させるため、道路管理者等と連携して、ボラードの設置等の車道狭隘化を進めるとともに、悪質性、危険性、迷惑性の高い違法駐車や道路不正使用に対する指導・取締りを行っている。また、健全なにぎわいを創出するため、地方公共団体等が関与して地域活性化のためにイベント等が行われる場合には、その社会的意義を考慮しつつ、イベント等の開催に必要な道路使用の許可手続が円滑に進められるよう努めている。
事例3
京都府の中心的な繁華街である祇園・木屋町地域では、週末の夜間を中心として、「ギンギン族」と呼ばれる若者が改造車から大音響で音楽を流して周囲に迷惑をかけていたほか、「ギンギン族」の車両や客待ちをするタクシーによる二重駐車、自動二輪車の歩道駐車が目立つなど、交通秩序が著しく乱れていたことから、京都府警察では、17年10月、繁華街対策の専従部隊である「祇園・木屋町特別警察隊」(119名)の編成等により、検問による不法改造車両等の取締り、夜間の徹底した違法駐車の取締り等を進めている。
対策前の祇園・木屋町地域
対策(車両検問の実施状況)
対策後
|
〔5〕 繁華街・歓楽街における魅力あるまちづくりへの取組み
繁華街・歓楽街における魅力あるまちづくりのためには、関係者の間で、繁華街・歓楽街が抱える問題点について十分に議論し、その再生のために何が必要であるかの合意を形成することが不可欠である。警察としても、これまで、市区町村、地域住民、事業者や関係機関等から構成される協議会等の設置に向けた働き掛けを行ってきたが、今後、より一層、これを強化するとともに、既に立ち上げられているまちづくりに関する協議会等に積極的に参画し、情報提供、意見陳述等を行い、魅力ある繁華街・歓楽街の再生に向けた取組みを積極的に支援していくこととしている。
事例4
愛知県警察は愛知県と共に、18年11月、同県内の繁華街・歓楽街で環境浄化に取り組む関係者が意見交換を行う「歓楽街サミット」を開催した。この「歓楽街サミット」では、基調講演のほか、新宿区や歌舞伎町商店街振興組合の担当者、地元のボランティアらによるパネルディスカッションも行われ、参加者の情報共有とネットワークの構築が図られた。
「歓楽街サミット」の開催状況
「歓楽街サミット」のポスター
|